AI思考は武器になる 現代社会に必要なこと封】誓   それは   銛ぶ 「脳のレXtレッジ化JU昌  5つの要素・C  員1 AIをわかりやすく解説!゛`  1 脳のレバ ]半\ 本書で取り扱う「AI」とは  本書に書かれている情報の一つ ひとつは、「これなら知っている、 聞いたことがある、もっと詳しい 情報がある」というものがあると 思いますO 人間の歴史は、既知の情報・ア イデアを組み合わせ、削り、変更 しながら、新しいものを作り上げ てきていますO  本書も、同様のアプローチを経 て、既知の情報から新しい一冊を 作り上げており、この一冊が何か 一つでも読者の皆様にとって役に 立つことができれば幸いですO  なお、本書で多く扱う生成AI はAIの一種ですO  できる限り正しく書き分けます が、「このAIは、一般的なAIな のか、生成AIなのか」と感じら れる場合は多くの方にとって身近 な「生成AI」をイメージしてく ださいO AIの現状一将来とAI思考 に至るまでの経緯  2022年の後半から徐々に利用 者が増え、注目を浴び始めていた 生成AI(Artificial Intelligence)は、 2023年に人つて大きく華が開い たと言えますo  ほんの一年前は「ChatGPTl ? ナニソレ? 美味しいの? 聞い たことない」という人が大半でし たが、今ではChatGPT、Microsoft のBing^、Google Bard!、Notion AI弖などさまざまなサービスがリ リースされ、知らない人はいない と言っても過言ではない状況に なっていますo  これらのサービスは生成 AI (Generative AI)と呼ばれ、人 間が日常生活の中で普通に使って いる自然言語による指示文(プロ ンプト)を用いていることが大き な特徴ですoどのようなものを生 成したいかについて、自然言語で 指示や条件を与えることができま すoまた画像やWebページなど 言語以外を併用した入力や、言語 のほか画像・映像・音声・動作な どでのマルチモードの応答も可能 になりつつありますo  まるで人間のような自然な対話 ができ、プロのアーティストが描 いたような画像を生成できるなど、 さまざまな専門家の知識・能力を 備えているかのような応答を返す ことが、社会へ大きな驚きを与え ていますO  AI関連のニュースはインター ネット、新聞やTV等の各種メ ディアで見ない日がない状態に なっていますO 2023年7月の 『日本経済新聞』では、画像・文 章生成・音声などの生成AIのス タートアップに50分野335社が 参入したことが報じられました孔 身近なサービスとしても、AIで 英語を勉強したり、AIの画像認 識によって食事の栄養をチェック したり、仕事ではAIに文章やプ ログラムを書いてもらったりと、 私たちの生活を変えるようになっ てきていますO  私個人の綛験から言えば、お酒 を飲みに行った後、ラーメンやア イスクリームを食べるのが大好き ですが、「あすけん旦」というAI の栄養アプリを使い始めて以来 「カロリーや塩分が一日の許容量 を確実に超える」ということが数 値でわかるようになり、おかげさ まで体形はすっきりしました(飲 み会後の一時って考えると、数値 は見ない方が幸せだったかもしれ ません)o  今回の生成AIの特徴は、新し い技術が導入されたことによる 「予測精度の劇的な向上」、「対話 型のユーザーインターフェイスの 実現」と「(AIの支配を防ぐ観点 から)人間にとって望ましい方向 にAIを制御するAIアライメン ト」ですo  技術的な詳細はChapter 2 に記 載しますが、予測精度の向上は 2020年頃にはすでに研究者の間 では大きな話題になっていました0 2022年11月末に登場したChat GPTが一般ユーザーにも爆発的 に利用が広がった大きな理由は、 自然言語での対話(チャット)と いう、わかりやすく使いやすいイ ンターフェイスが採用されたこと、 また人間の意図・価値観に合わせ てAIを振る舞わせる仕組み(AI アライメント)が取り組まれたこ とですo  対話型AIの有名な事件として は2016年3月23囗に、Microsoft のAIであるTayがTwitter (現 X)上で公開されましたが、悪意 を持ったユーザーとの対話によっ て、あっという間に差別主義的思 想に染まってしまい、開始後16 時間で強制終了となったことがあ りましたo  このような問題を回避し、対話 型生成AIがより適切に応答でき るようにするための対策が取られ てきましたo生成AIは、与えら れた入力の続きを確率モデルに基 づいて予測することで応答を生成 するものでありながらも、まるで 専門家のような応答を返してくれ たり、各個人の能力ではとても処 理できないような量・速度でタス クをこなしてくれたりしますoさ らに、自然言語で指示や説明がで きるため、人にタスクを依頼する のに近い感覚で、対話型生成AI を利用することができることも大 きな特徴ですo  また、2023年の前半には、生 成AIがすべての文章を書いたAI の本が出版されるといったおもし ろいこともありましたo書店を覗 けば、ChatGPTを含む生成AIの 使い方に関する本七山のように出 ていますO 日本ディープラーニン グ協会(JDLA)Zが実施している ジェネラリスト検定(通称、G検 定)は、「ディープラーニングの 分野を中心として、AIを事業活 用するための知識を問う」もので すが、2017年の受験者は1,448人 であったのに対し、2022年には 20,661人とわずか5年で14倍が 受験する人気資格となっていますO  生成AIを使用したアプリケー ションのカタログを掲載するサイ トもあり、2023年10月15日時 点では950を超えるアプリケー ションが登録されていることから も、今回の生成AIに対する人気 をうかがい知ることができま す旦、旦。 ChatGPTのGPT-4の精 度・性能の高さは、米国司法試験 の上位10%に入るレベル、米国 医師資格試験でも合格できるレベ ル、米国名門大学のMBA(経営 学修士)に合格できるレベルと いった評価が示されていますoま た、画像生成AIで生成した画像 をもとにした作品が、絵画コンテ ストや写真コンテストで優勝する という事例もありますo  これ以外にもさまざまな分野で 応用が考えられますO応用分野の 例には、チャットポット、バー チャルアシスタント、医療診断、 法的支援、創薬支援、科学的仮説 生成、コンテンツ作成、ゲーミン グ、文章作成支援、プログラミン グとデバッグ、言語翻訳、ニュー ス要約、(第三者のコンテンツを 収集し独自の視点を加える)コン テンツキュレーション、マーケ ティング、感情分析、ソーシャル メディア分析、カスタマーサービ ス、教育支援、メンタルヘルス、 人材マネジメント、フアイナン シヤルプランニングなど多数あり ますO  また今後ですが、市場調査とコ ンサルティングを得意とする汀R 社が2021年に発表したAI市場 規模の推移と予測によると、AI 主要8市場は2019年時点で約 400億円、2025年には1,200億円 と約3倍に達することが見込まれ ますO  これらの人気や予測を踏まえる と今からAIのない世界に逆戻り する、ということは現実的にない と考えられますOこの背景はさま ざまに考えられますが、一つには 皿化・IoT化社会の進展により、 多量のデータが蓄積され、人間だ けでデータを適切に処理するのが 困難になってきていることがあげ られます。  内閣府は、狩猟社会( Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工 業社会(Society 3.0)ノ|青報社会 ( Society 4.0)に続く社会として、 「Society 5.0」を提唱しています。 Society 5.0は、サイバー空間(仮 想空間)とフィジカル空間(現実 空間)を融合させたシステムで実 現を目指す人間中心の社会です。 フィジカル空間からIoTのセン サーによる膨大な情報がサイバー 空間に蓄積され、AIによって解 析し、ロボットなどを通じて人間 にフィードバックされることで新 たな価値が創出されますo  Society 5.0 を提唱した第5期科 学技術基本計画では、先を見通し 戦略的に手を打っていく力(先見 性と戦略性)と、どのような変化 にも的確に対応していく力(多様 性と柔軟性)を重視することが基 本方針となっていますo Society 5.0や上記の方針を実現していく 上で、AIは根幹をなす技術と考 えられますo  話が大きくなっだので、身近な 事例を取り上げますo私には小学 生の子どもが2人いますが、彼ら は漢字や知らない文章・地名や歴 史等について何か調べる必要が出 てきた際は、大人が「なんだっけ、 あれ」と唸っている間に、学校か ら貸与されているiPadの音声入 力を使ってさっさと調べてしまい ますoそんな子ども達と一緒にい ると、これからはAIを当たり前 のように使いこなす時代がすぐに 来るなと感じますorAIでできる こと・できないこと」を成長の過 程で体験してくる若い世代と、 「AIでは、まだこんなことできな いだろ」と考える大人世代には差 がでることが想定されますO若い 世代に追い越されないようにする には、積極的にAIを利用し、ど んどん自分をアップデートしてい くことが重要ですO  AIについて不可逆的な変化の 渦中にいる私たちに求められるの は、「AIへの適応」であり、もっ と言えば「AIがある前提で自分 たちのパフォーマンスをどう向上 させるか」という考え方ですO  AIへ適応する上で把握してお くべきことは「AIが将来どのよ うに発展していくか」ということ ですo今の生成AIの品質でも、 個人的には仕事を進める上で十分 なサポートになっていると感じて いますo弊社内のNotion AI の第 一人者で、執行役員でもある近藤 容司郎は「現状は『AI=無茶が できる新卒Jo資料作成はできる が、何か正しいかはこちらで判断 する必要がある」と評価しており、 とても的を射た表現だと感じてい ますo  では、ここから先のAIはどう なっていくでしょうか? 世界的 ベンチャーキャピタルのセコイア が2022年9月に公開したレポー トでは、「2025年の生成AIの文 章力は平均的な人間を上回り、 2030年にはプロを上回る」点が 言及されていますO  文章に限らず、プログラミング も、画像作成も、動画/3D/ ゲームも2030年にはAIが人間 のプロを上回る世界が訪れること が報告されていますO「そんな世 界で、人間はいったい何をするん だろうか」という気にさえなりま すO  またAIの将来予測については、 人間の脳と同レベルのAIが誕生 し、その後は加速度的に進化する 「シンギュラリテイ」が2045年に 到来するという話が以前からあり ますoシンギュラリテイについて は、そもそも人間の脳力を何で評 価するのか、単純な計算力や記憶 力ではすでにAIが人間を上回っ ている、という論点もあります0 2023〜2024年時点のビジネスや 生活において実務的な話からは離 れますので、このChapterでは多 くを触れませんが、AIが近い将 来に人間のパフォーマンスを超え 万万jLブう可能性はあると考えられ       文章作成 云ご゛回国囲  プログうし/"“゛讐r4枩む゛国麗麗  画魯              讐匹Fご麗麗  r∠3°ダ      ::ぷ・F尹2 ̄回         初タレベル  ト閖レベル   ■常肩レベル  図1-1各分野における八|の進化レベル こご广お匸ぎ 二匸謡⊇ニニ たAI失業となった」ことを報じ ましたO AI失業は、テック企業 のAIで代替しやすい反復業務の 部門が中心で、経理や人事などの 企業内でのバックオフィス業務に 関わる人たちが対象になったとの ことです(同報道では、高度なス キルが必要な「知識労働」の雇用 は増えることも言及されていま す)O  この流れを受け、「将来におい てAIの方が人間より優秀になる のであれば、すべての検討や判断 をAIに任せたほうが人間は幸せ になれるのでは? 人間は生産活 動から手を引いて良いのでは?」 と問われると、多くの人にとって その答えは「NO」だと考えますO  何か幸せかは個人によって感じ 方が異なりますが、人間は社会的 な存在であり、活動して誰かに貢 献することで幸せを感じる人は多 いでしょうO  また人間の強みはあらゆる環境 へ適応できることですO自動車・ 電気・コンピューターなどさまざ まな発明・進化に合わせて、新し い仕事を作り出すことができるの が人間ですO AIの進化にあわせ て、AIから欲しい回答を得るた めの技術(プロンプトエンジニア リング)のような仕事を新しく作 り出すことは可能ですOいくら AIが優秀になるとはいえ、AIに 未来のすべてを委ねる選択をする 人は少ないと考えますO  では、私たちはどのように適応 すれば良いでしょうか?  その答えを模索し、社内の有識 者でディスカッションした結果が、 この「AI思考」ですO  この本では、AI思考とは何か を述べた後、AIそのものについ て、またAI思考を実践する方法、 AIの活用事例、最後に弊社内で の実践事例をご紹介しますO  現在のAI技術は必ずしも十分 に応えられない面があり、AI技 術の応用が社会に広がりつつある 中で顕在化してきた問題点として、 AIのブラックボックス問題、バ イアス問題、脆弱性問題、品質保 証問題、フェイク問題などが起き ていますOこれらの問題はいずれ も、AI技術の社会実装・産業応 用において、非常に深刻な問題で すOこの状況を鑑みて本書では AIを活用する上で必要な考え方、 思考について考えていきますO AI思考とは何か一従来 の思考方法との違い  人間の思考方法にはさまざまな ものがありますが、代表的なもの では、経験や洞察に基づぐ直感 的思考”、事実や論理に基づき筋 道立てて考える“論理的思考”、 新しいアイデアを生み出ず創造 的思考”があげられますO  これら従来の思考方法にAIと いう人工の脳を加えることで、 AI思考が可能となりますO  では、具体的には、どうすれば 良いでしょうかO  AIと人間を一つのチームとし て捉え、「AI=(現段階では)新 卒の社会人」をヒントとして考え れば、新卒の社会人にはできるこ と=長所でパフォーマンスを発揮 してもらうとして、できないこと =短所を補いましょうO ・AIの長所である「多量のデー  タの蓄積と処理」、「(単純作業  に対する)正確性・効率性」、  「疲労しないため長時間稼働が  可能」は活かします。 ・AIの短所である「新しいアイ デアを生み出す創造性」、「大と 人の信頼関係を築くコミュニ ケーション」、「相手を思いやる 共感力」をサポートします。  またこれに人間側を軸として、 高いパフォーマンスを発揮する上 で必要となる能力・知識を掛け合 わせた結果として、AI思考は次 の5つの要素によって構成されま すO ノ畍 に委ねても良さそうに考えられま すが、AIの力を適切に発揮させ るには人間側にも論理的思考が必 要ですO  試しに生成AIに「20代でビジ ネスパーソンが身に着けておくス キルとは何か」といった問いを投 げかけると、「自分の分野の専門 スキル、ポータブルスキルと呼ば れる汎用スキル、コミュニケー ション能力やリーダーシップなど のビジネススキル」といった一見 至極もっともらしい回答が得られ ますO  これは生成AIが多量の(おそ らくはインターネット上の)デー タを解析し、集約し、文章化して いるからだと考えられますO しか し、この答えは本当に欲しい答え でしょうか? AIの回答を基に 行動へ移そうとすると、「あれ、 これ、あらゆるスキルを磨いてお け」という回答になっている、と いうことに気づきますOこれでは、 問いかけた人は具体的に何を学ん で良いかわからなくなりますO  どのようにすれば良いでしょう か? そのためには、改めて論理 的思考を紐解く必要がありますO  論理的で、筋道が立ち、納得感 がある状態にするためには、演繹 法でも帰納法でも「主張」「デー タ」「理由付け」の3要素が必要 となりますo  BingやPerplexity!^のようなAI へ問いかけると、「どこのサイト のデータを元に、こういう理由で、 こういう回答(主張)が得られた よ」と返してくれるので、非常に 論理的な文章に見えますo  しかしその真偽は、人間側が論 理的思考を使って、「サイトや資 料は信用ができるか、データと理 由の紐づけは妥当か、また主張や 理由にモレ・ダブリはないか」と 批判的に考え、検証する必要があ ります。また回答がどうもしっく り来ない時には、「そもそもの論 理の前提や背景は妥当か、目的に 見合った問いかけができている か」といった論理の3要素の周囲 を考える必要があります。     主張     ≫理由    データ  そうすると、先ほどのAIに対 する問いかけば、次のように変わ ります。  AIへの問い:私は、今20代で 金融業界のアプリケーションエン ジニアとして5年間働いている。 (背景・前提の追加)あと3年以 内にアプリケーションを得意とす る皿コンサルタントに転職した い。今から磨いておくべきスキル は何か(目的・目標の追加)。  AIからの回答:ITコンサルタ ントには顧客のビジネス課題を解 決するため、論理的思考力やコ ミュニケーション能力などのビジ ネススキル、汀コンサルタント に求められるプログラミング・ DB(データベース)・セキュリ ティなどの汀スキル、ITコンサ ルタントはさまざまな業界を担当 するため製造業・流通業等の業界 知識、また英語が必要な場面が多 いため英語力を磨いておきましょ うO     主張    φ芦’     レ理由    ・−・ 図1・1ロジックの三角形4貪暈・目的  いかがでしょうか。より具体的 な回答が得られたので、今後は本 人の課題意識に基づいて行動計画 が立てられると思います。 FAIに関する知識一理解  AI思考については、当然のこ とながらAIを実践で使いこなす ための知識や体験に基づく理解が 必要となりますO  今のAIのトレントは何か、今 のAIの得意なこと、不得意なこ とを把握した上で、「ここは自分 がやるか、一緒に働いている人に 任せる」、「ここはAIで処理す る」というデザインをどれだけ組 み立てられるかによって、今後の 各自のパフォーマンスが変わって きますO  たとえば、「提案書作成」とい う業務では、右記が考えられますO  業務の中に、さまざまなAIを 組み入れることで、短期間で品質 の高いアウトプットを出すことが 可能となりますO右記は例として 示しましたが、AIの今後の発展 によって利用するAIヽツールが変 わったり、いくつかのAIヽツール が統合されたり、業務そのものが 簡略化や自動化される可能性もあ りますO今後のビジネスパーソン には業務に応じたAIヽツールの目 利きができることが求められますO  なお、慣れないうちは、AIは お掃除ロボットと同じで、AI利 用時には準備と後片付けが面倒だ と感じると思いますO AIに適切 な回答を出してもらうプロンプト を考えることや、答えが正しいか どうかを検証することはなかなか の手間ですO実際、私も億劫さを 感じ、AIをあまり使わなくなっ てしまった経験がありますOこの 段階を乗り越えるには、AI利用 を習慣化する必要がありますO  習慣化のテクニックとしてよく 使われるのは、「2分間ルール」 です ATOMIC HABITSU』(日 本語タイトル『複利で伸びる1つ の習慣s』)という書籍で紹介さ れた方法ですが、習慣化で失敗し がちなことはハードルの高い習慣 をいきなり身に着けようとするこ とですo習慣化するために1日2 分間という短時間で良いのでAI に触れることが有効ですo慣れて くれば徐々に時間を伸ばしていっ てくださいo AI利用に慣れれば、 複雑で処理すべき量が多い業務に 対しても、AIを使いこなして短 期間で成果を出せるようになりま すo  なお、Chapter 2 にAIの基礎を 記載しているため、これ以上の詳 細な情報はChapter 2 をご覧くだ さいo  Chapter 1 のAIに関する知識の 最後としては、今後も変化してい くAIにキャッチアップするため のいくつかの情報源をご紹介して おきますo がタッグを組んだ状況での差別化 要因の一つがデータと考えられる からですO  AIによって多量の情報が瞬時 に得られる一方で、ビジネスパー ソンにとって、少なくとも自分の 得意領域については「このデータ が本物かどうか」をかぎ分ける嗅 覚は必要になりますO  私は、前著の『ストーリーでつ かむ!プロジェクトマネジメント の原則』(2022年9月出版)gに てプロジェクトマネジメントに関 して執筆しており、プロジェクト マネジメントについては10年以 上の実践と教育をしてきたバック グラウンドがありますoおかげさ まで、プロジェクトマネジメント 関連の仕事でAIを使っている際 は、AIから生成されたデータが 「これは(プロジェクトマネジメ ントのデファクトスタンダードで ある)PMBOKGGuide 6 版以前 のデータ」、「これはPMBOKG Guide 7 版のデータ」、「これは PMBOKGGuide 6 版以前と7版 が混在したデータ」、「これは PMBOKGGuide以外からのデー タ」という4種類くらいは見分け られますoその上で、調査・検討 しているテーマに対してAIの データが有効かどうかを判断し、 資料作成に活用していますo  なお、AIが生成するデータに ついては、おもしろいレポートが ありますo  2023年5月27囗にオックス フォード大学のIlia Shumailov、 ケンブリッジ大学のZakhar Shumaylov等が発表した「再生の 呪縛:生成されたデータでのト レーニングはモデルを忘却させる (The Curse of Recursion: Training on Generated Data Makes Models Forget)」というレポートによる と、ChatGPTやStable Diffusion など生成AIによって出力された データに対して、さらに生成AI が入力し、出力するというサイク ルを繰り返していくと、何か正し いかわからなくなり、過度に単純 化され、現実とズレが発生しますo このズレが、最終的にはモデルの 崩壊につながる危険性があるとい うものですo  この原因としては、AIは何度 も繰り返される文章を入力・学習 するため、出力も似たような文章 を繰り返す傾向が高くなることが あげられますO生成AIのモデル 崩壊を防ぐには、人間が作成した 情報を正しくインプットすること が必要ですO  このレポートは多くの示唆を含 んでいますO ・自社で生成AIのシステムを作 り上げ、「自社独自のシステム・ データだから」と安心し、自社 AIのデータの再投入を繰り返す と、そのAIシステムは長期的に は使えなくなるリスクが考えられ ますO  一々AIの利活用を進める上では、 AIに投入するデータは人間が作 成したものというルールは作っ ておいた方が良いでしょうoま たAIが関与していないオリジナ ルデータはバックアップを作っ ておくべきという観点は持って おいた方が良いですo ・AIが生成するデータは、多数の データから標準的なもの一一般的 なものを返してきますo  一々ChatGPT、Google Bard、  Notion Al 等に同じ質問をしたこ  とがある方は感じられているか  と思いますが、2023年9月現在、 だいたい同じ答えが返ってきま すoこの本のために、優位性の あるAIを探そうと試してみまし たが、「これがすごい」というの は正直見つけられませんでした (ただし、Bing/Perplexityは参照 元のURLが返ってきますし、 Notion Al はNotion上にそのま ま文章が残るので、生産性は上 げやすいと感じていますo Meta の凵ama2 Chatbotl*は、まだ日 本語対応に時間がかかりそうで、 英語で回答が返ってくることが ありますo Llama2を参考に、グ ローバルのAIツールは、日本語 のデータを学んでいるか、とい う観点でのチェックは必要です)O 一々ビジネスでは標準解/一般解 が欲しい時もあれば、競合との 差別化のため、何らかの特別な 解が欲しい時がありますOこの 特別な解を、AIが作り出すとい うのが難しいという点は、我々 人間一人一人の価値になり得ま すO ・AIで生成したデータが、想定し ていた結果に対して、「あまりに も教科書的過ぎる、一般的な情報 しか書かれていない」と感じた場 合は、今後、それはAIで作られ た可能性がある、という批判的な 思考を持つ必要がありますO  一々AIで生成して欲しいデータが  標準的なものであれば問題はな  いのですが、「本当に欲しいデー  タ、知りたいデータはそもそも  何か」は常に意識する必要があ  りますO  また前述のレポートではありま せんが、時にAIはハルシネー ション(幻覚)竪といって、もっ ともらしい嘘を返すことがありま すO AIの回答の9割があってい ると思うが、なんかあと1割が本 当っぽいような、違うような、と 違和感を覚えることがあれば、八 ルシネーションである可能性があ りますO AIのハルシネーション ヘ対応するには、「これ、そもそ も論理構造から考えておかしくな い? 裏付けるデータはある? 業界や業務のガイドライン・白書 に照らし合わせて妥当だろう か?」といった批判的な思考をす るようにしてくださいO  以上を踏まえていくと、今後は 「体系的で、標準的な情報も特殊 な情報もしっかり載っているオリ ジナルデータ・論文・白書などを しっかり押さえておく」、また 「独自の解を生み出せる人だちと のつながりを持っておく」という ことがAIを活用していく上で重 要となりますO  この対応として、弊社の事例紹 介となりますが、ビジネスにおい て信頼に足るガイドラインや各種 白書などの情報源を一覧化し、い つでもアクセスできるようにして おく、というのも一つの有益なア プローチと考えますO −  '・ ll,・・・冫・i・・・.'-'J二.、.・・ :・・ ・・・ ・- .・ ・、 Ic:.・・・ .・.・ . I・・ ・・.  こ ●冖.・』;・・・』-・・・  :・・.   i・・:・!   I・ 、・f■'「・・ .・・Iごl」・!I・.・ 図1-6 Notionにて菅理して1'るN口lthsandガイドラインIリヌト(一部抽齠  上記の「Norths andガイドライ ンリスト」は、中央省庁や各種業 界団体が提供するガイドラインや レポートをリスト化したもの.コ ンサルタントが、提案書の作成や プロジェクトにおけるコンサル ティングサービスを実施する際、 また報告書を作成する際に客観的 なデータや方法を素早く調査する ために、リストアップし、更新を 続けていますO C適応力  AIによって多量の情報が瞬時 に生成される状況において、それ を俯瞰的・直感的に捉えて、次の 一歩を考えられる適応力が今後重 要となりますO  2000年台初頭の汀革命のころ、 汀業界の技術進化の早さを犬の 成長にたとえたドックイヤーとい う言葉がありました(犬の1年は 人間の7年に相当)O  従来の情報化社会においてはど れだけのデータを蓄積できるか、 価値のあるデータを人がどれだけ 効率的に分析できるかに焦点があ たっていましたが、今後は多量の データをAIが解析する時代にな り、技術進化の早さは汀革命時 よりも加速すると考えられますO  身近な例でいうと、一昔前は新 聞を毎日読んでいれば社会の変化 をつかみ、対応することができま したO  「あの新聞に書いてあった記事読 んだ?」が挨拶になっていた頃が ありましたO しかし、生成AIが 普及を開始したばかりの現在にお いては、新聞だけで必要な情報が 揃うと考えている人はいなくなっ てきているでしょうO  新聞、インターネット、SNS 等を毎日チェックしていても、人 間が一日にニュースへ割ける時間 や処理できるデータ量の制限から、 今後は気づかないうちに新しい技 術・サービスがAIによって生み 出されているという状況は考えら れますO  「自分が気づけない変化が常に起 きている」という前提で未来を考 えれば、突然現れる新しい技術・ サービスなどの環境の変化に応じ て仕事や生活を組み立てていける 適応力が重要となりますO  適応する際は、過去の経験・成 功パターンに捉われず、「目的・ 目標を達成するためには、今ある 状況から何をするのが最善か」を ゼロベースで考える習慣を身に着 ける必要がありますO  適応力を磨いていくために意識 すべきは、素早いフィードバック を得ること、継続的な学習と改善、 自身の幅広いスキル・経験・知識、 対応すべき業務量と自身の処理ス ピードのバランスを適切に保つこ とですO  この観点からも、AIや最新の テクノロジーに関する情報は、定 期的にキャッチアップし、AIに 関心がある同僚や友人と情報交換 するなどで、「今後、どんなこと が起こりえるか」は日ごろからシ ミュレーションしておくことが重 要になってきますO  有名な「生き残る種とは、もっ とも強いものではなく、もっとも 知的なものでもないOもっともよ く変化に適応したものである」と いう言葉は、AIと共存していく 現代の我々にも重要な示唆になる のではないでしょうかO G倫理 一人として正しいか  AIはデータを処理することに 長けていますが、処理内容が人間 の倫理観に合っているかどうかは わかりませんO 2023年の後半に 入っだ今でこそ、生成AIへ倫理 に反する質問をしてもほぼ回答し なくなりましたが、それは生成 AIに学習させた人たちの努力の 賜物です。一方で、人間は倫理的 に正しいかどうかは、その事象が 発生した背景、関係する人や文化 などさまざまな要素を分析して判 断しています。その場その場で複 雑で多面的な要素に基づき、何か 正しいかを判断する力は人間の方 が優れていますO  以前、ハーバード大学の人気講 師であるマイケル・サンデル教授 の『これからの「正義」の話をし よう慂』がベストセラーになりま したが、同著で問われたような 「1人を殺せば5人が助かるOあ なたはその1人を殺すべきか?」 という問いに、自分自身の答えを 出していける力が必要となりますO  ビジネスにおいて、「お客様の ために」という言葉はよく使われ ますが、それはお客様の表情・ 声・姿勢・発言内容等から観察し、 相手の立場になって何かもっとも 良い選択肢かを考える高度で柔軟 な思考ですO また相手だけではな く、近江商人のように、「売り手 良し・買い手良し・世間良し」と 社会も含めた観点で考えられると いうことは、人間としての重要な スキルであり、責任となり得ますO  今後AIは人間の意思決定に影 響を与えていくことは確実ですO 「意思決定」は、個人や集団があ る目標を達成するために、複数の 選択肢の中から一つを選択するこ とになりますOその選択では個人 の価値観がよりどころとなります が、集団の意思決定では、必ずし も関係者全員の価値観が一致する とは限りませんO関係者内で選択 肢に関する意見が分かれたとき、 その一致を図るプロセスが「合意 形成」であり、人間は日々さまざ まな場面で意思決定を行っていま すO  クリティカルな場面での意思決 定ミスは個人や集団の状況を悪化 させ、その存続・生存さえも危う くしますOたとえば、企業の経営 における意思決定ミスは、企業の 業績悪化・競争力低下を招きますO 国の政策決定・制度設計における 意思決定ミスは、国の経済停滞や 国民の生活悪化につながりますO 個人の意思決定における判断スキ ル・熟慮の不足は、その個人の生 活におけるさまざまなリスクを誘 発するだけでなく、世論形成・投 票などにおける集団浅慮という形 で、社会の方向性さえも左右する ことがありますO  AIの進歩により、従来以上に 情報の拡散スピードが速くなり、 膨大な情報があふれ、影響を及ぼ し合う範囲が広がっていますO意 思決定自体の難しさが増している ことに加えて、意思決定の際に 「よりどころ」となる価値観の多 様化によって、合意形成の難しさ も増していますO個人・集団・社 会の価値観は、国や民族の歴史 観・教育システム・法制度、個人 の体験や接した文化・宗教などに よって異なったものになり、同調 圧力や対立も生じますO社会の中 で共有されていることが望ましい 正邪・善悪の規範たる道徳につい ても、価値観の多様化が進む中で、 現代的な揺らぎが生じてきている ため、AIを使用する上では倫理 は大変重要な要素となりますO ・データの著作権  生成AIを扱う際に必要な観点 として、「この情報はそもそも誰 のものか」というものがありますO 生成AIの回答は、インターネッ ト等が情報源になっていることが ありますO 2023年8月には、 ニュース系のサイトが独自開発し た生成AIで作成した記事が、他 報道機関の記事から剽窃・盗用の 指摘を受けて、謝罪することに なった事例がありましたO海外で は、全米作家協会が、生成AIの 主要企業に向けて「トレーニング に無断で著作を使用しないでくだ さい」との公開書簡を発表しまし たO  著作権問題を受けて、アメリカ では2023年7月に、ハイテン大 統領によって「AI生成動画の識 別対策開発に向けた汀企業合意」 が報じられていますO  また、厳密には著作権問題では なく不正コピー対策ですが、AI が生成したコンテンツとオリジナ ルのコンテンツを見分けるための 手段として、ChatGPTが書いた レポートを見抜くための「コピベ ルナーV6」というツールをアン ク社が2023年中に発売予定であ ることが報じられていますo  著作権問題は、AIを利用する 上で倫理的に重要な観点であり、 把握しておいてくださいo ・AIの倫理的な発展  将来を見据えると、AIの倫理 的な発展をコントロールするとい う観点七重要ですo AIは、私た ちの生活をより便利で、より豊か にしてくれる可能性を秘めていま すO しかし、AIが悪用され、私 たちに害を及ぼす可能性もありま すOそのため、AIをコントロー ルするためのガイドラインや規制 を整備することが重要であり、次 のような対策が考えられますO yAIの開発や使用に倫理的な基  準を定める。 yAIが安全かつ信頼性を保てる  よう、開発プロセスを規制する。 yAIが悪用されないように、セ  キュリティ対策を講じる。 yAIが人間のコントロール下に あることを保証する。  国内でのガイドラインや規制の 取り組み例としては、経済産業省 が2022年に「AI原則実践のため のガバナンス・ガイドライン」を 発表していますO  AIの発展が多くの人に影響を 与える以上、政府の取り組みを チェックし、必要に応じて意見を 発信していくということも視野に 入れておいた方が良いでしょうO  以上をまとめると、頭脳を持つ 人間とAIを比較した時、人間ら しくあるためにはどういう倫理感 を持つべきか、またAIを使って いく上では元となる情報を作って くれた方々への感謝や配慮をどの ようにするべきかが、より高いレ ベルで求められる世界になってき ていますO AI思考を一言でいうと  AI思考を一言で表現すると、 「脳のレバレッジ化」ですO AIと いう別の脳が利用できる環境が 整ってきているおかげで人間の処 理スピードが早くなり、多面的に ものごとを分析できるようになっ てきていますO  AI思考によって、AIを上手に 使うことができれば、「同僚との アイデア出しのためのミーティン グ」、「上司による資料のチェッ ク」、「インターネット上での調 査」、「図や画像の作成」等の労力 がゼロになるとまでは言いません が、簡略化されることは確かで しょうO AIを使っていない人か ら見ると、加速された別世界を生 きているようにすら感じられると 思いますO  それでも、何か正しいか、どう いったパフォーマンスを出すべき かを判断するのは人間ですO  AI思考の本質は、「人間がAI のように考える」ということでは なく、「より人間らしい思考力を 向上させる」ことにありますO AI思考が長期的に目指す もの  AI思考の実践を習慣化するこ とで、得られる長期的なメリット は個人のパフォーマンスの改善と 向上ですO  AIを使うことで、自身の思考 パターンとは異なる観点の回答や 文献が見つかることがありますO それらの新しい発見は、自身の思 考方法にないため、理解やキャッ チアップするのは億劫さを伴うも のですo しかし、「これは本当に 正しいか?」と考え、データを調 査して裏付けを取る過程で、知識 や思考の幅を広げられることが期 待できますo  また、AIは疲れることを知り ませんし、相手が人間なら嫌がる ような深掘りにも付き合ってくれ ますo  私はSpeakというAIのアプリ で英会話の勉強をしていますが、 AIを相手に英語の学習をすると、 繰り返し同じ失敗をしても、AI は何度も指摘してくれることが肌 感としてよくわかりますo人間の 先生を相手にする場合、「また同 じ失敗しちやって申し訳ないな」 と感じ、学習から離れてしまうこ とがありましたが、AIが相手な らそれはありませんO  目の前に直面している課題を解 決することも大事ですが、AIを 継続的に利用することで、より本 質的な理解に至り、自身のパ フォーマンスを改善させることが 期待できますO  将棋では史上初の全八冠制覇を 遂げた藤井聡太さんがAIを活用 してきたことが有名ですが、現在 は我々ビジネスパーソンでも同様 の環境が整いつつありますO  一方、AIは簡単に答えを返し てくれる非常に便利なツールであ ることがネガティブに働く場合も 考えられますO AIの操作に慣れ、 自分で考える前に「とりあえず AIに聞く」が習慣化してしまう と、自分自身で考える力を減退さ せる恐れがあるのですO  重要なことは、批判的な視点を 持ち続けること、自分の頭で考え 続けるということですO「自分で 考えてからAIに聞く」のと「AI に聞いてから自分で考える」のは、 本人にしか分からない小さな違い ですO悪い習慣が身についてしま うと、今後のAI社会において、 個々人のパフォーマンスに長期的 に大きな差をもたらすリスクがあ ることは注意してくださいO ではAIとは何か  AI思考を理解し、実践するた めには、AIに何かできて、何か できないか、また利用する際の特 徴を把握する必要がありますO AI思考の5要素のうち、従来の 思考方法との大きな違いは、「AI に関する知識・理解」ですo  このため、Chapter 2ではAIそ のものについてご紹介し、それ以 降、Chapter 3 でAIの実装方法、 Chapter 4にて国内におけるAIの 実践事例、Chapter 5 にてより具 体的な考え方や手順を示すことが できる弊社のAI思考の実践事例 と続きますo   AIの基礎知識 Chapter →(  すでに「AI」という単語は頻 繁に使つていますが、みなさんの 考えている「AI」と本書の「AI」 は果たして同じでしょうか? 正 しく理解できているでしょうか? Chapter 2では「AI思考」を考え る上で必要となる基礎知識に関し て整理してみようと思いますo AIの歴史と基本概念  AIとはArtificial Intelligence の 略で、日本語では「人工知能」と 訳すことが一般的ですo AI自体 は1950年代から研究が進み、そ の過程ではこれまで3度のブーム と冬の時代が繰り返されていますo そして、今、まさに第四次AI ブームが訪れようとしているとこ ろですo  ここでは「第四次AIブーム」 と表現していますが、第四次ブー ムの定義は曖昧ですo Chapter 2 では2022年後半から始まった ChatGPTを象徴とする現在の生 成AIを取り巻く状況を「第三次 ブーム」と区別するため、[第四 匸レ 19SD年代 _ 、知恨ベース 千千  、 ]: よ言言言言゛ ピューターによる「推論」や「探 索」が可能となり、特定の問題に 対して解を提示できるようになっ たことがブームの要因ですO冷戦 下の米国は、自然言語処理による 機械翻訳に注力しましたO しかし、 当時のAIでは、迷路の解き方や 定理の証明のような単純な仮説の 問題を扱うことはできても、さま ざまな要因が絡み合っているよう な現実社会の課題を解くことはで きませんでしたO結果、AIブー ムは起きたものの、間もなく冬の 時代を迎えましたO 第二次AIブーム  第二次AIブームは、1980年代 ですO「知識(コンピューターが 推論するために必要なさまざまな 情報を、コンピューターが認識で きる形で記述したもの)」を与え ることでAIが実用可能な水準に 達し、多数のエキスパートシステ ム(専門分野の知識を取り込んだ 上で推論することで、その分野の 専門家のように振る舞うプログラ ム)が生み出されましたO日本で は、政府による「第五世代コン ピューター」と名付けられた大型 プロジェクトが推進されました。  しかし、当時はコンピューター が必要な情報を自ら収集して蓄積 することはできなかったため、必 要となるすべての情報について、 人がコンピューターにとって理解 できるように内容を記述する必要 がありましたO世にある膨大な情 報すべてを、コンピューターが理 解できるように記述して用意する ことは困難なため、実際に活用可 能な知識量は特定の領域に限定す る必要がありましたOこうした限 界から、1995年頃から再び冬の 時代を迎えましたO 第三次AIブーム  第三次AIブームは、2000年代 から最近まで続いています。まず、 「ビッグデータ」と呼ばれている ような大量のデータを用いること でAI自身が知識を獲得する「機 械学習」が実用化されましたO次 いで知識を定義する要素(特徴 量)をAIが自ら習得するディー プラーニング(深層学習や特徴表 現学習とも呼ばれる)が登場した ことが、ブームの背景にありますO  私たちはAIという言葉を聞く と人間の代わりに働いてくれるも のを期待することが多いと思いま すが、実際には特定の問題を解き、 一定レベルの専門家の代わりを担 うことはできても、現実社会の問 題へ対応し、解決することは困難 ですO仮に実現しようとした場合 には、高い技術、費用と大量のコ ンピューターリソースが必要とな りますO  第三次のブームが始まった当初 は日常的にビジネスでAIを使用 することは難しく、2000年を超 えたあたりからインターネットや グラウトなどインフラ面が整備・ 進歩したことで、ようやく一部の ビジネスに利用できるようになっ てきましたO  ところが、第四次AIブームで は状況が大きく変わろうとしてい ますOこれをご理解いただくため、 第四次AIブームに関連のあるAI の技術を詳細に見ていきましょうO \2 AIの主要  垂\ 主要なAIの技術と種類 AIを語る上ではさまざまな専 門用語が出てきますOここでは、 これらの用語とその概念を簡単に まとめますO 最初にAIを分類しますO一言 でAIと言っても、実際には使用 する技術により、大きく次の2つ に分類されますO 機械学習(マシンラーニング)  データを解析し、そのデータか ら学習した内容を応用して判断を 下すアルゴリズムです。機械学習 には、複雑な計算とコーディング が大量に含まれていますO 深層学習(ディープラーニン グ)  人間が結論を導くのと同様の論 理構造を用いて、データを絶えず 分析するよう設計されたアルゴリ ズムです。これを実現するために、 ディープラーニングのアプリケー ションでは、人工の神経ネット ワーク(ニューラルネットワー ク)と呼ばれる階層構造のアルゴ リズムを使用しますO人エニュー ラルネットワークの設計は、人間 の脳の神経ネットワーク(ニュー ラルネットワーク)をヒントにし たもので、標準的な機械学習モデ ルと比べて学習プロセスの精度が はるかに高くなりますO    〔人工知能yArtifCial Intelligence〕    (機械学習ノMI?1neLearning)    図2-2 AI・機械学習・ディープラーニングの関係  基本的な機械学習モデルの場合、 与えられた機能が何であるかによ らず、精度は徐々に向上していく ものの、人間による一定の指示が 必要です。機械学習のAIアルゴ リズムが不正確な応答を返してき た場合、エンジニアが調整を行う 必要が出てきます。一方、ティー プラーニングモデルの場合は、ア ルゴリズムが自分自身のニューラ ルネットワークを使用して、応答 が正確かどうかを自分で判断しま すOこの部分が大きな違いとなり ます。  ここでまた新たな用語として 「ニューラルネットワーク」が出 てきましたので、簡単に説明する と次のようになりますO jiの擴造      ニュートラルネクトワーク蜀構着  ペダル碵   ……… 1=ダ     入力屬 閹れ屬 出力屬 ヤ 采 図2-3ニューラルネ?トワータのイメージ ぷに倥に广ク(” 二謡二心√ズ。 噐昌コヅツ六 経回路網(ネットワーク)を人工 ニューロンという数式的なモデル で表現したものですO  ニューラルネットワークの概念 自体は第一次AIブームからあり、 私たちの日常生活のさまざまな シーンで利用されていますOたと えば、インターネット上のコメン ト解析や初期の自動翻訳、株価予 想、自動運転システム、医療分野、 画像解析などがあげられますO   入力厦 中間層(隠れ厦) 世力層 皿粐卜、‥ヽ/ =⇒ 玩]灘  ニュートラルネ・yトワーク  ●二よートヲルネ・yトワークのうち、中間層(隠れ層)が複数の層となっているものを  用いるものが皿層学習 図2-4ディープラーニングとニューラルネットワークの関係 上士匸戦 白二子 で、データに含まれる特徴を段階 的により深く学習することが可能 になりますO多層構造のニューラ ルネットワークに大量の画像、テ キスト、音声データなどを入力す ることで、コンピューターのモデ ルはデータに含まれる特徴を各層 で自動的に学習しますO  この構造と学習の手法がディー プラーニング特有であり、これに よリディープラーニングのモデル は極めて高い精度を誇り、時には 人間の認識精度を超えることもあ りますO  ディープラーニングは当初、画 像認識で大きな成果を上げ、その 後、画像と音声分野で人間を超え る精度を達成しましたo自然言語 処理(NLP : Natural Language Processing)においても急激に精 度が向上し、今では人間を超える レベルになっていますo  ディープラーニングはニューラ ルネットワークを進化させたもの ですので利用分野は同じですo  ここで、図2-2 AI ・ 機械学 習・ディープラーニングの関係に 「ニューラルネットワーク」を加 えてみると下記のようになりますo    (人工知能/AniffMallnteVgence)     (機械学習/M??MneLearning)     (J謚れ忽にユ   o 図2-5第四次AIブームを理解するための技価  ここまでが第三次AIブームと 呼ばれていた時期に、よく見聞き した用語です。新聞やTV等の各 種メディアなどを通じて、こられ の用語を聞いたことはあるかと思 いますが、整理してみるとAIは 第一次ブームからの技術の進化の 積み重ねであることがわかると思 います。さて、いよいよここから 「第四次AIブーム」につながる 技術が登場してきます。 トランスフォーマー  ニューラルネットワーク⇒ ディープラーニングと進化が進む 中で今のAIブームのカギとなる 技術「トランスフォーマー」が提 案されます。トランスフォーマー はディープラーニングの一種です。  トランスフォーマーの特徴は 「処理が速い! 精度も高い! しかも汎月陸が高くて何にでも使 える!」モデルですO  技術的な詳細は省きますが、革 新的な部分として「従来の順次処 理から、並列処理を可能にしたこ と」が挙げられますOそれまでの モデルでは順次処理、つまり単語 を一つひとつ処理する必要があり ましたO  一方で、トランスフォーマーは 並列処理、つまり複数の処理を同 時に行うことが可能になりましたO  この並列化によって、同時に複 数のタスクを処理することで、一 つひとつのタスクの処理時間を短 縮できるようになりました。 LLM(大規模言語モデルノ Large Language Model)  大規模言語モデルは、膨大な データの集まり(データセットと 言います)から得た知識に基づい て、テキストやその他のコンテン ツを認識、要約、翻訳、予測、生 成できるディープラーニングです。  大規模言語モデルは、トランス フォーマーモデルのもっとも成功 した応用例の一つとなりますo 基盤モデル(Foundation Model)  トランスフォーマー、大規模言 語モデルを紹介してきましたが、 現在の生成AIが文字の処理だけ でないことは皆さんもご存じだと 思います。たとえば、画像処理、 音声処理を行う生成AIもありま す。これらを総称した用語として 「基盤モデル」があります。  基盤モデルは、一般的には (AIへの)教師無しの学習にて、 大量の生データでトレーニングさ れたAIニューラルネットワーク のことで、幅広いタスクを達成で きますO  「基盤モデル」が提唱されたのは 2021年8月に米国スタンフォー ド大学の人間中心人工知能研究所 の基盤モデル研究センターが発表 した「基盤モデルの可能性とリス クについて!Z」です。 2021年な ので最近の技術であることがわか りますよねO    機械学習     深層学習     甚盤モデル 亅i匸 ~の均質化 ’`゜    ・ 図2-6生成AIの出現と均質化  基盤モデルには、以下が必要と なります。 一大量のデータで学習する ・タスク毎にデータセットを用  意する  ・データセットに対してラベリ  ングを行う ・適切なアーキテクチャーのモ  デルを設計・訓練する  この作業のため、開発・運用コ ストが制約となるケースがありま す。  また、基盤モデルの利用目的に 特化した設計となるため、目的外 のタスクに対しては性能が著しく 悪いことが課題となります。 -        四 m。。     ご質問/回曹融 回・・_ Iべ 感情分析 ‰ ?スピーチ   49 ̄二゛グ基盤゛デ4 適合g 情報の紬出牋 17てヨ ̄     → 翳jm − 匸lU            −11 図2-7雇盤モデルのイメージ  ただし、大量のデータを用いた 事前学習と利用目的へのファイン チューニングを行うことができれ ば、幅広いタスクヘ適応できるこ とが基盤モデルの優れている点と なります。 二足二次匸l二 図のような関係性になりますO    言言    二禦ご   四1o 図2・8第四次AIブーム理解に必要な主要なAIの技価と種類 土工こ言言匸 ある技術の改良であるということ がわかると思います。世間では 「革命」、「発明」のような取り扱 いを受けることが多いAIブーム も、その基本的な考え方は以前か らある技術の延長線上にあるとい うことです。では、何か変わった のかを含めて次から生成AIに関 わる説明をします。 生成AIとは  さっそく生成AIの説明に進み だいところですが、その前段階が あります。 大規模言語モデル(Large Language Model /LLM)  大規模言語モデルは基盤モデル の一つであり、言語に特化した生 成AIです。第四次AIブームの きっかけとなったChatGPTは LLMに分類できます。  大規模言語モデルは、大量の データセットとディープラーニン グ技術を用いて構築されていますo 一般的には、特定のタスクでト レーニングする「ファインチュー ニング」と呼ばれる手法を用いて、 テキスト分類・生成や感情分析、 文章要約、質問応答といったさま ざまな自然言語処理タスクに適応 させます。  大規模言語モデルでは、従来の 自然言語モデルと比べて「計算量 (コンピューターが処理する仕事 量)」、「データ量(入力された情 報量)」、「パラメーター数 (ディープラーニング技術に特有 の係数の集合体)」という3つの 要素を巨大化させている点が特徴 です。 ラペル(Label)  基盤モデルを語る際には「ラベ ル」という用語が出てきますo従 来のAIではデータに対して人間 が正解のラベルを付けることが必 要でしたが、基盤モデルでは正解 を設定しませんo従来のAIでは このラベル付けが手間でしたo  基盤モデルの特徴の一つとして ラベル付けを行う「事前学習」が あり「教師無しの学習」となって いますoこれを実現するためは自 己教師あり学習(Self-Supervised Learning / SSL)という手法が使 われていますので、簡単に触れて おきますo 《自己教師あり学習(Self- Supervised Learning / SSL)》  SSLとは名前の通り自分で教師 を用意するような手法で、データ 自身から独自のラベルを機械的に 作り、表現を学ばせるようなタス クです。なので、人間によるラベ ルは用いませんo従来のAIでは 人間が教師となリラベル付け(教 師学習)を行うことで正解を学ぶ ことが必要でした。 ファインチューニング(Fine Tuning)  基盤モデルでは「ファイン チューニング」で「ラベル」を付 けますOファインチューニングは 目的、用途別にラベルを付けるこ とで、基盤モデルを用途に合った AIモデルとして応用することを 可能としますOさらにその特徴と して、従来のAIに比べてラベル 付きデータの必要量が大幅に少な くて済むことが大きな特徴ですO  AIに詳しい方ならばここまで の説明でも十分かもしれませんが、 一般の方向けに説明すると次のよ うになりますO  すでにお伝えした通り、基盤モ デルでは元々大量のデータを「事 前学習」していますo しかし、こ の事前学習だけでは、特定のタス クや用途に完全に適応することは 難しいことが多く、微調整を行う ことを「ファインチューニング」 と言いますo  たとえばChatGPTに作っても らった感情分析のタスク用にファ インチューニングするためのデー タセットサンプルをJSON形式で 表現した例は次のようになりますo  [ {"text": " このレストランの料理は 美味しいです。∵・label":1'ポジ ティブ"}, {"text": " 彼の演技は素晴らし いo∵'label":I'ポジティブ・1}, {"text": " 景色がとてもきれいだっ た。∵・label・':・・ポジティブ・1}, {"text": " この商品は全然ダメだっ た。∵・label・':・・ネガティブ・1}, {"text": " サービスがとても悪 い。∵'label": I' ネガティブ・1}, {"text": " 電車が遅れて困った。 ・・, "label":¨ネガティブ1'}  ]  具体的な例がわかれば、難しい ものではないということがお分か りいただけたと思いますo Open AIのマニュアルによると最低で も10個のデータセットが必要で 50から100個あれば明らかに改 善がみられるとあります。もちろ ん、改善はケースバイケースにな り、場合によっては数千から数万 必要になることもあるとは思いま すが、従来と比較すると大幅に少 ないデータ量でチューニングが行 えることが特徴です。 パラメーター(Parameter)  ニューラルネットワークのパ ワーと複雑さを示す重要な指標が パラメーターですOパラメーター 数が多いほどモデルの性能が良い とされていますが、多いことで増 える課題もありますOパラメー ターの詳細を説明するためには技 術的に深い知識、理解が必要であ るため、本書では詳細には触れな いようにしますO  基盤モデルを含むディープラー ニングでは、脳の神経細胞を数式 に置き換えていますが、数式の中 の定数をパラメーターと呼んでい ますOもっと単純に言えば「変 数」であり「複雑さ」を表すもの とご理解ください。そして,この パラメーター数を増やすことが性 能を高める重要な要素であるとさ れ,「スケーリング則」と言われ ます。   ”                          , ・・   |    蒿; ,………ノ………I……幃……・li:゛゛   1 1e° 。。。。,。。,………1………   llo l¨1 。。ダベi l・応「   ?   。……j゛L。。,‘i i&)   jl 了 !1.5BJ   ・  。/。/ BERT-Large   C.l   lヨ10MI      ELMo    20二8 2019 2C2C 20212022  図2・ 9 パラメーター磴の遷移  この説明も一般の方には難しく てわかりにくいですよねO文章生 成AIを例にとると、学習データ に含まれる単語、フレーズの出現 頻度、単語間の関連性、文法など の情報がパラメーターとなりますO 新しい文章を生成する際には、こ れらのパラメーターをもとに単語 の選択や文の構造を決定しますO  これでも難しければ、パラメー ターはAIが学んだ知識やルール を保存しておく「メモ帳」と考え てくださいOたとえば、絵を描く AIでは、色の使い方や形の描き 方などのルールが「メモ帳」に書 き留められています。新しい絵を 描くとき、AIはこの「メモ帳」 を見ながら、どんな色を使ってど んな形を描くか決めますo  私たちの日常生活でもこまめに メモを取り、活用できる人はさま ざまな状況に抜け漏れなく柔軟に 対応できることと同じで、生成 AIではパラメーターの多さが性 能を高める際の指標の一つとなっ ています。 スケーリング則(Scaling Laws)  トランスフォーマーの性能は、 パラメーター数(=モデルのサイ ズ)、データセットのサイズ、ト レーニングに使用される計算 (Compute)量が増えるにつれて、 損失が「べき乗則」にしたがって 減少する、という法則です。  きわめて単純に表現するならば、 時間と手間をかければかけるほど、 より高性能になるという法則です。  スケーリング則の有効範囲は、 現時点で上限が見当たらず、性能 に限界が存在しない可能性があり ます。  ;     '。'。・べ  .I-IQ15,s・la二,l ・二5 *・≪・  l-MJ・1コ・111111`  j\レ\匸\  i。ン‘I,・;',:,"二……i,I。・………。 N." 。。。。。,j?こ。。,。, ゛豐冖   ,??n  さて,ここまでの情報で「デー タセットのサイズ」,「パラメー ター数」,「計算量」を増やすこと により,性能向上が得られるとい うことをご理解いただけたと思い ます。  各基盤モデルの計算量を調査し た論文がありましたので図2-11 に提示していますが、非常に多く の計算機資源を使用していること がわかると思いますO  一説によると、1,750億パラ メーターのGPT-3のトレーニン グのために、15億円(開発費5 億円、人件費10億円)と355年 (GPU一つで実行した場合)が必 要になるそうですj咀。  ::−‥‥。、I It. I I1 111  /毀多゛/7/゛夕%/ろヅyy 図2-11轟輿モデルの鏈算量 実際のデータサイズとデータ  スケーリング則によれば、デー タサイズとパラメーター数が精度 を左右するということですが、実 際のデータ数が公開された論文な どを集めてみると次のようになり ました。  ,バージョン リリース時期 パラメーター数  lll練データ  GPT-1 2G18年う丁  1価L,顎0万   y・5CB  GPT-3 202Cイ6耳  1.7101-      門詐夕  j l    ,゛1 ゛|プ  ゛  GPTのパラメーター数とデー タ数は,バージョンが変わるごと に増加していることが確認できま したOでは, GPT以外はどうで しょうか? 論文,インターネッ ト上にいくつかまとめたデータが ありましたので参考までに掲載し ておきます。  モデル パラメーター数 AIチップ ;;;7ぼ7  GPT-3  1,7印俗  V100   力3%  G叩・her  2,800恰  匍96TPUG  ヨ2,5% 二千  PaLM  5,蜀O価  61佃TP1卜4  顏2%  機関    こコ サイズ(TB)  リ;ご  備考  ・,・・・,係ご , 回 ⊃祐言に  OpenAI GPT二  心  20,0    巧祐广O         JAEによらI沮乍さ  TTI I ftefiredWeb 232  50 れたCCのみの万一         夕でタト  DeepMirid  ヅブ 2C  50 レト匚白書よリ @]  Google ir m?p" 1?6     78 fi.KMA LSより ※2023年量入代のデータセy卜旦垓より。 図2-12 GPT以外を含めたパラメータ数やデータセットの遥い  ここでまた新しい用語「GPU」 が出てきましたので簡単に説明し ておきます。 GPU (Graphics Processing Unit)  トランスフォーマーで並列処理 が可能になったことでGPUへの 注目度が一気に上がりました。多 くの方はCPU (Central Processing Unit)という単語をご存じかと思 いますが、GPUははじめて聞い た方もいらっしやると思います。 GPUはその名の通り元々は画像 処理をするためのもので、パソコ ンのグラフィックボードなどで使 用されていますoゲームや動画処 理が好きな方はGPUをご存じか と思います。  トランスフォーマーは、元々、 並列処理が得意であったGPUを 使用することで大幅な効率化、ス ピードアップを実現していますO  GPUをグラフィック以外に活 用することはトランスフォーマー がはじめてではなく、以前から スーパーコンピューターの世界で は利用されていますO また、仮想 通貨のマイニングブームの際には GPUが不足した時期もありまし たO このGPUを今回はAIに活 用したのですO  みなさんが生成AIを活用する 際にはこのGPUを利用すること になるはずですo SaaSタイプの AIの利用時にはあまり意識する ことはないと思いますが、オンプ レミスなどで自社専用AI環境を 使用する際にはこのGPUの選 択・調達は大きな課題になりますo また、GPUは消費電力・発熱量 が大きく、従来のサーバー環境に は簡単に導入できない場合もあり ますので、物理環境の設計が必要 になる場合がありますo  ここまで、データサイズ、パラ メーター数と計算機資源の話題に ついて議論してきましたが、もう 一つ重要なものとして「データ セット」があります。 データセットの中身  データセットとは、AIが学習 を行う際に必要なデータのことで す。大規模言語モデルで使用され ているデータセットのいくつかは 論文中に公開されています。たと えばGPT-3はインターネット上 でのデータを収集したもの (Common Crawl)、ウェブ上のテ キスト、書籍、Wikipediaなどの 膨大な量のウェブテキストでト レーニングされています(図 2-13)0  Dalasd            言卜こお飛ご言ご飛ご  にIにじ・I゛11(¨11cIcj:' 4,1,クJ111,j:;1 宗I   町  ≒ふ   淵江 回   ヅ 図2-13 GPT-3の学習データセット  ここまでの基盤モデルの紹介を 読み進めるとデータ量とパラメー ター数が多ければ多いほど高性能 と理解されている方もたくさんい らっしやると思いますし,前述の 「スケーリング則」にも適合しま す。しかし,実際には必ずしもそ うではありませんo ChatGPTの 発表後、さまざまな企業がデータ 量とパラメーター数を競うように 増やしていますが、利用してみる と必ずしもこれらだけでは高評価 につなかっていないのが実態ですo そういう意味では基盤モデルはま だまだ発展途上の技術であると言 えますo  スタンフォード大学とカリフォ ルニア大学の研究チームによる論 文旭によると大規模言語モデル (GPT-3.5とGPT-4)の性能が短 期間で大きく変わる例が報告され ています(図2-15)0 濫癬手 図2-14基盤モデルと学習データセット      − −    1  1言  1 1  1二  I  ユ爨●只襴……エ,I,l。●11・。髑I    AMuraey 蚫11111s lisltl sglllり 枷-・l ・・sih   図    Q;lliN771s■l●-・冖111dls●sll●●ild●-l-●乱IIIsil・ぽIII汕「,  二回諭,回鼠皀至,弓i巨潅芸I’    4●●-,l●II・-四・1」1仙・-,-|-・●ln・a・1.1コ,g-IIこ,。・・-●・IIx・●M19・・I・●1●■|・xII●・:11,--恥1・ ●    ゜−S°兼二二二  ……●・   向   苦節朧朧          苔刪戸回目弓I  図2-15畤問とともに変化するGPT-3.5とGPT-4の正確性  この例では図(a)に示されて いるように, GPT-4の正確性 (Accuracy)は84% (3月)から 51% (6月)へと大幅に低下し, GPT-3.5は50% (3月)から 76% (6月)へ改善しています。 また,右図(b)に示されている ように、GPT-4の回答は非常に簡 潔になっています。生成される平 均的な文字数は638文字(3月) から3.9文字(6月)へと大幅に 減少しています。一方で、 GPT-3.5の回答の文字数は22% 増加しています。  この報告では、「GPT-3.5と GPT-4という同一の大規模言語モ デルでも、いつ、どのようにアッ プデートがあるか分からないため、 挙動を継続的に監視し続ける必要 がある。」と結論付けています。 生成Al (Generative AI)  生成AIは、トランスフォー マー、大規模言語モデル、拡散モ デル、その他のニューラルネット ワークの総称で、テキスト、画像、 音楽、ソフトウェアなどを生成で きますo生成AIはAIが自ら答 えを探して学習する「ディープ ラーニング(深層学習)」を用い て構築されたモデルであり、AI の中では比較的新しく生まれたモ デルです。そして「AIが人間の ようにクリエイティブな成果物を 生み出せる」点が従来のAIとは 異なっています。生成AIの基本 的な使い方としては次のように なっています。 ・テキスト生成Al : テキスト  (プ囗ンプト:prompt)入力 ・画像生成Al : 画像入力 一文字起こし生成Al : 音声入力  テキスト生成AIにおいては、 AIアプリケーション上で要望や 質問などのプロンプトを記述して 送信することで、AIが入力され た内容を解析し、適切な答えを返 しますo  画像生成AIには、テキスト生 成AIのようにプロンプトをもと に画像を生成するものや、学習元 になる画像をAIヽツールに入力す ることで、入力された画像をAI が学習し、それらの画像の特徴を 持つたまったく新しい画像を生成 するものがあります。 対話型Al  生成AIの一分野であるLLM に「対話型」機能を追加したもの を、「対話型AI」と考えることが できます。今回のAIブームの火 付け役となったChatGPTはGPT に対話型ユーザーインターフェイ スを追加したものですO  ここまでで、生成AIが実現で きた主な技術的要素が見えてきま したO生成AIを実現できるよう になった理由は、次の3つを挙げ ることができますO 生成AI実現に寄与した技術 @計算能力の向上(CPU、GPU、  メモリ) Aインターネットの利便性とイ  ンターネット上の膨大なデータ Bグラウトコンピューティング  による巨大な計算機資源  AIとは直接的に関係ないと思 われるような技術かもしれません が、汀技術の進歩が今日の生成 AI実現の背後にはあるというこ とを知っておいてくださいO  さて、これでようやく生成AI を構成する要素が説明できました ので、改めて、第四次AIブーム について考えてみますO \3 AI活用の  ≠サ ビジネスとAl  ここまでAIの歴史、技術の紹 介をしてきましたが、なぜ、 ChatGPTを始めとした生成AIが ビジネス分野で注目を浴びている のでしょうか?AI自体はAIの 歴史でも紹介した通り、いまから 約70年前の1950年代後半からあ りますし、過去何度もブームが来 ています。そして実際にビジネス 分野でも活用されてきています。  現在、注目を浴びる理由は、以 下があると考えています。 理由@:飛躍的に使い勝手がよく なり、エンジニアのものから誰で も使えるものになった 理由F:インフラ面の整備が進み、 誰でもすぐに使用できるように なった 理由B:人間が期待するレベルに 近い回答ができるようになった  ここからはそれぞれの理由に関 して考えてみますO 理由@:飛躍的に使い勝手がよく なり、エンジニアのものから誰で も使えるものになった  従来のAIは「学習」させるこ とが一つの課題でしたOこの学習 をさせるためにはエンジニアが必 要となり、企業は多くのエンジニ アの確保と学習のためのデータを 用意し、学習させるための時間、 リソースが必要となっていましたO しかし、今回の生成AIブームで は「基盤モデル」という新しい考 え方により「事前学習」したAI があらかじめ用意されていますo 理由A:インフラ面の整備が進み、 誰でもすぐに使用できるように なった  仮にエンジニアが確保できたと しても実際に学習させるためには 巨大なコンピューターリソースが 必要となりますoたとえばChat GPTのもとになったGPT- 3では パラメーター数1,750億、学習 データ量は570GBですが、この 規模のデータを一企業の業務のた めに収集することは、データ量の 面からも、コストの面からも実現 不可能です。しかし、インター ネットやグラウト環境の進歩によ り、一般企業でも巨大なコン ピューターリソースを導入するこ となく、ネットワークを介してす ぐに利用できるようになりました。 実際、ChatGPTは無料で利用で きますし、有償プランである 「ChatGPT Plus」でも一人当たり 月額20ドルという価格で利用で きます。 理由B:人間が期待するレベルに 近い回答ができるようになった  ChatGPTは対話型UIを提供し、 従来の大規模言語モデルよりも高 度な会話(チャット)が可能とな りましたO専門知識、技術を用い ることなく、自然言語による会話 形式でAIを使用できるようにな り、その回答レベルもまるで人間 と会話しているかのような自然な 文章を生成できていますO  まとめて考えてみると基盤モデ ルという技術の進歩も大切ですが 「事前学習」という仕組みが、AI を利用する立場からすると非常に 便利ですO今回のAIブームの大 きな理由は、「グラウト」という 巨大なコンピューターリソースが 簡単に利用できる環境の変化と、 「対話型」というユーザーイン ターフェイスによりAI利用が身 近になったことだと考えていますO  ここまで環境が用意されたこと で、活用のアイデアはどんどん広 がります。従来は特定のビジネス 用途、規模でなければ導入自体を 断念せざるを得なかったAIの ハードルが一気に下がったためで すO  現在、多くの企業で導入・検討 が進んでいるバックオフィスや日 常業務でのAI利用などは、その 典型的な例であると思いますOた とえば議事録作成、要約、翻訳な どにAIを利用するアイデアは何 十年も前からあり、実際に開発が 行われていましたが、人的、時間 的、金銭的な側面から実際に導入 されることはほとんどありません でしたO しかし、今回は違いますO AI技術の進歩だけでなく、イン フラ面の進歩など複数の理由から、 あらゆるビジネスシーンにおいて AIを活用することができる環境 が整っていますO 利用時の注意点(ビジネス の可能性とリスク)  技術的、環境的な整備は進歩し ましたが、ビジネスで使用する際 にはいくつかの注意すべき点があ りますo最初にAI利用時の代表 的な注意点に関して考えますo バイアス(Bias)  生成AIは、大量のデータを使 用した基盤モデルであることはす でにお伝えしていますが、その データの質も大切な要素ですo GPT-3.0がインターネット上の データを使用していることについ て、OpenAIの論文で公開されて いますが、インターネット上の データが果たして公平であるかは 疑問が残りますo OpenAIもでき るだけ公平性を持つように調整し たことは論文に記載されています が、誰でも自由に、いつでも改変 できるのがインターネット上の データです。データの質、公平性 は新たな課題と言えます。  またGPT-4は非常に多くの言 語に対応していると発表されてい ますが、米国企業が開発したもの なので、米国の情報かつ英語を中 心とした情報になっていることは 間違いありませんoそこで各国で はそれぞれの国のデータ、言語を 使用した生成AIを開発すること に注力しています。  参考としてOpenAIが公開して いるGPT-4の評価結果のペー ジ覡にある各言語の精度を掲載し ておきます(図2-16)0 GFT一了3-eh口li{cITiyglMMLuin跖slangu・9・s ミj¬7・  ssII■・|・|-                                        ,}.・I●  ・x●|・::・|-             l・lllr  ミE             石  Tji          j  Ξ           ヨ....,  `こL  1 亠 3.,ゝ 5 ・. 。j・へ: ,.゜;=I.ji。,:            .・一二(11工・・ 図2-16 GPT-4の各君嘔に刔する精度  バイアスを含めた公平性,透明 性に関しては米国スタンフォード 大学の基盤モデル研究センター (CRFM)が言語モデルの総合評 価(HELM : Holistic Evaluation of Language Models)^!を実施してい ますO  もちろん日本もその例外ではあ りませんO 日本は、日本語という 英語とは異なる言語構造を持って いますし、日本という国が持って いる思想に合わせたデータを用い たAI開発の必要性について、政 府や日本企業にて盛んに議論され ています。  事前学習のデータの重要性を繰 り返し述べてきましたが、これら に対して日本政府も動き出そうと しています。「新しい資本主義の グランドデザインおよび実行計画 2023改訂版(2023年6月16 囗)」翌では次の文言が盛り込まれ ており、安心して利用できるデー タを整備されることが期待されま すo  rAIが学習に用いるデータのう ち、我が国に関するデータが少な いために、我が国に関連する質問 に対してAIが適切な回答をしな いことが起こり得るだけでなく、 AI製品・サービスの海外への依 存度が高いことから、供給途絶等 で我が国の国民生活や産業に影響 が及ぶおそれもあるO  さらに、生成AIの技術進歩と 普及によって、AIがどのような データをどのように処理している のかが分からない、巧妙な偽情報 が拡散する等、AIが社会にもた らす不安やリスクへの懸念が世界 的に高まっており、安全保障上の リスクも指摘されているO  そこで、AIに関する国際的な 議論、多様なリスクヘの対応を進 めるとともに、AIの利用の促進、 AIの開発力の強化を図るO」  ここでは「バイアス」の課題に 関する状況をお伝えしてきました が、これらは「公平性」の課題と 捉えることもできます。AIの 偏った回答により、誤った判断や、 ユーザーへ不快感・不信感を与え てしまう可能性がありますので、 AIを導入する際には「バイアス」 の理解と対処方法を準備・検討し ておくことが必要になります。 ハルシネーション(幻覚/ Hallucination)  生成AIのもう一つの課題とし て、Chapter 1 でも触れましたが、 ハルシネーションがあります。八 ルシネーションとは、生成AIが 事実に基づかない情報を生成する 現象のことですOまるで生成AI が幻覚(=ハルシネーション)を 見ているかのように、もっともら しい嘘(事実とは異なる内容)を 出力するため、このように呼ばれ ていますO生成AIでは事前学習 を行うため、学習データに起因す る問題や学習プロセスの過程から 誤った回答をすることがありますO  大規模言語モデル(LLM)の 場合にはインターネット上のデー タを使用する場合が多く、イン ターネット上のデータに偏り、 誤った情報があることでハルシ ネーションが発生してしまうこと があります。言語モデルは、ある 単語に対し、次に続く確率が高い 単語を予測するものであって、正 しい情報を出力することを目的と して訓練されるわけではありませ ん。そのため、文脈には合ってい ても、真実ではない情報を出力し てしまうことがあります。  そのため、ハルシネーションの 抑制が新たな課題であり、大きく 次の対策が行われています。 《ハルシネーション対策》 A.学習データの質の向上 B.出力結果へのフィルター C.人間からのフィードバックに  よる強化学習(RLHF :  Reinforce ment Learning from  Human Feedback)  多くの生成AIはこれらの対策 が行われていますが、不完全な状 態です。そのため、生成AIを使 川する際、生成AIの回答は必ず しも正しくないということを前提 に使用することが必要です。 学習データ  生成AIは大規模なデータを学 習していること、「バイアス」、 「ハルシネーション」を説明して きましたが、もう一つ注意が必要 となることがあります。それは学 習データそのものですO基盤モデ ルは事前学習していることが特徴 ですが、事前学習であるというこ とは、学習した時点より前の情報 しか持っていないということです。 歴史的な課題や最新の情報を調査 する場合、生成AIがデータを学 習していない可能性があり、回答 の精度が悪くなる点には留意が必 要ですo AIの得意分野・不得意分 野  生成AIは万能ではありませんo 得意分野、不得意分野がありますo  【得意分野】  LLM、対話型AIの代表格であ り、今のAIブームの火付け役と なったChatGPTを思い浮かべて いただければ明らかなように、文 書の生成、まとめなどは非常に得 意としていますo  【不得意分野】  ChatGPTに対して否定的な意 見でよく見かけるように、正しい データの提供、ひらめきを必要と するような創造性が必要な場面は 苦手としていますo  【対話型AIの不得意分野】  ChatGPTのような対話型AIは、 特定のデータの提供は不得意ですo 対話型AIが提供するデータは、 ほとんど信頼できませんoイン ターネットに接続されていない夕 イプのAIでは学習した時点の データしか保有していませんので、 学習時点より後に発生した内容に 関する情報提供は非常に苦手とし ていますoたとえば、ChatGPT 3.5もインターネットに接続され ていなかったため、2023年10月 時点では、2021年9月より後の データが提供できませんo  対話型AIは、検索エンジンが 検索結果である複数の候補のサイ トを提示してくれるのとは異なり、 対話結果を直接的に表示しますo そのため、一見すると非常に便利 だと感じられますが、これは危険 ですo対話型AIの作りにもより ますが、基本はLLMで事前学習 したデータから文書を生成してい ることを念頭においておく必要が ありますo  最近ではBingやGoogle Bard など対話型AIのUIを改良する ことで検索エンジンと組み合わせ、 最新のデータを収集、要約してく れるサービスも登場していますが、 それでも元となるデータの正確性 を保証してくれるものではありま せんoあくまで対話型AIの提示 する情報は情報収集の出発点とし て利用することが大切であり、 データの正確性は人間が判断する ことが必要ですo ChatGPTも 2023年9月にインターネットを 閲覧することをX(旧Twitter) への投稿で発表しています。  創造的な面も不得意分野の一つ です。生成AIによるデータは、 事前学習したデータとプログラム に基づいて生成されます。そのた め、あくまでも参考として使用す ることが重要であり、創造性を必 要とする分野において生成AIを 全面的に信頼することは避けるべ きです。  一方で、矛盾するように聞こえ ると思いますが、創造性を必要と する場面において有益なツールと して使用することは可能です。そ れはAIと人間の対話を通じ、AI が収集・生成する膨大な情報の中 から、人間が新しいアイデアの発 想を得る方法です。  なお生成AIからは、あたかも 創造したかのような回答が得られ ることがありますが、あくまで事 前学習したデータであり、内容に よっては「著作権問題」につなが る場合もありますので注意が必要 ですO  【対話型AIの得意分野】  ここまでデータの信价生創造 性において対話型AIは不得意で あると書いてきましたが「文章を 書く」という分野においては非常 にすぐれていますO元となるデー タ・アイデアを人間が提供するこ とで、生成AIが事前学習した多 様な表現方法・文法に基づいて文 章を作成したり、要約したり、翻 訳ができるからですOこの分野で は、生成AIは非常に高い能力を 発揮しますO 言言, 浄二戸  著作権問題はAI思考の要素で ある倫理でも記載しましたが、多 くの生成AIではインターネット 上の情報などを使用した事前学習 を行っていますOこの事前学習の データに著作権に関わる問題を含 んだデータが混じっていると、著 作権侵害などの法的な問題を発生 させる可能性がありますので注意 が必要ですO  著作権の保護の歴史は非常に古 く、15世紀中頃の印刷術の発明 に始まるといわれていますが、実 は国・地域によりかなり異なりま す。また、AIによる著作権に 限っても同様に異なります。そし てその中でもかなり特殊な状況と なっているのが実は日本です。  日本では著作権者の許諾を得ず とも、AIに関連する著作物を 使った学習が広く認められていま す召。一方、海外では何らかの制 限を設けており、違いがあります。 日本ではAIの学習は自由といえ ますが、AIの「生成」が適法と は限りませんO AIの学習データ から生成されたコンテンツは、著 作権侵害に当たることがありま すl!。  一見すると日本ではAIが使い やすい環境と考えることもできま すが、逆に考えると日本の考え方 でAIを使用することは、むしろ リスクと捉えることもできます。 日本の法規制の感覚でインター ネット上のデータを収集し学習 データとして使用すると、他国で は著作権法違反とみなされ、場合 によっては損害賠償請求が発生し たり、企業イメージの失墜に繋 がったりするリスクがあります。 AIの利用は、インターネットと は切っても切れない関係性があり ますので、各国法規制を正しく理 解した対応が必要になりますO 倫理  「バイアス」の一種として倫理主 の問題もあります。事前学習で使 用したデータに倫理的な問題を含 んだデータが含まれている場合や、 ハルシネーションにより倫理上問 題のある回答を行うことがありま す。  最新版の生成AIにおいては、 有害コンテンツや偽情報を生成さ せないための倫理対策が実施され ているため、一定レベルの倫理は 保たれていますO しかし、その普 及に伴い、倫理対策がますます重 要となってきますO生成AIの開 発者と利用者の双方が直面する倫 理的な課題について検討し、対策 を講じる必要がありますO  開発者が直面する課題としては、 データの偏りとバイアスの排除、 透明性と説明可能性、プライバ シーの保護がありますOデータの 偏りとバイアスを排除しなければ、 AIの学習データに偏りが生じ、 不適切な結果や差別的な予測が生 じる可能性がありますOそのため、 開発時には多様なデータソースを 利用し、バイアスを最小限に抑え ることが求められますO透明性と 説明可能性については、生成AI の決定プロセスを説明し、利用者 が理解できるようにすることが、 信縉陸の向上につながりますO開 発者は、AIシステムの透明性と 説明可能性を確保し、信价陸を高 めることが求められますOさらに。 プライバシー保護の観点から、個 人情報を取り扱う生成AIに対し て、開発者は適切なプライバシー 保護策を講じる必要がありますO データの匿名化やセキュリティ対 策の強化なども求められますO  利用者が直面する課題としては、 不正確な情報の拡散や人権侵害が 挙げられますO不正確な情報の拡 散とは、生成AIが誤った情報や フェイクニュースを生成するリス クがあることを意味しますOその ため、利用者は、情報を引用・転 載する場合、情報の真偽を確認し、 正確な情報を扱う責任がありますO  人権侵害については、生成AI を利用することで個人のプライバ シーや名誉を侵害しないよう、利 用者にはAI技術を適切な目的で 使用することが求められますO AIが人権侵害を行っていること を認識した場合、利用者は直ちに 問題のあるAIの使用を停正し、 開発者や提供元に問題を報告した 方が良いでしょうOこれにより、 開発者や提供元は問題を解決し、 将来の人権侵害を防ぐための改善 策を講じることができますO人権 侵害が深刻な場合は、法的手段の 検討も必要となりますO場合に よっては弁護士や専門家に相談す ることも必要となりますO  倫理を含めた生成AIに対する AIの抱えるさまざまな課題に関 し、AI大手は次のような対応を 始めています。 ・Microsoft : Microsoftの責任あ  るAIの基本原則郢 ・Google Cloud : 責任あるAIへ  の取り組み西 ・Salesforce : 「信頼できるAIの  原則(透明性、公平性、責任、  説明責任、信頼性)」召  とは言え、生成AIに非常に多 くのデータを学習させ、ファイン チューニングを施すことで非常に 優秀な回答を得ることができるこ とは事実ですので、これらのリス クを理解しつつ、利用することが 大切になりますO 情報セキュリティ  ビジネスシーンにおいて生成 AIを使用する際には情報セキュ リティに配慮することが必要とな ります。多くの場合はグラウトの ようにあらかじめ用意された生成 AI環境を使用することになると 思いますが、その際には次のよう な点への考慮が必要となります。 A。著作権 B.各国法規制(利用制限、利用  ルール、プライバシー、個人情  報など) C.通信経路の安全性 D.学習  著作権・各国法規制は先ほど記 載した通り法的なルールですので、 生成AIに限らずビジネスシーン では考慮することが当然ではあり ますが、生成AIを使用する際に は少々面倒な面がありますO生成 AIの特徴である「事前学習」の 中にルールを侵害したデータが含 まれている場合があるからです。 事前学習データの一つひとつが公 開されることはほとんどありませ んし、膨大なデータの一つひとつ をユーザーが確認することは現実 的には不可能です。そのためグラ ウト上の生成AIのように、あら かじめ用意されたサービスを使用 する際には、提供者のコンプライ アンス遵守に対する姿勢を確認す ることが必要となりますO  通信経路の安全性は生成AIに 限らず、ネットワークを介した サービスを使用する際には十分な 配慮が必要なことです。ここでは 詳しく論じることは避けますが、 HTTPSやVPN、専用線を使用す ることで通信経路の安全性を確保 することが必要です。  最後に「学習」です。多くの生 成AIではユーザーが提供する データを学習することで自ら進化 する仕組みになっています。学習 自体は決して悪いことではありま せんO特定用途、自社専用など目 的、用途が限定されている場合に はむしろ積極的に学習させること でより良いAIを使用できますO  一方で学習データが第三者に利 用されることや、データ提供・共 有を認めていないユーザー間で使 用されることは避けるべきですO 企業専用AIで企業内のみ、一定 の資格を持った社員が使用する場 合には機密情報など入力、学習さ せることは問題ありませんO しか し、企業内でも部外秘などのデー タを学習し、本来アクセスする権 利がない他部門・社員がそのデー タを使用してしまうことは企業と しての情報漏洩につながりますO  企業が取引先やお客様から得た 情報も同様ですo学習自体は問題 ありませんが、学習したデータを 第三者が知らないうちに使用して しまうことが、情報漏洩、個人情 報などのプライバシー問題等を引 き起こす可能性がありますo  以上のように「学習」に関して は生成AI利用、選定時には十分 な配慮が必要となりますoとくに パブリックな生成AI、たとえば ChatGPTのようなものを利用す る際には、十分な配慮が必要ですo  もっとも、よく考えてみれば GoogleやBingのような検索エン ジン利用時もこれは同じです。利 用前には「利用規約」をきちんと 確認し、学習の有無、学習データ の扱いを確認することが大切ですo また、最近ではオプトアウト (OptOut)と言われる学習の拒否 やデータの削除を求めることが可 能となっているサービスもありま すo  ここまではAIの特徴、注意点 を中心に議論してきましたが、こ れからのビジネスシーンではAI 抜きに考えることはできず、むし ろ「AIファースト」の思考に変 換することが大切になると考えて いますO  従来のビジネスの変更や新しい ビジネスを考える際にはまず、 AIは活用できないか? という 思考を持つことで、従来では実現 できなかった「スピード」「効率 化」「生産性向上」が期待できる と考えていますO  たとえば次のような使い方が考 えられますO 一定型業務の効率化  会議の議事録の作成、決まった 質問にメールで返答する、複雑な データの可視化、文章の要約、校 正といった定型業務は多くの人が 行っていますOこのような定型業 務は、生成AIにより大幅に効率 化できる可能性がありますO また 自動化もできる可能性がありますO これにより、人間は生成AIには できない人間同士のコミュニケー ションや創造的な業務に専念でき るようになりますO ・クリエイティブな活動の補助  たとえば、会社のスタッフが、 広告キャンペーンを展開するとき。 「XXXに最高のシーンを教えて」 とテキスト生成AIに尋ねること で、さまざまなアイデアを提案し てもらうことができますOそれだ けで最終アイデアとして提案でき るとは限りませんが、アイデアを 考える時に何もないところで、自 分で考えるよりも、生成AIの提 案をもとにして考えることで、短 時間で、漏れの少ない企画を立て ることが可能になりますO    Al    鮖 図2,17 AIによるクリエイティブな活動の補助 ・コンテンツの即時作成  社内でもさまざまなコンテンツ を制作しなければならない業務が ありますOたとえば、パンフレッ トをつくるのであれば、特徴をわ かりやすく解説した文章、性能が 一目でわかる表、グラフ、イメー ジを膨らませるためのコンテンツ 作成が必要になりますO従来は、 このようなコンテンツを制作する のに、専門家が必要でしたOまた 作成までに長い時間を必要として いましたO しかし、生成AIを使 うと、このような専門家が必要な くなり、すぐに質の高いコンテン ツを生成できるようになりますO 修正も非常に簡単であるため、社 員の意見を取り入れて修正するこ とで、質を高めることが可能にな りますO  瘻 図2-18角|によるコンテンツの作成 2023年9月に世界経済フォー ラムの最新の白書「明日への仕 事:大規模言語モデルと仕事郢」 が発行されましたが、ここでも同 様に定型業務の生産性の向上につ いて言及されていますO AIとの付き合い方  本Chapterでは「AIの基礎知 識」というテーマでAIの歴史、 仕組み、注意点、ビジネス利用か ら今話題の「生成AI」について 考えてみましたが、AIは人間を 超えるものではありませんし、頭 脳労働に関して取って代わるもの ではないと考えています (Chapter 1 のAI失業で紹介した ような反復業務は別)oむしろ、 人間と共存し伴走してくれる仲間 としてAIと付き合っていくこと が、これからのビジネスでは非常 に重要になってくると考えていま す。  分野   知的活動    創造的活動  テキスト  不削・橸陂・工町  月話・洗い出し・アイデア  プログラム  チエ。クー皿正    卜成・開皃 ヨヨニ  音声・音楽 ノノズ除去・尚品質工  ?奐・作|-=レ吊、||  図2-19生成八|ができること  上の表のように生成AIができ ることを整理してみると、これま で人手による業務、さらに言えば 従来型AIでは実現が困難であっ た「知的活動」と「創造的活動」 に生成AIの強みがあると考えま す(この表の創造的活動は、今ま での説明と矛盾するように感じら れるかもしれませんが、人と伴走 することを前提としています)。  特に「知的活動」はこれまで人 間が行うことが「当たり前」とさ れてきましたが「生成AI」を使 用することで「定型業務」として 処理することができるようになり ますO一方で「創造的活動」では、 生成AIは「補助的機能」として 活用することが可能ですOここか らわかることは、人間はより創造 的な仕事ヘシフトすることができ るということです。  現代社会、とくに日本では労働 人口の減少、人手不足が深刻化し ています。その際、限られた人的 リソースの中でビジネスを効率的 に進めていくためには、AIを仲 間として迎え入れることで、従来 人手で処理をしていた「知的活 動」をAIに任せ、人間でなけれ ばできない「創造的活動」により 注力していくことが必要になると 考えます。  「創造的活動」において、一人で 活動し、アイデアを出すことはな かなか難しいことですし、よくあ る「アイデア出しの会議」も必ず しも効率的ではなく、ただ集まる だけになることも多かったと思い ますoまた生成AIが人間と対話 してくれることで、一人当たりの 労働生産性の向上が期待できますo    Al ●    n 図2・20 AIと人間との付き合い方  そして生成AIの特徴である事 前学習した膨大なデータからは、 一人では思いつくことができな かったアイデアや会議では出てこ ない意見を得ることができる可能 性があります。しかもAIは人間 と違い、いつでも、どこでも、必 ず相手をしてくれ、「リアルタイ ム」に「回答」してくれます。回 答は必ずしも「正解」でありませ んので、人間が最終的に判断する ことが必要にはなりますが、アイ デアゼロ、何も進まないことと比 較したら雲泥の差ですO  4 世界のAl 傑四 国際動向  企業が生成AIを安全に業務で 活用するためには、海外のAI動 向を理解し、生成AIの社内ルー ルを作成する必要がありますOこ こでは主に、日本、米国、欧州を 中心とし、それ以外の地域の情報 もできるだけ記載しますO  【日本】  日本ではAIの利活用に関する 直接的な法律はありませんが、 2023年5月の広島サミットでは 「広島AIプロセス」泄が採択され 生成AIを中心としたAIの国際 ルール作りが始まっていますOそ して、これを受けて次のような論 点整理を行っていますO ・AI戦略会議「AIに関する暫定  的な論点整理」慂(内閣府2023  年5月) ・知的財産戦略本部「知的財産  推進計画2023J?:!(内閣府  2023年6月)  これ以外にもAI利用に関して 次のようなガイドライン等が発表 されていますo ・「AI原則実践のためのガバナン  ス・ガイドラインVer.1.1」(経  済産業省) (2022年) ・「AI利活用ガイドライン〜Al  利活用のためのプラクティカル  リファレンス〜」(総務省)  (2019年) ・「人間中心のAI社会原則」(内  閣府) (2019年) 一生成AIサービスの利用に関す  る注意喚起等について(個人情  報委員会2023年6月)召  民間からも次のような宣言、ガ イドラインが公開されていますo ・「AI活用によるSociety 5.0 for  SDGsの実現に向けて」(日本  経済団体連合会2023年6  月)照 ・「生成AIの利用ガイドライ  ンjM(日本ディープラーニン  グ協会) (2023年)  これらに共通している内容・論 点は主に次の点ですo 4つの論点 @生成AI利用は今後とも必要 A信頼できる、説明責任の果た  せるAl B倫理的側面からの考慮・配慮 C著作権など周辺法、権利への  配慮一環境整備  【米国】  米国では、AI権利章典 (Blueprint for an AI Bill 0f Rights )=!§において、AIを含んだ 自動化されたシステム (Automated Systems)を開発する 際の非拘束的な5つの原則が公開 されています。  この権利章典はAIを含む「自 動化システム」を構築し、ガバナ ンスする際に、米国国民の人権を 保護しつつ民主主義的価値を推進 するための政策および実践方法の 開発のサポートを目的としていま す。既存の法令や規則を修正した りするものではなく、法的拘束力 はありません。 5つの原則 @安全で効果的なシステム・  ユーザーは、安全でないシステ  ムもしくは効果のないシステム  から保護されるべきである。 Aアルゴリズム由来の差別から  の保護  ユーザーはアルゴリズム由来  の差別を受けるべきではない。  システムは公平に機会を提供す  る方法で利用および設計される  べきである。 Bデータのプライバシー  ユーザーは、組込みの保護機  能を通じて不正なデータから保 護されるべきであり、自身に関 するデータがどのように使用さ れるかを知る権限を持つべきで ある。 Cユーザーへの通知と説明  ユーザーは自動化システムが 使用されていることを知り、そ れが自身に影響を与える結果に どのようにして、またなぜ寄与 するのかを理解するべきである。 D人による代替手段、配慮、  フォールバック  ユーザーは必要に応じて自動 化システムの使用をオプトアウ  トすることができ、問題が生じ  たときに、その問題を迅速に解  決できる担当者に連絡ができる  手段を持つべきである。  そして、その後、次のような具 体的な動きがありますo ・商務省電気通信情報局  (NTIA)AI Accountability  Policy Request for  Comment^!? (2023年4月) ・米国著作権局(USCO):AIに  関する情報提供要請(Notice of  Inquiry:NOI)=!Z・38 (2023年8  月) ・米国土安全保障省(DHS):人  工知能(AI)の責任ある利用に  関する新たな政策3? (2023年  9月)  特筆すべき動きはホワイトハウ ス主導で行われているAI企業と の合意ですo  2023年7月にはAI企業7社 (Amazon、Anthropic、Google、 Inflection、Meta、Microsoft、 OpenAI)と「安全で透明なAI技 術開発をすること」を合意f!9し、 話題となりましたが、続いて9月 にはAI企業8社(Adobe、 Cohere、IBM、Nvidia、Palantir、 Salesforce、Scale AI、Stability)と も合意していますo 主な取り組み: @AIシステムの公開前に内部お  よび外部のセキュリティーテス  トに取り組む。 AAIのリスク管理に閨する情報  を産業界や政府、市民社会、学  術界と共有する。 BAIシステムの中でもっとも重 要な部分である非公開のモデル の重みを保護するために、サイ バーセキュリティと内部脅威対  策に投資する。 CAIシステムにおける脆弱性の  発見と報告を第三者が容易に行  えるようにする。 DAIが生成したコンテンツであ  ることをユーザーが認識できる  ように、ウォーターマーキング  システムなどの堅牢な技術メカ  ニズムの開発に取り組む。 EAIシステムの能力、限界、適 切なおよび不適切な使用領域に ついて公開的な報告を行うこと を約束する。 F有害な偏見や差別を回避し、  プライバシーを保護するために、 AIシステムがもたらす社会的 なリスクに関する研究を優先す る。 G社会の最大の課題に対処する  ために先進的なAIシステムを  開発・展開する。  議会などでは法規制の動きもあ るようですが、現時点ではホワイ トハウス主導による自主規制が中 心ですO  【欧州】  欧州連合(EU)では2021年頃 から議論が行われてきたAI利用 に関する規制案「AI法案 (Artificial InteVgence Act)^l^・9」 が2023年6月に採択されていま す。現時点では採択であり、今後 調整が行われ、合意が行われるこ とで正式に発効されます。  AI利川の規制案は2021年から 議論されていましたが、生成AI の急激な進化、普及に対応し、生 成AIの内容も盛り込まれていま す。  規制の基本思想としては他の EU関連の規制(例:EU一般 データ保護規則:GDPがf!)と同 様に域内における人権や自由の確 保が最優先であり、技術は人間中 心であるべきという考えが重要と なっていますoそして以前から 「信頼できるAIに関する倫理ガ イドラインf!§」があります。 信頼できるAIに関する倫理ガイ ドライン @人間の主体性と監視(human  agency and oversight) A技術的な堅牢性と安全性  (technical robustness and  safety) Bプライバシーとデータガバナ  ンス(privacy and data  governance) C透明性(transparency) D多様性、無差別、公平性  (diversity, non-discrimination  and fairness) E社会と環境に対する健全性  (social and environmental well-  being) F説明責任(Accountability)  実際の規制は、「リスクベース のアプローチ」となっていて「リ スクレベルと規制、要求事項、義 務」などがあります。 「基盤モデル(Foundation 辻匸 ・開発者の法令遵守に必要な技  術文書を用意する ・ハイリスクのAIシステム同様、  データベース登録、透明性の義  務を遵守する  そして、AI以外のEUの規制 でも同様であり、特徴にもなりま すが適用範囲と罰則には注意が必 要となりますO 適用範囲 ・EU圈を対象に市場投入される  AIとその提供者、展開者が対  象 ・EU圈の者にAIシステムまた  はそのアウトプットを提供する  AIおよびその提供者に対して  も、当法案は適用  注意が必要なのはアウトプット のみの提供でも適用対象となる点 ですOつまり、AIシステムの提 供は行っていなくても、EU圏に 提供するアウトプットの生成過程 でAIシステムを利用しているよ うなケースも適用対象となりますO 異なる表現をすれば、EU圏外で AIを使用していても、そのアウ トプット、サプライチェーンを経 由してAIの結果がEU圏に提供 された場合には適用範囲となるこ とですO 罰則 ・受容できないAIに関する禁止  事項(第5条)への違反:  4,000万ユー囗または全世界売  上高の7%の高い方 ・ハイリスクAIに関する要求事 項(第10条,13条)への不遵 守:2,000万ユー囗または全世 界売上高の4%の高い方 ・上記以外の要求事項一義務の 不遵守:1,000万ユー囗または  全世界売上高の2%の高い方  1,000万ユーロは日本円に換算 すると16億円(執筆時点)とな り、最低でもGDPRの制裁金よ りも高い(厳しい)設定となって いますO  補足となりますが規制だけでな く「イノベーションの支援」もあ りますので、EUはAI利用に反 対というわけではないこともご理 解くださいO  【中国】  中国ではすでに規制が開始され ています。  一国家インターネット情報弁公  室(CAC):生成AIサービス  管理暫定弁法(2023年8月) 概要 一24の条項から構成 一中国本土に対するサービスへ  適用 一生成AIの開発・提供元だけで  なく、提供されたAI機能、  APIなどを経由して提供したも  のも含まれる 一法律および行政法規を遵守し、  社会道徳および倫理を尊重する  ことが必要  中国の場合には注目すべき点は やはり国家体制との関係ですO第 4条、第17条ではその詳細が記 載されていますO 第4条 @社会主義の中核的価値観を堅  持し、国家権力の転覆を扇動し、  社会主義制度を転覆し、国家の  安全と利益を危険にさらし、国  家イメージを傷つけ、脱退を扇 動し、国家統一と社会の安定を 損ない、テロリズム、過激主義 を促進してはならない。民族憎 悪、民族差別、暴力、わいせつ、 虚偽の有害な情報、法律や行政 規制で禁止されているその他の コンテンツを助長するものを含 む。 Aアルゴリズムの設計、学習  データの選択、モデルの生成と  最適化、サービスの提供の過程  において、民族、信条、国籍、  地域、性別、年齢、職業、健康  状態等に基づく差別を防止する  ための効果的な措置を講じる。 B知的財産権と企業倫理を尊重  し、営業秘密を守り、アルゴリ  ズム、データ、プラットフォー  ム等を利用して独占や不正競争  を行わない。 C他者の正当な権利と利益を尊  重し、他者の身体的および精神  的健康を危険にさらさず、肖像、  評判、名誉、プライバシーおよ  び個人情報に対する他者の権利  を侵害しない。 Dサービスタイプの特性に基づ  いて、生成人工知能サービスの  透明性を向上させ、生成された  コンテンツの精度と信頼性を向  上させるための効果的な措置を  講じる。 第17条 @世論属性または社会動員機能  を備えた生成型人工知能サービ  スを提供する者は、関連する国  家規定にしたがって安全性評価  を実施し、「インターネット情  報サービスアルゴリズム推奨管  理規程」にしたがってアルゴリ  ズムの登録および変更・登録抹  消の手続きを行わなければなら  ない。  ここからわかることは、事実上 の言論統制であり、欧米の生成 AIは事実上中国では使用できな いということですo中国の言論統 制は今回がはじめてではありませ んので、特段驚くような内容では ないのですが、生成AIは世の中 を大きく変えるという意味では、 中国政府も注目しているというこ とがこの規制から読み取ることが できますo 中国で使用できないサービス例 ・Google(検索、地図、メール。  YouTube) ・Yahoo!検索 ■ Instagram ・X(旧Twitter) ・Facebook ・LINE  上記以外にもAWS、Microsoft Azure、Microsoft 365 なども中国 は専用環境が提供されていますo  【その他】 イギリス:AI規制政策文書(AI Regulating)^!≪ (2022年7月) シンガポール:AIガバナンスモ デルとA.I Verify Foundation (Singapore's Approach to Al Governance)^!1 (2022年1月)  さて、ここまで各国のAI規制 等に関する動向を紹介してきまし たo規制の詳細、法的解釈の正確 な部分は各国の弁護士、裁判所等 の専門家にお任せすることにして、 規制のタイプとしては米国スタイ ルとヨーロッパスタイルの2種類 に分類されます(中国は国家体制 が異なるため、ここでは除外)。 ・米国スタイル:ソフト囗−  (法的拘束力は緩く、規範など) ・ヨーロッパスタイル:ハード  囗−(法的拘束力のある法律な  ど)  日本政府の現状は、法規制がな いという観点においては「米国ス タイル」になっているということ もわかります。  このようなスタイルの違いは AIに限定されず、これまでの各 種法規制、企業ガバナンスでも同 様の傾向があります。最終的なグ ローバルのAI規制の標準がどう なるかは今後も検討が続いていき ますし、各国政府の思惑もあるた め、唯一絶対の解を求めるのは困 難ですo  ビジネスを進めていく上では、 それぞれの規制方針、考え方の違 いを理解した上で実際のビジネス 戦略、AI戦略を立案・実行して いくことが必要ですo 生成AIの先にあるもの  AI進化、期待は生成AIで終わ りではありませんoその先には 「AGI(汎用性人工知能/ Artificial General Intelligence)」というもの がすでに考えられていますo AGI とは人間のような汎用的な知能を 持つ人工知能を指し、さまざまな タスクに対して人間と同等の知識 や能力を持ち、独自の学習と問題 解決が可能ですO AGIの特長と しては次のようなものが挙げられ ますO AGIの特徴 ・汎用的な能力  特定の領域に特化しているわ  けではなく、さまざまなタスク  や問題に対応できる能力を持つ  ており、多様な知識やスキルを  駆使して活動できます。 ・学習能力  AGIは経験から学習を行い、  新たな情報やデータを取り入れ  て自己進化することができるた  め、状況に応じた適切な対応や  問題解決が可能です。 一意思決定  AGIは独自の判断や意思決定  を行うことができます。複雑な  情報を分析し、最適な選択肢を  選び出す能力を持っています。  ChatGPTの開発元であるOpen AIは当初から「AGI (Artificial General Intelligence : 人工汎用知 能)」と呼ばれる究極のAI開発 をそのミッションとしていました。 そしてAIブームのなかでOpen AI社のCEOであるサム・アルト マン氏は、2023年2月24囗に 「汎用人工知能(AGI)について の展望」というロードマップを発 表しています照。  アルトマン氏はAGIを「一般 的に人間より賢いAIシステム」 と定義し、「人間の知性を超えた 存在を成功させることは人類史上、 最重要事項である。希望に満ちて はいるか恐ろしいプロジェクトで あり、AGIには誤用、劇的な事 故、社会的混乱などの深刻なリス クが伴うoそれでも利点が非常に 大きい」としていますoいずれに してもAGIの開発を停止するこ とは不可能であり「社会と開発者 は正しく開発する方法を見つけ出 さなければならない」とも述べて いますo  その中ではOpenAIは短期計画 として以下の3つを挙げていますo ・AIモデルの現実世界への展開  では、ユーザーとユースケース  を注意深く監視し、維持する。 ・AIモデルの展開で、「初期設 定」は制限し、各ユーザーによ る調整を可能にしていく。 ・システムの管理方法やシステ ムが生み出す利益を分配する方 法、システムへのアクセスを公 平に共有する方法という3つ の問題についてグローバルな対 話をしていく。 →長期的には、「人類の未来は 人類が決定すべき」であり、 AGI構築については公開協議が 必要だと主張しています。  AGI開発の進捗が現在のペー スで続けば、「大きな変化が驚く ほど早く起こる可能性」があり、 「世界は現在とは大きく変わる可 能性があり、そのリスクは計り知 れず」、「世界に深刻な害を及ぼす 可能性がある」と言われています。 そのため、「重要な分岐点で減速 する調整が重要」で、人間社会に はAGIに「適応するための十分 な時間を与えることが重要だ」と していますO  そしてその後、AIのガバナン スに関する声明も発表していま す9。  これらの発表を読む限りでは、 AGIを作り出すことは技術的に は可能になりつつあるが、そのス ピード・変化に対して人類・社会 が追従することが難しいと考えて いるのではないかと思われます。  実際、AIガバナンスの声明で は「AIが今後10年以内に多くの 分野で専門家のレベルを超える非 常に高い能力を持つことになり、 人間社会が持つ環境問題や社会問 題を解決する一助となる一方で、 悪用によるリスクがある。国家間 の連携による適切な管理が必要」 とコメントし、次の提案を行って いますo @主要な開発者や企業間におけ  る調整強化 A国際原子力機関(IAEA)のよ  うな国際的な管轄機関の設置 B超知能の安全性確保のための  技術的能力  当初OpenAIは非営利企業であ り、純粋にAI・AGIの研究を進 めていましたo しかし、経営権の トラブル(かの有名なイーロン・ マスク氏が設立時には資金提供を していたが、経営権を巡って脱 退)や資金繰りのために、Open AIを営利企業とし、非営利企業 は子会社としましたo  OpenAIは大規模言語モデルで あるGPTを開発し、現在のAI ブームの火付け役となりましたが、 必ずしもAGIの実現にはつな かっていませんoビジネスでの成 功が求められることにより、彼ら が当初思い描いていたAIの進化、 AGIの実現とは異なり、自らコ ントロールできない、予想してい ない状況に陥っている可能性もあ ると考えています。  一方で以前からAIの分野にお いては「シンギュラリテイ(技術 的特異点/ Singularity)」と言われ る「AIをはじめとする技術が人 間よりも賢い知能を生み出せるよ うになる時点」が話題となってい ますが、これがいよいよ現実味を 帯びてきたとも考えられていますo いつシンギュラリテイが来るのか はいくつかの意見がありますが、 現在、もっとも注目を集めている のはレイ・カーツワイル氏の著書 『The Singularity is Near (邦題:ポ スト・ヒューマン誕生)』我で予測 している2045年ですo  シンギュラリティが本当に来る のかは誰もわからないことですが、 従来では考えられなかった高度な 知能の実現が現実的になってきて いることは事実ですo今回の生成 AIブームを機に企業ではAI思考 を取り入れ、ビジネス活動に取り 入れていくことを真剣に検討すべ き時期に来ていると思います。  本Chapter後半で述べてきた倫 理的・法的・社会的な課題は ELSI (Ethical, Legal and Social Issues)というキーワードで、従 来議論が進められてきたものです。 二\ 上 いてみましたが、皆さんの感想は いかがでしょうか。AI自体は決 して新しいものではなく、長い歴 史を持ち、さまざまなアイデアが 以前からあったものが、汀技術 の進歩、環境の変化により、やっ とビジネスの世界でも当たり前に 使えるようになってきたところで す。  そして、AIは単なる技術では なく、世の中の仕組みまでも変え ていくものであり、日々進化、変 化を遂げているところです。ビジ ネスシーンにおいてもまずはAI が使えないか? という「AI思 考」の考えを持つことで継続的な 改善を行いつつ、活用していくこ とが、成功への近道であること考 えますO AIを組織・個人へ     実装する Chapter:ES \1 企業のAl  ≠\  Chapter 3では「機械学習や ディープラーニング・ファンデー ションモデルによるAIをビジネ ス組織・ビジネスパーソンへ実装 する」というテーマでこれからの AI活用について考えていきますo これまでのChapterでは、「AI思 考」および「AIそのもの」につ いて紹介してきたので、AI思考 をどのように実践していくかをご 紹介します。  前半ではビジネス組織という大 きな単位でのAI実装について解 説します。ぜひ、皆さんの組織で のAI利活用のヒントにしていた だければと思います。  後半では個人という小さな単位 でのAI実装について解説します。 組織への実装が難しい方も、まず は個人単位でAIを活用していた だき、将来的には組織へのAI導 入を促進していただければと思い ますO  実践の前にAIの利用状況を整 理しておきますO IPA (情報処理 推進機構)の『DX白書2023』に よると「日本企業はAI導入率 (「全社で導入している」「一部の 部署で導入している」の合計) (図3-1)が22%であり、同40% である米国企業とは、2021年度 調査同様に差が大きい」ことが分 かります。    ・r−Ass!S冬溽6犹5aEI貴t扈l    −’−7.j・ ’● ・ ヤ    2sa4韆i・1-5411 19』・I ・。・ 11亅亂]jl・ IM    2呎|匈●1・=b凋s J・1.1 1M 79 ・・2111j ●.s lj  11.1    −’−7 1’゜’≒、?    2哩ag●ii司闃1 1M Is; lg 1≫ g u la    211g驥i・I一口閼1 1M a● Iu I●Isuu Iu           1ΞIE:           屬・li丁琵・凋Ajtll飃・丁鼈を・コ吏陛韆・l嘔壥&il.|駟1・           ΞΞ∃Ξ、  図3-1「IPXDX白君2a23」33」ページより弓|用   また後述のAIの導入課題にお いて、日本は「自社内でAIへの 理解が不足している」、「AI人材 が不足している」などが、導入が 進まない要因として考えられるl! ことが紹介されています。 荳三⊇靭 子工言言詰諮 ●iEIAIの唇lllの皿況IEI岑企業:従業厩規鄒弸〕   l a s s 匐 lil ニレ∧匸 図3-2「1PADX白書2023」 332  1 7゛゛゛゛ls゛゛゛゛゛' 三笠ご匸ご 士圧三 ことがわかります。  l−臼冰のAIのili周の状叉al海lt鮟9“2  三レ]/I T:jダ\i ゛  2017\ili{l-350! IJ.11●,● 1≪0   5i,6   1a,ヨ    選・lg討一蔔λstll・実;心csを衍・&ei・寸l・り・&ζ11訊1 図3-3「IPADX白書2023」334ページより引用  そして、本Chapterのテーマで あるAI導入の課題に関しては、 y米国の回答率が高いものにつ  いて、日本との差が大きいもの  は「顧客・取引先でAIへの理  解が不足している」、「経営者の  理解が得られない」、「AI技術  を信頼できない」が挙げられ、  経営者や顧客の理解に関するも  のとなっています。 y日本の回答率が高いものにつ いて、米国との差が大きいもの は「AI人材が不足している」、 「AIの導入事例が不足してい  る」、「導入効果が得られるか不  安である」であり、AI人材や  導入の意思決定に関する項目が  上位となっています。  このことから、AI導入には組 織的な課題が多いことがわかりま す(図3-4).  ミド]   その寸 1,1    ・口卜gn一明1?米国〔11-329〕 図3-4『I PA DX白書2023』337ページより引用 上回 は異なった視点が大切になります。  経済産業省の「生成A1時代の DX推進に必要な人材・スキルの 考え方JSでは次のように述べら れています。  「企業の視点では、生成AIの利 用によってDX推進を後押しする ことが期待され、そのためには経 営者のコミットメント、社内体制 整備、社内教育の他、顧客価値の 差別化を図るデザインスキル等が 必要となる」とあり、さらには 「まずは生成AIを使って何かで きるか把握すること、その上で、 業務改善を超えて、組織全体にお けるビジネスプロセスや組織の変 革にまで繋げていくことが重要と なる」とあり、従来のAI導入以 上に、組織全体での取り組みが必 要であることが強調されていますO \2 AI導入に  ≠サ\  【組織編】AI≒DXのワ ナ  最近のビジネス現場におけるデ ジタル活用といえば、DX(デジ タルトランスフォーメーション) を想起する方が多くいらっしやる かと思いますO AIをビジネスへ 導入していく過程において、DX は切っても切れない関係ですし、 DXを意識することでAIの活用 効果を最大化することも期待でき ます。一方で、DX=AI導入と勘 違いしてしまうと思わぬワナに八 マる可能性があります。そこで、 初めにDXとAIの違いを明確に しますO  経済産業省が発行する「デジタ ルガバナンス・コード2.0 53」に よると、DXとは「企業がビジネ ス環境の激しい変化に対応し、 データとデジタル技術を活用して、 顧客や社会のニーズを基に、製品 やサービス、ビジネスモデルを変 革するとともに、業務そのものや、 組織、プロセス、企業文化・風土 を変革し、競争上の優位性を確立 することO」と定義されていますO  少し長いので、簡単に要約する と「データとデジタル技術を活用 して、ビジネスを変革していく」 ということです。この定義を紐解 いていくと、データとデジタル技 術を活用することは手段であり、 ビジネスの変革が目的であるとい えます。  そのため、まずはDX実現にお いて、「何を目的とするのか」。 「未来において自社はどうありた いか」を考え抜くことが重要です。 DX実現においては、AIはあくま でソリューションの一つであり、 DXにおける最適解かどうかは十 分に吟味する必要があります。こ の理解がないと、DXとAIを短 絡的に結び付けてしまい、AIを 導入することがDXだと誤解する 危険性があります。これでは、自 社事業の抜本的改革という本来目 指すべきDXが達成できず、ただ 最先端技術の利活用を行ってみた ものの本来の課題解決にはつなが らない、誰も利用しないデジタル 技術の導入につながってしまいま す。  DXと対比すれば、AIはデータ とデジタル技術を組み合わせた手 段です。  AIを利用する目的を明確に定 め、手段として機械学習やディー プラーニング・ファンデーション モデルなどのAI技術を適切に選 定すれば、AIはビジネスを変革 していくことが期待できます。 yあるマーケティング会社では、 機械学習やディープラーニング などのAIを用いて、膨大な データ分析を行った結果、あら ゆる顧客ヘパーソナライズされ た広告を出せるようになり、売 上増加を成し遂げた事例があり ます。 yある製薬会社では、同じく機 械学習やディープラーニング・ ファンデーションモデルのAl 技術を創薬の現場で活用し、従 来の創薬プロセスと比べ成功確 率の改善や効率化を促進し、創  薬の現場を大きく変えた事例も  存在します。(AI導入のより具  体的な活用事例はChapter 4で  述べます)。  AIを手段と割り切った上で、 DXの目的を明確にし、実現して いる企業は多く存在しますoまた 昨今のAIの急速な発展を考える と、今後ますます大きな効果を生 み出すことが期待されますo  では、ビジネス組織へのAI導 入は、どのように進めていけば良 いでしょうかo AIは使い勝手が 良く、多様な選択肢を生むので、 ともすればAIありき=手段あり きとなり、目的が不明瞭になるこ とがありますO AI導入は、「企業 の競争力強化である」という企業 や事業単位の視点をもって、取り 組んでいく必要がありますO  次節以降では、より具体的に AI導入に向けた5つのステップ と導入後の保守・管理に関するポ イントや注意事項をご紹介しますO AI実装の目的一成果を設 定する  まずは、AI実装の目的・成果 を設定しましょう。  AIという先端技術を実装して いく過程においては、短期的な目 線ではなく、長期的な目線での目 的の設定が重要です。AIは日進 月歩で進化を続けており、AIが 今できることをベースにしてしま うと既存の枠でしか考えられませ んO AI技術の進歩も見据え、 5〜10年後に実現したい「会社 のあるべき姿」や「社会への貢 献」を考えることが重要です。           霆皿   図ヨー5 AI導入の5つのステウプと導入後の保守一管理  長期的な目線での目的設定をす るには、トップダウンアプローチ で経営目標を明確化し、業務プロ セスの可視化、現場の改善という 順で進めるのが効果的だと考えま す。現場目線から課題に取り組む ボトムアップアプローチもありま すが、コンサルタントとしての経 験から、ボトムアップアプローチ では担当者の前後の業務までしか 整理しきれず、局所的改善にとど まることが多いと感じています。 5〜10年先の未来を変えるため には、全社的な目線で取り組む トップダウンアプローチが効果的 だと考えますO  一方、現場目線によるボトム アップアプローチは、具体的な課 題に取り組み、成果を見える化で きることが強みですO会社全体と して、その課題を解決することが どのような経営的な影響をもたら すのかを含めた計画を提示するこ とで、現場だからこそ発見してい る課題を解決するための目標設定 ができるでしょう。  トップダウンアプローチでの目 標設定後、ボトムアップアプロー チで補完することができれば、長 期的目線・全体的目線を持ちなが ら、細部にまで目の届く目標設定 が可能となります。  組織として5〜10年先に実現 したいことの方向性が定まった段 階でより具体的に、既存業務へど のようにAIを組み込んでいくべ きか、実現したい未来に向けて AI導入がどのような成果を生み 出すかの目標を設定しましょうO  ここで重要となるのが、現状分 析ですO“どうありたいがとい う未来に対して、現状を分析する ことで、現状と未来のギャップが 明確になり、AIをどのように導 入することで理想とする状態へ近 づけるのかを検討しますOありた い姿である未来と現在をAIでつ ないでいくのです。  具体的には、業務プロセスの可 視化を実施することで、どのよう な課題が現場には存在するかを特 定し、AIを駆使する期待効果を 明確にします。       −    ○づ   四  ↓ 図3-6現状とありたい姿をつなぐAIとギャップ  たとえば製造業のある会社にお いて、今後3年間で利益率を 10%向上するという目標を掲げ、 現場課題を調べたところ、「多く の商品では滞留在庫が課題となる 一方で、特定商品では欠品が発生 している」という事態が判明した とします。課題には「新卒採用が 進まない」、「マーケティング費用 の増大」等も考えられますが、経 営目標の達成には本件を解決する ことがもっとも大きな成果を達成 するという分析結果が得られたと すると、解決すべき課題は「滞留 在庫の減少」と「欠品による販売 機会損失の減少」であり、本課題 を解決することがAI実装の目的 となります。  大きな視点から目標と課題を設 定し、課題解決を目的に据えて、 得られる成果を定義することで目 指すべき方向性が明確になるで しょうO AI推進の組織を構築する  AIを実装する目的が明確にな り、AIで解決すべき課題が整理 できたところで、AI実装を推進 していく体制を構築しましょうO  全社的に進めていくためには、 AI専門の推進チームが必要にな りますOただし、この推進チーム は単に立ち上げれば良いというわ けではありませんO AI組織がど のようなミッションを掲げるの か・既存の組織とどのように役割 を分けるのか・経営層や現場との コミュニケーションはどのくらい の頻度で実施するのか・AI予算 をどの部署が管理するのかなど考 えるべきポイントが多数ありますO  AI推進を行う際に多くの組織 では、以下の要因が組織化の壁と して立ちはだかりますO ・AI導入による効果が不明瞭 ・AI導入のためのコスト ・AI人材の不足、不在  AI組織のためDXを参考にす ると、「DX推進部」や「経営企 画部DX推進室」といった組織を 立ち上げ、役割やミッションを定 義したまでは良いものの、DXを 実施する現場の部門との役割・権 限の実務的な調整が不十分で、現 場を把握しきれないことがありま すoこのため企業が本来目指す DX像の実現に届かず、基幹シス テム刷新やSaaS導入等の手段の 実現に留まってしまっているとい う事例が報告されていますoこの 要因には、経営陣が組織をつくっ た後、外部のインチクレーターと 汀部署に任せっきりになってし まったということが挙げられますO  DXを他山の石とすると、AI組 織がどのようなミッションを達成 しようとしているのかを周知した うえで、AI導入を推進していく ために業務を知りつくした現場担 当者を巻き込み、社内横断的な推 進体制を築くことが重要です。社 内横断的な組織を構築することで 既存組織との区別も明確になり、 各現場の専門家を擁することで全 体課題をより解像度高くとらえる ことができます。  そのためには改めて「AI導入 の目的を明確にした上で、トップ (経営)と連携すること」が重要 になります。  また推進する際、AIに関する 知見が不足すると、どうしても進 めていく前段階の調査や理解に想 定以上の時間がかかり、想定して いた結果を得られないといったこ とにつながります。AIナレッジ を社内へ蓄積するためにも、必要 時は積極的に外部のAI人材を活 用することを検討してください。  AI推進組織として一般的に考 えられる推進方法は、次の3種類 ですO  @外部のAI人材との共創  Aコンサルダントーベンダー   ヘ委託  B自社担当者のみで導入  それぞれ、図3-7のような特徴 がありますO 自社にとって、どの ような体制構築が望ましいか検討 してみましょうO  AI実装の担当メンバーは未知 の技術に触れることでキャリア アップが図れる反面、まったく新 しいことヘチャレンジするため、 精神的に負荷の高い環境に身を置 くことになるでしょうO社内外か ら過度のプレッシャーが加わって しまうと、せっかくのAI導入と いう先進的な取り組みが、失敗し ないための保守的な取り組みにす り替わるリスクがあります。また、 通常の業務+AI実装の推進業務 をしていくことになると、会社と して取り組んでいきたいAI実装 に注力しきれず、期待した成果を 出すことができない懸念がありま す。要員を割り当てるだけではな く、メンバーのチャレンジやAI 実装への注力が実現できるような 環境づくりも併せて重要な要素に なります。  さらに、組織ならではの特徴と して、予算をどこが持つのかとい う観点七重要です。会社の文化や 組織風土によって、事業部ごとに 予算を策定していたり、新しい AI組織で一括管理したりと状況 が異なるため、唯一絶対の解は存 在しません。しかし、組織を動か す上で予算をどこが握るのかとい うことは、組織立ち上げ期におい て整理と周知が必要ですO  これはAIに限らず、新しい技 術やはじめて業務システムを導入 する際にも起こり得ることですO とくに、独自に開発したAIシス テムやサービスを導入するケース では、仕様次第で大きな出費に なってしまいます。しかし、AI をうまく活用できれば人件費など 業務上のコストを削減できる可能 性もあることを忘れてはいけませ ん。コストの問題を克服するため に重要なことは、AIを活用する 業務範囲を判断し、導入効果はど この部署が享受するのか、どこが 予算を負担するか、費用対効果は どれだけかを詳細に計算すること ですO  参考までに弊社のDX組織立ち 上げ事例を取り挙げると、基本方 針としてDX組織で予算を一括管 理します。DX組織は、DX実行 を検討しているプロジェクト情報 を精査し、効果が高そうなプロ ジェクトへDX人材と予算を投資 する仕組みを採用し、リソースを 効率的に管理しています。  DXを参考に、AI組織立ち上げ においては、次の4つのポイント に注意することが重要となりますO  @組織の役割およびミッショ   ンを定義すること  A組織内外のAI人材を積極的   に活用しながらも、自社主体   で進めていくこと  BAI実装に集中できる環境を   整えること  CAI実装の予算編成を明確に   すること 組織内のAI資産の分析・ 評価を行う  AI推進体制を構築した後に実 施すべきことは、現在社内にどの ようなAI資産があるか分析・評 価することですo  本ChapterではAI資産を3つ に分類して定義しますo @すでに利用しているAIツール AAIが適用可能な業務 BAIに活用可能なデータ  各AI資産がどの程度社内に存 在するのか、実際に活用できるの かを確認・評価しましょうo @すでに利用しているAIツー  ル  社内チャットポットや画像解析 ソフトなど、すでに社内で導入さ れているAIヽツールはAI資産と なります。まだAI導入に対応で きていない会社が多い中で、AI 導入の実績があれば、それは大変 貴重です。  すでに社内に導入しているAI ツールがある場合は、当初に掲げ た効果が現れているか評価しま しょうO  ROI・利用率・正確性など定量 的な数値はもちろん、当初設定し た課題が解決されているのかとい う指標も分析しましょう。さらに、 組織ごとにリテラシーや受け入れ の土壌が異なるため、すでにチャ レンジした実績から次回はどのよ うなアプローチが適切になりそう かという検討もできます。  期待通りの成果を上げている場 合もあれば、期待に達していない 場合もあるでしょうOなぜうまく いったのか、なぜうまくいかな かったのか、分析結果を可視化す ることが重要です。ROIのように 正確に数字を算出することは難し いかもしれませんが、目標値を設 定するという意味でもAIにどれ ほどの予算を割いて、その結果ど れくらいのリターンが見込めるの かということを、事前に試算する ことが重要ですO  また利益や削減費用を試算する 際には、AIによる直接的な効果 だけでなく、「AIの導入で起こる 従業員の働き方の変化」といった 間接的な効果も考えてみてくださ い。AI導入により余裕のできた 従業員に任せる業務によっても、 AIの効果は変わってくるはずで す。  AI導入により仕事が無くなる ことを恐れAIに抵抗する関係者 が現れることも予想されますO し かし、現代社会は人手不足であり、 多くの会社が本来行いたい業務を 実現できていません。そのため、 AI導入により仕事が無くなるの ではなく、本来行いたかった業務 を実現できるという前向きな展望 が持てる雰囲気作りが必要となり ます。 AAIが適用可能な業務  AIを導入するためには、業務 の棚卸が必要です。対象となる業 務に関して、「誰が」・「なにを」・ 「どうやって」という観点から業 務フロー、データの流れ、および タスクを洗い出し、業務プロセス を明確にしますO作成された業務 プロセスを用いて、AIの適用可 能性を議論します。  AIが適用可能な業務かどうか を判断するためには「データ」・ 「ヽツール」・「パターン」という3 つの要素の有無が重要です。洗い 出した業務プロセスについて、 AIの適用可能性を整理する際に 活用します。 ・データを用いた業務となってい るか  属人的な業務では、職人のよ  うな方が膨大な経験と勘に頼っ  て行っている場合がありますO  これらの経験と勘をデータ化し、  論理的な学習を可能にする必要  がありますOそのため、すでに  データがあるかどうかは非常に  重要ですOデータがある場合、  AIが適用できる可能性がある業  務と判断できますO ・AIツールが存在するか  AIが得意とする業務は、繰り 返し行うルーチン業務や過去の 情報を基にした情報分析ですO たとえば、データの整理や分類 などを繰り返し行うルーチン業 務はAIを用いて、自動化するの に最適ですOまた、過去の情報 を基にした需要予測や在庫最適 化などもAIが得意とする領域で すOこのような領域においては、 AIツールが開発・市販されてい る可能性がありますO ・業務パターンが存在するか  複雑な業務においてもパター  ンや関係性が存在し、一定程度 の業務分類ができる場合、AIが 複雑な問題や専門的な知識をサ ポートできることがありますO  たとえば、創薬、医療診断、 製品検査などの複雑で膨大なパ ターンを考慮する必要がある場 面では、AIの活用が考えられま すO  生成AIを使用する場合には従 来のAIとは大きく異なり、活用 できるシーンが大幅に増加するこ とが予想されますOそのためにも、 生成AIに精通した人材による業 務分析が重要ですO BAIに活用可能なデータ  AIを構築するモデルを作成す る段階ではデータに基づいて学習 や予測を行うため、対象となる業 務に関連する豊富なデータが利用 可能かどうかということが重要に なります。そのため、AI資産と して、業務に関連するデータを評 価します。  AIモデルを構築する際に重要 となるデータが「存在するか」 「正確か」「十分な量か」という観 点で分析・評価をしていきます。 ・データが存在するか  データの収集元や保管場所を 特定し、アクセスが可能かどう かを確認しましょうOまた、個 人情報のように存在はするが利 用に関する制約がある場合もあ りますO利用に関する制約も確 認しますO ・データが正確か  データが存在することは確認 できたものの、そのデータが不 完全であったり、不確実であっ たりする場合、AIモデル構築や AIのパフォーマンスに影響を及 ぼしますO必要な属性やカテゴ  リを含んでいるか、データにノ  イズが含まれていないかを確認  しますO ・データが十分な量か  一般的に大量のデータがあれ ばあるほど、AIモデルの学習性 能は向上しますOまた、それら のデータには偏りや不足がない ことも重要ですOデータ量が不 足している場合には、データを 準備するところから始める必要 がありますO  以上のような観点で情報を整理 し、AIに活用するデータが社内 に存在するか分析することで、 AI導入を迅速に進められるか分 析・評価できます。  生成AIを使用する場合には従 来のAIとは異なり、事前学習済 のAIを「ファインチューニン グ」することになりますOそのた め、必要とするデータ量は大幅に 少なくて済むとされていますO ファインチューニング観点では次 のような目的を達成するための データが必要となります。 ・自社の専門知識の反映   自社が持つノウハウ、独自の 知識を反映させるためのデータ が必要となりますOたとえば、 自社製品、サービスに関する詳 細な知識、業界特有の表現、用 語、自社のベストプラクティス などを学習させるためのデータ が必要となりますO ・最新の情報   自社が持つ最新の情報をAIに 反映させることが必要ですO生 成AIは「事前学習」が行われて いるためすぐに使用できること がメリットですが、その一方で 学習した時点以降の情報は持ち 合わせていないため、最新の情 報を使用することで、より優れ たAIとなりますOたとえば、自 社の新製品情報や最新の市場動 向、競合他社情報、顧客からの フィードバックなどのデータが 対象として考えられますO 一差別化・優位性の確保  生成AIをそのまま使用しては、 同じ生成AIを使う他社との差別 化になりませんOそのため、自 社独自のデータを用意すること が必要ですO  AIツール・業務・データそれ ぞれの観点から、組織内のAI資 産を可視化することが重要である とお伝えしましたO分析と評価の 過程において、すぐにAIを導入 できる状況、AI化したい業務は あるがデータが不足している状況、 既存のAIツールの精度が悪くよ り高精度なモデルへの変更が必要 な状況など、組織によってさまざ まなケースが考えられます。  組織の状況を把握するために、 AI資産の分析と評価を通じて、 組織がすでに保有するAI資産と 今後整備が必要なAI資産を明確 にします。AI資産が明確になっ たところで、AI実装のスケ ジュールを調整し、整備すべき範 囲やAIの活用方法を検討します。  これまでの議論で明らかになっ てきたことは、AIの導入におい て「データ」が極めて重要だとい うことですO 自社データを適切に 管理することが、今後のAI導入 そして企業活動の改善、発展にお いて不可欠です。 使うべきAIを設定する  最近、AIといえば、生成AIが 注目されていますo しかし、ここ まで読んでいただいた皆さんが理 解している通り、AIには生成AI 以外にも機械学習やディープラー ニングなど多彩なソリューション が存在していますoそれぞれの AIモデル・AIソリューションの 詳細な特徴はChapter 2 でまとめ たため割愛しますが、設定した目 的に対して適切なAIを選定する ためのステップとAIソリュー ション決定までのプロセスをご紹 介しますO  使うべきAIを選定するために は、以下の4つのステップがあり ますO l.目的と要件の確認  AIを導入する目的や業務上の 要件を明確に定義しますO  具体的な業務上の課題やニーズ、 期待する効果や成果を明確化しま しょうOこれにより、適切なAI ソリューションを選定するための 基準を確立できますO 2.ソリューションの調査と選定  AIソリューション・ツール・ プラットフォームなどを調査し、 目標と要件にもっとも適したもの を選定します。検討の際に、必要 となる評価軸の具体的な例をいく つかご紹介します。 一機能  ソリューションが提供する機能 を評価します。要件に合致してい るか、将来的な変更に対して対応 可能かという観点で評価しましょ う。具体的には、必要なタスクや 機能を遂行するための機能の有無、 操作性や柔軟性、拡張性などを検 討します。また、自動化や予測な ど具体的なAI機能がすでにある 場合、それらのツールに焦点を当 てて評価します。 ・パフォーマンスと精度  ソリューションのパフォーマン スと精度を評価します。実際の業 務を行うにあたり、要求されるパ フォーマンスを発揮するか検証し ましょう。ベンチマーク結果やテ ストデータに基づいて、モデルの 正確性・予測の精度・処理速度・ リソース使用量などを比較検討し ます。  ベンチマークの一環として実施 される例を示しますO yデータセットの分割   データセットをトレーニング  用、検証用、テスト用のセット  に分割しますO トレーニング用  データでモデルを学習し、検証  用データでパラメーターの  チューニングやモデルを選択し  ますO最終的に、テスト用デー  タでモデルのパフォーマンスを  評価しますO y正確性と精度の評価  テスト用データを使用してモ デルの予測結果を評価しますO 予測結果と真の値を比較し、正 確性や精度の指標(例:正解率、 適合率、再現率、FIスコアな ど)を計算しますOこれにより、 モデルの予測の正確さやクラス 分類のパフォーマンスを評価し ますO y処理速度とリソース使用量の測 定  モデルの処理速度やリソース 使用量(例:メモリ、CPU、 GPU)を測定しますOモデルの 推論時間やトレーニング時間、 メモリ使用量などを計測し、効 率性やスケーラビリティを評価  しますo yベンチマークデータセットの使 用  標準的なベンチマークデータ セットや業界で広く使用される データセットを使用することも ありますoこれにより、異なる ソリューションやモデルのパ フォーマンスを公平に比較でき ますoたとえば、画像認識など の領域における一般的なベンチ マークデータセットには、 MNIST54、CIFAR-1055、Image Net^eなどがありますo ・技術要件と適合性  ソリューションが要求する技術 要件や環境に適合しているかを評 価します。組織によっては、グラ ウトの利用が禁止されているため、 独自のサーバーを活用しなければ ならない場合や、既存システムか らデータを取り込むため、既存 データ基盤とデータ連携が必要な ど、さまざまな制約が存在するこ とがありますO  ハードウェア要件・ソフトウェ アの互換性・開発の柔軟性など、 導入および運用に必要な要件を検 討します。また、既存のシステム やデータ基盤との統合七重要な要 素ですO ・カスタマーサポートとトレーニ  ング  ソリューションを独自開発する 場合は別ですが、提供されるソ リューションの場合、カスタマー サポートやトレーニングについて も評価が必要です。マニュアル、 サポート体制やユーザー教育の充 実度を考慮しましょうO AIソ リューションは、導入して終了で はありませんO導入後も精度向上 やユーザビリティの改善を継続的 に行えるかが、組織全体のパ フォーマンスを左右します。 ・コストと効果  ソリューションのコストとかけ たコストによって得られる効果を 比較評価しますO  一般的には、初期費用である開 発費用・トレーニング費用と、継 続的に発生するライセンス費用・ インフラ費用・メンテナンス費用 などがあるでしょうOそれぞれの 費用に関して、候補となるソ リューションを比較します。  得られる効果も考慮することが 重要です。生産性がどの程度向上 するか、人件費などの費用がどの 程度削減できそうかといった効果 を具体的に分析し、評価します。  一般的なシステム導入効果の指 標にはROI(投資対効果)があり ますが、AI導入費用に対して、 得られる効果や利益は、時間の経 過やさまざまな要素によって変動 する可能性がありますO AIの導 入効果をすべて数値化することは 困難であり、ROIでは導入効果を 包括的に評価することができない 場合があります。ROIを用いる場 合は、あくまで一つの指標としま す。  調査の結果、いくつかのAIソ リューションが候補にあがっだの ではないでしょうかO仮に、まっ たく合致するAIソリューション がない場合には、AIの開発もし くは別の業務でAIを導入してい く方針へ移行することが考えられ ますO AI開発のパートナーと議 論し、別業務へAIを導入する場 合のメリット・デメリットを検討 してください。  冒頭でも説明しましたが、AI は手段にすぎませんO AI導入が 適切でないケースも存在しますO 過度な固執は避け、他のソリュー ションもぜひ検討してみてくださ いO 3.プロトタイプの開発と評価  AIのプロトタイプの開発と評 価時に考慮すべき内容は多岐にわ たりますOここでは、すでにいく つかのAIソリューションが選定 されている状態ですが、一般的に は次のような観点でプロトタイプ の開発と評価を行うことが必要で すO @目的と範囲の明確化 開発するプロトタイプの目的と 範囲を明確に定義しますO Aユーザーニーズの把握 プロトタイプを使用するユー ザーのニーズや要求を把握し、 それを満たす機能やデザインを 考えますO B技術的な要件の確認 プロトタイプを開発する際に必 要な技術的な要件を確認し、そ れに適したツールや技術を選択 しますO C予算とリソースの計画 予算やリソースを計画し、適切 な管理を行いますO D時間の管理 開発に必要な時間を計画し、適 切な管理を行いますO Eデザインとユーザビリティ ユーザビリティを考慮したデザ インを行い、ユーザーが容易に 利用できるようにしますO Fテストとパフォーマンス評価 プロトタイプのテストを行い。 その結果をもとに改善点を洗い 出し、評価しますO Dフィードバックの収集 ユーザーや関係者からのフィー ドバックを積極的に収集し、プ ロトタイプの改善に活かしますO H法的・倫理的な観点 プロトタイプの開発や利用が法 的・倫理的な観点から問題ない かを確認しますO  この中では「Fテストとパ フォーマンス評価」「H法的・倫 理的な観点」が大きなポイントに なりますO評価は定量的に行える とスッキリしますが、生成AIの 場合には定性的評価、相対評価、 ユーザー評価など多角的な視点か らの評価を検討することをお勧め しますO法的・倫理的側面からは、 データ保護、著作権、バイアス、 透明性、説明責任など従来の汀 システムではあまり考慮すること が無かった観点からの評価も必要 となります。 4.ポテンシャルとリスクの評価  プロトタイプの評価でおおよそ の結果が得られるかと思いますO 最後に選定したAIソリューショ ンのポテンシャルとリスクを評価 します。ポテンシャルは、この場 合、業務の効率化、品質向上、コ スト削減などの利益を指しますO リスクとは、データのプライバ シー、セキュリティ、導入コスト、 技術的な制約などの懸念事項を指 しますO改めて、ここまでの比較 結果より、ポテンシャルとリスク をバランスさせながら、AIを選 定しましょうO  ここではAIのセキュリティ、 とくに「AIそのものに対する攻 撃」を中心に考慮すべき事項を深 掘りしますO AIに対するサイ バー攻撃の例としてはすでに次の 事例が報告されています。 一画像に特定のノイズを乗せる  ことにより画像を誤認識させる ・チャットポットに差別的な言  葉を学習させて、差別的な発言  をさせる  AIシステムに対するリスク管 理としては他のセキュリティと同 様に次のような内容に関して考慮 する必要がありますO ・ライフサイクルとの関連を特  定する ・保護すべき対象の資産を特定  する 一対象の資産に対する脅威を特  定する ・脅威に対するリスクを特定し、  対策を検討する ライフサイクル  AIのライフサイクルは、次の 4つのフェーズに分解できます。 @企画フェーズ:AIで解決した  い課題を明確にするO  課題を解決するためのAIの種 類を設定し、求められるAIの精 度などを設定します。 Aデータ収集フェーズ:AI構築 のために必要なデータを収集す るO  収集するデータは、組織内デー タ、公開データ、他組織が提供す るデータ、などがありますO B構築フェーズ:AI構築に適し  た形に変換、構築するO  ファイルフォーマットの変換、 異常値の除去、ノイズの除去、 データの匿名化・異表記の正規化、 学習用データの補強(データ拡 張)と前処理されたデータをもと にAIを構築し、AIアルゴリズム の選択を行い、学習用データを学 習させ、AIモデルを構築しますO C運用フェーズ:構築されたAl  を利用するO  AIを利用したい環境に展開し、 AIに推論させたいデータを入力 して推論させます。AIが導き出 した結果をモニタリングし、時間 経過による精度低下などを検知し たら、必要に応じてAIのメンテ ナンスを行います。 AIシステムの資産  AIシステムの資産はデータの みならず、ソフトウェア、ハード ウェア、ネットワークなどの通常 の皿資産もありますし、AIモデ ル、アーティファクトと呼ばれる ようなものもあります。 ・プロセス:データ収集・探  索・前処理・拡張、特徴量の選  択、モデル構築・学習・チュー  ニング、メンテナンスなど。 一環境:グラウト、ネットワー  ク、開発環境、ライブラリ、Al  プラットフォームなど。 ・アーティファクト:AIシステ ムアーキテクチヤ、データガバ ナンスポリシー、アクセスリス ト、ユースケース、ビジネスモ デルなど。 ・モデル:AIアルゴリズム、Al  モデル、パラメーターなど。 ・アクター・利害関係:クラウ  ド事業者、データエンジニア、  データの所有者や提供者、Al  開発者、データサイェンティス  ト、エンドユーザ、モデル提供  者など。 ・データ:生データ、ラベル付  きデータセット、前処理済み  データ、学習用データ、テスト  データなど。 AIシステムに対する脅威  セキュリティを検討する際に最 初に考える必要がある部分です。 ・不正行為:AIモデル、データ  の搾取、改ざん、破棄、ボイス  ニング、敵対的サンプル、精度  低下、情報搾取。 一意図しない被害・損害:AIシ  ステム、モデル、利用者の意図  しない資産の破壊、設定ミス、  品質低下、性能低下。 一法的要因:法律、契約などに 基づく、制限、対応義務、不履 行に対する買収、プライバシー、 個人情報、ガバナンス、SLA 違反など。 ・盗難一乗つ取り:AIシステム  のインフラに対する、乗つ取り、  盗聴、データ搾取、遮断など。 一物理攻撃:インフラ、ハード  ウェア、ケーブルなどの物理資  産の破壊などを目的とする活動。 一機能停止:インフラ、ネット  ワークやプラットフォームなど  のサービスなどの中断または要  求する水準を下回る品質。 ・災害:甚大な損害または人命  の喪失を引き起こす突発事故ま  たは自然災害。 AIモデルへの脅威、脆弱性、 対策  一般的な「盗聴、乗っ取り、遮 断」などは通常の汀セキュリ ティ対策により、緩和、早期復旧 ができる前提とし、ここでは「不 正行為」とくにAIモデルに対す る脅威、脆弱性、対策について議 論します。  AIに対する攻撃とAIライフサ イクルの関係を図で表すと図3-8 のようになります。  課題設定→データ収集→  昌謐→AIH→爪IU     咏ぐ√・み     な晶二昌     (黒噐) 回避攻撃        ・データへの皿I,゛        1−へ白 図3・8 AIに対する攻撃とAIライフサイクルの関係 @ポイズニング(汚染攻撃)  攻撃者が学習用データやAIモ デルに何らかの細工をして、AI モデルの開発者の意図しない推論 結果を出力させる攻撃の一種です。 攻撃の対象にはデータとAIモデ ルがあります。  攻撃対象がデータの場合、たと えばAIモデルを学習させる際に、 攻撃者は誤ったラベルが付けられ たデータを混入させますO AIモ デルがこれを学習すると、再学習 後のAIモデルは意図しない推論 を行う可能性がありますO 脆弱性の例 ・AIモデルの学習用データの量  が不足しており、ポイズニング  されたサンプルの影響を受ける ・AIモデル、学習用データ、Al  モデルの推論結果などに対して、  適切な管理やモニタリングがで  きていないため、ポイズニング  されていることに気づけない  一信頼できない機械学習ライブ  ラリ、AIモデル、学習用デー  タが使用される 対応策の例 ・学習用データをモニタリング  し、疑わしいサンプルを検出し  て削除する ・学習用データの補強(データ  拡張)で、ポイズニング攻撃の  影響を薄める ・学習用データや推論結果をモ  ニタリングし、意図しない振る  舞いとなっていないかを確認す  る ・信頼できる機械学習ライブラ  リ、AIモデル、学習用データ  を使用する A回避攻撃  推論用データにノイズが加えら れAIモデルの推論が誤って行わ れることがありますOノイズがわ ずかな場合、人間が元のデータと の違いを識別できないことがあり ますOこのような小さなノイズを 加える攻撃を回避攻撃と呼び、小 さなノイズが加えられた推論用 データを敵対的サンプルと呼びま すO  たとえば、品質管理でこの攻撃 が成立すると、良品・不良品判定 が適切に行えなくなり、不良品を 誤って良品として出荷してしまう などの被害が発生する可能性があ りますO 脆弱性の例 ・敵対的サンプルを検出できな  い ・学習用データに敵対的サンプ  ルを用いて学習してしまう、敵  対的サンプルの学習不足 ・仕様が明らかになっているAl  モデルを使用している ・AIモデルから出力される推論  結果以外の情報が多すぎる 対応策の例 ・データが敵対的サンプルであ  るかどうかを検出するための  ツールを導入する ・学習用データセットに敵対的  サンプルを追加する ・AIモデルの取得経路などを評  価し、外部からAIモデル情報  を取得されないかを評価する ・AIモデルから出力される推論  結果をユーザーに通知する際、  通知する情報は必要最小限にし、  ノイズ生成に悪用されるような  情報は通知しない B情報搾取  攻撃者がAIに推論させるデー タセットを用意し、そのデータ セットとその推論結果を対応させ ながら観察することで、学習用 データやAIモデルに関する情報 を盗み出す攻撃ですO学習用デー タの盗み出しには、メンバーシッ プ推論攻撃、インバージョン攻撃 などがありますO 脆弱性の例 ・対象がモデルの場合AIモデル  の内部情報(学習により得られ  たモデルのパラメーターなど)  が外部から取得可能なことがあ  る。 一対象がデータ、モデルの場合  AIモデルから出力される推論  結果以外の情報(信頼スコアな  ど)が多すぎる場合がある。 対応策の例 ・推論用データをAIモデルに入  力する前にノイズを加え、攻撃  者の観察を妨げる ・AIモデルから出力される推論 結果をユーザーに通知する際、 通知する情報は必要最小限にし、 学習用データやAIモデル情報 の盗み出しに悪用されるような 情報は通知しない  AIを使ったサイバー攻撃の例 として「ディープフェイク」があ りますO従来の合成技術では難し かった、動画や音声の精度の高い 合成を行えるのが特徴ですO「実 際には行っていない動作」や「実 際にはしていない発言」の動画や 音声を得られるうえ、付帯情報な しに人間がそれらを偽物と見破る ことが困難であるため、さまざま な目的のため悪用されている例が あります。これらに対する対応方 法として「AIでAIを守る」とい う選択肢もあります。  AIは、その処理がブラック ボックスであり、かつ、自動で利 用・運用されるケースが想定され ますOそのため、AIが出力した 結果が人間の想定外の結果、意図 しない結果となる可能性があり、 問題となる場合があります。  AIシステムは、従来のAIを搭 載していないシステムとは異なり、 以下のような特徴かありますO yAIの出力(推論結果)の根拠  を説明できない y学習用データと推論結果の対  応づけが難しく、予期しない結  果が出力される場合がある y運用方法によってはAIモデル  が随時更新されていく  これらの特徴かあるためAIの 利用の増加や、AIを活用した サービスの市場展開が進むにつれ、 AIの有効性や信价陸などの品質 を定量的に評価するニーズが高 まっており、AIのリスクを考え ていくことが必要となります。  AIソリューションを具体的に 選定する際の参考となるよう少し 専門的な内容も交ぜながら説明し てきましたOこれらのステップを 経ることで、対象業務における AIソリューションの比較・検 証・選定が完了し、残るは実装だ けになりますO次節では、実装に 関して述べていきます。 ノ3 AI導入の  麺\  ント 既存の業務のAI置き換え を実行していく 前節で選定したAIヽツールを導 入していく際に注意すべきポイン トをお伝えしますO AIヽツールの 導入方法は、新規導入や既存ツー ルの変更など、組織によって状況 が違うかと思いますが、留意すべ き事項には差がないと考えます。  一般的なシステム導入における 要件定義>システム選定>シス テム設計>開発>テスト>ト レーニング>展開を基準にする と、すでにシステム選定までが完 了している段階です。ユーザー側 には要件定義の情報を伝えるとい う役割がありますが、システム設 計・開発はAIツールを提供する ベンダーが主にリードしていくス テップになります。そのため、本 節ではテスト・トレーニング・展 開において注意すべきポイントに 絞ってお伝えします。 @ステークホルダーの関与  AIツールに限らず、システム 導入においては、ステークホル ダー(経営層や各部門の責任者な ど)の関与とコミュニケーション が重要です。AIで利用するため のデータの準備やAIツール導入 前のテストなどはプロジェクトメ ンバーだけではなく、ユーザー部 門の協力が不可欠ですOユーザー テストでは、プロジェクトメン バーでは気づけなかった観点を指 摘してもらえる可能性があり、 AIの運用に貴重な情報が得られ ることがあります。  各ステークホルダーに協力して もらえる体制を早期に構築してい くため、周囲を積極的に巻き込ん でください。 Aチェンジマネジメント  チェンジマネジメントとは、組 織内で改革を実現するために、組 織のメンバーが変化を受け入れら れるようにするマネジメント手法 です。  人間には未知のものや変化を受 け入れたくない/‘現状維持バイ アスが存在し、変化に直面し た場合にぱ抵抗”を示しますO これは人間だれしもが持つ性質で すO  AI導入という大きな変革を実 現するには、組織の“抵抗”を取 り払う必要がありますOチェンジ マネジメントを実施し、「なぜAI を導入するのか」、「AIを導入す ることによって、従業員にどのよ うな変化が起こり、具体的に何を すべきか」を伝えなければ、多く の人を変革に巻き込めず、AI導 入が失敗に終わってしまいますO  チェンジマネジメントを実践す るため、ADKARGモデルの概要 と具体的なアプローチを図にまと めました。  「ADKAR」という言葉は、変革 を成功に導くために個人が達成す る必要のある5つの要素、 Awareness(認知)、Desire(欲求)、 Knowledge(知識)、Ability(能力)、 Reinforcement^定着)の頭字語で す。  このモデルは、700以上の組織 の変革パターンを研究した結果、 ProsciG旦Zの創設者であるJe汀 Hiattによって約20年前に開発さ れたものですo ADKARGモデル は、世界中の何千ものチェンジ リーダーによって使用されていま す。  このモデルが強力な点は、組織 の変化は個人が変化したときにの み発生する、という理解に基づい てる点ですo変革の期間を通じて 個人を導き、過程にある障害に対 処していきますo チェンジマネジメント実施のためのADKAR変革モデルの暖要と臭体的アプローチ  A  D  K  A  R  臨謡2.)J具)(謡患。,厨駱 m。,j怎肖   言万万 1‥。‥……。  を伝えます。              篁します。 図3-9 ADKARモデルの概要と具体的なアプローチ ニ子犬 デニブ ザーの関心を損なってしまったり する場合があります。そのため、 限られた範囲・限られたユーザー へまずはパイロット的にツールを 展開し、ツールの効果や課題を評 価することをオススメしますOパ イロット導入することで問題点の 特定・改善を繰り返すことが容易 になり、ユーザビリティの向上や 機能追加などの改善によって、 ツールの効果を最大化できますO  AIツール導入における環境は 各組織によって、異なりますし、 あくまで先述の3点は抜粋となり ます。テスト・トレーニング・展 開などの後工程ではユーザーの心 の動きに十分注意して、AI組織 のメンバー同士で議論を重ね注意 すべきポイントがその他にもあれ ば、随時対応していきましょうO  ここまでAIヽツール導入ステッ プにおいて注意すべきことを詳細 にお伝えしてきましたO AI導入 をリードしていく方には導入時の ハンドブックとして、AIのユー ザーの方には、AI利用時に注意 すべきことの参考資料としてご活 用いただければと思います。  なお、AIヽツールは導入して完 了ではありませんO導入後に目標 が達成できているか、精度は問題 ないか、進捗をチェックしていく ことが重要ですOそのため、次節 では、AI実装後の進捗チェック に関して解説しますO 実装の進捗をチェックする  一般的なシステムでも導入後に 目標が達成されたか、効果が出て いるかという観点でチェックを行 いますが、AI導入においてはよ り重要な役割を担いますO  AIツールを導入することで既 存業務が根本的に変化するため、 ユーザーが活用する中で、当初の 目標としていた効果が得られな かったり、ユーザビリティの観点 から変更が必要になったりするこ とが考えられます。そのような場 合には、AIのアルゴリズムや データ、業務フローを調整する必 要がありますO  基本的な考え方として、AI導 入の効果を最大化するためには、 導入後にどれだけ自社の状況にあ わせたチューニングができたかど うかが肝になります。  ここでは、現場のAIの利用状 況や世界全体において日進月歩で 進むAIの進化に素早く対応し、 組織内のAIツールを進化させる ために有効となるOODAループ という考え方を紹介します。こち らは組織だけではなく、ビジネス パーソンがより効率的にAIを活 用していくためにも参考となる考 え方です。  OODAとは、観察(Observe)・ 状況判断(Orient)・意思決定 (Decide)・実行(Aet)の頭文字を とった略称であり、不明確で常に 変化していく状況の中で、最善の 意思決定を行い、即座に行動を起 こすことを目的としたフレーム ワークです。明確な計画がない課 題に対して効果的なフレームワー クと言われており、短期間で効率 的に意思決定できることから、緊 急事態やトラブル対応に強みを発 揮します。  Observe       Orient  観桑       状況判断  褥   Act       Decide  @ 胎 OODAループは耳慣れないと 思いますので、もう少し詳細に説 明すると、これはアメリカのジョ ン・ボイド元空軍大佐が開発した 意思決定手段です。元々はジョ ン・ボイド大佐が航空戦に挑むパ イロットの意思決定方法として提 供しており、特徴的なのは、意思 決定の柔軟さです。現役時代ボイ ド大佐は1対1のドッグファイト ゲーム(戦闘訓練)で6年間、時 間にして3,000時間、無敗であり、 追いかけられる位置から必ず40 秒以内に相手の背後を取ることか ら、「40秒ボイド」という名が与 えられていましたOボイドは退役 後、状況認識と意思決定、そして 反応の違いを結論付け、OODA という理論を導き出したものです。  また、OODAループはループ という言葉の通り、一度行って終 了ではなく、繰り返し行うことで 大きな効果を発揮しますo  それぞれのステップにおける考 え方や行動の例を以下に示しますo ・観察(Observe)  AIのアウトプットが最適か、 ユーザーが変更したいと思ってい る箇所がないかユーザヒアリング なども駆使して、慎重に観察しま しょう。また、世の中のAI技術 が進化し、より最適なAIソ リューションがないかも観察をし てみてくださいo最適化するため 小さな変化や小さな要望に着目し てくださいo ・状況判断(Orient)  観察(Observe)を経て、得ら れたデータや利用者の意見を分析 し、AI導入の効果や変化の把握 と改善点を特定しましょうo特定 された問題点を理解することで、 次に何をすべきか判断してくださ 廴丶。 一意思決定(Decide)  状況判断(Orient)によって、 特定された状況に応じて、打ち手 を決定します。たとえば、AIモ デルの品質が不足している状況で は、パラメーターの調整を行うこ とで性能向上を図ったり、AI学 習を増やしAIの回答の精度向上 を行ったりするなど、状況に応じ て必要な意思決定をしてくださいo  また、この時点で意思決定する だけの情報がないことに気づいた ら、別の角度から観察(Observe) してみますo 一実行(Act)  意思決定(Decide)によって、 決定した対策を実行します。実行 後は再度、変更点を観察 (Observe)し、再度OODAに取 り組みます。  常に現場の変化やより最適なア ウトプットが出せないか状況の観 察を行い、組織においてより価値 の高いAIツールにすることを 日々目指してください。  日本ではPDCA(Plan-Do- Check-Action )^8サイクルは OODAループより認知度も高く、 実績豊富なフレームワークです。 しかし、この変化が激しい VUCA5? (フーガ)時代において は万能のフレームワークではなく、 PDCAだけでビジネスを進めてい くのは賢明ではありません。  VUCA(フーガ)とは、 Volatility (変動性)、 Uncertainty (不確実性)、 Complexity (複雑性)、 Ambiguity (曖昧性)という4つ の単語の頭文字をとった言葉で、 目まぐるしく変転する予測困難な 状況を意味します。  PDCAサイクルは品質管理や生 産管理のためのフレームワークな ので、変化する状況においては、 スピード重視のOODAループと 従来のPDCAサイクルを使い分 けることが理想的です。とくに AIを取り巻く環境は技術だけで なく、各種規制、倫理などの観点 から目まぐるしく日々変化してい る状況ですのでOODAループに よる対応は非常に効果的と考えら れますO  この本を手にとってくださった ビジネスパーソンの皆さんは何か しらの組織に属している方が多い かと思います。皆さんが与えられ たミッションの中で、AIという ツールを使って組織の生産性向上 や組織の業務改革などの実行に貢 献いただけると幸いです。 ゾ4 AIの個人  半ノ 個人編  組織編では組織全体でAI導入 に取り組んでいくために参考とな る情報をお伝えしましたが、立場 や組織全体のポリシーの制約によ り、実際の導入が難しい場合も考 えられますO組織で導入できない からとあきらめるのではなく、個 人という単位でもAI活用を進め ていき、AIを駆使するスキルを 身に着けていくべきだと考えてい ますO  そこで、個人編では、ビジネス パーソンがAIをどのように活用 していくのかヒントとなる情報を 少しでもお伝えできればと思いま す。すでにAIは世の中にあふれ かえっています。AIは仕事に限 らず、人生を豊かにしていくうえ でも、どのように向き合うかを考 える必要があるでしょうO仕事に 限らず、スキルアップのための学 習や健康管理にも注目して、AI を日々の生活にどのように導入し ていけばよいのかお伝えしますo  AIを業務利用する際に組織の コンプライアンスを遵守するのと 同様、個人利用の場合は個人情報 をむやみに入力しないことに留意 してくださいo このChapterでお 伝えしてきたリテラシーを意識し ていきましょうo 仕事効率化へのAI活用方 法  仕事効率化へのAI活用という ことで、皆さんがAIをビジネス シーンで活用する際に参考となる 利活用方法と注意すべきポイント を紹介しますO本節を読んでいた だくことで、一般のビジネスパー ソンが直面する課題に対処し、 AIを用いて付加価値の高い業務 ヘシフトできるようになればと思 いますO タスク管理と自動化  多くのビジネスパーソンは業務 目的を達成するためにタスクとい う作業の最小単位へ分解し、業務 を推進しているのではないでしょ うかO私自身もプロジェクトでは WBS (Work Breakdown Structure) という作業(Work)を分解 (Breakdown)して構造化 (Structure)した資料を作成し、 長期間におけるプロジェクトを夕 スクに分けて管理しています。一 般的な業務でも上司やお客様の依 頼を期限通りに適切な成果物とし て提出するために、タスク管理を 行うことが多いと考えられますo  タスク管理は@タスクの分解、 A全体のスケジュールの管理、B タスクの実行の記録という3つの 機能を持ち合わせています。B夕 スクの実行の記録という場面では、 AIを活用するシーンがあまりな いので、@とAの2つの機能を AIで代替する方法をご紹介しま すOぜひ、皆さんの業務に取り入 れていただき、業務効率の向上を 目指してください。 @タスクに分解する  生成AIにやらなければいけな いことをプロンプトとして書き込 むことで、タスクを細かいステッ プへ分解してくれますOただし、 あなたが実際にタスクヘ分解する としたらどうするかという観点で 出力結果をレビューし、ブラッ シュアップすることを忘れてはい けませんO大まかにやらなければ いけないことを洗い出すためのた たき台だと考え、出力結果を妄信 することがないように注意してく ださい。  下図の例では、「製造業各社の SDGsについてまとめる。」とい う課題をどうすればよいか相談し た結果が出力されました。  タスクに分解する  7ま諾雪擂ぷ豐儡昌雪雲留次,ふ。。  澀造杲各社のsDGsの櫚要  ‘。名卜のsQ[づ|。Ks.IIリリーJ・を斤う   こご昌芯江口雪こ。7雪噐鶚謡で,昌こと   ーズ;1爾なと萢ロペ.iDcslこ圜7す戸叨7111]il画を1311もことか5・まれJ可。・た。汽   iuI]s116511こrするsΓΣ9力ilL松=J.画遍.Qり翻aQ.tF日出すjJとも,f翌・iこなり豕・。   2.們1匸の5DaもqgL,lJ苳る5Daをまと・・   ま二にこ:ここー。。。。。。。   5.名むがsaぞ匯衄百lた匐:こ・・するilsi.sl・すa    a?お昌こごコこをまとめalものであり。名社csDGsについて完包こ耙  図3・11タヌク分解にAIを使用した例 A全体のスケジュールを管理する   タスクを分解したら各タスクに かかる所要時間を見込み,スヶ ジュール管理しましょう。現時点 のAIでは皆さんの作業スピード を予測し,スケジュールを立てる ことはできませんが,各タスクの スケジュールを管理して、リマイ ンドしたり、進捗を取りまとめた りすることは、すでに多くのスケ ジュールアプリで実行可能ですO  また複数業務を抱えている場合、 どの仕事から手を付ければよいか 分からなくなることがあるかもし れませんO期限と重要度の観点か ら優先して取り組む必要がある夕 スクを洗い出すことで、限られた リソースで最大の成果を出すこと が期待できますO 自然言語処理によるコミュ ニケーション改善  従来、コンピューターは機械語 という数字のOと1の二進数から 成り立つ言語やプログラミング言 語のようなエンジニアが扱う言語 しか理解できませんでしたO AI によって、コンピューターは人間 の自然言語(日本語や英語などの 言語)を理解し、処理することが できるようになったため、多くの 人がコンピューターとコミュニ ケーションすることができるよう になりましたOさらに、音声にも 対応しています。  この自然言語処理を利用して、 皆さんの仕事を効率化する方法を いくつかご紹介します。 メール  現在ビジネスパーソンにとって、 メールやチャットは無くてはなら ないツールですO 日本ビジネス メール協会が実施した「ビジネス メール実態調査2022」によると、 日本のビジネスパーソンは一日 60通以上のメールを受信し、16 通以上のメールを送信しているそ うです。また、メールを一通書く のに平均6分5秒かかっているそ うで、およそ1日の内、90分以 上をメール作業に費やしているこ とがわかっています。  メールフオルダーの管理をすべ て、AIに任せてしまうのはまだ まだ難しいですが、メール作成は 生成AIを駆使することである程 度時間の短縮が期待できます。な お、メール返信の場合には、背景 や事情などを説明しなければいけ ないため、期待通りのアウトプッ トが難しい場合が多いでしょうO  しかし、広告の文面作成や初回 あいさつのお礼などの一般的なシ チュエーションにおけるメールの 発信の場合は、状況と伝えたいこ とを生成AIのプロンプトに入力 すれば、メールの下書きが完成し ます。さらに、でき上がったメー ル文面をあなた自身でレビューし、 広告の場合には、あなたが考える オススメのポイントを追記したり、 挨拶のお礼の場合には、挨拶の際 に会話した内容を追記したりする ことで、あなたらしさを加え、機 械的になりすぎないあなたのメー ルが完成しますO  下記は渋谷で20代の若者向け に音楽祭を主催することになった 私か、スポンサーを見つけるため に書いたメールです。精度として は、70%くらいかと思いますが、 およそ1分でここまで書くことが できました。この文章に音楽祭の 独自性や私自身の思いを追記すれ ば、実際にスポンサーを探せるレ ベルの文章になるはずです。  AIを駆使して,メールを書く  回忌良司EE日なー・&,.・--J・−j-・  実哨α]メー几夊を鳶LIてい廴£eまjか.  7::自楽槊のスポンサー錨員にっいて  こん1むら|ま私たら「3再谷でliねl;るs湶邇の主優名でり.こgs楽霞・3.2a代の石名廴しを刔  slr回包冫れます.  私たらIJ.j[jl・a・,≪i匚《li・y,li冫リーを皿しc・.1まl.メホンサー|・なつ「.LIJこだ《  ことて,以・のようなヌ|リ・丶・卜があり画・,  ・洒年sへ刃i喟煢忿の笳浅  ・プランF:11可戻の向上  ・乱・・の発盍やプロモーシコンの縋会の廸倶  また,&・寸:まxポンサーのご翌・lこ自わuc,s4な蒭興をご掘偶々・き豕す.刎えぱ,£色掲  載やブース訛,Iχa●12.\IF夛う1.y 1・sjifl,ljl`',li・荀り・す.  ぜひ,こ4呶会I・,言倡たしI・,支員ぎ1・iる惚廛胴廴ごE力いただ卜ulj・幸.1でj,祠a・ごs間やご要  ・jll冫・j・いまl,た弓,r友皿r6・・.1.・al]骭≪だ・j11.  よ6しくお甬,111七します.  0 3-12メール作成にAIを使用Lた例 音声アシスタント   SiriやAlexa、Googleアシスタ ントなどの音声アシスタントは話 しかけるだけで予定の入力や電話 の送信,天気予報の通知などをし てくれます.ビジネスの場面では, 音声アシスタントがあなただけの 秘書となって、スケジュール管理 やメール通知、メールの音読を実 行してくれます。他にも、音声検 索を通じて、特定の情報やデータ を取得してもらうことで、効率的 な情報収集が可能となるでしょう。  多くのビジネスパーソンが ちょっと面倒だと感じるタスクは、 音声アシスタントに依頼すること で処理してもらえます。すぐ近く にいるあなただけの秘書としてぜ ひ有効活用してみてください。  また、文章の記入も音声アシス タントで実施できますo音声入力 を駆使することで、頭の中にある 情報をアウトプットできますし、 文字起こしをすることで視覚的に も情報を捉えることができ、より 頭の中を整理しやすくなります。  実際に、以下の文章はWordの ディクテーションという機能で、 現在書いております。  「頭の中にあるものをo外に出す ことで、より。思考がクリアにな り。業務課o速くなると思いますo ご覧のように。句読点の位置や。 誤字脱字、そういったものはあり ますか?従来のO自らが文章を書 くよりも。早く効率的に業務がで きますのでOぜひ皆さんもサポー トの一つとして音声入力を試して みてください。」 言語翻訳  ビジネスのグローバル化に伴い、 英語でのコミュニケーションが求 められる機会が増えている方もい らっしやるのではないでしょうか。 もちろん、英語でスムーズにコ ミュニケーションができることが 理想ですが、まだ英語を勉強中! という方もいらっしやると思いま す。そんな方はDeepLやGoogle TranslateのようなAIの言語翻訳 ツールを使うことで円滑なコミュ ニケーションを図ることができま すoただし、言語翻訳はあくまで 補助的ツールです。文脈によって は、誤訳や意図しない表現の問題 が発生することに留意してくださ 廴丶。  ツール利用は注意が必要な側面 もありますが、うまく使うことで きれば大きな効果を発揮すること も事実です。私自身もノンネイ ティブですが、ビジネスで英語を 使うシーンがあり、非常に苦労し ているため、参考までにビジネス における英語翻訳精度向上方法の コツを2つお伝えしておきます。  一つ目は、「囗→英」翻訳後に 再度「英→囗」翻訳をして、同じ 意味となっているかどうかという ことを確認する方法です。「英→ 囗」の場合は、「囗→英」で チェックしますo  二つ目は、GingerのようなAI による英文法チェックツールを用 いて、文法として適切かどうかを チェックする方法です。現在の AI技術では、最終的には自らの 英語力で判断が必要になってしま いますが、ビジネスで活用するの に支障がないレベルで英語を使い こなすことができるので、ぜひ活 用してみてください。 テキスト要約  議事録やニュース記事・学術論 文などをまとめることが必要な際 にAIによる要約技術を活用する ことで、重要なキーワードやポイ ントを抽出できます。膨大なテキ ストを瞬時に要約することで、時 間とリソースを節約し、重要な情 報を見落とすことなく、効率的な ドキュメントレビューや分析が可 能になりますOただし、要約をす ることによって、内容が一部欠落 し、当初のドキュメントに記され ていたことが正確に伝わらない可 能性があるというリスクを孕んで いますOそのため、重要な意思決 定に用いる報告書などの場合には、 本来の意味が含まれているか原文 を確認しなければいけないことに 留意しますO スキルアップと学習支援に AIを活かす  教育を意味するEducationと Technologyを組み合わせたEdT ech (エドテック)という造語が あるくらい教育に対してテクノロ ジーを活用する動きは活発ですo ここではAIを学習に活かす方法 をご紹介します。ぜひ皆さんも AI学習を活用し、スキルアップ やキャリアアップを目指してくだ さいo  まず初めに、AIの大きな特徴 であるパーソナライジング技術を 活かしたカスタマイズ学習に関し て紹介しますo カスタマイズされた学習経 験  多くの学習プラットフォームで は、AIによるパーソナライジン グを通じて、学習者一人一人へ最 適な学習機会を提供していますO 特定のスキルを習得するための資 格講座や語学講座・さまざまなス キル学習の機会を提供するトータ ル学習プラットフォームなども最 近では登場していますが、基本的 にはそれらのプラットフォームに はAIが組み込まれており、あら ゆる学習が個人のスキルや知識・ 能力に合わせて最適化されている ことを感じますO  このような学習プラットフォー ムを使うことで苦手分野や学習の 進捗状況を客観的に把握できます し、何よりも習得までの期間が非 常に短くなります。個人が何かを 学習する中での困ることの多くは、 何かわかっていないかがわからな かったり、どのような計画で進め ればよいかわからなかったり、続 かなかったりということだと思い ます。このような悩みをAIは解 決してくれますし、AIサポート のおかげで学習が続けやすくなり ますO  また、AIは過去の学習履歴や 興味に基づいて、最適な学習教材 や資料を推奨してくれますO  続いて、AIが教師の役割を果 たすAI学習をお伝えしますO AIによる教育とトレーニ ング  AIが教育をするというとなか なかイメージが湧きづらいと思い ますが、英語学習の領域ではAI を用いた教育がすでにサービス提 供されていますo AI教師に対し て、Speakingを行い、発音や文法 を評価され、指摘が入るようなイ メージです。シチュエーションや 私たちの回答に応じて、AIが適 切な会話を返してくれることもあ り、実際にネイティブスピーカー と会話しているような感覚になる サービスも多数登場しています。  現在の目立ったAI教育は英語 教育ですが、今後さまざまな学習 体験において、AIが教師のよう な役割を果たすことが予測されま す。完全に人間の教師を代替する ことは難しいですが、AIを活用 した教育が学習方法に変革をもた らす可能性が高いため、ビジネス パーソンの皆さんは効率的なスキ ルアップやリスキリングの一環と して、AI教育に取り組んでみて くださいO 健康管理にAIを導入する  ここまではビジネスによった AI活用をご紹介しましたが、本 項では、AIを用いた健康管理を ご紹介しますOビジネスを行うた めには、まずは健康でなければな りませんOぜひAIを生活に取り 入れてみてください。 AIを使った健康データのモニ タリングと予測  AIの登場以前から健康状態を 把握するために、健康データを収 集することは行われていましたが、 AIの登場によって、収集された データが大きな意味を成すように なってきています。  健康データとは、体重や体脂 肪・心拍数・血圧などの数値を指 し、現在では体重計やスマート ウォッチなどのデバイスから自動 でデータ収集し、AIアルゴリズ ムによって分析を行い、膨大な データからパターンや異常を検出 することで健康管理を実施するこ とができるようになってきていま す。  たとえば、通常の心拍から大き な変動を検知した場合、ストレス や心臓の問題を早期発見すること が期待されますOまた、心拍の データだけでなく、複数の健康 データを組み合わせることで関連 性も分析し、病気の初期兆候やリ スク要因も洞察できるでしょうO  代表的な例はApple Health、 FitbitやGarminなどですが、健康 データを統合管理することで、皆 さんの健康に対して適切なアドバ イスを実施し、万が一異常を検出 した場合には、医師の診察を推奨 することもあります。  余談ですが、現在はこれらの データが医師に提供され、診察の 基礎情報になることは残念ながら ありません。将来的には医師との スムーズな情報連携や生活習慣や 遺伝子情報と結びつけた健康リス クや疾患発症の可能性を評価する ことを期待したいところです。 AI活用と企業事例 Chapter∠|■  1 企業のAl ケサ  Chapter 1 の「AI思考とは」、 Chapter 2の「AIの基礎知識」、 Chapter 3 の「AIをビジネス組 織・ビジネスパーソンへ実装す る」では、AIと共存するために 必要な考え方や実装におけるポイ ントを中心に、今後の未来を見据 えたお話をさせていただきましたo これから変わりゆくテクノロジー の進化や可能性を考慮しつつ、企 業における人間と共存して伴走し てくれる仲間としてAIと向き 合っていくことが非常に重要とな りますO  ここからは、実際に企業がどの ようにAIを活用しているかにつ いてご紹介します。社内でAIを どのように活用できるか、そして それがビジネスの成功にどのよう に寄与するかについて具体的なイ メージを持っていただけたらと考 えています。AIは、これからの 企業や組織、個人にとって重要な 存在であり、同時にますます身近 に感じられるものとなるでしょうO 活用事例を通して皆さんのAIの 有効活用の一助になればと思いま すO AIの社会実装の推進  活用事例をご紹介する前に、囗 本のAI社会実装の推進に向けた 取り組みについて、統合イノベー ション戦略推進会議における 「AI戦略2022」(内閣府2022年4 月22囗)について触れておきま すO ・これからわずか数年の取り組み によって、DXの後に到来するで あろう「アフター・デジタル」の 時代での囗本の国力に大きな差異 が生じていくに違いない。今の私 たちに必要なのは、AIについて 先進的な国と囗本の違いがどこに あるのか、何に取り組むことで我 が国においてAIの実装が進展す るかを理解し、私たちの社会経済 や国民生活を将来にわたって豊か なものとするための取り組みを進 めることであるO ・AIを効果的に利活用し、多種 多様な仕事を効率的に処理するた めには、「AIは人の仕事を代替す る」という思い込みを捨てること が必要であるOたいていの場合、 AIは大を支援する存在である。 大は、AIと協調していくことで、 労力を最小化し、利益を最大化す ることが可能となるO ・AIの利活用を検討する際に、 「技術者だけがAIを深く理解で きる」との思い込みのもと、AI のシステムを構築できるような技 術者を必要条件のように考えてし まうのは妥当ではない。実際には、 そのような技術者がいなくても、 他の多くの事例からAIの製品や サービスの活用によって何かどの 程度の水準で処理されるのかと いったことを理解することは可能 であるO ・データは重要ではあるけれども、 それ以上に重要なのは、サービス 等の構築や提供の際に、AIを強 化するデータ収集等を行うような 持続的なサイクル(ループ)を形 成するように配慮することである。  これまでの常識や思い込みを捨 て、企業による実装を念頭に置く ことが重要になるとも記載されて いますO  また、ディープラーニングを重 要分野として位置づけ、@AIの ブラックボックス性の打破と不安 の払しょく、AAIの適用領域の 拡大、BAIをめぐる人材や技術 情報、データ取扱いルール等に関 する追加的取組、C政府による強 力な牽引、D「強み」への注力が 推進されることも記載されていま すOこのことから、今後ますます 企業へのAI活用が進むと予想さ れます。 企業のAI活用実績  日本企業において、どのくらい AIは活用されているでしょうかO  これまで述べてきたとおり、 AIがさまざまな分野で社会を変 化させつつありますO「製造」や 「生産」の分野では生産性を向上 させ、コスト削減が可能となるこ とが期待できますO「健康」や 「医療」の分野では新たな発見や 発明、また「芸能」や「芸術」、 「娯楽」の分野を変革することも 期待できますO  しかしながら、AI白書(2020) によれば、囗本の主要な事業者 525社にアンケート調査を行った 結果、AIをすでに導入している 企業は4.2%、現在実証実験(PO C)を行っている企業は4.8%で、 合計10%未満でした。また現在、 利用に向けて検討を進めている企 業と検討を予定している企業も併 せて約17%しかないのです。  一方で、関心はあるがまだとく にAI導入の予定がない企業が約 51%、今後も取り組む予定はない と答えた企業が約16%、併せて 70%近い企業がAI化に向けた行 勣をしていなかったのです。    不明5.3%すでに導入している4.2%      現在実証実験(POC)を行っている4.8%  16.4%予ぶ16.4%   /過去に検討・導入または実証実験(POC)を      z町ったが現在は取り組んでいない1.1%  。。。。。。O。、     μ414    'I I'、 '  AI白書2020  W⊇ 図4・1企業におけるAIの利用率  第四次AIブームと言われなが ら、この低い導入率をもたらす理 由はどこにあるでしょうか。その 理由は、第1にAIに対する理解 不足、第2に導入費用が高いこと、 第3に人材不足となっています。 (下図参照) ……-ぷ瓢XI尸  ゛な雷に1  一一~ヽに・气 。  ・一一……・匹jt;。、 。  豐潺芸麗匹:  一一、J司し厂、 −・一白匹二;14………   0 10 20 30 40 50 60 70 7ごご二ここ黒。ご7こに謡゛(I`'s7)s(I'゛'I'‘"'・7) 図4-2 AI導入にあだっての課題  現在では、GoogleやAmazon、 Azure Cognitive Services やWatson APIといった構築済みAIサービ スが多く提供されており、スク ラッチからAIを構築するのでは なく、すでに存在するAIを利用 することで、費用を抑えつつ、特 別なAIの人材がいなくても活用 できる状況が形成されつつありま す。  図4-3が示す「AI導入の目的」 からわかることは、業務効率化や 業務負担の軽減、生産性の向上の 期待です。また、人件費の削減や 労働力不足対策、ヒューマンエ ラーの低減と撲滅といった、人材 不足への対策七重要視されていま す。  いずれも、人材確保が困難にな ると言われている次の時代を生き 抜くための対策と言えるでしょう。 組織のAI活用事例  多くの組織が直面する課題への 対応方法は、AI活用事例から知 識を得ることができますO  ご紹介する組織のAI活用事例 は、業種とAI導入目的(業務効 率化・高度化、品質・生産性の向 上、セキュリティ向上、顧客への 付加価値向上)に分類していますO  AI活用事例から、どのような 目的で導入し、どのような業務で 活用できるか、一緒に学んでいき ましょうO 玉子 こで、本書では次の項目で公開さ れている事例を分析しています。 く事例番号、綴織名、観点、AIの事例概要)  2 AI思考に /≠] 企業の生成AIの導入事例 からわかること  ここでは、導入事例を収集、整 理した際に気が付いたことについ てまとめますO整理する際には 「技術的特徴」、「組織・体制面の 特徴」、「AI思考の観点からの特 徴」の3つの特徴からまとめてい ますO 《技術的特徴》  大部分の導入事例が組織、会社 全体、グループ全体(国内・海 外)を網羅する形での導入または 導入計画を持っていることが非常 に印象的です。従来のAI導入は 特定の部門、部署やサービスに特 化した形が中心でしたが、生成 AIの場合は全従業員が利用する ことを前提とした、経営主導の導 入スタイルの組織が非常に多いと 感じます。  Chapter 3「AIをビジネス組織・ ビジネスパーソンへ実装する」で も触れましたが、AI導入時には 「経営」がコミットすることは非 常に大切です。従来のDXでは現 場任せの事例が多く、製品採用の 情報ばかりが目立っていましたが、 今回の発表資料の多くでは傾向が 大きく異なると感じています。  この部分は今回の生成AIの特 徴そのものであり、組織に対する インパクトの大きさを端的に表し ているといえると思います。 《AI思考の観点からの特徴》  ここではAI思考の観点からの 特徴をまとめてみます。 1.論理的思考  多くの事例では生成AIから得 られる結果に対して、最終的に人 間が判断する必要があるというこ とを強調しています。生成AIの 回答は必ずしも正確ではなく、回 答としては不十分な場合があるこ とに関して、人間が論理的思考を 用いて対処していく重要性が今後 ますます高まることが予想されま すO 2.AIに関する知識一理解  技術的特徴でも触れましたが、 「Azure OpenAI Service」を選択し ている事例が多いということから もAIに対するメリット、デメ リットをよく理解、整理した上で 採用していることがわかります。 そして、AIに関する利用者への 知識共有、教育、訓練なども用意 されている例が多いことからも、 各組織では生成AIを取り巻く状 況を理解することが必要と考えて いるのがわかります。 3.業界・ビジネスや人間関係  等の知識  この部分は上の2でも触れてい るAIに関する利用者への知識共 有、教育、訓練に含まれているこ とが期待されますが、事例からは 具体的な内容、取り組み等を把握 することはできませんでしたO  AIの利用者を対象とするので はなく、AIを対象に各社が持つ 「業界・ビジネスや人間関係等の 知識」を学習させる試みはいくつ かの事例で実施されています。 4.適応力  ここは、各社事例を見ても非常 に柔軟に考えていることがわかり ました。従来の汀システム、DX の取り組み事例では要件定義が行 われ、導入目的を定めている印象 がありました。生成AIには今後、 組織、社会の在り方を変えていく 可能性は理解しつつも、まだまだ、 発展途上であり、どんどん変化し ていくものであるという理解の基 で導入が進んでいることが分かり ました。 5.倫理  多くの事例では、ガイドライン 作成や生成AI利用時における注 意点に関してきちんと言及してい ます。生成AIは決して完全なも のではなく、誤った回答、人とし て受け入れがたい回答をする場合 があることや、データの利用に関 する著作権やプライバシーを含め た課題について、各組織が十分に 認識しているからこそ、倫理面を 含めたガイドラインを作成してい るのではないでしょうか。  以上、大きく2つの観点から生 成AIの導入事例を分析しました が、これ以外にも気が付いたこと がいくつかありますので、ご紹介 しますO @導入までの期間一意思決定の速  さ  生成AIのブームは2022年後 半くらいから始まったものですが、 ブームから1年も経過しないうち に、組織、企業全体に取り入れら れていることは驚くべきことでは ないでしょうか? これまでも、 インターネット、携帯電話、グラ ウトなど大きなターニングポイン トとなる技術、ブームは何度か現 れていますが、今回ほどのスピー ドをもって、広まったことははじ めてであると思います。  従来は新しい技術が発表されて も、企業は「検討中」、「部分導 入」が大半でしたが、今回は異次 元のスピード感をもって導入が進 んでいます。もちろん、このス ピードが実現できるのは人間の意 思決定だけではなく、インター ネット、グラウトなど環境面の整 備が進んでいるということも大き な要因です。別の観点からは、ス ピード感をもって変化していくこ とが、ビジネスを進める上でより 大切になっていると言えます。  この動きは「実装の進捗を チェックする」(前述のこちら) でご紹介した「OODA(観察 (Observe)・状況判断(Orient)・ 意思決定(Decide)・実行(Aet)」 そのものではないでしょうか。 A適用範囲の違い  他の章でも触れていますが、従 来のAIは組織内の特定の部門や 人だけが使えるものでしたo今回 は組織全体であり、特定のビジネ ス・サービス目的ではなく、日常 的な業務での利用を想定した導入 になっています。  違う表現をするならば、「みん なのAI」を想定していることが 特徴的ですOこれまではAIの導 入、利用には専門知識が必要だっ たものが、誰でも使えるものへと 変革していることが今回の生成 AIブームの技術的な違いであり、 従来とはまったく異なる視点から 導入が行われているのではないで しょうか。トレントに敏感な経営 層がいる企業では、その違いにい ち早く気が付き、経営主導の導入 が行われていると思います。  ビジネスパーソンの観点で考え てみると、これまでコンピュー ターがビジネスに取り入れられて きた変化の一部としてAIを理解 することが必要です。 Bビジネスにおけるコンピュー  ター利用の歴史 1970〜1980年代:ホストコン ピューター、端末を一部の専門家、 特定分野で利用 1990〜1999年代:Windows/ UNIXの登場、インターネットの 商用化による利用者の広がり 2000年代前半:インターネット、 メール、Officeソフト利用が当た り前、この頃からITという言葉 を使う 2010年頃〜現在:グラウト、ス マホの利用とDxが当たり前  改めて過去50年を振り返って みる環境は大きく変化していますo そして、ビジネスパーソンはこの 変化に対して適応していくことが 求められています。少し前までは、 限られた人だけがコンピューター を利用していましたが、大衆化し、 キーボードが使えなかった人も使 えるようになりましたoまた、紙 文書中心からOfficeソフトを 使った電子化が行われています。  以前は紙文書、書籍などで得た、 一部の物知りの人が重宝されてい た時代からGoogleを代表とする 検索サイトを使うことでいつでも、 だれでも簡単に膨大な情報、地球 の裏側の情報を調べることができ る時代へと変化しました。その変 化に常にビジネスパーソンは順応 してきましたが、生成AIに関し てもビジネスパーソンは順応する ことが求められているのではない でしょうかo CAI事例の多さ  今回事例で掲載した企業の多く では、生成AIだけでなく、さま ざまなAI活用をすでに実施済な いしは、計画していますo今回の 生成AIブームはChatGPTが発端 であると考えていますが、事例を 掲載した企業では従来ある機械学 習や深層学習などのAIも活用し ている企業が多くありましたoこ こからわかることは、AIは一つ ではなく、目的用途とそれぞれの AIの持つ特性を正しく理解した 上で活用していくことが大切にな るということです。  ここでは25組織のAI導入事 例を紹介しましたが、AIの導入 事例はインターネット上を検索し ただけでも何倍もの数が見つかり ますし、組織、企業によっては必 ずしも公開されるわけではありま せん。  AIの導入は「まだ早い」では なく、「すでに始まっている」状 態ですので、AI導入に関して慎 重になっている組織があれば、す ぐに検討を開始されることをオス スメしますO  ノースサンドに    おける実践 Chapter!5  I NOtiOnと ]十  ここまでは本書のタイトルでも ある「AI思考」について考え方、 知識、実装方法、事例を紹介して きましたo このChapterではソー スサンドのAI思考の実践例、と くにAIヽツールであるNotion AI を詳細にご紹介しますo  ソースサンドでは「Notion」プ ラットフォームとそのオプション 機能である「Notion AI」をコン サルタントやバックオフィスを含 む全社員に提供しています。また ソースサンドの強みは「人」であ ることを掲げ、A1時代が到来し てもブレない「8 Rules」という行 動指針を定めています。  ここでは、「Notion」とソース サンドの関係を簡単にご紹介し、 「Notion」・「Notion AI」が提供す る機能に言及した後、「8 Rules」 と「AI思考」の関係性について 議論を深めていきます。 《Notionとの出会い》  ソースサンドの事業の中心であ る「ITコンサルティング」を進 めていく上で、ビジネスの拡大、 従業員の増加により社内情報が散 在することが課題でした。Notion 導入以前にも他の情報共有ツール を利用していましたが、複数の ツールに情報が散らばっていて情 報があるにもかかわらず、どこを 探したらいいのかわからず、欲し い情報を手に入れることができな い、探すために時間を費やしてい た状態でしたo  その課題を解消するツールが 2018年に導入を行ったNotionで したo  導入後には社内ポータル作成か ら始まり、社内のすべての情報を Notionに格納することでほしい 情報がすぐに入手できる環境を作 り上げることができましたoそし て今では「Notion」の世界初の代 理店となり、100社以上の企業へ Notionの導入を支援しています。 Notion Al とは 《Notionとは》  そもそもNotionは、米Notion Labs(以下、Notion社)によって 開発されたSaaS型のコラボレー ションツールです。Notion社は 2014年に設立され、「Notion」を 2016年にリリースo現在の時価 総額は100億ドル(約1兆4,000 億円)を超えています。当初は日 本ではあまり流行っていませんで したが、2021年10月から日本語 対応のベーダ版を開始oそして 2022年6月に日本法人のNotion Labs Japan を設立し、2022年11 月には日本語版の正式版のリリー スを発表し、現在は情報感度の高 い層を中心に人気を博していますo  Notionは、さまざまな情報を 集約することで、簡単に情報共有 ができ、メンバーとメンバーのコ ミュニケーションの促進を可能に するだけでなく、他のツールとも 連携が可能な「コネクテッドワー クスベース」です。「タスク管理」 「プロジェクト管理」「チームビル ディング」にとどまらず、さまざ まな仕事に対して強力に支援する SaaSアプリケーションです。各 人がNotionを使うことでチーム の効率が向上し、会社全体の業務 効率の向上が期待できます。  Notionはよく「便利なメモ帳」 と表現されることがありますが、 実は単なるメモ帳ではなく「タス ク管理」「プロジェクト管理」な どあらゆることができるオールイ ンワンのサービスです。そして、 その機能は個人、チームの要求に 対応できるようなカスタマイズ機 能が充実しており、他のSaaSな どと連携できるようAPIも提供 されています。優れたカスタマイ ズ機能を活用することで、チーム、 企業のカルチャーに合致したタス ク管理・プロジェクト管理を実現 できます。しかも、コーディング の知識、経験は不要ですので、誰 でも簡単に使うことができますo  多くの企業ではデジタルな作業 場所として複数の製品を使い分け ているのではないでしょうかo具 体例を出すと、以下の通りですo ・メモや議事録はメモ帳やOne  Note ・表の作成や、関数の計算は  Excel 一発表資料の作成はPowerPoint ・マニュアルの作成はWord ・ドキュメントの保存先は  SharePointやBox  SharePointに格納したExcelで データの表を見ながら、同時に PowerPointで資料をまとめる、と いったように複数のツールを組み 合わせて作業することも少なくな いと思います。  多くの人はこの作業スタイルに 慣れているとはいえ、もしさまざ まな作業を一つのツールで行うこ とができれば、もっと効率的に作 業できるのではないだろうかとい う考えの下で開発されたのが Notionです。  最近ではこの機能が評価され、 個人利用ではなく、企業や趣味の 団体のような複数人による利用を 前提とした導入が急速に増加して います。  《Notion Al とは》  このNotionに新たな機能とし て加わったAI機能が「Notion AI」(2023年2月23囗)です。 Notionは「コネクテッドワーク スベース」ですから、今後、ビジ ネス分野での活用が期待されてい る「生成AI」を使用したアシス タントサービス機能の追加は必然 でしたo  ChatGPTはその名の通り 「チャット形式」であり「対話」 を目的としたインターフェイスで す。一方、Notion AI は元々の Notionの使い勝手をAIにより向 上させることを目的としています。  Notion AI では命令を入力すれ ば、調べ物だけでなくNotionの ページに蓄積した多くのテキスト データを元に文書の作成、校正、 テキスト文書の要約や翻訳ができ ます。  そしてNotion AI の主な特徴は Notion内にある大量のデータを 活用、連携してくれることです。 一関連するページや情報を推奨 ・ページの内容を自動的に解析  し、適切なタグを付与 ・ページ内の文章の要約 ・ページの内容の翻訳 具体的な使用例  たとえばNotionで議事メモを 作成した後、議事メモ中にある夕 スク、決定事項などを抽出したい 場合や長文の議事メモから要約を したい場合にNotion AI を使うこ とで業務を大幅に効率化してくれ ますo しかも、ChatGPTとの最 大の違いとしてNotionにAI機能 が統合されていることでChat GPTのように、質問をするたび にコピー&ペーストを行うことは 不要です。  また、要約、抽出以前に議事録 のフォーマットの作成など、ゼロ からNotion AI に作業を依頼する こともできますoこのような機能 を活用することで議事録担当は議 事を取ることに集中でき、議事録 の要約、タスクの洗い出しなどの 作業はNotion AI に任せることが できます。その結果、大幅な生産 性向上が可能となります。つまり、 Notionとその機能であるNotion AIを使用することで業務をス マートかつスピーディーに遂行す ることが可能です。  ここまでは文書でNotion AI の 活用方法を説明してきましたが、 具体的な活用例を、実際の画面を 用いながら紹介します。  重威AI(Ge心ra1・りeAI)とは、人二知能(AI)の一種であり、主にデータからMしし禰皿pjンデ  ンツ包生疵歹る七万きlaづl元啝茫捐しy歹.重成AIは、桐械学習の一価である生咸モデル泡使皿し  て調練され豕す.  i戍モデルは、与えられた太万データから新しいデータぞ盲戍75ことができるモデルで7.これ  13、与えられ咫トレーニングデータのti微やバターンを掌Sし、それにEづいて新しいデータ七里  卮7る能力冠持つてい・y.  重皿ぷの代冨的なアプローチにlj皿下のようなものが曷りi・~r:  1,1詢約重廠ネットりーク佑心N}、GANIま、2つめ悶自妁なネットワーク哇盾器と霞別S)2   夕1吸さUることで学SしXす.生辰冨は、元のデータと以たべうなデータを含或しようとしま   7が、讖助詞|冫それを水物と区剛しようとし・7.これにより.l成番|冫畭刎こより本物に近   いデータ2笙扁すること鷽字匐し17,  冫、変分河−トフンコーダー{vM}、vMは、データ戉M3微茫皿える禹画空at夕閥しま7.この   沼在曹間t俛つて、卵しいデータt・苡することがでさ豕す、vMr冫、隹繻と可時にデータの   li砲乞抽出でさるという瓜で司馬です.  冫、教師なし¥3モデル;教師なし夕aモデルは、うβりμホyxべていないデータから夕aui   す.これにより、データの汨a妁な叫画りパターンをl勁lし、それに基づいて新しいデータを   生疵でさる嘔合があります.  洗襤AI[ま、多≪の応皿分野で言皿ぎべていa歹.例え「ま、・皿洗成、a声a成、テキストia、仮  愆キ?ラクターの作成、皙蛮生友、陜1合友なとかあります.また、クリエイティブな;lりしデー  タ呱張(データセットt迴や7瓦のに合成データ・生友丁芻こと)など|こら便づべてい豕7. 園5-1 NQtionでメモした原文   言心:sfl・1・!xlj.λll縅i・・g一丁laり.!Iこター9い・ヨ憤LIli・りコ冫ノ   冫夕●・5・gltぞiJゝ7・・slg.sE●l・-・ial・qi●』11sk て7こと]:。I。. することができます.また、夊・生aAIは、与えられたテキストから、自官な交睾老生罎すること かで皀ます.佳唐alU.デザインや耋椢.i辜など、多《司分野で活用されています. 411・.':・ ・・..・.・.゛・::! 口 図5-3 Notion AIで絏きの文意を生成させる  !       ? 二言 三回ケ・ニュ ≒百巽 が必要であったり、マニュアルか ら翻訳ツールへ都度データをコ ピーするなどの作業が必要だった りしましたが、Notionでは Notion中ですべての作業を完結 できます。   一股的な接客のマニュアルは以下のような箇条書きになります。   ・お客様を歓迎する   ・挨拶をする   ・丁寧な言葉遣いで話す   ・目を合わせて話す   ・聞き上手である   ・質問に答える   ・誤解を招かないように話す   ・お礼を言って、お客様に笑顔で見送ってもらう   以上が一般的な接客のマニュアルとなります。  図5-5 NotionAIでマニュアルを自動翻訳も可能   なお、Notion AI のデータが気 になられる方がいらっしやると思 いますので先にご紹介します。 「倫理」面について、Notionは次 のデータ保護を行っています。  Noli・nAIはil-夕をどのよう|こ登用L,ますか?  Not ionの橙冪的なデータ保護対策に雹い。データはl§弓化され非公  開の状態となります。  Not.lonAIlj、お客椰がデI-夕の裂有に|司意しない|眼り、Iデ儿のトレー  _冫ク・kお客様のデータを便晞しょせん。Notlojl AIを活用りるためk便  咫される・|芻惱は、NotjonAI梶能を提供・ることのみを目的として、髣  社パートj'−と共4jされま・。  NotlollAIに特有e|霜iについてlj、No匕ion AI SI,pplemenlary  Tsrl】]s {N・ti・・Allj皿lnをご参陷くだjい。  hitps:jy wiarw-110t]on-scjlpl・oduct/ai  鯏5-6 NalionAI6データ保護方針  ノースサンドのNotion Al  ソースサンドが2018年に Notionを導入するに至った一番 の理由は、社内に存在する「情報 の散らばりをなくす」ことでした。  コンサルティング会社である ソースサンドでは、情報・知識は 大事な資産です。業界別の知識や プロジェクトで得た情報、汀の 専門知識だけでなく、社員一人一 人が得た情報などすべてが仕事に 活かされます。これらの情報が散 らかってしまうと、欲しい情報を 取得するまでに時間がかかり、業 務の生産性を低下させる要因にな りますOもちろん情報の置き場を 全員記憶しているのであればまっ たく問題はありませんが、会社が 大きくなり、社員数が増えると社 員全員が欲しい情報の在りかにた どり着くことは難しくなります。  私も前職では、社内ポータルに 情報があるかと思っていたら別管 理されていたツールに情報があっ たことや、久々に出張することに なり交通費の申請方法を確認しよ うとしたら、別のサービスで管理 されており、ログイン認証を要求 されパスワードを忘れてしまって いてパスワードを再発行すると いったことがありました。これら はあくまでも個人的な例ですが、 多くの組織において同様の事例は 頻繁に起こっていると考えますo  「情報の散在」という課題を解決 するために、ソースサンドは Notionを導入し、現在はさらに Notion AI を用いて効率化を図っ ています。少し長いですがAI活 用の実務という観点から詳細を紹 介します。  Notionにはワークスベースと いう大きな箱がありますOその箱 が会社のすべての情報の置き場に なります。その中にページ単位に 情報・知識を整理し切り分けます。 たとえば「社員一覧」のページを 用意したり、「社内申請系」「新卒 研修コンテンツ」といったページ を用意したりという風に切り分け ます。  弊社で利用の多いページとして 「社員一覧」があります。社員1 人1人が個別に自分のプロフィー ルページを持っており、個人で管 理しています。コンサルティング 会社は人が資本ですから、その人 がどんな経験をしてきてどんな分 野に強みがあるのかといった情報 は非常に重要です。プロジェクト にアサインする人を選択するとき に使えますし、知らない分野につ いて知りたいときに誰にコンタク トをとれば良いのかすぐにわかり ます。取得資格の情報も用意して おり、「資格一覧」ページからど の資格を誰が取得済みかわかりま すO余談ですがこれをきっかけと して、私も負けずに勉強し資格を 取得するというモチベーションが 芽生え、仕事とは別の勉強を継続 できています。社員の「見える 化」がされた結果、自発的にチャ レンジするというマインドが醸成 されていると思っています。    ノースサンド会社ポータルデモ ID 5-7社内ポータルの様子  またおもしろいことに、一見仕 事に関係ないような自己紹介も記 載されており、仕事でどんなこと ができるのかといったこと以外の 部分もわかるようになっています。 たとえば、「出身地」「あだ名」 「趣味」「なりたい姿」など社員は さまざま好きなことを書いていま す。ソースサンドは社内交流が多 い会社ですが、はじめて会った人 でもNotionのおかげで話のネタ には困りません。趣味や出身地な ど共有できる話題が先だしされて いる状態ですから、別のプロジェ クトのメンバーのことも知ってい る状態になり、スムーズにコミュ ニケーションがとれますo  実はこれが非常に仕事に活きて きますo 自動車業界のプロジェク トにアサインされている人が仕事 で困っているときに、車を趣味と している人がとても深い知識を 持っていて仕事が進んだという ケースもありましたo一方で社員 一覧のページをくまなく見るには 時間がかかります。この対応とし て、Notion AI が活きてきます。  個人のプロフィールにNotion AIの情報欄があり、どんな人な のか要約を記述するようNotion AIに命令を埋め込んでいますo Notion AI がプロフィールを自動 で要約してくれ、個人でプロ フィールを更新しても、それに合 わせて要約も自動更新されますo プロフィールを全部見なくても、 AI要約だけ確認すればどんな人 なのかが掴めるようになっていま す。  またNotion AI の使い方として、 ソースサンドだけでなく、多くの 他の企業でも議事録の作成が行わ れています。Notionを使う前は、 まず議事録のフォーマットを考え、 次に議事メモを取り、議事録を作 成し、第三者にレビューを依頼し、 修正をしてから全員に共有すると いう流れが一般的でした。こう やって考えてみると議事録一つを 作成するだけでも、多くのステッ プが必要です。しかし、実際に私 たちが手を動かすのは、議事メモ を取ることだけです。  Notion AI を使うことで、議事 録の完成度が高くなります。 Notion AI は議事録のサマリーも 自動で作成してくれます。誤字脱 字や文法チェックもNotion AI が 行ってくれますo第三者のレ ビューでも、Notion AI を使わな かった場合よりも差し戻しの回数 が削減できています。さらに、会 議で話し合った次のアクションや タスクの洗い出しもNotion AI が 行ってくれます。Notion AI を使 うことで、議事録作成の時間が大 幅に削減され、次回のアクション がすぐにわかるため、タスクの管 理が容易になります。そのため、 他の業務に時間を割くことができ るようになります。   Before     After I言∧ −一到 I⊇  ) 図5-8恥tionとNotion Alを使った時の議事録作成の工取の削減 Notionの良さは、議事録など 斤鎌子 二千匸 把握できるため、タスクの担当者 や期限も管理しやすくなります。  さらにNotion AI は、フロー チャートや関数を組むことも可能 です。表現したい内容とどんな表 記のチャートにしたいか指示する ことで、内容に沿った簡単な チャートを作成してくれます。た だし、複雑な関係を表したい場合 は一度の指示では求めているアウ トプットが作成できないというの も事実ですoそのようなときは一 度大枠の流れを決めて、NotionAI に依頼し、そこから細かい部分を 付け加えていくイメージで使って いきます。  図5-9は一般的な承認フローを フローチャートで作成を依頼した 例ですo簡単な一例ですが、Oか ら作るとなると時間がかかるはず です。ここに承認者を追加したい 場合に「承認者を追加して、承認 段階を増やして」といったような 命令をすることによって、図 5-10のように承認段階を細かく 調整できます。Notion AI に表し たい内容と作りたいチャートを指 定してみることで先に土台を作り、 後は必要に応じて情報を追加して 最終的なフローチャートに仕上げ ていきますO  最後に、よく使われる方法とし て文書作成に関する作業がありま すo今までの私たちの作業をすべ てNotion AI に任せるということ ではなく、ファクトチェックや文 章の執筆など人が行う部分をベー スにNotion AI がサポートすれば 作業をより効率化できます。AI に文章を書かせるというより、校 正や文章全体のトーンを整えたり、 内容をより詳しく説明したり、よ り簡潔にしたりと文章作成の補助 的な活用をしています。次の例1 は「コンサルティングに向いてい る人とは」という内容の文章が あった時に、例2はNotion AI を 使って詳細に文章を記載するよう に命令したものですo 例1 コンサルティングに向いている人 は、問題解決スキルやコミュニ ケーションスキルが高く、クライ アントのニーズを理解し、適切な 解決策を提供する能力がある人で すoまた、分析力やプ囗ジェクト マネジメントスキルが優れている ことも重要ですo 例2 コンサルティングに向いている人 は、多様な能力をもつ人ですO問 題解決スキルやコミュニケーショ ンスキルが高いことはもちろん重 要ですが、それだけではありませ んOクライアントのニーズを理解 するために、幅広い知識や経験が 必要ですOまた、適切な解決策を 提供するためには、クリエイティ ブな発想力とチームワークスキル が必要ですOさらに、分析力やプ 囗ジェクトマネジメントスキルが 優れていることが求められますO コンサルティングに携わる人は、 常に学習し、自己啓発を続けなけ ればなりませんoそれにより、常 に最新の情報と知識を持ち、クラ イアントに最適なソリューション を提供できますo  このように与えられた文章に対 して、さらにAIに命令するとよ り詳しい文章の作成をしてくれま すorITコンサルタントと戦略コ ンサルタントの違いに言及しつつ、 各コンサルタントの共通点を教え て」とNotion AI に命令したとこ ろ次になりましたo コンサルタントにはいくつかの種 類がありますOたとえば、ITコ ンサルタントと戦略コンサルタン トが挙げられますO lTコンサル タントは、主に情報技術に関する 問題を解決しますO一方、戦略コ ンサルタントは、クライアントの ビジネス戦略に関する問題を解決 しますO しかし、どちらのコンサ ルタントにとっても、クライアン トのニーズを理解し、適切な解決 策を提供するために、幅広い知識 や経験が必要ですOまた、分析力 やプ囗ジェクトマネジメントスキ ルが優れていることが求められま すoさらに、コミュニケーション スキルやチームワークスキル、ク リエイティブな発想力が必要ですo コンサルタントには、常に学習し、 自己啓発を続けることが求められ ますoこれにより、最新の情報と 知識を持ち、クライアントに最適 なソリューションを提供できますo  ここまで人間が行ったのは Notion AI に作成を依頼しただけ で、文章は一切作成していませんo Notion AI がここまで作成してく れるだけでも、人間がゼロから文 書を作成することと比較すると、 大幅に時間を削減してくれるだけ でなく、どんな文章を作成すべき なのかという文章そのものの推敲 のレベルでも大きな進歩であると 思います。  Notion AI は他のサービスとは 異なり、アプリケーションとAI が一体化されているため、アプリ ケーション内のAIを使用したい あらゆる場所で、AIへ依頼する ことが可能ですoそのため、シー ムレスに文章を構成できます。こ の結果、AIとアプリケーション を使うためのコピー&ペーストが 不要となります。  いつでも、どこでもAIを簡単 に使うことができるので、作成す る文章の平均レベルを大きく向上 できます。これまでは、文章を作 成するためにはGoogleなどで情 報を検索しつつ、アプリケーショ ンとドキュメントを行ったり来た りしていましたが、Notion AI を 利用することで情報収集と資料作 成の大幅な効率化が期待できますo  Notion AI の活用は始まったば かりですが、使い勝手が非常に良 いため、コンサルタント業務、社 内業務にまたたく間に浸透しまし た。もちろん、AIに対する不安、 未知数な部分はまだまだたくさん ありますが、SaaSアプリケー ションの強みを生かし今後もアッ プグレードされていくことが期待 できますし、使う側もAIへの依 頼方法に対する習熟も進んでいく のでより、使いやすく、便利なも のになることは間違いありませんo 《働き方が変わる》  Notion AI を導入したことで、 明らかに働き方が変わりはじめて います。具体的には、多くの社員 が「最初にNotion AI に相談して みる」という行動に変わってきて いますo Notion AI 導入前の「最 初にGoogleで検索してみる」と いう行動パターンからの変革です。 AIは学習データの鮮度の課題が あるため、最新の情報収集という 点では不向きですが、何か作業を 開始する前にいったんAIにたた き台を作ってもらうことや、文章 作成などで行き詰ったら、とりあ えずAIに書かせてみるというこ とが起こっています。 《まずは無料トライアル》  ここまでNotion AI の活用状況 をご紹介してきましたが、ソース サンドの実際の導入では無料トラ イアルから始め、本格導入という ステップを経ています。当初は多 くの社員や経営側もAIの力は理 解してはいるものの、導入にはや や慎重な面がありました。無料ト ライアルを実際に使ってみること で、非常に有用であることが理解 され、現在は全社導入に至ってい ます。元々Notion自体が情報活 用、共有という面で非常に優れて いるため、そこにNotion AI を導 人することで、Notionの価値自 体がより高く評価された結果でも あります。  《使い勝手も重要》  Notionはユーザーインター フェイス的にNotion AI に命令し た結果をコピー&ペーストせずに そのまま結果を残すことはもちろ ん、同じ依頼を繰り返し行う、や り直しをお願いする、結果を破棄 することもできます。この使い勝 手の良さもNotion AI を使うとい う土壌をつくりあげた要因である ことは間違いありませんo  《プログラムも作れる》  プログラミングも他の生成AI と同様にNotion AI を通じて行う ことができます。次ぱHello World"をJava言語とPython言 語でNotion AI に書かせてみたも のです。 Python言語でIIHe‖o World"を出 力するコードは以下の通りですo ・print ("He‖o World!I') Java言語でHello World" を出力 するコードは以下の通りですo ・public class Main {public static  void main (String [] args) {System.out.println("Hello, World!I');}}  簡単な例ですが、たったこれだ けのプログラムでも一般的なプロ グラマーが手打ちで対応するより 高速に作成できますし、多くのプ ログラミング言語に対応できるこ とも特徴です。よくあることです が、サンプルのプログラムをイン ターネット上で探した場合には期 待したプログラミング言語で見つ からないということがあります。 また、複数のプログラミング言語 (たとえば、PythonとJava両方) で表記したいこともあります。  Notion AI に依頼すれば特定の 言語でコードを書いてくれますo こういう情報を蓄積していけば、 自身の知識も付きますし、Notion 上で独自の情報ストックができま す。全社でも部署毎でも、チーム、 個人単位で情報の共有の制限もで きるので、全社展開して会社に貢 献することもできますし、個人の メモ帳のような使い方もできます。 Notionでは蓄積した情報へのア クセス、共有を個人、チーム、部 署、全社などさまざまなレベルで コントロールを行うことが可能で すのでNotion AI を活用し、 Notionでどんどん自社内でナ レッジを貯めることで、それが今 後のプロジェクトのヒントになり 同じような問題にあたったときに 助けになります。  ここまではソースサンドでの Notion AI の活用に関して書きま したが、AIを使う場合には業 種・業界・職種などによって事情 は異なります。ソースサンドはコ ンサルティング企業ですので、 日々多くの資料作成やプロジェク 卜管理を行うためにNotion AI を 活用していますo次の項ではコン サルティング企業以外の利用シー ンを想定し、Notion AI の活用を 考えていきますo Notion Al の活用事例  Notion AI を導入している企業 が増加するにつれて、他社、他業 種ではどのような活用がされてい るか、徐々にわかっていきました ので、ここでいくつかご紹介しま す。 《Q&Aへの活用》  一つ目は「Q&A」にNotion AIを使っている事例です。簡単 に説明すると、何か問合せがあっ たときにNotion AI が自動で回答 してくれるという使い方ですo Notionの機能であるデータベー ス機能を使うことで実現していま すo Notionのデータベースは、 イメージとしてはExcelなどで表 現される一般的な行列の表に近い ものです。実は列のマスに Notion AI を配置できます。 Notion AI に指令を固定で配置さ せることも可能です。問合せや質 問が1列1行目に与えられた場合、 その内容に対して回答をするプロ ンプトを配置しておけば、自動で セルに回答が書き込まれていきま す。  AIの精度的に対外的に使うの はまだ不安がありますが、社内の FAQでは非常に役に立ちそうな 活用法です。今後、生成AIに対 して何かアップデートがあり命令 に対してのアウトプットの精度が 上がれば、問合せ対応をすべて AIに任せることも可能になるか もしれません。  この活用方法はあるエネルギー 系の企業での事例ではありますが、 その使い方は、どこでも使える汎 月陸があるものですO 《リサーチへの活用》  二つ目はメディア制作系のある 会社の例です。一見するとノース サンドの利用方法と変わりはあり ませんが、おもしろい取り組みが ありますのでご紹介します。  何か事実をベースにした物語や 特集を作るときに、それに関する 基礎的な情報から最近の専門家の 見解などを細かくリサーチする必 要があります。そのリサーチに Notion AI を活用します。  ゼロから自分で調べるのは時間 と労力を使うので、インターネッ トに記載されているような情報は 最初の段階でAIに任せると効率 が良くなります。AIの回答は間 違っていることもありますので ファクトチェックはまだ必要です が、おおむね事実であり、後は足 りない情報は自分で取りにいくと いうことができますo ここまでの 時間がAIを使うと今までより ぐっと早くなるということですo NotionではシームレスにAIの出 力を書き出すことができるので、 物語や特集の構想のベースをその まままとめることができることも 大きな利点ですo  同時編集が可能なNotionだか らこそ、アイデアの発散の場だけ でなく、その発散されたアイデア をまとめることもできるため、素 早く、シンプルにプロジェクトの メンバーにとって見やすいページ が作成できますoこのことからク リエイティブな仕事も、Notion AIがしっかリサポートしている ことがわかります。  必要な情報の下調べから、アイ デアの発散、ドキュメントの体裁 の整理、タスクの洗い出しのみな らずほとんどの作業でNotion AI をお供にすることができ、全行程 での時短に繋がります。 ノドノ 《―つ目:小売業・飲食業》  ポイントとしては店舗を持ち、 接客が必要な業態の企業ですO背 景として、日本はますます少子化 か進み、働く世代が今より減少す ることが挙げられます。そうなる と、人材は日本人だけでなく外国 人の労働者がますます必要になっ てきます。一方で、各店舗で一定 の接客サービスの質を高い状態に 保つのは今後ますます難しくなる のではないかと思いますOさまざ まな要因があるとは思いますが、 多言語で記されたマニュアル、 ルール、ポリシーは必須であると 考えます。  Notion AI に限らず、AIは言語 の翻訳に関しては非常に正確に 行ってくれますが、Notionでナ レッジの管理をする場合は Notion AI を使うとドキュメント 作成から翻訳、完成版の全店舗展 開をスムーズに行うことが可能で す。また、店舗ごとに運用のオペ レーションや顧客情報などの情報 を溜めることによって各店舗独自 にあった情報共有ポータルを作る こともできます。逆に、外国人従 業員から改善案を発信するときに もNotion AI は力になります。  つまり、言語によるコミュニ ケーションロスや文章の作成にか かるタイムロスを減らすことがで きますoさらに活用できそうなこ ととして、レストランのメニュー を日英バージョン以外でも用意し たい場合に、とても便利になりま す。とくに英語だけではカバーで きないお客様も取り込むためには、 多言語対応が必要です。Notion AIは簡単に多言語翻訳できて、 そのままメニューとして外部に公 開が可能です。  少し話を戻すと、Notion AI に よるスピーディーな翻訳と文章作 成ができることによって、従業員 とマネージャー層とのコミュニ ケーションが活発になることが期 待されます。これは実際に口頭で 話すコミュニケーションだけでは なく、文章でのやり取りも含まれ ます。そもそも日本語は世界的に 習得が難しい言語と言われていま す。Notion AI がこの言語の壁を 打ち壊し、少しでも改善点や要望、 業務の報告が増えてくると働きや すさの改善につながることが期待 できます。 《2つ目:製造業》  2つ目に、Notion AI が活用で きると予想されるのは、海外に工 場を持っている製造業の会社です。 こちらも自動翻訳が効果的な使い 方としてあげられますが、データ 分析や文章作成の際にも大きく貢 献できると考えます。  日本の企業は、生産工場を中国 または東南アジアにおいている ヶ一スが多いかと思います。世界 の共通言語は英語ですが、英語が 使える人は限られます。工場の生 産体制にもよりますが、既存の工 程にさらに工程が追加されること や変更されることが急に起こるこ とがあります。  もし、Notionで生産マニュア ルを作成・管理している場合は Notion AI で即座に翻訳版が作成 でき、共有できます。従来の日本 語が話せる現地の人、または現地 語が話せる日本人を雇って通訳兼 サブリーダーとして工場のオペ レーションをマネジメントするの に比べ、翻訳の品質が十分かとい う問題はありますが、スピー ディーかつフレキシブルに生産体 制を切り替えることができます。  もちろん、実際に現場の監督を する場合に、現地の言葉で、直接 口頭でコミュニケーションをとる ことは非常に重要です。そこに従 業員各々がNotionなどの情報共 有ポータルを確認することを仕事 の習慣化さえしてしまえば、ス ムーズに情報の共有や確認が可能 になりますo  Notion AI の良さは、生成され たコンテンツをスムーズに Notion内のページに追加できる ことです。一見地味なことかもし れませんが、コピー&ペーストの 必要がないことによる操作性の良 さは時短と情報ロスの防止につな がります。そして、言語の壁をな くしコラボレーションを強化する だけでなく、データ分析や文章作 成にもNotion AI は活用できますo  製造業では、取引先、仕入れ先 の伝票や納品書、帳票などさまざ まなデータを扱います。これらを Notionで管理することによって、 ナレッジやノウハウが蓄積されや すくなるだけでなく、ユーザー全 員がアクセスできるなど共有も非 常に簡単になります。Notion AI はデータの入力のフォーマットを 提供してくれるだけでなく、デー タのサマリーや回答を行うことも できます。これらによって言語の 壁を超えた、より生産性の高いコ ラボレーションが実現可能です。  Notionという誰もが簡単に使 うことができるツール上に、 Notion AI があることによって、 スピーディーな文章作成や体裁の 修正などドキュメントの平均レベ ルの底上げを行い、すぐに国内外 を問わず関係者に共有できる点は 優れた強みです。  《3つ目:ソフトウェア開発》  3つ目は、プログラミング分野 ですo プログラミングの綛験があ る方は綛験したことがあるかもし れませんが、何かある機能を実装 しているときに特定のプログラミ ング言語での記述法はわかるのに 他のプログラミング言語での書き 方はわからない時があります。  Notion AI を含む生成AIでは、 命令文の工夫は必要ですが、プロ グラミング言語の表現を他のプロ グラミング言語に書き換えた結果 を出力してくれますo極端な例で すが、Python言語ではこうだっ たのが、C言語だとこういう記述 になるといった感じです。  それだけでなく、エンジニアと 非エンジニアのコミュニケーショ ンを円滑にする役割も期待ができ ます。プログラミング初心者や新 卒社員がいち早くプログラミング に慣れるだけでなく、業務のス ピードが上がり、わからないこと への今後のアプローチを早めに判 断できるようになると思います。  プログラムのサンプルを、イン ターネット検索で探し出すことは 多いと思いますが、参考になるサ イトを探し出すのに時間と気力を 使います。あまり一般的でない言 語は、情報を探し当てるのが難し い場合があります。  Notion AI はすぐに答えや参考 になるプログラムを提示してくれ ます。Notion上で個人がプログ ラミングに関する情報をストック し、備忘録とする使い方や Notionページを外部公開し、他 の人の助けになる使い方もできま すo  以上のように教育段階から1人 で作業できるようになるまでの期 間をNotion AI によって短縮し、 そのままプログラミングのサポー ト役として使用できますoそして、 エンジニアと非エンジニアのコ ミュニケーションの溝を埋めるよ うな使い方もできます。なぜなら、 AIはプログラミング言語と自然 言語の相互の翻訳も可能だからで す。  よくある問題として、エンジニ アがユーザーにコードを上手に説 明できないことや、反対にユー ザーが実現させたいことをプログ ラミングの知識で語ることが難し いことがあります。  Notion AI は、「このコードは何 をしているのか」や「この機能は コードでどう表現できるか」と いった部分の答えやヒントを与え てくれます。言い換えるとプログ ラミング言語と自然言語の相互の 翻訳がNotion AI によって可能に なり、エンジニアとユーザーの対 話によって生まれた新たな情報を ナレッジベースとしてNotionに 蓄積することで双方の技術的知識 とビジネスの知識を高め、認識の 違いを減らすことできます。  このことからNotion AI は個人 のプログラミングの技術力の底上 げに留まらず、エンジニアとユー ザーとのコミュニケーション課題 を解決し、生産性を飛躍させるこ とができるツールになると考えて いますo  以上が3つのNotion AI の活用 方法でしたが、他にもまだまだ活 用できるシーンがあると思いますo 実際は複雑な要因が絡みあい、想 定通りに使えるかといえば難しい かもしれませんが、ノウハウを蓄 積していけば長期的には大きな効 果を生むと考えますo ノースサンドが提供する Notionサービス  今までNotion AI とNotionに関 する紹介とお客様事例や今後の利 用シーンについて述べてきましたo ソースサンドのメイン事業はコン サルティングですが、Notionの 世界初の代理店でもあります。現 在までに、100社以上の企業への Notion導入実績を持っており、 導入後の継続的なサポートも行っ ておりますo  Notionはノーコード・ロー コードのアプリであり、プログラ ミングに関する知識をお持ちでな い方でも簡単に扱うことができま すoそしてプロジェクト管理やド キュメント管理、社内ポータルな どさまざまな用途に使うことがで きます。Notionはあらゆること が実現可能であるがゆえに、 Notionを導入することによって 何を実現したいのか目的を見失わ ないことが大切ですo  また、ノーコード・ローコード とはいえテクニカルなサービスが 実現できるかは、社員のNotion 習熟度に依存します。たとえば、 データベース同士を関連付けるこ とや表計算アプリのように関数を 組むことは、Notionへの高い習 熟が必要になります。私たちは、 企業が置かれている状況にあわせ、 自分で操作しながら学習できる研 修や個人で勉強できるハンズオン コンテンツを用意しています。  ソースサンドは、Notionを導 入して終わりではなく、企業の Notion熟練度の向上や利活用を 促進させるためのサービスを提供 しています。ソースサンドでは、 Notionの基本的な操作からデー タベースを使った上級者向けの研 修コンテンツやオンラインでの講 義形式のコンテンツも設けており、 社員一人一人がNotionを使いこ なすまでサポートしていますo以 降では、企業がそもそもどのよう な課題を持っていて、なぜ最終的 にNotionを選択したのかといっ た導入事例を2つほど紹介しますo 《―つ目:社内で情報が乱立レ晴 報の共有に課題を感じていた企 業》  一つ目は、社内でさまざまな情 報が乱立していて、部署や支店ご とにナレッジを管理するツールや システムがバラバラになっており、 情報の最新化や組織間をまたぐ情 報の共有に課題を感じていた企業 の事例ですo  Notionを導入した決め手は、 課題の解決だけでなく、ストレス のないUIやコーディングといっ たビジネスサイドのユーザーでも 簡単に使える点でした。Notion を導入した後は課題が解決され、 今では社員自身が自発的に Notionでページを作り上げるま でになっています。かつては目的 別に分かれていたツールの大半を Notionに移行した結果、ツール 間の行き来が減り、生産性と品質 の向上に繋がったとのことです。  またプレゼンテーションや報告 会でリーダーが積極的にNotion を使うことが全社員への啓蒙とな り、社員が自発的に情報の共有を することが増えました。結果、 部・課長やリーダーと担当者間の コミュニケーションにおいて、ボ トムアップとトップダウンが実現 できたとのことです。  このように、社員個人が Notionを使っていくと個人、 チーム、部署、会社という単位で オリジナリティ縊れるその会社独 自のナレッジベースを作成でき、 課題を解消するだけでなく、社員 が主体的にツールを使い詳しく なっていく好循環がうまれましたo 《2つ目:組織急拡大に伴い、全 社的な情報共有のスペースの導入 を検討している企業》  2つ目の事例では、組織の急拡 大に伴い、全社的な情報共有のス ペースの導入を急ピッチに進めな ければならない企業へのNotion 導入です。  課題は、前述の事例のように、 社内の情報ポータルにおいて古い 情報や新しい情報が散在している 状況を一元管理することでした。 しかし、こちらの企業は、組織の 急拡大の中、中途社員や業務委託 などの人材の流動性が高く、はじ めてNotionを使うという社員が ほとんどでしたo  その状況を打破するために、 ソースサンドはNotionの導入支 援だけでなく、アフターサービス として、「ページ構築支援」や 「非同期学習コンテンツ」、「オン ライントレーニング」を行ってき ましたoこれらのサービスにより、 元々の課題である情報の集約や検 索性が格段に上がりましたoさら に、「オンライントレーニング」 を実施することによって、社員の Notionを使う平均レベルが上が り、閲覧のみであったのがタスク 管理やドキュメント管理を自ら行 えるようになりました。「非同期 コンテンツ」とは、いつでも学習 可能なコンテンツのことです。中 途社員やはじめて参画する社員は Notionの使い方を習得すること よりも、業務のキャッチアップの 方が優先度は高く、いつでも学習 可能なコンテンツが必要でした。 隙間時間に学習することで自身の ペースで学べるだけでなく、上長 や他のメンバーの教育にかかるコ ストを削減することができました。  以上によって、社員のNotion 習熟度が向上し、自らタスク管理 やドキュメント管理を行うことが でき、業務効率を向上することを 達成しましたo  ノースサンドは、オンラインの Notion操作の研修や自身のタイ ミングで学習できるコンテンツを 用意しています。Notionを使い こなしているのが一部の人のみで、 管理も少数で行っている場合に全 社としてNotionの熟練度を上げ たいといった場合はサポートを受 けることができるようになってい ます。  現時点でさまざまなAIが出て きていますが、Notion AI を含め AIは仕事をすべて引き受け、 100%完璧な答えを出してくれる モノではありません。生成AIは 仕事をするにあたって、今まで時 間のかかっていた情報収集や校閲、 体裁の修正、要約や翻訳といった 作業を短時間で行ってくれます。  ドキュメント作成を効率化でき るのが、AIの主要な使い方だと 思います。とくにNotion AI は Notionを使っているのであれば、 シームレスにページに書き起こす ことができます。情報共有やナ レッジベースはNotionの強みで あり、Notion AI はその情報やノ ウハウを整えてくれます。そして 外国語翻訳を行ってくれるので、 海外の人への共有もすぐに行うこ とが可能となりますo  現状では多種多様なAI技術が 存在し、それぞれ異なる活用方法 がありますが、いずれも既存の業 務プロセスを改善し、新たな可能 性を切り開く有力なツールですo そのなかでNotion AI を搭載して いるNotionは、誰でも操作でき、 AIを使ったリサーチや文書作成 の効率化、情報共有、ナレッジ ベースとして非常に有用です。も し、「AIを仕事に活用したい」や 「情報を一元管理したい」などが ありましたら、ツールの一部とし てNotionをご検討していただけ れば幸いです。  「AI思考」と行動指針 「8 Rules」  ここまで「AI思考」に基づい たソースサンドでのAI活用状況 をご紹介してきましたがAIを利 用する上では弊社の行動指針であ る「8 Rules」とは大きな関係があ ります。  突然、8 Rules と言われても皆 さんには馴染みのない言葉ですの で、最初に8 Rules を簡単にご紹 介し、その後、8 Rules とAI思考 の関係について説明します。  《ノースサンドの行動指針8 Rules》  弊社は、2015年の創業以来、 コンサルティングファームの中で も珍しい理念経営を実践し、拡大 を続けていますo  弊社には「8 Rules」という、 ノースサンドで働くうえでもっと も大事にしている、8つのルール があります。      スピードはあらゆるズキルや経験を上回るパワーを待ってい      る。名だたる経鴬名や成功名がもっとも亟視しているポイン      トにスピードを単げているのは、その効力がどれほどのもの      か知っているから。  丶人Å/ スピードは、相手の信頼を得るために使われるもっとも手軽      で誰にでもできる武器である。「やる・やらない」を考える必 ・’二昌器゛要はない、すぐに千動すればよい。メールやs趾kを即レス      する。スピードは我々のカルチャーだ。周りの人たちかノ囗      ノ囗と仕事をしている間に、鉐スピードで悗を駆け抜ければ、      お客梯から砲人な信頼を勝ち取ることかできる。      目の前の仕平に情熱を持って取り組めているかり答えかNo      であれば、お君様は動か廿ごいない、お客様から信頼されて      いない。さらにはこ司からも評価されていない。      納得いく皿弔ではないから、やりたいことは他にあるからと  g いう言い訳をして、日の前の仕事から逃げているだけである。      お客様の立罵に立って号jでみで欲しい。目分か雇っている ”u莖?r゛`コン引レタントか惰i生でやる気なく仕弔をしていたらどうだ      ろうか?この人へ仁事の依頼を続けたいと思うだろうか。ズ      キルや経験はないか隋熱を持っでかむしゃらに取り組んでい      る人に仕事は果よってくる。      目己瓦位な考え方でお客様との¬ミ・二ヶ−ションガー方通      行になっていないだろうかりお客様が伺を求めているか、次      に何をしようとしているのか、注意深く硯察し、想像するこ      とで目然と見えてくる。そこに目分は出てこない。ただ単純  /丶 に柚千が求めていることにフィットするように勣き。正しい    丶/ 方向へ導いていくのが真のコンサルタント。  ¨lご21ご゛   i-・・a・・I、   卜いやりとは、柚乍に与え続けること。見返りは求めてはい      けない。自分の利益ではなく、・手の刈益、つまり利他の心      を持つことか信頼につながる。      人生は選択の廼続である。区った恃はチャレンジしよう。      チャレンジすることで失取を早く経験することができる。失      取を早く多く曜験することが成功への近道となる。  冫 正しいチャレンジによる失敗は歪も責めたりはしない。失敗      の原因は自分にあると考え、他大のせいにしない。世入のせ ¨ここ、は沚゛’いにすると真の問題は解決しない。何か問題だったのかを考      え、改善し、高速PDCAをフル回転させることか成功につな      がる。      人か何かしてくれたら「ありがとう」という感謝の三持ちを伝      えよう。大は自分にない強みを持っているもの。      相手の良い部分を兄て、純粋にすごいと巴ったら「すごい  △ね」という尊敬の気粁ちを伝えよう。       戊功した晤は自分だけがすごいのではないという謙遜の気持      ちを持ち、ブームで吝びを分かち合おう。迂に失取した防は      自分に腮を向けて、目分の何か悪かったのかしっかりと融り 惑・・聹敬一謙国返ろう。  `゜’“I 目分ひとりでやれることはたかが知れている。魯副・尊敬一      諏面の心で仲間を増やせぱ、会社全体、囗云全匡、世界だっ      て動かせるかも知れない。      世の口には自分には到底かなわないような頤が良い大だちか      大勢いる。その人たちにどうやって瞬つのか?圧価」的な兮      をこなすしかない。歪よりも旦く起きて勉伍する、隙間の時  Z〃 間にこを読む、最新知識を倡るためのアンテナを張り巡らせ  jjj     る、当たり前のことを圧俔的なエネルギーでやり続ける、そ 三側妁なM力で・か7   ういった努力が頭の良い大たちを罵かすことかできる。 一一一一−      圧倒的なエネルギーで行動し続けた人のみ、他者と圧倒的な      差をつけることができる。       什票をしていく卜で、鴨理さ正しいことは大前提、滴皿さ間       凛っていたり、弱かー・たりするとまったく柚了にされない。       ただし、相手は人間、どんなに正しい論理で素晴らしい窪案       をし元としても、卜から回線であれば相手の信頼を得ること       はできうぷい。   M IQより豐燃で、 ̄この大のためにやって?るか」と甲、つてもら   ’ご?、ご:ご’うごとが必要。柚りと飲みにいくのもよし、ノフイペー・で       遊ぶのでもよし、その太が嫌がっている仁事を率先してやる       のもよし。とにかく共感を口て、「この大なら大工夫そうだ       な」この大に壬したいな」と屶ってもらわなけわぱ人を勣か       7ことはでぎない。       目分をさらけ出さなければ絆は生まれな八お彑いの耳の上       話をしたり|。ご、お互いを人の八閤として子め合うことで       耳づ生まれる。自分の目りにどれだけ深くて涙い岼を藁くこ   C とができるかか、成功には人かせない。お客様との絆があれ       ば、それかまた新しいビジネスに繋がる。   こ愬a.   714-IIq”、lr   圧言」卜な女力で頑張り絖けが人か卜を深めることができ、現       吠をよりRい方向に進めることができる。プライドを捨て、       口分をさらに出した人にのみ、舩の扉は開く。   弊社はこのシンプルなルールを ただの飾りとするのではなく、泥 臭く、素直に徹底している会社と 言っても過言ではありません。   さて、このような行動指針「8 Rules」を持つ弊社では、すでに AIを使って業務を行っています。 そして本書のタイトルである 「AI思考」に基づいて行動をして いますが、その際にいくつか、配 慮が必要になってきます。  ここで改めて「AI思考の5要 素」です。 @論理的思考 AAIに関する知識一理解 B業界・ビジネスや人間関係等  の知識 C適応力 D倫理  企業としては行動指針である 「8 Rules」にしたがって行動する わけですが、この行動指針に従う 際に「AI思考の5要素」とどん な関係があるでしょうかo  AIを使うことでコンサルティ ングファームの重要な要素である 「論理的思考」の強化だけでなく 「対応スピード」がさらに向上す ることが期待できますし、実際に 強化されています。一方で「AI に関する知識・理解」のために新 たなチャレンジ、努力も必要と なっています。実際、ノースサン ドではAIに関する勉強会や情報 交換がリアルとサイバーの両方で 行われていますo Notion上では AIに関するページが作成され、 チャット上で議論が進んでいますo そして実際のビジネスの世界で AIをどのように活用していくの か? という点でもNotionを活 用しつつ情報を常に集めています。  「適応力」という観点でもAIを 活用することで従来以上に幅広い 視点を持つことができるようにな り、ソースサンド自身も変わる努 力をしています。また、AIを活 用していく上でもっとも重要な要 素と考えている「倫理」もフィロ ソフィー会という勉強会を通じて 強化しています。AIの回答が、 人間の倫理観にあっているとは限 りません。AIは論理的ではあり ますが、人間としての感情を注入 することが大切となってきていま す。 まとめ  AIに対する期待は何十年も前 からあり、何度かブームを経るこ とで少しずつビジネスの世界に取 り込まれてきましたが、残念なこ とに限られた領域での利用にとど まっていたことは間違いない事実 ですO しかし、生成AIはこれま でと違うと考えています。従来は エンジニアの領域、限られた領域 でしか使用できなかったものが、 大きく変わり、いつでも、だれで も生成AIを活用できる環境が用 意されています。  その背景をおさらいすると、次 の理由があります。 ・インターネットの発展  いつでも簡単に必要なリソー  ス(AI)にアクセスできる ・巨大な計算機資源   グラウトサービスを利用する  ことが出来る ・基盤モデル  事前学習とフアインチューニ  ングの仕組み ・サブスクリプション   グラウト上に基盤モデルをサ  ブスクリプションで提供  個人、組織でも簡単に必要な  分だけの低価格で利用を可能と  した  もちろん、生成AI技術による 精度・品質の向上という点も大き な理由ですが、従来では導入が不 可能だった分野でもAI活用の可 能性を模索することができるよう になったことは大きな変化です。  今はあらゆるビジネスシーンに おいて「AI活用」を選択肢に入 れることが可能となりました。違 う表現をするならば「AIファー スト」でビジネスを考えることが できるということです。これは、 ビジネスを行うならば、読み書き、 そろばんができることが基本で あった時代から、インターネット の時代ではメール、オフィスソフ トを使うことが当たり前になった ことと同様に、AIを使うことが ビジネスの世界では基本となり、 読み書きそろばん、メール、オ フィスソフトを使うレベルになる ということですO  しかし、AIは万能ではありま せん。AIは便利であるがゆえに 使う側である人間も変わることが 必要です。では、どのような考え 方が必要か? というものをまと めたものが、本書のタイトルであ り、主題である「AI思考」です。  ここで改めて、AI思考の5要 素ですO  @論理的思考  AAIに関する知識一理解  B業界・ビジネスや人間関係等  の知識  C適応力  D倫理  現在の生成AIは完全ではあり ませんし、人間の感情、表現の微 妙なニュアンスまでを理解してく れるものではなく、あくまで汀 システムの1つであり、コン ピューターです。そのためAIに 問いかける際には、人間が論理的 であることが必要です。論理的な 思考、論理的な表現によって、 AIははじめて期待した回答に近 い動きをするようになります。  そして、AIが導き出した回答 は必ずしも正解であるとは限りま せん。生成AIの知識・理解があ れば、その回答が正解でない理由 はすぐにわかると思います。AI は事前に学習したデータ以上のこ とは知りません。知らないこと、 未来を予言するようなものではな く、知っている情報から推測され る答えを回答してくれるものです。 つまり、いろいろなことはよく 知っているという点では優れてい ますが、知らないことは知りませ んし、誤った知識を与えた場合に は誤った回答しか導き出すことが できません。一方で一つ言えるこ とは、豊富な知識を忘れないとい う点です。人間は豊富な知識を 持っていても、忘れてしまう、思 い出せないことがよくありますが、 AIはその点においては人間より も優秀ですO  なお、学習データを有効に活用 できるかはまだまだ発展上の研究 レベルであり、AIを開発する企 業ではさまざまなモデル、チュー ニングが行われている状態です。  AIの回答が必ずしも正しいわ けではないということは、AIが 導き出した回答を採用する、しな いの最終的な判断は従来と同様に 人間であるということです。人間 が判断することが必要であるとい うことは、AIを使用するビジネ ス分野においてはやはり、その人 間が専門家であり、業界・ビジネ ス等の知識を持つことが必要ですO AIを使うことで従来と比較にな らないくらいのスピードで多くの アウトプットを得ることができる ようになりますので、むしろ、こ れまで以上に専門家であることが 必要になってきます。安易な考え、 専門性が不足した人・会社から大 量の情報が提供されてきた場合に は、その真偽を見抜く力、また本 当の情報が何であるかを知ってお くことが必要になります。  そして、これらの環境変化、ス ピードに対する適応力も必要に なってきます。AIを使うことで ビジネスのスピードは飛躍的に加 速することは間違いありませんO 適応力という観点では、全体を正 しく把握、理解することと、AI の力を上手く活用することも必要 な要素となります。すべてのこと を100%理解、消化した後に行動 を開始するのではなく、AIの力、 知識を正しく活用することで、全 体を把握しつつ、AIに任せる、 頼るべきものは頼るという、AI をビジネスパートナーとしてうま く使うことも含めた適応力が必要 となりますO  残るテーマはAI利用時の倫理 です。今のAIはあくまでもコン ピューターであり、事前に学習し たデータから、アルゴリズムによ り、回答を推論、生成していますO 人間のような感情を持っているわ けでもありませんし、その場の雰 囲気を察知することもありません。 あくまでも機械的に回答をしてい るため、その回答・結果は必ずし も、人間が期待した通りとは限り ませんO  単に期待した回答でなければ、 性能が悪い・品質が悪いで終わり なので、とくに問題にはなりませ んが、倫理に違反するレベルの回 答となれば話がまったく違いますO 人の倫理観は国、地域でも変わり ますし、会社、業務内容など、そ の場、その場の状況、環境によっ ても細かく変化しますO  最近のAIでは倫理の観点で殺 人、犯罪に結びつくような世界共 通の内容は排除するようになって きましたが、ビジネスの世界に必 要な倫理にはまだ程遠いレベルに あります。そしてAIとお客様が 直接対話、会話するような場面に おいては、従来とは比較にならな いスピードで情報が拡散されるた め、倫理に関わる課題が生じた場 合にはできるだけ速やかに対処す るようなことも求められてきます。  改めて「AI思考」を振り返っ てみましたo読者の皆様はご理解 されていると思いますが、今後、 ビジネスの世界でAIを使ってい くためには、従来にも増して「人 間」が重要になってきます。すで に人間中心のAI (IICAI : Human- Centered Artificial Intelligence)と いう言葉はさまざまな場面で使川 されています。HCAIでは人間の 能力を機械(AI:人工知能)に 置き換えることよりも、機械 (AI)を使って人間の能力や体験 を向上させることに焦点を当てた アプローチの方が大切であるとす る考え方です。すでに日本政府も 「人間中心のAI社会原則」とい う資料を2019年3月に公開して いますO  そしてその人間の重要性を支え るためのポイントとなるものが本 書のタイトルでもある「AI思考」 であると考えています。  本書を通じて「AI思考」の大 切さが伝われば幸いですO 謝辞  ここまで長らくご覧いただき、 ありがとうございましたO  冒頭にも述べましたが、2023 年はAIが大きく変化し、私たち の日常生活や仕事に取り入れられ た一年となりましたO  振り返ると2022年の年末から 2023年の年始にかけて「今後、 3〜5年先を変革していくテー マ・技術は何になるだろう。本を 手に取ってもらった人たちに、未 来がどのように変わっていくかで きる限りの根拠のあるデータとと もにその基礎を伝え、一緒に考え ていける本にしたい」と当時の弊 社プロモーション担当の東谷昴 さん、前著でもお世話になったク ロスメディア・パブリッシング 執行役員の菅一行さん、鈴木愛 さんとディスカッションを重ねま したo  ディスカッションの過程で、当 時はまだ一部の人が面白がって 使っていたChatGPTやStable Diffusionの話になり「これは今 後の資料作成の在り方、ビジネス パーソンの仕事の仕方を変えてい く」と感じたことで、この本の テーマがAI(特に生成AI)とな りましたo  執筆にあたって注意すべき点は、 変化の速い、新規のテーマに一人 で取り組むことは危険だというこ とです。情報収集や解釈が独りよ がりになり、読み手の皆様に価値 を届けられないリスクがあるから です。  そこで社内でもビジネス、技術 やNotionに知見が豊富なコンサ ルタントを集めたのが、今回の執 筆陣です。  ・和久利智丈さんには、汀や AIに関する技術・国際的な取り 組み状況やビジネスへの適用方法 を紹介してもらいました。  和久利さんには担当領域以外に も、本書全般の執筆/校正を担当 していただきました。  ・平岩宗さんには、ビジネス でのAIの利用状況、他社事例を 調査し、紹介してもらいましたO  ・Notionチームの上田智之さ んには、読者の皆様の組織でAI 思考およびNotion AI を利用する ための具体的な方法について社内 事例を紹介してもらいましたo  またNotionチームからは監督 として六山大輝さんにも参加し てもらっています。  ・本書内の各図について、執筆 者毎にテイストが異なっていまし たが、デザインチームの山田陸 さんが統一してくれましたo  他、中鋪拓馬さんにはAIの組 織/個人への実装に関する情報を 提供してもらいましたし、本のカ バーやデザイン、プロモーション は潮屋香織さんに担当いただき ましたO  クロスメディア・パブリッシン グの編集の山本豊和さんとは、毎 週の会議にて、本の方向性や内容 について客観的なアドバイスをい ただき、読者の皆様が分かりにく いような箇所は軌道修正をしてい ただきましたO  本書の執筆に関する予算・スケ ジュール・方向性など様々なシー ンにおいて、前田知紘社長と河 野智晃常務にはご支援いただき ました。  そして、私の多くの業務を肩代 わりしていただいた八木達也さ んのように、上記のメンバーの周 囲で情報交換・ディスカッション や業務などをサポートいただいた 方々、またそのご家族のおかげで 本書はできあかっています。  ありがとうございましたO  AIは、今後の私たちにとって 切っても切り離せない重要な役割 を果たしていきます。  本書が皆様の未来に、何か少し でもお役に立てれば嬉しいです。