たった4年で100店舗の美容室を作った僕の考え方_北原孝彦   まえがき   目指すゴールに最速で辿り着きたい時、あ   なたならどうしますか?  この本を手に取っていただき、ありがとうござ います。  僕が地元の長野県にDears(以下、ディアー ズと表記)という美容室を立ち上げたのは 2015年5月のことになります。  それからたった4年で、僕はディアーズを 100店舗以上の美容室に育て上げました。  その後も2021年6月の時点で、直営店が10 店、フランチャイズが146店、計156店へと 急成長を続けています。  2020年12月には、全国47都道府県への出店 も果たしました。  ディアーズでは、来店してくださったお客様に 「次回の予約」を取るスタイルを採用しています が、次回予約率は90%以上。「さぞ、やり手の社 員が多いのだろうな」と思うかもしれませんが、 管理職(店長)はゼロです。I人もいません。  社員は、週休3日まで自由取得。休みが取れな いために離職率が高く、求人や集客に悩む美容室 が多い中、ディアーズはそうした悩みとは全く無 縁です。  なぜ、そんなことが可能なのか?  この本では、僕がたった数年で美容室を急拡大 させてきたプロセスに沿って、その秘訣を明らか にします。  なぜ、僕が「レッドオーシャン」(血で血を洗 うような激しい競争が行われている既存市場のこ と)と言われる美容室業界において、たった4年 で100店舗を超えるお店を作ることができたの か?  もちろん、そこには明確な理由があります。  僕は常に「自分の目指すゴール」から逆算して、 「設定」と「設計」を考えるようにしています。  もし、「成功の秘訣を二言で言ってください」 と言われれば、僕は「設定と設計」と答えるで しょう。  では、「設定」と「設計」とは、いったい何で しょ’つか?  僕の定義では、設定とは、再現性のあるものを どういう人が喜んでくれるか、その「ターゲッ ト」のことです。  一方、設計は「こうしたらこうなる」という原 理原則に基づいた「マニュアルと環境で再現でき るもの」になります。  抽象的で分かりにくいと思いますので、具体例 で説明しましよう。  例えば、あなたが経営する美容室に、次のよう なタイプの2名が面接に来たとしましよう。経営 者として、あなたはどちらのタイプの人を採用し ますか?  @上昇志向が強く、バリバリ仕事をして、お   店の売上アップに貢献してくれそうな人  Aいくつかのお店を転々として、仕事や人生   に疲れ切っている人  おそらくほとんどの経営者は、@のタイプを採 用しようとするのではないでしょうか冫・  しかし僕は、@のタイプは絶対に採用しません。  僕が選ぶのは、Aのタイプの人です。  なぜか?  その秘密が「設定」と「設計」にあります。  社員の成長なくして、会社の成長はない。  おそらく美容室業界に隕らず、世の中の経営者 のほとんどが「社員の成長」=「会社の成長」と 考えているのではないでしょうか?  だから求人で言えば、「いかに素養のある人を 採用するか」にこだわります。  入社させてからも、「いかに優秀な人材に育て 上げるか」に心血を注ぎます。  そうした中で、多くの経営者が「優秀な人材が 集まらない……」とか、「採用した社員が思うよ うに育たない……」といった悩みを抱えています。  しかし、ここで少し考えてみてください。  仮に入社させた人物が、運良く優秀な人材に 育ったとしましよう。  その優秀な人材は、いつまであなたの会社のた めに働いてくれるでしょうか?  優秀な人材が行き着く先は、基本的に「独立」 しかありません。  優秀な人材を育てること自体、なかなか容易で はない上に、育った瞬間に独立されてしまうと、 会社をスケール(事業規模を拡大)させたい場合 に、会社は大きな痛手をこうむることになります。  会社の成長という目的のために社員を育ててい るのに、社員を育てることが、逆に会社の成長を 阻害させるという「皮肉な結果」を招いてしまう のです。  では、こうしたジレンマを打ち破るためには、 いったいどうしたらいいのでしょうか?  そのためには、根本から会社の「設定」と「設 計」を見直すしかありません。  のちほど詳しく解説しますが、設定と設計が間 違っていると、経営者と社員、双方が「莫大なス ドレス」を抱えながら仕事をしなければならない、 苦しい状況に陥ってしまいます。  そのような状況下では、社員が辞めていくのは 当然だし、業績だって上がるはずがありません。  僕に言わせれば、全ての問題は「設定と設計」 に帰結するのです。  では、あなたは経営者として、「自分の目指す ゴール」を実現させるために、どのような考え方 で「設定と設計」を組み立てていけばいいので しよ’つか?  そのためのヒントを、本書に書き記していきま す。  この本は、僕が経営する美容室の話を中心に進 めていきます。  ですから、この本のメインターゲットは「美容 室の経営者」になりますが、僕の経営・マーヶ ティング理論は、 「社員がなかなか育たない……」 「少し厳しくすると、すぐに辞めてしまう……」 「若い社員の考え方や気持ちが理解できな い……」 「集客がうまくいかない……」  といった悩みを持つ、あらゆる経営者の方々に 参考にしていただけるはずです。  この本が経営者と社員、双方の悩みやストレス を解消させる「設定と設計」を構築する一助にな れば、これほど嬉しいことはありません。  僕の話に、しばらくお付き合いください。         ?〜グループ代表 北原孝彦    ※電子書籍をご購入いただいた方限定の無     料プレゼントがあります。詳しくは剳淵     をご覧ください。   自宅に引きこもりゲーム三昧   の日々  序章では、僕がディアーズのI店舗目を出す決 意を固めた経緯について、お話ししますが、そも そも、なぜ僕自身が美容師になろうと思ったの か?  その点から話を始めたいと思います。  興味がない方は、序章を読み飛ばしていただい てもかまいません。かまいませんが、読んでいた だくことで、僕自身の考え方をより深く理解して いただけるはずです。  自分で言うのも何ですが、生来、性格が少しひ ねくれている僕は高校時代、学校でいじめられ、 家に引きこもってゲームばかりをしていました。  家から出ないでゲームばかりしているので、ブ クブクと太り、髪は伸び放題という生活を送って いました。  ある日、親から「髪ぐらい切って来なさい」と 言われ、お金を渡されたのですが、ゲームに夢中 になっていた僕は、ふと思いました。  「自分で髪を切ってしまえば、このお金をゲーム に回せるな」  何事も没頭する性格の僕は、当時、寝る時間以 外は全てゲームのことを考えていました。  髪の毛のことなどどうでも良くて、髪を切るた めに使うお金があるのならば、自分で髪を切って でも、ゲームにお金を回したいと考えたのです。  そこで家にあったハサミを取り出し、自分で髪 を切ってみたのですが、この時に不思議な感覚に とらわれました。  髪を切る時の「ジョリ」という音が何とも気持 ち良く、それ以降、僕はオシヤレに目覚めるよう になりました。  断食をしたり、なわとびを跳んだりして、I〜 2ヵ月のダイエットで体重を約20キロ落とし、髪 も自分で切るようになりました。  この時は将来、自分が美容師になるということ は考えもしませんでした。  しかし、高校卒業後、まだ働きたくなかった僕 は「美容師になったらモテるかもしれない」とい う単純な理由で専門学校に入学しました。  そして、美容師という職業を選択し、就職する ことになったのです。   なぜ、一番若い僕が店長に抜   擢されたのか?  入社1年目から、僕は「すぐにスタイリストに なって、店長になりたいんです」と言って、バリ バリ働きました。  平日は毎朝5時まで練習。  休日は基本的に休みなのですが、休日出勤でお 店を手伝ったり、社長が講師を務めるセミナーに 参加をしたりしていました。  そのお店の社長は休日になると、カットの仕方 などを教えるセミナーをやっていたのですが、そ のセミナーに参加するため、僕は社長に言いまし た。  「お給料も交通費もいりません。車の運転ぐらい はできるので、ぜひ社長について行かせてくださ い」  そう言って、社長のカバン持ちをしながら、セ ミナーに参加をしたりしていました。  今振り返ると、「1年目の社員にしては、ずい ぶん生意気だったな」とも思いますが、そうやっ て休日も社長について回っていました。  そんな僕は入社1年目でスタイリストになり、 3年目に早くも店長を任されるまでになりました。  美容室の出世コースというのは、お店によって 異なりますが、「アシスタント」↓「スタイリス ト」↓「トップスタイリスト」といった形で出世 をしていくのが一般的です。  管理職になると、「チーフ」「店長」「マネー ジャー」「ディレクター」といった肩書きが付く ようになります。  一般的なスピードで言えば、入社して3〜4年 でスタイリスト、5年でトップスタイリスト、そ の後に店長などの役職が付けば、順調な出世コー スと言えるでしょう。  ですから、例えば「2年でスタイリストになり ました」と言われたら、「かなり早いね」「ずいぶ んがんばっているね」という感じです。  それに照らし合わせてみても、僕の出世のス ピードはかなり異例だったと言えるでしょう。  ある時、社長に「なぜ、一番若い僕が店長なん ですか?」と聞いたら、次のような答えが返って きました。 「お前に任せて、それでお店が潰れるなら、納得 できる気がするから」  それが全ての答えでした。  社長にそう言わせるぐらい、僕は1年目から 「これでもか」と言われるぐらいにバリバリに働 いていたのです。  店長を任された僕は、よりいっそう仕事にのめ り込むようになりました。  順調だった仕事に暗雲が立ち込め始めたのも、 まさにこの頃のことでした。   朝5時からポスティングをし   たら、何か起こつたか?  社長から「お前のような人材を育ててくれ」と 言われた僕は、店長として、よりいっそう仕事に 前のめりになっていきました。  まず僕が部下たちに提案したのは、「朝の5時 からポスティングをしよう」ということです。  僕はみんなを集めて言いました。  「自分たちのお客様なんだから、自分たちで集め ようよ。とはいえ、休日にチラシを配るのは嫌で しょう? だったら、朝やろうよ」  美容室というのは、何かあっても、基本的に開 店時間と閉店時間を変えることはしません。  当たり前のことですが、「ポスティングをした いから、開店を少し遅くしよう」とか、「今日は ミーティングがあるから、閉店を早めよう」とい うことは、基本的にしないものです。  ですから、ポスティングをするのであれば、開 店前、もしくは閉店後の時間を利用するしかあり ません。  ポスティングをすることでお客様が集まれば、 お店の業績アップに繋がり、ひいては従業員の喜 びに繋がります。  仮にお客様が集まらなかったとしても、1人の お客様を集める大変さを知ることで、従業員が成 長できるはずだ。僕はそのように考えていました。  当時は今のようにSNSが発展していなかった ため、お店の宣伝はホスティングなどの紙媒体が 主流でした。  実際、ポスティングをすればするほど、お客様 が集まり、僕は手応えを感じていました。  ところが、その矢先、部下の3人が「辞める」 と言い出しました。  「朝の5時からポスティングをやりたくない」 「もうこれ以上、北原さんにはついて行けない」 と言うのです。  そして、実際にお店を辞めてしまいました。  美容室の場合、美容師がI人離職すると、その 分、業績が落ち込むことになります。  従業員を育てて、業績を上げるための戦略だっ たはずが、逆に離反を招いてしまったのです。  今振り返ってみても、この頃はやる気だけが空 回りして、歯車がうまくかみ合っていなかったよ うに感じています。  こうして僕は「人を育てることの難しさ」や 「上司として部下を動かすことの難しさ」に初め て直面することになりました。  そして、この時の経験が、その後のビジネスモ デルの構築に大きく寄与していくことになるので すが、それはまだ先の話になります。   「業績低迷」↓「労働環境悪   化」↓「離職」の悪循環を断   ち切る方法  入社3年目で店長として、お店の舵取りを任さ れた僕は、さらに出世をして、3店舗を統括する マネージャーになりました。  マネージャーになってからも、僕は大車輪で働 きましたが、お店の業績はやがて頭打ちになりま した。  働けども、働けども、なかなか業績が伸びず、 無理をするたびに従業員が疲弊して辞めていくと いう悪循環を繰り返していました。  何かこの悪循環を抜け出す方法はないだろう か?  まず僕が考えたのは、「キッスカットをなくし た方がいいのではないか」ということです。  データを調べてみると、あるお店に1ヵ月間で、 子供のカットだけで30人ほどのお客様が集まって いました。  当時、子供のカットはI人2500円でやって いたのですが、大人と比べて、どうしても客単価 が下がってしまいます。  僕は「これをなくせば、平均客単価を3000 円ぐらいアップできるのではないか」と考えたの です。  子供のカットと言うと、簡単そうに思えるかも しれませんが、子供はお店で騒いだり暴れたりす るケースがあるので、実は大人のカットよりもし んどい場面が数多くあります。  にもかかわらず単価が安いので、労力に見合っ た報酬を得ることができません。その過程の中で、 従業員が疲弊していきます。  さらに、子供が騒いだり泣いたりしている空間 というのは、大人にとって、心地の良いものでは ありません。  「まずは低単価のキッスカットをやめることが、 お店の業績アップに繋がる一番の近道になるはず だ」  僕はそう考えるようになりました。  そのように考えてみると、その他にも「前髪の みのカット」など、低単価の原因が多いことに気 づきました。  客単価を考えずに、ただやみくもに「お客様の 数」を集めるだけの戦略だと、従業員がどんどん 疲弊して、最終的に離職を招く結果になります。  そこで、「上位顧客がどのようなメニューを選 んでいるのか」「上位顧客はどれくらいの金額を 使っているのか」をレジのデータで調べてみるこ とにしました。  実際にデータを調べて思ったのは、「上位顧客 だけを集客していた方が、よほどお店の経営は安 定するだろう」ということです。  上位顧客のみならば、お客様の数をこなさなく てもいいので、従業員が疲弊することもありませ ん。  そこでメニュー構成を自分で作り直し、そのメ ニューで集客できるよう、僕自身が自腹を切って、 ホームページを作成しました。  会社のお金を1円も使わずに、です。  そして、お店の公式ページとは別の形で、実際 にそのホームページで集客をしてみたところ、き ちんとお客様が集まることも分かりました。  僕は社長に提案しました。  「従来のメニューを捨てて、上位顧客だけに絞っ たメニューに切り替えてみませんか?」  社長は「みんなの意見を聞いてみる」と言いま したが、その後に返ってきた答えは意外なもので した。  「将来的にキッスカットをずっとやっていきたい と言っている社員がいる。だから、やめることは できない」  意外な答えに、僕は納得できませんでした。   いかに「依存」を作るかがカ   ギ  実は、「キッスカットをずっとやっていきたい」 と言った社員は、当時、まだ入社したばかりでし た。  一方、僕は入社して7〜8年が経過し、3店舗 を管理するマネージャーを務めていました。  僕としては、まさに起死回生のアイデアのつも りでした。  自腹でホームページまで作り、完璧にお膳立て をして社長に提案をしたのですが、社長の返事は まさかの「NO」だったのです。  「僕の意見ではなく、人ったばかりの1年生の意 見を通すというのは、どういうことなんだろう? 僕のポジションつて、いったい何なんだろう か……」  そのように思った瞬間、自分の中でプツンと気 持ちが切れるのを感じました。  そして「トップがこのスタンスなら、この大変 さから抜け出すことは一生できないだろうな」と も思いました。  僕自身は、社長が「キッスカットを続けていき たい」という気持ちを理解できないこともありま せん。  しかし、その仕事を続けることが過酷な労働環 境を作り、従業員の離職を招くI因になっている のは、データを見れば明らかです。  であれば、「キッスカットをやめる」というの が合理的な判断なのではないでしょうか?  にもかかわらず、なぜ経営者が「自分かやりた いこと」を押し通すのか?  僕には理解できませんでした。  そしてこの時から、僕は本格的に独立を考える ようになりました。  誤解をしてほしくないので、あえて書いておき ますが、僕は今でもその社長を尊敬していますし、 感謝の気持ちしかありません。  僕はディアーズの社員たちに、よく次のように 言っています。 「僕は君たちにいろいろと与えるけれども、それ は一方で、自分で開拓する力を君たちから奪って いるということだからね」  どういうことかよく分からないと思いますので、 具体的に説明しましよう。  人間は与えてもらえる量が少ないほど、それを 渇望して、自らつかみ取る力が身につくものです。  例えば、お金持ちの人を思い浮かべてみてくだ さい。  お金持ちになる人というのは、幼少の頃に貧し い経験をした人が多い傾向があります。  なぜ、貧しい経験をした人がお金持ちになるの でしょうか?  それはお金を心の底から渇望することで、自分 でつかみ取る力、つまりお金を稼ぐ力が身につく からです。  僕が社員にいろいろと与えるということは、言 い換えれば、「僕に依存しなければ生きていけな い状況」を作っているということでもあるのです。  社長のカバン持ちも含めて、あの時の環境を経 験できたからこそ、今がある。  そのように思っています。  だからこそ、僕は当時の社長に対する尊敬と感 謝の気持ちを、今でもずっと持ち続けているので す。   お客様だけでなく従業員から   も求められる「器」を作る’・  当たり前のことですが、経営者は「白分か作り たいと思っているもの」や「やりたいと思ってい ること」が、お客様だけでなく、従業員からも必 要とされているかどうかを、まずは冷静に見極め る必要があります。  よく「集客さえできれば、もっと売上が上がる はずだ」とか、「良い人材さえ採用できれば、う ちの会社はもっと伸びるはずだ」と言う経営者が いますが、問題の本質は、実はそこではありませ ん。  本当に問題なのは「自分がやりたいこと」と 「お客様や従業員に求められていること」がズレ てしまっている点です。  結果として、経営者は「お客様が集まらな い……」「良い人材が全然集まらない……」と いった苦しい戦いをせざるをえなくなってしまう のです。  お客様や従業員から「本当に必要とされるも の」であれば、向こうの方から探してでも、人が やって来るようになります。  では、お客様だけでなく、従業員からも必要と されるビジネスモデルは、いったいどのように構 築すればいいのでしょうか?  その点については、これから説明しますが、僕 のビジネスモデルを「コ言で説明しなさい」と言 われたら、僕は「置きに行ったビジネスモデル」 と答えます。  ここで言う「置きに行く」というのは、具体的 にどういうことなのでしょうか?  分かりやすく言えば、自分の意見を押し通すの ではなく、お客様や従業員に対して、「本当に欲 しいのはコレでしょう?」という器を作るという ことです。  そして、その器を「置きに行く」ということで す。  その器に対して、お客様や従業員が自然に集 まって来る姿をイメージしていただければ、分か りやすいのではないでしょうか?  そして、本当に肝心なのは、ここからです。  ビジネスモデルとして、お客様や従業員などの 「人が集まる器」を作るためには、いったいどう すればいいのでしょうか?  この点が、次の第1章のテーマになります。  さて、前置きはここまでにしましょう。  次の第1章では、僕がディアーズのビジネスモ デルをどのように構築していったのかについて、 詳しく解説します。   平凡なオーナーのもとにカリ   スマ美容師は集まるか?  序章でお話ししましたが、当時勤めていたお店 の社長との意見の食い違いから、僕は独立するこ とになりました。  そしてディアーズを設立することになるのです が、ディアーズはある意味、僕にとっては「壮大 な実験」の場でした。  自分の考えたビジネスモデルが、はたして現実 の世界で通用するのか?  ディアーズの実店舗を通じて、1つひとつ実験 を繰り返しながら、僕はその検証を進めていった のです。  では、僕が考えた「ディアーズのビジネスモデ ル」とは、いったいどのようなものだったので しよ’つか?  その点について、これからお話ししたいと思い ます。  例えば、美容室のオーナーに「どんな美容室を 作りたいか?」を問うと、たいていの方は、次の ように答えます。 「カリスマ美容師をズラリと揃えた美容室」 「カリスマ美容師をパンパン輩出する美容室」 僕は漫画のドラゴンボールが大好きなのですが、 イメージで言うと、最強の戦士であるサイヤ人を ずらりと揃えた美容室です。  そうした美容室では、クリリンやヤムチャと いった「脇役」は蚊帳の外です。  もしくはウルトラマンの世代にとっては、ウル トラマンの兄弟が勢揃いしている美容室と言った 方が、イメージとして伝わりやすいでしょうか?  いずれにしても、カリスマ美容師たちが、お客 様を相手に分刻みで働いている。  そんな美容室を目指す方が多いようです。  ですが、こうした美容室を目指すオーナーにま ず問いたいのは、「あなた自身がカリスマ美容師 なのですか?」という点です。  厳しい言い方かもしれませんが、自分自身がカ リスマ美容師でもないのに、カリスマ美容師、も しくはカリスマ美容師の素養を持った人たちが自 分のもとにパンパン集まってくるというのは、考 え方が少し甘すぎるのではないでしょうか?  これは美容室に隕らず、どの経営者にも言える ことだと思います。  一度、自分の胸に手を当てて考えてみてくださ い。  経営者として、あなた自身がスターではないの に、スター社員を揃えた会社をあなたは目指そう としていないでしょうか?   なぜ、求人募集で人が集まら   ないのか?  先日、テレビにも出ているカリスマ美容師との 会食の機会がありました。  彼のお店はひとたび求人の募集をかけると、 100人ぐらいの美容師が集まるそうです。  100人の中から2〜3人を選抜するわけです から、こうしたお店であれば、「カリスマ美容師 をズラリと揃えた美容室」「カリスマ美容師をパ ンパン輩出する美容室」も夢ではないかもしれま せん。  一方、実際の現場はどうでしようか?  多くの美容室では、求人の募集を出しても人が 集まらないか、もしくは集まったとしても、いく つものお店を渡り歩いて、疲れ切った美容師がほ とんどです。  一般的な美容室では休みが少ない上に、お客様 のかき入れ時である土日に休みを取れないため、 旅行はおろか、友人などの結婚式に参加すること もままなりません。  にもかかわらず、月20万円以下の給料というこ ともザラで、さらに社会保険にすら入れてもらえ ないケースも数多く存在します。  そうした環境下で、肉体的にも精神的にも疲弊 し切って集まってきます。  そうした美容師たちに、例えば「カリスマ美容 師への道」というカリキュラムを用意したところ で、はたして心に響くでしょうか?  答えは「NO」です。  なぜなら、彼ら、彼女らが求めているのは「力 リスマ美容師への道」というカリキュラムではな いからです。  もし、それでも「カリスマ美容師への道」を強 要すれば、またすぐに別のお店に転職してしまう ことでしょう。  こうして従業員は渡り鳥のように転職を繰り返 し、お店の側も求人募集を繰り返すという悪循環 に陥ってしまうのです。  僕に言わせれば、そもそもの「設定」と「設 計」が間違っています。  だからこそ、「経営者が目指す方向性」と「現 場の従業員の方向性」が、いつまで経っても一致 しないのです。  美容室に隕らず、おそらく多くの中小企業が 「人を採用したいけれど、良い人材が集まらな い……」とか「採用してもすぐに辞めてしま う……」といった問題を抱えているのではないか と思います。  では、こうした問題を解決するためには、いっ たいどうしたらいいのでしょうか?   無い物ねだりはしない’・  ここで、まず考えなければならないのは「自分 が作ることができる設定と設計は何か」という点 です。  例えば、あなたが水力発電の事業を始めたいと しましょう。  一番簡単なのは、すでに流れている川のほとり に、発電のための水車を置くことです。  これが、最も簡単な事業の作り方と言えるで しょう。  にもかかわらず、多くの経営者は、川から自分 で作ろうとします。  当たり前の話ですが、川をイチから作るのは大 変です。  こうしたやり方では、おそらく川が完成する前 に、水力発電の事業から撤退してしまうのがオチ ではないでしょうか?  話を美容室に戻しましょう。  先ほどお話ししたとおり、多くの美容室におい て、求人をかけて集まってくるのは、いくつもの お店を渡り歩いて疲れ切った美容師がほとんどで す。  そうした人たちに「もっと働け」「もっと稼げ」 「もっと成長しろ」と言うのは、さすがに酷では ないでしょうか?  そういった強要をすれば、さらに疲弊して、ま すます生産性が落ちていくことは火を見るよりも 明らかです。  そこで、僕が言う「設定」と「設計」が必要に なります。  まえがきで説明しましたが、ここでもう一度、 復習をしておきましょう。  設定とは、再現性のあるものをどういう人が喜 んでくれるか、その「ターゲット」のことです。  一方、設計は「こうしたらこうなる」という原 理原則に基づいた「マニュアルと環境で再現でき るもの」(ビジネスモデル)になります。  まず設定とは、簡単に言うと「ターゲット」の ことですから、ここでは「疲れ切った美容師」と いうことになります。  カードゲームに例えれば、手持ちは「疲れ切っ た美容師」というカードしかないわけですから、 そのカードで勝つ方法を考えなければなりません。  この場合、「キングさえ持っていれば……」と か「クイーンが欲しい」といった無い物ねだりは 無意味です。  では、疲れ切った美容師たちを戦力にして勝つ ためには、どんな制度を設計するべきなのでしょ うか?  そうした美容師たちに対して、どういった制度 を設計すれば、喜んで働いてもらえるのでしょう か?   なぜ、お店を辞めてしまうの   か?  僕のところに相談に来てくださる美容室のオー ナーさんに、「今までに何人ぐらいの美容師が辞 めていきましたか?」と聞くと、「だいたい10人 ぐらいです」とおっしやる方が多いです。  そこで、「仮にその10人が辞めなかったとした ら、業績はどれくらい上かっていると思います か?」と聞くと、たいてい次のように答えます。  「おそらく、今の3倍は売上が上がっていると思 います」  みんな分かっているのです。  本当は3倍のスピードで成長できるのに、3分 のIになってしまっている……。  その大きな原因の1つは、従業員の離職を抑え ることができない点にあります。  「あの人さえ辞めなければ、うちの会社の業績は もっといいはずなのに……」  もしあなたが経営者であれば、思い当たる節が あるのではないでしょうか?  いったいどうすれば、従業員の離職を抑えるこ とができるのでしょうか?  そもそも、なぜ美容師はお店を辞めてしまうの でしょうか?  社員面接などの際に、「なぜ前のサロンを辞め たのか?」を丹念に聞いていくと、その理由は、 主に次の3点に集約されます。  @休みを取れない  A給料が少ない  B人間関係が気に入らない  Bの「人間関係の煩わしさ」は、美容室に限っ たことではありませんが、@とAは、この業界の 「定番の悩み」と言えるでしょう。  大事なのは、これらの要因を1つひとつ潰して いくことです。  なぜなら、こうした「美容師の悩み」を逆手に とると、@〜Bの問題を解決してあげることさえ できれば、よほどのことがない限り、お店を辞め ないからです。  経営者に求められるのは、「いくつもの悩みを 抱えた従業員に対して、全てクリアさせる労働環 境を設計してあげること」です。  序章で「置きに行くことが大事」という主旨の 話をしましたが、従業員が求めているのは、まさ に@〜Bの問題を解決してくれる職場であって、 そうした器(設計)を作ることが、僕が言う「置 きに行く」ことなのです。  では、先はどの3つの問題をクリアさせる労働 環境を、どのように設計すればいいのでしょう か?  順を追って、見ていくことにしましょう。   「週休3日」と「フレツクス   制」を採用する理由  まず@ですが、美容師の「休みを取れない」と いう悩みを解消させるため、ディアーズでは「週 休3日制」を採用しています。  なぜ週休3囗に落ち着いたのかというと、例え ば主婦の場合、週休2日だと子供に全ての時間を 取られてしまうからです。  一方、週休3日であれば、土日に子供に時間を 割いても、残り1日は自分の時間を持つことがで きます。  そうすることで、肉体的にも精神的にも余裕が 生まれます。  ディアーズでは「フレックス制」を採用してい るので、働く時間は自由。  また次回予約を採用しているので、自分が休み たい日にちに合わせて調整すれば、1週間の旅行 などの長期休暇が可能です。  お客様の「次回予約の日」を、自分が休みたい 日にちに合わせて調整すればいいので、休暇の日 程を、基本的に自分で決めることができます。  フレツクス制なので、夜に飲み会が入っている 日には、15時に仕事を終えて、翌日は昼の12時に 出勤するといったことも可能です。   一方、「もっと働きたい」と考えている方は、 そういう働き方を選択することもできます。  給料は一定の売上までいけば、それ以降は歩合 制を採用しています。  つまり、「どれくらい働きたいのか」「どれくら い休みたいのか」を、自分で調整できるシステム になっているのです。  「週休3日にすると、その分、美容師I人あたり の生産性が下がってしまうのではないでしょう か?」  ひょっとしたら、そのように思われるかもしれ ませんね。  ですが、一般的なサロンの美容師I人あたりの 1ヵ月の平均的な売上が50〜60万円なのに対し、 ディアーズでは、どの美容師七月801100万円 をコンスタントに売り上げます。  なぜ週休3日でも、ディアーズの美容師は高い 生産性を叩き出すことができるのでしょうか?  その秘訣については、これから本書の中で明ら かにしていきます。   美容師で月収100万円は可   能か?  次にAの「給料が少ない」ですが、美容室はビ ジネスモデル上、仮にエリアマネージャーに出世 したとしても、その美容師に月100万円の給料 を払ってあげるのは難しいのが現実です。  なぜなら家賃や光熱費、お店を作る際の借金の 返済などを考えると、月100万円の給料を払う ためには、それ以上の売上を上げなければならな いからです。  ですから、「月100万円の給料が欲しい」と 言う方に対して、そのための「出世道」を内部で 用意してあげることは、ほぼ不可能と言えるで しょう。  キャリアアップを目指したければ、基本的に独 立をするしか道はありません。  その一方で、美容師というのは、月20万円以下 の給料で働いている人たちがザラにいる世界です。  先ほどお話ししたとおり、ディアーズに来れば、 誰でも月801100万円の売上を上げることがで きるようになります。  ですから、月100万円の給料は無理でも、月 30140万円の給料を誰でも取ることができます。  例えば、僕が以前に働いていたサロンで言うと、 スタイリストが10人いたら、月の売上で100万 円を超える人が2人、60万円前後が5人、30万円 前後が3人といった具合でした。  このうち、美容室を辞めていくのは、たいてい 「月100万円を超える売上の人」と「月`一万円 前後の売上の人」です。  前者は「次の世界を見たい」「独立したい」と いう理由で、後者は「給料を取ることができな い」という理由で辞めていきます。  ですから、美容師の離職を防ぎたければ、アッ パークラスを作らないのはもちろんのこと、売上 を上げられずに困っている人を作らないことも大 切です。  要は、そのための仕組みをどう設計するかが肝 心なのです。  売上を中心に上下関係ができてしまうと、「売 上を上げた人間が偉い」という雰囲気が職場全体 に蔓延してしまいます。  そうなると、売上が上がらない人は、何か別の ところで目立とうとして、余計なことを始めたり、 職場を荒らしたりして、職場の雰囲気が悪くなり ます。  売上を上げられない人は、上げられないなりに、 組織の中で自分の存在価値を示そうとするものな のです。  こうしたことが起こらないよう、ディアーズで は誰もが月801100万円の売上を上げることが できるシステムを構築しています。  では、なぜディアーズでは、誰もが月80〜 100万円の売上を上げることができるのでしょ うか?  その点については、のちほど詳しくお話ししま す。   「自分の力で勝てる人」はい   らない!  一般的なサロンでは、できる限り優秀な人を採 用しようとしますが、僕が考えているのは、実は そこではありません。  僕が第一に考えているのは、「ディアーズの設 計を通すことによって、その人の人生をどこまで 引き上げてあげることができるか」という点です。  少し分かりにくいと思いますので、具体例で説 明しましょう。  例えば、休みがほとんどなく、月20万円以下の 給料しかもらえていない人がディアーズに人店し たら、どうなるでしょうか?  週休3日まで選択できるようになり、月30〜40 万円の給料を取ることができる上に、社会保険に も入ることができます。  自己採点で「今の自分の人生は20点ぐらいか な」と考えている人がディアーズに入れば、60点 とか70点になるかもしれません。  そうなれば、人生の採点が40150点アップする ことになりますから、振り幅が大きく、満足度が グンと上がります。  言い換えれば、ディアーズの設計を通すことで、 その人の人生の質が大きく引き上がることになる のです。  こうなると、よほどのことがない限り、その大 は離職しません。  一方、「業務委託で月50万円をもらっていまし た」というタイプの方がディアーズに入店したら、 どうなるでしょうか?  業務委託で月50万円というのはかなり優秀だと 思いますが、月50万円の給料が30〜40万円にダウ ンするというのは、その分、生活水準が下がると いうことですから、囗で言うほど簡単なことでは ありません。  仮に採用時にその金額で合意したとしても、必 ずどこかに不満が出てくるもので、最終的にはお 店を辞めていきます。  そうなると、お互い不幸になるだけですから、 ばしめから僕はこういうタイプの人を採用しませ ん。  僕が選ぶのは「優秀な人」ではなく、「ディ アーズの設定に合っている人」なのです。  僕が採用した、ある女性社員のエピソードです。  当時の彼女はスタイリストになって2年目でし たが、給料が月15万円ほどしかなく、社会保険に は入っていませんでした。  休みは週1日のみ。月の休みは4日ありますが、 4日のうち、1日は講習に出なければならないた め、1ヵ月間の休みは実質3日という状態でした。  面接が終わったあと、「今日はゆっくり休んで くださいね」と僕が言うと、彼女は「レジを締め るため、今からサロンに戻らないといけません」 と答えました。  他の社員が辞めていき、オーナーもレジ締めを やらないため、自らがお店に戻らなければならな いと言うのです。  そうした無理をしているせいか、休みの日には 病院で点滴を打っていることが多いらしく、腕を 見ると、そこにはリストカットの跡が残っていま した。  僕は彼女に言いました。 「週休3日で、自分のベースでいいからね」  その後、ディアーズに入店してから1年ほどで、 彼女は月40万円の給料を取ることができるように なりました。  ストレスがなくなり、風邪も引かなくなりまし た。  あまりに無茶な働き方たったため、親からは 「早く美容師を辞めなさい」と言われていたそう ですが、今では「今の社長さんに一生ついて行き なさい」と言われているそうです。  僕にとっては、何より嬉しい言葉です。   人間関係のストレスはどこか   ら生まれるのか?  最後にBの「人間関係が気に入らない」につい て考えてみましょう。  厚生労働省の2016年の調査によると、職場 のストレスの上位3つは次のとおりになるそうで す。  @仕事の質・量(53・8%)  A仕事の失敗、責任の発生等(38・5%)  B対人関係(セクハラーパワハラを含む)   (30・5%)  この調査から分かるのは、従業員のストレスは 仕事の内容だけでなく、職場の人間関係にも大き く左右されるということです。  仕事の内容だけでなく、人間関係も改善しない と、職場におけるストレスを減らすことはできま せん。  そして、仕事のストレスはもちろんのこと、人 間関係のストレスもやり方次第で改善できるはず だというのが、僕の基本的な考え方です。  そもそも人間関係のストレスというのは、どこ から生まれるのでしょうか?  それは二言で言うと、仲良くなることから生ま れます。  仲良くなるから、ケンカが生まれます。  距離が近くなるからこそ、そこに摩擦が生まれ るのです。  普通のサロンでは、朝礼やミーティングなどを 行い、従業員の結束を固めるのが一般的です。  一方、ディアーズの現場では、朝礼やミーティ ングは一切行いません。  なぜなら、従業員がそれぞれ自分の仕事に徹し てさえくれれば、あえて結束をする必要はないか らです。  もちろん、仲良くなること自体を否定はしませ んが、ケンカさえしなければ、従業員同士が仲良 くなる必要はないと僕は考えています。  人間関係においては、「大事だから仲良くなり たい」ではなく、「大事だからこそ、あえて距離 を詰めない」という考え方も大切ではないかと思 うのです。  ディアーズ直営店の現場社員は全て女性ですが、 女性同士というのは、いったん関係がこじれると、 「絶対に許さない」というゾーンに入りがちです。  男性の場合は話し合いによって解決することも 多いのですが、女性の場合は感情が先走ってしま うケースが多く、意見や主義主張の擦り合わせが 男性以上に難しいと感じています。  そのため、人間関係がこじれないように、僕は 「現場の人間関係が近くなりすぎないための工夫」 H「適切な距離を保つための工夫」を心がけてい ます。  例えばディアーズでは、みんなで行く食事会に のみ、会社からお金を出すというシステムを採用 しています。  一方、仲の良い2人同士で行く食事会には、お 金を出しません。  そうすると、社員としては「2人で行くよりも、 みんなで行った方がいいね」となります。  なぜ、こうしたシステムを採用しているのかと 言うと、仲の良い人たちだけで食事に行くと、仕 事や職場の人間関係に対する愚痴が必ず出るから です。  愚痴を言い合うことで、職場に対する不満が高 まっていけば、人間関係がこじれ、最終的な離職 に繋がりかねません。  そうした事態を避けるため、みんなで行く食事 会は何回行っても、会社から代金を支給するよう にしています。  実際、このシステムはうまく機能していると感 じています。  みんなで行く食事会に関しては、金額の上限を 決めていないので、コースでI人1万円以上かか るような領収書が回ってくることもあります。  金額を見て「おお!」と驚くこともありますが、 僕は必要経費だと考え、気持ちよく支払うように しています。  そうした食事会が、社員同士の「適正な距離」 を保つために役立つのであれば、これほど安いも のはありません。  食事代を支給することで、社員の普段のがんば りをねぎらうこともできますから、まさに一石二 鳥と言えるでしょう。  その他にも、従業員同士の人間関係をこじらせ ないよう、最近では「個室サロンの設置」を積極 的に進めています。  2020年初頭からの新型コロナウイルスの蔓 延で、個室サロンに注目が集まっていますが、こ の点については、またのちほどお話しします。   ビジネスで確実に結果を出す   「商品選びの基準」とは?  さて、以上は従業員に対する「設定」と「設 計」ですが、ここからはお客様に対する「設定」 と「設計」についても見ていきましよう。  ディアーズを設立するにあたり、僕はディアー ズを「髪質改善に特化したサロン」にすることに しました。  なぜ、「髪質改善」に特化させたのか?  まずはその理由について、お話ししましよう。  例えば、今、僕の髪はかなりの長髪です。  なぜ長髪なのかと言うと、「北原さんは顔に特 徴がないから、せめて髪を伸ばした方がいいよ」 というアドバイスを受けたことがきっかけでした。  それから髪を伸ばし始めたのですが、そうした アドバイスをしてくれる人たちは「やっぱり北原 さんは長い髪の方がいいね」と言ってくれます。  一方、僕の髪を見て、「もっと髪を短くした方 が、清潔感があっていいのではないか」と言う人 たちもいます。  僕からすると、清潔感を保つために短い髪にし ていた結果、「伸ばした方がいいよ」と言われて 髪を伸ばしているわけです。  ですから、「今さら短い方がいいと言われても なあ……」と思ってしまいます。  なぜこの話をしたのかというと、カットのデザ インというのは人の好みの問題であって、そこに 明確な基準はないということを分かっていただき たいからです。  ある人は「長い方がいい」と言い、またある人 は「短い方がいい」と言います。  そこにあるのは「好き嫌い」という名の「曖昧 な判断基準」であって、明確な基準はないのです。  にもかかわらず、多くのサロンは「カットのデ ザイン」を勝負の拠り所にしようとします。  たとえどんなに自分がカッコいいと感じるカッ トに仕上げたとしても、そのカットをどう感じる かは、お客様によって異なります。  そこに明確な答えはありません。  答えが出なければ、改善の仕様もありません。  こうした「人によって見方が違うもの」で勝負 をすると、いつか必ず行き詰まってしまうはずだ と僕は考えました。  僕がディアーズを髪質改善に特化させようと考 えたのは、髪質改善は「こっちの方がキレイ」と いうのが、誰が見ても明確に分かるからです。  次の写真をご覧ください。  どちらが艶のあるキレイな髪であるかは、誰が 見ても一目瞭然ではないでしょうか?  誰が見ても答えがはっきりしているものであれ ば、改善の仕様もあるし、そこには再現性も生ま れます。  だからこそ、僕は髪質改善に特化して勝負をし ようと決めたのです。  こうした僕の考え方は、これから起業をしよう という方だけでなく、「ヒットする自社製品を開 発したい」と考えている方にも応用していただけ るはずです。  例えば、あなたは「カッコよさ」とか「好き嫌 い」といった「判断基準が曖昧な商品」で勝負を かけようとしていないでしょうか?  もちろん、僕はそうした方向性を否定するつも りはありません。  しかし、そうした方向性を選択してしまうと、 仮に失敗した場合に、修正の仕様がありません。  ビジネスで確実に結果を出すためには、「正解 のある問い」H「判断基準が明確な商品」を扱う ことが肝心ではないかと思います。   僕が「自社サイトでの集客」   にこだわる理由  僕はディアーズを髪質改善に特化させることに 決めました。  その次に考えたのは、「ポータルサイトを使わ ずに、自社サイトだけで上位顧客を集客できる か」ということです。  序章でお話ししたように、勤めていたお店のサ イトとは別に、自腹でサイトを作り、そのサイト で上位顧客のみを集客できることを僕は確認して いました。  ディアーズを設立するにあたって、僕が「設 定」として考えたのは「上位顧客」です。  ポータルサイトを使わずに、自社サイトのみで 上位顧客を集客できる仕組みを「設計」すること が、次の課題でした。  なぜポータルサイトではなく、自社サイトでの 集客にこだわるのでしょうか?  一番の理由は、利益率が下がるのはもちろんの ことですが、何よりリピート率が下がってしまう からです。  例えば、コンビニエンスストアに並ぶカップ ラーメンを思い浮かべてみてください。  コンビニエンスストアには、常に「NEW」と 書かれたカップラーメンが並びますが、まずお客 様が興味を持つのは「NEW」のカップラーメン です。  そして、ここが一番の問題点なのですが、NE Wは時間が経ては、NEWではなくなってしまい ます。  もはやNEWではなくなったカップラーメンを また手に取ってもらえれば嬉しいですが、NEW に惹かれて購入したお客様というのは、新しい 「NEW」が出れば、今度はそちらを購入しよう とします。  コンビニエンスストアに並ぶカップ麺と同様、 ポータルサイトという商品棚に自分の商品を乗せ てしまうと、NEWでなくなった時に、リピート 率が下がってしまうものなのです。  また、ポータルサイトを頼りに集客をしている と、いざハシゴを外されてしまった時に集客がで きなくなってしまいます。  こうした理由から、ポータルサイトには頼らず、 自社サイトのみで集客をすることに僕はこだわり ました。  「自社サイトで集客することの重要性は分かりま したが、自社サイトだけで集客をするのは、かな リハードルが高いのではないでしょうか?」  ひよっとしたら、そのように思われるかもしれ ませんが、結論から言ってしまえば、この点は全 く問題ありませんでした。  どのような点を重視して、自社サイトを作って いるのか?  なぜ、自社サイトだけで集客が可能なのか?  この点に関しては、のちほど第2章で詳しく解 説します。   どうすれば「上位顧客」のみ   を集めることができるのか?  繰り返しになりますが、僕がディアーズのお客 様として設定したのは「上位顧客」でした。  お店によって異なりますが、美容室にご来店い ただくお客様のうち、少ないお店では10%程度、 多いお店だと30%ぐらいのお客様は、いわゆる 「ロイヤルカスタマー」と呼ばれる上位顧客にな ります。  上位顧客と言っても、業界以外の方にはなかな かイメージしづらいかもしれませんが、要は「一 番良いメニューでやっておいてちょうだい」とい うタイプのお客様です。  カット、カラー、トリートメントなどをフル セットで行うため、客単価が大幅に上がります。  お店にとっては本当にありかたい存在ですが、 僕はこうしたお客様だけで固めたサロンを作りた いと考えました。  いったいどうすれば、上位顧客だけを集めたサ ロンを作ることができるのでしょうか?  例えば、もしあなたが美容室のオーナーだとし たら、どのようにして上位顧客だけを集めたサロ ンを作りますか?  一般的なサロンでは「顧客創造」とか「顧客教 育」という言葉を使って、既存のお客様をいかに してロイヤルカスタマーに引き上げるかを考えま す。  おそらく、そのような方向性を考える方が多い のではないでしょうか?  しかし、この方法には大きな欠点があります。  それは、ロイヤルカスタマーを作れるか、それ とも作れないかが、社員のプレゼンテーション能 力次第になってしまうことです。  仮に社員のプレゼンテーション能力が低ければ、 既存のお客様をロイヤルカスタマーに引き上げる ことはできません。  「ロイヤルカスタマーを増やすことができるよう に、社員教育をすればいいのではないですか?」  そう思うかもしれませんが、その考え方にも、 実は大きな落とし穴があります。   「成長」=「幸せ」とは限ら   ない!・  美容室のオーナーに限らず、自ら起業して会社 を作る経営者というのは、従業員時代にバリバリ 仕事をしていた人がほとんどです。  序章でお話ししたとおり、僕自身も例に漏れず、 朝の5時まで練習して8時には出勤する日々を 送っていました。  こういう経営者は「成長することこそが将来の 幸せに繋がる」と信じているので、社員にも相応 の成長を求めます。  しかし当の社員は、なかなか思うように成長し ません。 「俺がこんなにまでお前の成長を考えているのに、 なぜ分からないんだ?」  そうしたストレスを抱えている経営者は、かな り多いのではないでしょうか?  ここでまず認識していただきたいのは、幸せの 定義は人によって異なるという点です。  バリバリ仕事をしてきた経営者はとかく「成 長」=「幸せ」と考えがちですが、それはあくま でも1つの価値観にすぎません。  僕が感じているのは、今の時代、特に若い世代 の多くは「成長」=「幸せ」とは考えていません し、そもそも成長することを求めていない人の方 がはるかに多いのではないかということです。  高度成長期の日本は、人口も経済も右肩上がり で、仕事をやればやるほど、成果が出た時代でし た。  そうした時代を生きた人間にとっては、「成長」 =「幸せ」という考え方が、肌感覚にまさにぴっ たり合うのではないかと思います。  しかし今の若者は、1990年代のバブル崩壊 後に社会に出た世代です。  「失われた`一年」という言葉に代表されるように、 世の中は常に不景気で、経済成長の恩恵を受けた ことが一度もありません。  そういう世代の人たちが「むやみに成長を目指 す必要はない」とか「今日を無難に生き切ること ができればいい」と考えるのは、ある意味、自然 な流れなのではないでしょうか?  経営者が「なぜ成長しないんだ?」とストレス を抱える一方で、社員の方も「なぜ成長を求める んだ?」とストレスを抱えています。  ストレスを抱えているのは、何も経営者だけで はないのです。  成長を求めていない人に、むやみに成長するこ とを強要すれば、そこにはストレスしか生まれま せん。  こうした双方のストレスがマグマのように溜ま り、やがて「社員の離職」という形で爆発してし まうのです。  誤解のないよう、あえて付け加えておきますが、 僕自身は「成長こそが大事で、そのために負荷が かかるのは当たり前」という人生観を持っていま す。  しかし、その価値観を社員たちに押し付けよう とは思いません。  そんなことをすれば、みんな辞めてしまうから です。  僕がなぜ「週休3日」「フレツクス制」という スタイルに辿り着いたのかと言えば、それは自分 の価値観に対して、徹底的に妥協したからです。  序章で「置きに行くことが大事」というお話を しましたが、「置きに行く」というのは、言い換 えれば「徹底的に妥協する」こととも言えるで しょう。  自分の価値観やスタイルを押し通すのではなく、 妥協して相手のスタイルや価値観に合わせ、その モデルを設計して、置きに行くのです。  社員のモチベーションに関係  なく、業績を伸ばすことは可  能か?  ここまでを読んだあなたは、おそらく次のよう に思うのではないでしょうか?  「社員が成長しなければ、会社の成長はありえま せんよね? 会社の成長のために、経営者が社員 に成長を求めるのは当たり前だと思います が……」  たしかに、経営者の中には「社員の成長」= 「会社の成長」という考え方が根強くあります。  しかし、ここでよく考えてみてください。  社員が成長しなければ、会社は成長できないも のなのでしょうか?  「社員の成長」=「会社の成長」という考え方は、 本当に正しいのでしょうか?  実際、僕がディアーズの社員に伝えているのは、 「今のままのあなたでいいよ」ということです。  僕は社員に対して、成長を求めません。  のちほど説明しますが、僕は社員を成長させて あげようとは考えていませんし、社員が今のまま でも成果が出るシステムを設計しています。  結果として、僕はたった4年で100店舗以上 の美容室を抱える会社にディアーズを育てあげま した。  実は、これは「社員のモチベーション」につい ても同じことが言えます。  経営者の側からすると、「仕事に対するモチ ベーションがあって当たり前」と考えがちです。  しかし今の若者の多くは、成長することを求め ていないばかりか、そもそも仕事に対するモチ ベーションを持ち合わせていないケースが目立ち ます。  これは経営者にとって、大きな悩みの種の1つ と言えるでしょう。  いったいどうすれば、この問題をクリアできる のでしょうか?  僕が考えたのは、社員のモチベーションに頼る 経営を行わないことです。  なぜなら、社員のモチベーションに頼る経営を していると、モチベーションが落ちた時に、会社 の業績も必ず落ちてしまうからです。  そもそもモチベーションが高い人というのは、 自分と同じモチベーションを周囲の人たちに求め ます。  周囲が付いて来ないと、「なぜ、自分ばかりが やらなければならないのか」と周囲を非難し、お 店を引っかき回して、最終的には辞めていきます。  ですから、僕はモチベーションの高い人を採用 しません。  モチベーションのない社員でも成果を出せる仕 組みを構築することが肝心です。   社員が成長しなくても、会社   は成長できる’・  僕に言わせれば、「社員の成長」=「会社の成 長」という考え方は、数あるうちの1つの固定概 念にすぎません。  社員の成長やモチベーションに頼らなくても、 会社の持続成長は可能です。  ではいったいどうすれば、そうしたものに頼ら ずに、会社の成長を持続させることができるので しよ’つか?  次章では、いよいよ1店舗目の立ち上げについ て、お話しします。  先ほどお話ししたように、ディアーズは僕に とって「壮大な実験」の場だったのですが、I店 舗目の立ち上げで僕が実験をしたかったのは「い かに社員の能力に頼らずに業績を伸ばせるか」で した。  社員の能力に頼る経営をしていると、店舗を拡 大していけるかどうかは、社員の能力次第という ことになります。  スピーディに店舗を拡大させていくためには、 社員の能力に頼らずに、いかに業績を伸ばしてい くかが肝心だと考えました。  では、社員の能力に頼らずに、いかにしてお店 の業績を伸ばしていったのでしょうか?  その点について、次章で詳しく解説します。   僕が従業員に求める「唯一の   こと」  2015年5月、僕は地元の長野県にディアー ズの1店舗目をオープンさせました。  先ほど書いたとおり、1店舗目で僕が実験をし たかったのは「社員の能力に頼らずに、いかにお 店の業績を伸ばすことができるか」という点です。  まえがきで少し触れましたが、ディアーズでは 来店されたお客様に対して、必ず「次回の予約」 を促すようにしています。  最近では次回予約を取る美容室も増えてきてい ますが、まだまだ一般的ではないのが実情です。  美容室に行く方というのは、「そろそろ行こう かな」という時期になって初めて、電話やイン ターネットで予約を入れるのが一般的ではないで しよ’つか?  実は、僕は「次回予約率」を何より重視してい ます。  これ以外の数字はほとんど見ていないと言って も過言ではありませんし、従業員に唯一求めるの も、きちんと次回予約を取ることだけです。  なぜ、僕は次回予約を重視するのでしょうか?  第2章は、この点から話を始めましょう。   なぜ、次回予約率にこだわる   のか?  ディアーズにおける新規のお客様の次回予約率 がどれくらいかと言うと、90%を超えています。  つまり、新規でいらっしやったお客様のうち、 10人に9人は、次回の予約を入れて帰宅されると いうことです。  そうすると、新規のお客様のリピート率はだい たい80−85%になります。  「新規のお客様の次回予約率が90%なのに、リ ピート率は80〜85%? なぜ、5〜10%も下がる の?」  そのように思われるかもしれませんが、その理 由は次回予約を入れても、必ずキャンセルするお 客様がいらっしゃるからです。  例えば、10人とデートの約束をしたとしても、 直前になって、I〜2人ぐらいは「やっぱり行け ない」と言い出す方がいらっしゃいますよね?  それと同じことです。これは原理原則であって、 次回の予約を入れたからといって、そのお客様が 全員来店するということはありえないのです。  このようにディアーズの新規のお客様のリピー ト率は80%を超えていますが、ここで1つ質問で す。  一般的な美容室の新規のお客様のリピート率と いうのは、だいたいどのくらいだと思いますか?  もちろん、お店によって異なりますが、新規の お客様のリピート率が60%もいけば、かなり優秀 な数字であると言えます。  ディアーズのリピート率は80%以上ですから、 数字の比較で言えば、20%程度の差ということに なります。  「20%程度なら、そんなに大した差ではないので はないですか?」  ひよっとしたら、そのように思う方もいらっ しやるかもしれませんが、これはLTV(顧客生 涯価値)に換算すると、2倍の違いが出て来るこ とになります。  LTVは「」ife Timeくaluejの頭文字をとっ た言葉で、「顧客が生涯を通じて企業にもたらす 利益」のことを指します。  なぜ、リピート率20%の差が、LTVの2倍の 差に繋がるのでしょうか?  例えば、バスタブに蛇口から同じ量の水を入れ ているとしましょう。  100リットルの水を入れると、ディアーズの バスタブは、排水溝から毎回20リットルのお水が 出て行くことになります。  一方、一般的な美容室のバスタブからは、毎回 40リットルのお水が出て行くことになります。  このようにリピート率で見れば、たった20%の 差かもしれませんが、「失客率」という観点から 眺めてみると、出て行くお水の量は2倍になりま す。  逆に言うと、ディアーズのバスタブには他店に 比べて、2倍のスピードでお客様が積み上がって いくという計算になるのです。  僕はよく「札束の殴り合い」という話をするの ですが、同じビジネスモデルが乱立した時に、生 き残るためのポイントは「競合他社優位性」です。  例えば、I人のお客様を繋ぎ止めるために、ど れくらいのお金をかけられるのか?  従業員I人の雇用に、どれくらいのお金を支払 えるのか?  初期の段階から、そうした点を考慮してビジネ スモデルを設計しなければなりません。  そうでないと、会社をスケール(事業規模を拡 大)させた時に、一気に撤退せざるをえない事態 に陥りかねません。  新規顧客の次回予約率を90%以上に保つことが できれば、リピート率はゆうに80%を超えます。  その場合、競合他社に比べて、2倍のLTVを 獲得することができます。  LTVが2倍ということは、つまり、顧客獲得 のための広告や従業員の雇用に2倍の費用をかけ られるということです。  言い換えれば、それは「競合他社に負ける要素 がなくなる」ということでもあります。  だからこそ、「次回予約率90%以上」という数 字に、僕は何よりもこだわっているのです。  次回予約率90%以上の秘訣@  ホームページ  では、なぜ、ディアーズは次回予約率が高いの でしょうか?  いくつか理由はありますが、まず挙げられるの はホームページです。  ディアーズのホームページは、まず入口の段階 で「通うことを前提にしたお客様」を集めるライ ティングにしています。  例えば、パーソナルトレーナーがマンツーマン で指導をしてくれるプライベートジムのRIZA P(以下、ライザップと表記)を思い浮かべてみ てください。  有名な決めゼリフである「結果にコミット」で も分かるように、「I回だけでもいいから行って みよう」というお客様は、ライザップにはほとん どいません。  お客様は「自分は変わるんだ」という意識チェ ンジをして、ライザップの門を叩くのが普通では ないでしょうか?  ディアーズも同じです。  お客様は「時間をかけて髪の毛にキレイな艶を 作るぞ」とか「キレイな髪になるぞ」という意識 を持ってディアーズにいらっしやいますし、お客 様にそういう意識を持っていただけるようなホー ムページにしています。  予約を入れた時点で、お客様は「よほど嫌なこ とがない限りは通い続ける」というマインドに なっています。  そうした観点で、次の図をご覧ください。  これはディアーズの実際のホームページになり ますが、キャッチコピーには「あなたの髪が、キ レイにまとまる艶髪へ。」という文言を掲げてい ます。  ディアーズに通うことで、お客様が得られるも のは何か?  お客様のメリットを、まずは明確に示すように しています。  一般的なサロンの場合、メニューや価格がトッ プに出てくることも多いのですが、ディアーズの ホームページはそうした配置にはしていません。  例えば、「1万6500円(税込)」という価格 をいきなり表示すると、「高いな」と思われて、 ベーダを閉じられてしまう可能性があります。  そうした事態を避けるため、ディアーズのホー ムページは、かなり先まで読み込んでいかないと メニューや価格が出てこない構成になっています。  お客様にはページをじっくり読み込んでいただ いた上で、「それならば通ってみようかな」と 思っていただけるようなページ構成にしてあるの です。  ちなみにディアーズのホームページは、ピート マップ(「ユーザーがホームページをどこまでス クロールして見たか」などを把握することができ るマップ)を何度もチェックし、テストを繰り返 して、ホームページの作り込みを行いました。  その後もユーザーの反応をもとに、日々、最適 化を行っています。 「ディアーズさんと同じようなホームページにし てみたけれども、全然集客できません……」  たまに、そう言われることがあるのですが、 日々、最適化を行っていますから、表面的にマネ をするだけでは、同じような結果を出すのは難し いでしょう。  さて、一般的な美容室では、街中でチラシを 配ったり、ポスティングをしたりしてお客様を集 めています。  一方、ディアーズでは、従業員がチラシを配っ たり、ポスティングをしたりすることはありませ ん。  仮にポスティングをやるにしても2〜3年にI 回ぐらいで、それも業者を使って行っています。  では、ディアーズがどのように集客をしている のかというと、集客はほぼオンラインのみです。  リスティング、インスタグラム、ツイッター、 フェイスブック、メールマガジンなど、あらゆる 広告媒体を駆使して、お客様をホームページに誘 導します。  エリア別(日本全国の各地域ごと)に、費用対 効果の高い媒体に広告を出すことができるよう、 −Pアドレスの解析まで徹底的に行っています。  そうして集めたお客様を各店舗、各従業員に割 り振っていきます。  ですから、フランチャイズのオーナーや社員は、 チラシを配ったり、ポスティングをしたりしてお 客様を集める必要がありません。  もっと言えば、集客のためのマーケティングを、 フランチャイズのオーナーや社員が勉強する必要 もありません。  マーケティングについてはまたのちほど触れま すが、ディアーズがオンラインのみで集客ができ る秘訣は、前段階として「ホームページの作り込 み」がその背景にあるのです。   求人募集のポイントは「気づ   ヵど  今しがた「集客のページ」について説明しまし たが、「求人募集のページ」についても、ここで 触れておきましよう。次の図をご覧ください。  これが、ディアーズの「求人募集のページ」の 構成です。  美容室の求人というのは、一般的に「給料」 「勤務時間」「福利厚生」の3行だけでまとまって いることがほとんどです。  一方、ディアーズは、そうしたページとは一線 を画した作りにしてあります。  このページのポイントは、最初に動画を貼り付 けている点です。  文章を羅列した「集客のページ」とは対照的な 作りと言えるでしょう。  なぜ、冒頭に動画を持ってくるのでしょうか?  もちろん、きちんとした理由があります。  求人を探す美容師が、いつ求人ベーダを見るの かというと、たいていは仕事が終わったあとにな ります。  勤務をして、疲れて帰宅したあとで、求人ベー ダを開きます。  そうした人たちに、集客ページと同じような 長々とした文章を突きつけたら、いったいどうな るでしょうか?  おそらく「読むのが面倒くさいな……」とか 「今日は疲れているから、また今度にしよう」と 思われて、ページを閉じられてしまうのがオチで しょう。  そうなると、ディアーズの求人ページを二度と 開いてくれないかもしれません。  そうしたリスクを避けるために、ディアーズの 求人ベーダは動画からスタートさせています。  動画であれば、ただ眺めているだけでも情報が 入ってくるため、疲れていても負担がかかりにく いからです。  さらにポイントを挙げると、ディアーズの求人 ベーダは、現在働いている社員のインタビューを 数多く採用しています。  なぜそうするのかと言うと、「入社したあと」 が具体的にイメージしやすくなるからです。  離職が起こる理由の1つに「自分のイメージ」 と「現実」の違いがあります。  美容の専門学校の先生に話を聞くと、卒業生の 5割は1年後に美容師をやっていないそうですが、 その大きな理由の1つは、自分のイメージと現実 のギャップにあります。  会社やクラブなどの組織に入った際に、「いざ 入ってみたら、イメージと全然違うな……」と感 じた経験が、あなたにもあるのではないでしょう か?  実際に入社した人が、入社後にどのようになっ ているのかをインタビューで見せてあげれば、入 社したあとに「こんなはずじゃなかった……」と はならないはずです。  ディアーズの求人ベーダに、社員のインタ ビュー動画を数多く掲載している背景には、実は そうした配慮があるのです。  次回予約率90%以上の秘訣C  マニュアル  さて、少し話がそれましたが「次回予約」に話 を戻しましよう。  実は、ディアーズの次回予約率が高い理由は、 ホームページの作り込みだけではありません。  現場で使用しているマニュアルにも、その秘密 があります。  マニュアルに沿って話を進めていけば、誰でも 次回予約を90%以上取ることができます。  なぜ、マニュアルだけで卯%以上の次回予約を 取ることができるのでしょうか?  その秘訣について、これからお話ししたいと思 います。  マニュアルに限らないのですが、僕がよく言う のは、「美容室は添加物がてんこ盛りである」と いうことです。  食品における添加物であれば、イメージが湧き やすいと思いますが、「美容室における添加物」 とは、いったい何でしょうか?  なかなかイメージしにくいと思いますので、分 かりやすい例で説明しましょう。  例えば、あなたが今からタクシーに乗るとしま す。  あなたがタクシーの運転手さんに求めるものは、 いったい何でしょうか?  僕の場合、タクシーの運転手さんに求めるのは、 「いち早く安全に目的地に連れて行ってもらうこ と」だけです。  ですから、ナビゲーションを見ながら、「どの ルートを通って、何分ぐらいで目的地に到着する のか」だけを教えてくれれば、それで十分です。  乗車中は、会社の数字に目を通したり、メール をしたりしたいので、むやみに話しかけないでは しいというのが本音です。  にもかかわらず、多くの運転手さんは、こちら の都合などおかまいなしに「お仕事は何をされて いるんですか?」などと話しかけてきます。  無視するわけにいかないので、会話に応じます が、僕からすると「放っておいてよ」という話で す。  それだけならまだしも、会話に夢中になった揚 げ句に道を間違えて、時間もお金もロスする結果 になると、本当に最悪としか言いようがありませ ん。  なぜタクシーの運転手さんの話をしたのかとい うと、この事例は、そのまま美容室にも当てはま ると思うからです。  なぜ、お客様は美容室にいらっしやるのでしよ うか?  それは、髪をキレイにしてほしいからです。  美容師は本来、その目的の達成だけに集中すれ ばいいわけで、それ以外は何もいらないはずなの です。  にもかかわらず、ほとんどの美容師は、お客様 にムダに話しかけます。  もちろん、僕はお客様との会話自体を否定する つもりはありません。  顔なじみになってくれば、「会話をしてみたい な」と思うのが自然ですから、お客様の方から話 しかけてくれるかもしれません。   そうした会話には、自然に応じてあげればいい と思います。   一方、初対面にもかかわらず、美容師の方から むやみに「今日は天気がいいですね」とか「どこ に住んでいらつしやるんですか?」などと話しか けるのは、いかがなものでしょうか? 「天気がいいのは、見れば分かるよ」 「初対面のあなたに、なぜ私が住んでいる場所を 教えないといけないの?」  それが、お客様の偽らざる本音ではないでしょ うか?  美容師から話しかけられた以上、お客様は会話 をせざるをえません。  そうした「会話をしなければならない」という 強迫観念に不快感やストレスを抱えているお客様 は、実はかなり多いのではないかと思うのです。  誰も気づいていない「マニユ  アルの最重要ポイント」と  は?  さて、ここまでをご理解いただいた上で、次の 図をご覧ください。  これはディアーズで実際に使用しているマニュ アルの一部を抜粋したものです。  このマニュアルどおりにやれば、ほぼ問違いな く、90%以上の次回予約を取ることができます。  では、ここで質問です。  このマニュアルのどこに、次回予約を卯%以上 取ることができる秘訣があるのでしょうか?  ご覧いただければ分かるように、このマニュア ルには、「本日担当させていただきます(フル ネーム)です」とか、「今からカウンセリングを していきますので、よろしくお願いいたします」 といったありふれた文言しか書かれていません。  「なぜ、こんなマニュアルで次回予約を卯%以上 も取れるの?」  そのように思う方も多いのではないでしょう か?  一見、何の変哲もないマニュアルに思えるかも しれませんが、僕の狙いは「マニュアルに書いて あること」ではなく、実は「書いていないこと」 にあります。  「書いていないこと」にポイントがあるというの は、いったいどういうことなのでしょうか?  よく分からないと思いますので、具体的に説明 しましょう。  先はどのタクシーの運転手さんの話を思い出し てください。  なぜ、僕がタクシーの運転手さんに腹を立てる のかと言うと、それは「余計なこと」を言うから です。  目的地にいち早く安全に運んでほしいだけなの に、「職業は何か?」とか「どんな用事なのか?」 などと聞いてきます。  親しい間柄ならいざ知らず、見ず知らずの初対 面で、しかも再会の可能性も限りなく低いのです から、僕からすれば、「なぜ僕のプライベートに ズカズカと踏み込んでくるの?」という話なので す。  美容室でこうしたストレスをお客様に与えると、 どうなるでしょうか?  当然、次回の予約率は下がってしまうことで しょう。  クレームにも繋がりかねません。  そこでもう一度、先はどのマニュアルをご覧く ださい。  このマニュアルには、業務に必要なこと以外は 一切書かれていません。  例えば「今日は天気がいいですね」とか「どこ に住んでいらっしやるんですか?」などとは書か れていません。  マニュアルどおりに接客をすれば、そこに書か れていないことは、一切言わなくなります。  それこそが、僕の真の狙いです。  ここまでをご理解いただければ、マニュアルの ポイントが「書かれていること」ではなく、「書 かれていないこと」にあるという意味がお分かり いただけるのではないでしょうか?  大事なので繰り返しますが、マニュアルに書か れていない「余計なこと」を言う必要はありませ ん。  マニュアルのメリットは、マニュアルどおりに 仕事を進めることによって、余計なことを言わな くなるという点にあるのです。  「そうしたマニュアルだと、どうしても無味乾燥 な会話になってしまう気がしますが……」  ひょっとしたら、そのように感じる方がいらっ しゃるかもしれませんが、そうした方は、ホテル のフロントを思い浮かべてみてください。  ホテルのフロントの方々は、基本的に必要最小 限のことしか言いませんが、そうした会話に嫌悪 感を持つ人は、ほとんどいないのではないでしょ うか?  なぜ、ホテルのフロントに嫌悪感を抱かないの かと言えば、それは余計なことを言わないからで す。  シンプルであっても、サービスとしては、それ で十分に事足ります。  美容室も同じです。  美容室には「ムダな会話」という添加物がてん こ盛りになっていますが、本来はもっとシンプル でいいはずなのです。  どうすれば、次回予約率を高めることができる のか?  そのためには、「余計なことを言ったがために 地雷を踏んで、お客様が来なくなってしまった」 という事態だけは避けなければなりません。  ムダなことを聞かない方が、地雷を踏まなくて 済みます。  だからこそ、接客は「マニュアルどおり」でい いのです。   強引な売り込みはストレスし   か生まない’・  そもそもなぜ、美容師はむやみやたらとお客様 に話しかけるのでしょうか?  それは、店長などの「上の人たち」から求めら れるからです。  従業員が上の人だちからよく言われるのは、 「お客様を盛り上げなさい」ということです。  僕からすると、「盛り上げるって何? お祭り か?」と思ってしまうのですが、上から「盛り上 げろ」と言われれば、従業員は無理矢理にでも、 お客様に話しかけるしかありません。  なぜ、お客様を盛り上げなければならないので しよ’つか?  その理由は、盛り上げることによって関係性を 築き、商品の販売やリピートに繋げたいからです。  例えば、美容室に行って、「表示された価格は 安かったのに、終わってみたら、ずいぶん高くつ いてしまったな……」と感じた経験はないでしょ うか?  来店後、美容師の言葉に乗せられて、「あれも これも」とメニューを足されていくうちに、思わ ぬ金額を請求されてしまう……。  そうしたことは、美容室では日常茶飯事です。  露骨にやりすぎると、クレームになることもあ ります。  経営戦略上、客単価を上げなければならない美 容室からすれば、仕方のない面もあるかもしれま せん。  しかし、お客様からすれば、来店後にどんどん 金額を足されていくのは、不安材料にしかならな いのではないでしょうか?  一方、強引な売り込みは、美容師にとっても嫌 なものです。  美容師からすれば、お客様の髪をキレイにした いだけなのに、セールスパーソンの役割まで担わ されるのは、ストレス以外の何物でもありません。  このように、多くの美容室は本来の目的から逸 脱して、添加物がてんこ盛りの状態になってし まっています。  そして、お客様と美容師、双方に莫大なストレ スがかかる状況に陥ってしまっているのです。  では、こうした状況を打破して、お互いがスト レスフリーになるためには、いったいどうしたら いいのでしょうか?   ストレスフリーだからこそ、   「サスティナブル(持続可能)   な経営」になる!  まず、お店の側かできることを考えてみましょ  お客様にとっては、来店後に金額が上がること がストレスなわけです。  それを解決するためには、いったいどうしたら いいでしょうか?  最も簡単な解決方法は、一番価格が高い「フル コースのメニュー」しか提示しないことです。  実際にディアーズのホームページをご覧いただ ければ分かりますが、ホームページで提示してい るのは1万6500円(税込)のメニューのみで す。  ですから、来店後に安くなることはあっても、 これ以上の価格になることはありません。  そのことにより、お客様は「メニューを足され る」「価格が上がる」というストレスから解放さ れることになります。  一方、この価格表示は、従業員にとってもメ リットです。  無理な売り込みをしなくていいわけですから、 「売り込まなければならない」というストレスか ら解放されることになります。  こうして一番高いフルコースのメニューしか提 示しないことによって、お客様と従業員、双方の ストレスを解消させることができます。  フルコースのメニューしか提示しないことで、 お店の側からしても「上位顧客」のみを集めるこ とができますから、一石二鳥ならぬ一石三島と言 えるでしょう。  ストレスを感じさせないからこそ、お客様はお 店に通い続けてくれます。  一方、従業員の方も無理なく仕事ができるから こそ、転職せずに働き続けてくれます。  こうしたお客様にも従業員にも無理をさせない、 我慢をさせないスタイルが、現代流に言えば、 「サスティナブル(持続可能)な経営」へと繋 がっていくのではないでしょうか?  従業員が辞めず、お客様が通い続けてくれるか らこそ、お店は持続的に経営を続けていくことが できるのです。   売れない美容師は何か不足し   ているのか?  さて、ここまでマニュアルの話をしてきました が、ここで少し視点を変えてみましょう。  「余計なことを言う」以外に、売れない美容師が 売上を上げることができない原因は、いったいど こにあるのでしょうか?  技術が悪いのでしょうか? それとも、接客の 態度が悪いのでしょうか?  理由は様々考えられますが、僕が考える大きな 理由の1つは「マーケティングカの不足」です。  マーケティングの知識が不足し、実践を疎かに しているから、お客様を集めることができず、結 果として、低水準の売上に甘んじているのです。  美容師というのは、とかく「ハサミの技術」や 「接客のスキル」さえ磨けば、それだけでお客様 が集まると考えがちです。  しかし、実際には、それだけではお客様は集ま りません。  お客様を集めるためには「いかに集客をする か」が大事であって、そのためにはマーケティン グの知識やトレーニングが必要不可欠になります。  にもかかわらず、専門学校でも職場でも、美容 師はマーケティングを学び、トレーニングをする 機会が一切ありません。  お客様を集めるためには、マーケティングが必 要不可欠なのに、そもそも必要だということすら 知らない美容師が世の中にはたくさんいます。  そうした人たちは「なぜお客様が集まらないの か?」「自分にはご縁がないのかも……」「そもそ も運がない……」などと、日々悩んでいます。  僕はそうした美容師たちに、マーケティングを 一切勉強しなくても、売上を上げられるような設 計を作り上げています。  先ほどお話ししたように、集客はほぼオンライ ン上で行いますから、社員はチラシを配ったり、 ポステイングをしたりする必要はありません。  社員は集客の努力をしなくても、お客様が付き ます。そうして付いたお客様に対して、あとはマ ニュアルどおりに接客をしていくだけです。  そうすれば、仮に他のお店で月30万円しか売上 を上げることができない人でも、ディアーズでは 月80〜100万円の売上を上げられるようになり ます。  「そのままのあなたでいいよ」  「ディアーズであれば、きちんと売上を上げるこ とができるよ」  僕が社員にそのように言ってあげることができ るのは、そう言える仕組みをきちんと設計してい  こうした仕組みを構築しているからこそ、「疲 れ切った美容師」というカードでも勝つことがで   ディアーズで「独立のノウハ   ウ」は身につかない’・  「マーケティングの知識なしに売上を上げられる システムを会社で作るよりも、社員I人ひとりに マーケティングを勉強してもらった方が早いので はないか?」  そのように思う方もいらっしやるかもしれませ んが、理詰めで考えていけば、この問いには自ず と答えが出ます。  プロセスを追って考えてみましよう。  仮にすごく意欲的で、マーケティングをガンガ ン勉強して、月1001200万円の売上を上げ られるようになったとします。  その美容師は、いったいどうするでしょうか?  間違いなく独立します。  なぜなら会社で給料をもらうよりも、自分でお 店をやった方が、はるかに儲かるからです。  独立すれば、上司にうるさく言われることもな く、全てを自分の思いどおりにすることができま す。  かつての僕がそうだったように、こうなると独 立をしない理由がありません。  そして社員の離職は、そのまま会社の業績低迷 に繋がります。  そうした形で考えていくと、明確な答えが出て きます。  会社をスケール(事業規模を拡大)させていく ためには、個々の社員にマーケティングの勉強を 施すのではなく、「社員がマーケティングの勉強 をしなくても、お客様が集まるシステム」を会社 で構築するしか道はありません。  僕は、社員がマーケティングを一切勉強しなく ても売上を上げられるシステムを作り上げていま すが、言い換えれば、これは「社員にマーケティ ングを勉強する努力をさせない」ということでも あります。  ディアーズの面接に来る人たちに、僕はよく次 のように言っています。  「ディアーズに来ても、独立するためのノウ「ウ は身につかないよ」  言うなれば、ディアーズでは「集客努力」を必 要としません。  社員は待っているだけで、お客様が付くわけで すから、自分で集客できる知識やスキルは基本的 に身につかないのです。    「2店舗目の課題」とは?  さて、こうした形で僕は集客のシステムとマ ニュアルを作成し、社員の能力に頼らずにお店の 業績を伸ばせることをI店舗目で確認しました。  そうなると、次は2店舗目の立ち上げになりま す。  2店舗目で課題になるのは「店長」です。  I店舗目の店長は僕自身が務めましたが、2店 舗目になると、そのお店に「管理者として誰を置 くのか」という話になります。  結論から言うと、僕は「店長を置かない」とい う選択をしたのですが、なぜ店長を置かなかった のでしょうか?  次章で詳しく解説します。    「管理者ゼロ」の理由とは?  先ほど第2章の最後でお話ししましたが、2店 舗目の課題は「管理者をどうするか」ということ でした。  管理者を置くべきか、それとも置かざるべき か?  僕がどのような考え方で「管理者を置かない」 という結論に至ったのか、まずはそのプロセスに ついてお話ししたいと思います。  「事業にとって一番大事なポイントは何か」を考 えてみると、それは「業績が伸びるか伸びない か」です。  ですから管理者を置くべきか、それとも置かざ るべきかというのは本来、そのゴールから逆算し て考えるべき問題であるはずです。  にもかかわらず、多くの経営者は自らが目指す ゴールを意識することなく、「管理者は必要不可 欠」という前提にとらわれて、ただやみくもに管 理者を置いていないでしょうか?  いち早く業績を伸ばすために、本当に管理者は 必要なのでしょうか?  一度、突き詰めて考えてみる必要があると思い ます。  この点を突き詰めて考えた結果、僕は「管理者 はいらない」という結論に至りました。  管理者というのは、経営者にとって、いわば 「分身」のような存在です。  自分の分身を育てるためには、それなりの年月 をかけなければなりません。  この時、僕が考えたのは「会社を成長させてい くスピード」に「管理者を育てるスピード」が追 いつかないのではないかということでした。  例えば、I人の店長(管理者)を育てるために 2〜3年の歳月がかかるとしましよう。  そうすると、店長を育てるのに必要な2〜3年 のうちは、店舗を拡大できないということになり ます。  I〜2店舗の拡大ならまだしも、100店舗以 上のお店に店長を置くとすると、店長の育成にど れくらい時間をかければいいのでしょうか?  僕には、想像がつきませんでした。  少なくともたった数年で、それだけの人数の店 長を育て上げるのは事実上、不可能と言えるで しょう。  つまり、店長の育成を中心に据えると、会社を スケール(事業規模を拡大)させるスピードが大 幅に落ち込んでしまうことになるのです。   なぜ、時代の変化に食らいつ   いていけるのか?  また管理者を置くと、会社をスケールさせるス ピートだけでなく、意思決定のスピードも遅くな ります。  以前に勤めていたサロンで、僕は3つの店舗を 管理するエリアマネージャーでしたが、たった3 店舗であっても、何かを決める際には、必ず各店 舗の店長の承認をもらわなければなりませんでし た。  「こういうことをやろうと思うんだけれども、意 見を合わせられる?」  何をやるにしても、そうした形で必ず店長に意 見を聞いていました。  各店舗に管理者である店長が置かれていると、 その意見を聞かざるをえませんが、意見の擦り合 わせには、どうしても時間がかかってしまいます。  そうすると意思決定のスピードも遅くなり、ア イデアを実行するのがワンテンポ、ツーテンポと 遅れてしまうことになるのです。  なぜ、ディアーズは時代に取り残されずに、食 らいついていくことができるのでしょうか?  それは僕のトップダウンで迅速に決定を下し、 全ての案件にリーチをかけていくからです。  僕が他の誰よりも、ディアーズの将来のことを 考えています。  誰よりも詳細にデータを分析し、誰よりもディ アーズ全体を見渡しているのは、僕です。  たしかに現場の意見というのは、とても貴重で す。  ですが、その一方で、現場の店長や従業員とい うのは、あくまでも店舗経営の「一側面」しか見 ることができません。  何か言いたいのかと言うと、店長や従業員が考 えつくレベルのことは、僕自身がすでに考えてい るということです。  従業員時代、僕はマネージャーとして「キッス カットをやめるべきだ」とオーナーに提言しまし たが、I人の従業員の意見によって、その提案が 却下されてしまったことは、すでにお話ししまし た。  客観的な数字を見れば、キッスカットをやめる というのが合理的な判断であったはずですが、現 場の意見を優先して、経営者が経営判断を下すの はよくあるケースです。  もちろん、僕はその決定自体を否定するつもり はありません。  否定はしませんが、変化の激しい時代において、 現場の意見を調整しながら意思決定をしていると、 時代の波に取り残されてしまうことになりかねま せん。  ディアーズでは、僕がトップダウンで全ての決 定を下すようにしています。  だからこそ、時代の波にのまれずに、食らいつ いて行くことができるのです。   トップダウンで判断を下すた   めに必要なこと  では、時代の変化の波にのまれないよう、経営 者が「間違いのない経営判断」をトップダウンで 下すために必要なこととは、いったい何なので しよ’つか?  従業員時代、最初に入店したお店で、僕は給料 8万円からのスタートでしたが、そうした環境下 でも、1つだけ絶対に欠かさなかったことがあり ます。  それは「自己投資」です。  これからの時代、経営者に求められるのは、月 並みな言い方かもしれませんが、誰よりも勉強す ることだと思います。  従業員時代、僕の給料は8万円しかありません でしたが、その中でも、僕は自己投資を怠りませ んでした。  講習会に出たり、マーケティングの勉強をする ために教材を買ったりということが重なって、3 枚のクレジットカードが借り入れ限度額までいっ てしまったこともありました。  給料をいただいた瞬間に、すぐに次の支払いが 来るので、一度だけですが、家賃を払えずに、親 に泣きついたこともあるくらいです。  当時住んでいた家の家賃は格安の3万4000 円でしたが、たったそれだけの家賃を払えないほ ど、困窮していた時期もありました。  ですが、そうした状況下でも自己投資を欠かさ なかったからこそ、今があると感じています。  みんなの意見を聞くのは、もちろん素晴らしい ことです。  ですがトップが勉強をしまくっているのであれ ば、経営判断において、必ずしもみんなの意見を 集約する必要はないと思います。  みんなの意見を聞くというのは、裏を返せば、 トップとしての決定力の弱さの証とも言えるので はないでしょうか?  厳しい言い方をすれば、みんなに聞くのは、決 定力がないから聞く、決められない、確認を取ら ないと進められないだけのようにしか僕には思え ないのです。   店長にお店を任せるコアメ   リット」とは?  これまでにお話ししてきたとおり、管理者を置 くことで、会社をスケールさせるスピードだけで なく、意思決定のスピードも落ちることになりま す。  それでもなぜ、美容室の経営者がお店に店長を 置くのかと言えば、それは「自分の分身」として、 自分の代わりにお店の全てを任せたいからでしよ  店長を置くことでお店がうまく回ればいいので すが、僕の経験上、店長にお店を任せることで、 逆にお店がダメになるケースも多いと感じていま す。  例えば「店長の力量」に依存したお店作りを進 めていると、そこにはどうしても「店長の個性」 が入り始めます。  そうすると、「経営者が目指す方向性」と「店 長が目指す方向性」が食い違う可能性が出てきま す。  この乖離が大きくなると、店長が従業員をごっ そり引き連れて独立するような事態になりかねま せん。  こうしたケースは美容室に隕らず、一般の会社 でも十分に起こりうることです。  例えば、力をつけた部長や課長が、経営者の言 うことを聞かず、部下を引き連れて会社を辞めて しまうというケースは、一般の会社でも頻繁に起 こっているのではないでしょうか?  店長にお店を任せるということは、言い換えれ ば、「店長の個性」を中心にお店のバランスが作 られるということです。  そうすると店長が抜けた瞬間、積み木ゲームの 「ジェンガ」のように、全てのバランスが崩れ さってしまうケースも少なくありません。  こうなると後釜が大変です。  全てを任せたいから管理者を置くのに、任せる ことで、逆にトラブルに発展してしまうケースも 実は多いのです。  誤解を生まないよう、あえて付け加えておきま すが、僕は店長の存在自体を否定しているわけで はありません。  実際、店長に任せることでうまくいっているお 店はたくさんありますし、僕自身、店長を経験で きたからこそ、今があります。  ここで僕が言いたいのは、店長を置くのであれ ば、メリットだけでなく、デメリットにもしっか り目を向けなければならないということなのです。   管理者不在でも問題が起こら   ない仕組みを作る’・  さて、以上は経営者の側から眺めた管理者につ いてですが、逆に従業員の側から、管理者を眺め てみましよう。  例えば、あなたが新入社員だった頃を思い出し てみてください。  直属の上司のことを、あなたはどのように感じ ていたでしょうか?  例えば、上司がずっと自分の仕事を監視してい ると、仕事がやりにくくて仕方がなかったのでは ないでしょうか?  社員たちに「僕がもっと現場に行った方がいい かな?」と聞くと、だいたい次のように言われま す。 「いや、いいです。緊張するから来ないでくださ い」  僕は、これが答えだと思います。  経営者の中には「管理者を置かないと、従業員 が離職してしまうのではないか」と心配する方も いらっしやいますが、真実はその逆です。  管理者が不在だからといって、従業員が離職す ることはありません。  従業員の立場からすれば、経営者やマネー ジャーといった管理者はどちらかと言うと緊張を 生む存在で、マニュアルやルール、仕組みがしっ かり機能していれば、不在の方がのびのびと仕事 ができるものなのです。  もしも管理者を置かないとすれば、経営者に求 められるのは、管理者がいなくても問題が起こら ないような仕組みを設計することです。  では、そうした仕組みは、いったいどのように 設計すればいいのでしょうか?  第1章で少し触れましたが、最近、僕が作る店 舗は基本的に全て「個室サロン」にしています。  FCの場合、途中加盟の店舗もあるので、個室 にならない場合もありますが、今後、僕はできる 限り個室の店舗を増やしていこうと考えています。  新型コロナウイルスの影響で、お客様は「非接 触」を求める傾向がありますから、今後、個室の サロンはますますクローズアップされることで しょう。  例えば、経営者の中には、次のようにおっしや る方がいらっしやいます。  「個室サロンを作りたいから、ぜひ北原さんのお 店を参考にさせていただきたい。個室つて、お客 様目線で最高ですよね」  たしかにおっしやるとおりで、お客様目線で見 ると、個室サロンは非常に魅力的と言えるでしよ  しかし、僕の本当の狙いは、実は違うところに あります。  ですから「お客様目線で最高ですね」と言われ ると、生意気かもしれませんが、「大事なことを 見落としているな」と感じてしまいます。  なぜ、個室にこだわるのでしょうか?   僕が「個室サロン」にこだわ   る理由  僕が個室サロンにこだわるのは、従業員が 「個々で仕事を完結させる仕組み」を作りたいか らです。  個室にして、施術のスペースを区切ってしまう ことで、「従業員同士がコミュニケーションを取 らなくても機能する仕組み」を作り上げています。  第1章で、「人間関係が大事だからこそ、あえ て距離を詰めないという考え方が大事である」と いう主旨の話をしましたが、個室にすることで、 従業員同士の「適切な距離」を保つことができる のです。  このスタイルであれば、管理者は基本的に不要 です。  また個室サロンにすることによって、従業員の ストレスレベルを極限まで削減することもできま す。  なぜ個室にすると、従業員のストレスを減らす ことができるのでしょうか?  例えば、個室の場合、自分が使ったところだけ を掃除して、片づけが終われば帰宅できます。  他人が汚した場所を片づけたり、仕事を終える のを待っていたりする必要がありませんから、余 計なストレスがなくなります。  何より、美容師は技術職です。  隣の人の仕事が目に入ると、「どうしてそんな カットにするの?」といった形で、どうしてもイ ラッとしてしまうことがあります。  僕は出版の世界のことはよく分かりませんが、 出版の世界だと、他の編集者が作った本を見て、 「何でこんなタイトルにしたの?」とか「違うデ ザインにした方がもっと売れるのに……」といっ たところではないでしょうか?  技術職に就いていらっしゃる方は、こうした感 覚をご理解いただけるのではないかと思います。  本来、お客様が喜んでいれば、それでOKのは ずです。  しかし、技術職の人間というのは、どうしても 自分の世界観を他人に押し付けてしまいがちです。  それが、人間関係の悪化に繋がります。  これが個室になれば、他人の仕事は目に見えな くなりますから、そうした余計なストレスからは 解放されるというわけです。  なぜ、僕が従業員のストレス削減にこだわるの か?  それはストレスをなくすことによって、従業員 の離職が起こりにくい職場環境を整えることが可 能になるからです。  重要なので繰り返しますが、会社をスケールさ せたい場合、従業員を辞めさせないことが、まず 何よりも肝心なのです。   ミーティングをなくしても、   業績を伸ばし続けることは可   能か?  美容室の店長の重要な仕事の1つに「ミーティ ングの仕切り」があります。  序章でお話ししたとおり、ディアーズは現場で のミーティングを一切しません。  なぜ、ミーティングをしないのでしょうか?  従業員同士であえて結束する必要がないことは すでに述べたとおりですが、何より「ミーティン グによってお店の業績が伸びた」と感じたことが、 過去にI度もないからです。  本来、ミーティングの目的は、お店の業績を伸 ばすことにあるはずです。  にもかかわらず、お店の業績に寄与しないばか りか、意味もなく「経営理念」を復唱させたり、 自分の仕事の内容を報告させたりするミーティン グに、はたして意味はあるのでしょうか?  通常のサロンでは朝礼や終礼を行うのが一般的 ですが、「お店の業績を伸ばす」という目的から はかけ離れて、儀式化してしまっているケースが ほとんどではないかと思います。  長々としたミーティングのデメリットは、時間 ばかりが取られて、従業員のストレスの温床にな りかねない点です。  終礼があると、仮に仕事が終わったとしても、 従業員は終礼が終わるまで帰れません。  例えば22時に営業を終えて、「早く帰りたいな」 と思っているのに、そこからI〜2時間のミー ティングを入れられたら、たまったものではあり ません。  それなら早く帰らせて、明日の仕事のための英 気を養ってくれた方が、よほどお店の業績に寄与 するのではないでしょうか?  疲れ切った姿で接客するよりも、元気な姿を見 せた方が、お客様は喜んでくれるはずです。  店長からすれば、慣例として、終礼後のミー ティングをやっているのかもしれませんが、そん なに遅い時間まで話し合わなければならないこと は、そもそもないはずです。 「ゴメン。今から`一分だけでいいから、ズームで 話ができる? 残業代は別途で支払うから」  仮に重要な議題であっても、こうした形で十分 ではないでしょうか?  繰り返しますが、ミーティングは本来、お店の 業績を伸ばすためのものであるはずです。  にもかかわらず、ミーティングを繰り返すこと で社員が疲弊して、結果的に離職してしまうよう だと、かえってお店の業績が落ちてしまい、本末 転倒になりかねません。  そうした観点から、ディアーズでは現場のミー ティングは一切行いませんが、会社の業績は右肩 上がりです。  ミーティングをしなくても、お店の業績は伸ば せる。  これが僕の結論です。   社員の管理は「週報」だけで  美容室において、店長を置かないということは、 オーナー自身が従業員を管理しなければならない ということです。  では、僕自身はどうやって、現場の社員を管理 しているのでしょうか?  僕が主に活用しているのは「週報」です。  通常のサロンでは「日報」を書くのが一般的で すが、僕は「週報」を採用しています。  次に掲げるサンプルをご覧ください。  ご覧のとおり、非常にシンプルです。  ほとんどの質問事項は「マニュアルの徹底がで きましたか?」とか「お客様への言葉遣いは意識 できましたか?」といった「YES」「NO」で 答えられるシンプルなものです。  お店の社員が4人の場合、週報はローテーショ ンで回しますから、I人の社員が担当するのは1 ヵ月にI回ということになります。  基本的に「YES」と「NO」で簡単に答えら れる質問なので、コピー&ペーストで処理をして いる社員も多いのではないかと思います。  「コピー&ペーストでも済むような週報を書かせ て、何か意味があるんですか?」  そのように思われるかもしれませんが、いくら 囗を酸っぱくして、「マニュアルが大切ですよ」 と言っても、時間が経てば、人間は忘れてしまう ものです。  例えば、「車の運転は慣れてきた時が一番危な い」とよく言われますが、仕事にも同じことが言 えます。  慣れてきた時にこそ、魔が差して、一番大切な ことを忘れがちになるものなのです。慣れること ほど怖いものはありません。  そうした慣れを防ぐため、たとえ週I回でもい いので、こうした質問事項に答えさせることで 「マニュアルを徹底しなければならない」「お客様 への言葉遣いを徹底しなければならない」という ことを、改めて社員たちに意識させるようにして います。  本当に大事なことは、「一度言ったから大丈夫 だろう」ではなくて、何度もしつこく徹底させる 必要があるのです。  週報によってマニュアルを徹底させて、社員を 管理していく。  これが僕のやり方です。  現在、直営店の社員は35名、店舗は10店舗あり ますが、このやり方で、顧客関係のトラブルが起 きたのは5年間でわずか2件しかありません。  その2件のお客様も、真摯に対応させていただ き、いまだに通い続けてくださっています。  周囲からすれば、「ずいぶんゆるいな」と思わ れてしまうかもしれませんが、社員の管理はこれ くらいで十分だと僕自身は感じています。   人を育てる極意「鉄は熱い時   に叩け」  さて、こうした形で僕は従業員の管理を行つて いますが、この章の最後に「人を育てる」という 点について、僕の持論を述べておきたいと思いま す。  従業員時代、僕は店長として、必死に部下を育 てようとしました。  厳しくすると辞めてしまうので、おだてながら 育てようと試みましたが、それだと逆に育たない というジレンマを抱えることになりました。  そうして一周同って気づいたのは、結局のとこ ろ、人を育てることはできないということです。  根底として、人は変わらない生き物だし、価値 観だって、そうそう変わるものではありません。  人が育つのは、その人が勝手に育つのであって、 僕らにできることがあるとすれば、成長を後押し してあげることだけです。  第1章でお話ししたとおり、成長を望んでいな い人に対して、成長することを押し付けても、そ れはストレスにしかなりません。  あまりに度が過ぎると、今の時代は「パワー「 ラスメント」として訴えられかねません。  昔から「鉄は熱いうちに打て」という諺があり ますが、僕は「鉄は熱い時に叩け」が正しいと 思っています。  「『熱いうちに』と『熱い時に』で、どこがどう 違うの?」  そのように思われるかもしれませんが、「熱い うちに」という言葉には、「鉄は熱くなることが 前提である」という意味合いが含まれているよう に感じます。   一方、「熱い時に」というのは、文字どおり 「熱い時」であって、鉄が熱くなるかどうかは分 かりません。  例えば、「成長こそが君の幸せに繋がるんだ」 といくら言っても、その言葉に熱くなるか、熱く ならないかは、その人次第です。  そもそも成長したいと思っていない人からすれ ば、「成長こそが君の幸せに繋がるんだ」と言わ れてもピンと来ないでしょうし、その言葉に揺さ ぶられて、心が熱くなることもないでしょう。  熱くなるかどうかは分からない。でも仮に熱く なったとしたら、その時には、その天を叩いてあ げればいい。「鉄は熱い時に叩け」という言葉に は、そうした意味合いが込められています。  「北原さんつて、けっこうドライですよね」  最近は、人からそのように言われてしまうこと があります。  たしかに僕の言動はドライに感じられるかもし れませんが、僕からすると「ただ熱ければいいと いうものではない」という考え方が前提としてあ るのです。    「3店舗目の課題」とは?  さて、2店舗目で、僕は「店長不在でもお店の 業績を伸ばすことができる」という点を確認し、 クリアすることができました。  次は3店舗目になりますが、3店舗目の課題は 「1店舗目と2店舗目でできたことが、新規のエ リアでも通用するのか」という点でした。  いわば「再現性」が3店舗目の課題で、この点 をクリアできれば、一気に店舗を広げていくこと が可能になります。  では、僕は3店舗目をどのように構築していっ たのでしょうか?  次章で詳しく解説します。   新規エリアでもビジネスモデ   ルを再現できるか?  さて、3店舗目の話に入る前に、ここまでの話 を簡単に整理しておきましよう。  僕が1店舗目で確認したかったのは、主に次の 2点でした。  @自社サイトだけで上位顧客を集客できるか  A従業員の能力に頼らず、マニュアルだけで、   従業員が次回予約を90%以上取ることがで   きるか  まずはこれらができなければ、これ以上、店舗 を拡大していくことはできないからです。  そして2店舗目で確認をしたかったのが、「店 長不在でもお店の業績を伸ばしていくことが可能 か」という点でした。  店長不在でも業績を伸ばすことができれば、店 長を育てなくても、3店舗目、4店舗目とハイス ピードで店舗を広げていくことが可能になるから です。  実は、僕はここまでの実験に2年の歳月をかけ ました。  ですから、4年で100店舗以上のお店を作っ たと言っても、そのほとんどは後半の2年間だけ で作ったということになります。  3店舗目のお店で確認したかったこと。それは 「遠隔でもビジネスモデルを再現できるのか」と いう点でした。  店舗数が少ないうちは、僕自身の目も行き届き ますが、店舗を広げていけば、直接現場に行けな い店舗が必ず出てきます。  僕自身が直接現場に行かなくても、遠隔でビジ ネスモデルを再現できるのか?  そもそも新規エリアで、既存店と同じように集 客をすることが可能なのか?  そうした、言わば「ビジネスモデルの再現性」 を確認することが、3店舗目の課題でした。   銀行員の「意外な返事」  新規出店の形態は、主に2つに分類することが できます。  1つは既存店とは離れた「全く新しいエリア」 にお店を出すケース。  もう1つは、既存店の近くにお店を出していく ケースで、いわゆる「ドミナント方式」と呼ばれ るスタイルです。  3店舗目で確認をしたかったのは、前者の「新 しいエリアにお店を出すケース」で、そこで僕の やり方がはたして通用するのかどうかということ でした。  結果的に3店舗目は直営店ではなく、フラン チャイズ(以下、FCと表記)で新しいエリアの 店舗を展開することになりました。  ですが、当初、僕は3店舗目をFCにするつも りはなく、3店舗目以降も直営店を増やしていく つもりでした。  2店舗目までの実験で「これはいける」という 確信を得た僕は、はやる気持ちを抑えて銀行に行 きました。  そして、ディアーズをまだ2店舗しか出してい ないにもかかわらず、銀行の担当者に切り出しま した。  「これで全国展開できると思います。いくらまで なら、お金を貸していただけますか?」  こうして3店舗目以降のお店を作るための融資 をお願いしたのですが、銀行の担当者から返って きたのは、意外な言葉でした。  「北原さん、おっしやることはよく分かりました。 ですが、まずは前にお貸ししたお金をきちんと返 してからにしてください。今はお貸しできませ ん」  意外な返事に、僕は驚きました。 「話にならないな……。こんなビッグチャンスな のに、本当に融資をしなくて大丈夫なの?」  そう思いましたが、「貸さない」と言うのです から、仕方ありません。  こうして「お金の問題」に直面した僕は、直営 での店舗展開を断念し、3店舗目はFCでの展開 を考えるようになりました。  「よくよく考えてみると、I店舗ごとに銀行にク レジット(信用)の確認をされていたら、お店を スピード展開で広げていくことはできないな。別 のやり方を考えなければならない」  そのように考え直して、3店舗目はFCでいこ うと決めました。  ですが、ここで僕は「次の問題」にぶち当たる ことになります。   ディアーズにふさわしいFC   オーナーとは?  次にぶち当たった問題。それは「ブランドカ」 の問題でした。  FC展開をしようと言っても、そもそも当時の ディアーズは2店舗しかなく、ブランドカがあり ませんでした。  ですから、FC展開をしようと思っても、その ためのオーナーを募るのは容易ではありません。  ブランドカがない中で、いかにしてFCのオー ナーを集めるか?  それが、僕に課された次の課題でした。  僕がまず考えたのは、「どんな人なら、うちの FCオーナーになってくれるだろうか」という点 です。  どんな人をターゲットに設定して、FCオー ナーを募るべきか?  おそらく普通に考えるのは「やる気があって、 そこそこの実績もあって、お店の業績を伸ばして くれそうな人」ということになるでしょう。  でも、僕はFCのオーナーを募る時点で、「そ ういう人は絶対にダメだ」ということが明確に分 かっていました。  いったい、なぜでしょうか?  なぜかと言うと、そういうタイプの人は、仮に I店舗目がうまくいくと、「2店舗目は自分のス タイルでやってみたい」という形で、どんどん自 分の色を出そうとするからです。  そして、その姿勢はやがて離脱(独立)へと繋 がっていきます。  こうした「独立の法則」は社員だけでなく、F Cオーナーにも当てはまるはずだと僕は考えてい ました。  何より僕自身が「自分のやり方」で勝負をした くて、最初に就職したお店を離職しているわけで すから、できる人というのは、やはり「自分の 力」を試したがるものなのです。  だからこそ、「やる気があって、そこそこの実 績もあって、お店の業績を伸ばしてくれそうな 人」は、ディアーズのFCオーナーには絶対にそ ぐわないということが、僕には明確に分かってい ました。  ですから、そうした人だちとは「正反対の人」 を僕はFCオーナーにしようと考えました。  失礼を承知で、具体的に言うと、次のような夕 イプの人たちです。  ■ボロボロの赤字経営になっている  ■そろそろ美容室を畳もうと考えている  ■人生に疲弊し切っている  そうした方こそが、ディアーズのFCオーナー にふさわしいと考えました。  すでに経営状態が火の車であれば、ディアーズ のブランドカを気にする余裕もないはずです。  そこで、次の課題になります。  では、そうした人たちを集めるには、いったい どうしたらいいのでしょうか?   深夜に届いたメール「死ぬこ   とを考えています」  そこで僕が考えたのは「美容室」「赤字」「撤退 方法」などのキーワードを使って、ブログなどで 記事を書くことでした。  記事の最後に、僕は必ず次のような文言を付け 加えました。  「赤字で撤退を考えている人は、ぜひ一度、ご相 談ください」  すると、言わば「瀕死状態の人たち」から「も う死にたい」といったリアルで悲痛なメールがた くさん届くようになりました。  そしてブログを書き始めて、ある日のこと。  深夜に、ある男性から次のようなメールが届き ました。  「今日、北原さんに相手にしていただけなかった ら、もう先がないので、死のうと思います」  驚いた僕は、急いでそのメールを書いた男性が 住んでいるエリアに向かおうとしたのですが、と うに終電の時間は過ぎています。  そこで車を飛ばして、彼が住んでいるエリアに 向かいました。  現地に着いた頃には夜中の2時を過ぎていまし たが、彼とはそれから朝の5時ぐらいまで、ゆっ くり話をすることになりました。  いざ話を聞いてみると、奥様の反対を押し切っ て自分の美容室を開業したものの、うまくいかず、 親戚からもいろいろと言われて、家に居場所がな いとのことでした。  彼との会話で印象的だったのは、次のような言 葉が出てきたことです。  「北原さん。人問って本当に困ると、おなかが 嗚っても、おなかがすかないんですね……。寝た くても、全然眠れないんですね……」  僕が思っだのは、「このまま放っておいたら、 この人は本当に死んでしまうのではないか」とい うことでした。それほどまでに、彼は疲弊し切っ ていたのです。  だから、僕は言いました。  「もしよろしければ、お店の看板を変えてみませ んか? どうせ撤退するなら、3ヵ月間だけでい いので、僕に運転させてください。それでダメ だったら、うちの社員にします。借金も一緒に返 していきましよう」  すると、彼は「ぜひお願いします」と言ってき ました。  こうして深夜に突然メールを送ってきたこの男 性が、記念すべきディアーズのFC1号店のオー ナーになったのです。   ブランドカのないお店がFC   オーナーを集める「逆転の発   想」  ブランドカのないお店が、いかにしてFCオー ナーを集めるか?  おそらくFCでの展開を考えているほとんどの 会社、ならびに社長が直面する問題ではないかと 思います。  普通のやり方では、まずFCオーナーは集まり ません。  かといって、「ブランドカを構築してからFC 展開」というプロセスを辿ろうとすると、莫大な お金がかかりますし、何より時間がかかりすぎて しまいます。  この問題をどうやってスピード解決すべきか?  僕が考えたのは、「店舗救済」という形で「救 いの手」を差し伸べれば、ディアーズにすがって くれるのではないかということでした。  借金を一緒に返すぐらいの姿勢で臨めば、僕か らFCのお願いをするのではなく、逆に相手の方 から、僕にすがってくれるのではないかと考えた のです。  こうした言わば「逆転の発想」で、僕はこの問 題をスピード解決しました。  この時のエピソードを人に話すと、次のように 言われることがあります。  「ダメだったらうちの社員にするとか、借金を一 緒に返していこうとか、初対面の人に対して、ど うしてそこまで言えたんですか?」  理由は簡単で、「必ず黒字化できる」という確 信があったからです。  彼のお店は家賃10万円ほどで、うちの美容室の 家賃と同じ水準でしたし、何より、うちのお店よ りも人囗が多いエリアで出店をしていました。  ですから、やり方さえ変えれば、必ず黒字化で きるという確信がありました。  あとは彼に対して、「新しい挑戦」を促すだけ です。  新しい挑戦にはリスクが伴いますから、誰しも が恐怖心を持つものです。  ですから、人間は何かと「やらない理由」を考 えて、新しい挑戦を回避しがちです。  そこで、僕は「失敗したらうちの社員にする」 「借金を一緒に返そう」と提案しました。  そこまで言われれば、彼からすると、やらない 理由がなくなるからです。  はたして、彼は新しい挑戦の道を選びました。  その結果、1ヵ月間の売上が約20万円たった彼 のお店は、3ヵ月後に売上80万円に急成長しまし た。  現在、彼はディアーズで3つの店舗を持つFC オーナーとして活躍中です。  奥様から「次の店舗はいつ出すの?」と毎日ケ ツを叩かれているそうで、「赤字ばかりで、なん で独立なんかしたの……」と小言を言われる日々 から、大逆転の人生を送っています。   セブンーイレブンはいかにし   てFC展開を広げていったの   か?  このように僕自身は「逆転の発想」でFCでの 展開を始めましたが、今、振り返ってみて思うの は、「固定概念にとらわれてはいけない」という ことです。  現在の囗本には様々なFCがありますが、固定 概念にとらわれずにFCを成功させた事例として、 とりわけ身近なのは、コンビニエンスストアであ るセブンーイレブンではないでしょうか?  ここで、セブンーイレブンがどのようにしてF C展開を始めたのかについて、簡単に経緯を振り 返ってみましょう。  時は高度成長期。  大型スーパーが全盛の時代で、イトーヨーカ堂 は出店を加速させていましたが、その一方で、地 元の商店街にある中小の小売店からは「イトー ヨーカ堂が来たら売れなくなる」と猛反発を受け るようになっていました。  幹部として、地元の商店街と交渉にあたってい た鈴木敏文さんは「商売はやりようだ。大型店と 中小小売店は必ず共存共栄できるはずだ」と考え、 その道を模索していたそうです。  そんな中、鈴木さんがアメリカで出会ったのが、 セブンーイレブンでした。  最初は「アメリカにもこんな小売店があるの か」としか思わなかったそうですが、帰国後に調 べてみると、サウスランド社が北米で4000店 のチェーンを展開している超優良企業でした。  鈴木さんはセブンーイレブンを日本に持ち込め ば、「大型店と中小小売店の共存のモデルを作る ことができる」と考えたそうです。  社内からは猛反発を受けました。 「商店街のお店の多くが衰退している中で、セブ ンーイレブンのような小型店舗が日本で成り立つ はずがない」というわけです。  しかし鈴木さんは反対を押し切り、FCの1号 店を豊洲にオープンさせました。  なぜ、第1号のお店をFCにしたのか?  その時のエピソードが鈴木さんの著書『変わる カ セブンーイレブン的思考法』(朝日新聞出版 刊)に書かれていますので、以下に引用させてい ただきます。   1号店は、セブンーイレブンの看板で独立  した商売をするフランチャイズ店にしようと  決めていました。他のメンバーはノウハウを  実地で身につけるためにも、最初の数店は直  営店でやろうと言いましたが、セブンーイレ  ブンの創業目的が「小型店と大型店の共存共  栄」「既存小売店の活性化」にあることを示 すためにも、私はこれを押し通しました。  そのようなとき、新聞記事を見た東京都江 東区在住の山本憲司さんという23歳の青年か ら、私たちのもとへ「やってみたい」と手紙 が届きました。  彼は、お父様が亡くなられたため大学を中 退して家業の酒屋を継いだばかり。酒販店は 免許制で保護されているため儲かってはいる か、酒類は公定価格のようなもので、今後大 きな売上増は望めません。結婚したばかりの 妻や、妹弟を支える大黒柱として、このまま 酒屋をやっていていいのだろうかと考えてい たときに、新聞記事に載っていたセブンーイ レブンという新しい店に「ひらめき」を感じ たそうです。  店はアメリカの3分のIの広さしかなく、 決して人通りの多い立地ではありませんでし たが、彼の責任感と、新しいことに果敢に挑 戦しようという熱意に胸を打たれ、「ぜひ一 緒にやりましよう。もし3年後に失敗してい たら、私か責任を持ってお店を元通りにして お返しします」と、約束したのです。  1974年5月15日、日本初の本格的コン ビニエンスストア、セブンーイレブン豊洲店 がオープンしました。準備期間は3ヵ月間。 急ピッチで山本さんの店舗を改装し、並行し て彼自身にも「コンビニエンスストア」の運 営ノウハウを学んでもらう研修をするなど、 慌ただしい日々を共に過ごして迎えたオープ ンでした。雨模様の日でしたが、目新しさも  あって、多くの人が来店してくれました。最  初のお客様は男性。購入してくださったのは、  800円のサングラス。今も忘れられません。  いかがでしょうか?  こうして「うまくいくはずがない」という社内 の反対を押し切り、1店舗目のFCをスタートさ せたセブンーイレブンがその後にどうなったのか は、あえて書き記すまでもないでしょう。   セブンーイレブンに学ぶ「継   続的な成長の条件」  セブンーイレブンとは経緯が違いますが、現在、 僕も数多くのFCを抱えるディアーズグループの 代表です。  その代表として、この本を読んでいるあなたに 何よりも伝えたいのは、次のメッセージです。  やりようによっては、必ず勝てる。  美容室業界は「レッドオーシャン」(血で血を 洗うような激しい競争が行われている既存市場の こと)と言われますが、厚生労働省の統計による と、2018年度の店舗数は全国で25万軒を超え ているそうです。  一方、日本フランチャイズチェーン協会の調べ によると、2018年度の全国のコンビニエンス ストアの店舗数は5万8340店となっています。  コンビニエンスストアの店舗数と比べてみても、 美容室がいかに競争の激しい業界であるかが分か るでしょう。  しかし、それを嘆いてみたところで、状況は何 も変わりません。  先ほどご紹介した鈴木さんの著書には、次のよ うにも書かれています。  ビジネス上、ライバルは少ないほうがいい と思いがちですが、競合他社、あるいは競合 店がないと、往々にして事業がうまくいかな くなることが多い。小売業で言えば、周りに 競合店がないと、お客様は他に店がないため に来てくれていることに気づかず、変革する 努力を忘れてしまうためです。  商売がうまくいかないときは、誰かのせい  にすれば楽です。しかし、楽のあとに成長は  ありません。己の欠点を受け止め、改善する  努力を怠らず、新しいことに挑戦し続ける。  そうした地道な取り組みなくして、継続的な  成長はないのです。  鈴木さんのおっしやるとおりだと思います。  僕白身が「レッドオーシャン」と言われる美容 室業界で、たった数年で店舗を急拡大できたのは、 ディアーズが変革と挑戦を怠らなかったからです。  「これからどうしていけばいいのだろうか……」  そのように悩む美容室経営者は、全国の津々 浦々にいらっしやいます。  そうした美容室経営者の受け皿となり、業界を より活性化していけるよう、ディアーズは変革と 挑戦を続けています。   「FCオーナーにふさわし   い」「ふさわしくない」を見   極めるポイント  さて、話をもとに戻しますが、FCの1店舗目 を成功させた僕は、早速2店舗目のFCに取りか かりました。  そのお店は家賃20万円にもかかわらず、客席が 2席しかない店舗でした。  当時、そのお店のオーナーには奥様と3人のお 子様がいらっしやったのですが、月の売上は20万 円ほどしかありませんでした。  光熱費などを考えると、完全に赤字で、自分の 家の賃料の支払いもままならない状態でした。  僕が「これからどうするんですか?」と聞くと、 彼は「お店で寝泊まりをしようと考えています」 と言います。  そこで「お子様もいらっしやるんですよね?」 と聞くと、彼は「お客様がいない夜ならば、家族 で寝泊まりできると思います。やってやれないこ とはない」と答えました。  実は当時、その方の奥様は4人目の子供をおな かに身ごもっていました。  僕は話を聞きながら、「その状態で奥様をお店 に寝泊まりさせるのは、さすがにマズいだろ う……」と思いました。  僕は言いました。  「とにかく、僕が言うとおりに、3ヵ月間だけ やってみてください。ダメだったら、うちの社員 にしますから」  こうしてI人目のFCオーナーと同じような提 案をしました。  結果、3ヵ月後には、1ヵ月間の売上が80万円 と約4倍にV字回復しました。  ひょっとしたら、ここまで読んだあなたは、次 のように思うのではないでしょうか?  「お店が赤字の状態なのに、4人目の子供を作っ て、さらに奥様やお子様をお店で寝泊まりさせよ うって……。そんな人にFCオーナーを任せて、 本当に大丈夫なんですか?」  あなたがそのように思うのは当然で、普通だっ たら、そうした人にFCオーナーを任せようとは 思わないでしょう。  でも、僕は少し違う観点から人を見ています。  どこを見ているのかと言うと、それは「きちん とお客様を接客できるか」「基本的なルールを しっかり守ることができるか」という点です。  これさえしっかりできる人であれば、多少おか しな思想を持っていたとしても、基本的にかまわ ないと僕は考えています。  人の心の中は、他人には見えません。  裏で何を考えているのかも全く分かりません。  それが人間という生き物であって、他人の考え 方をコントロールすることはそもそもできません。  ですから、「その大が何を考えているのか」と いう問題は、僕にとってはどうでもよくて、お客 様や決められたルールに対して、真摯でさえいて くれれば、それでOKだと考えています。  面談時に、彼にはその真摯さが見えました。  だからこそ、僕は彼をFCオーナーにするとい う決断を下したのです。  そもそも完璧な人間など、世の中にはいません。  ですから、「あいつはここがおかしい」などと 欠点ばかりあげつらっていても、キリがありませ ん。  何を優先順位の上位にするか?  まずは、その点を明確にすることが大切ではな いかと思います。   休日でもメールに「即レス」   できるか?  どんな人がディアーズのFCオーナーにふさわ しいかという点について、もう1つだけポイント を挙げておきましよう。  僕は「オンとオフを切り分ける方」に関しては、 基本的にFCオーナーを断るようにしています。  オーナーになって従業員を雇うということは、 自分のオンとオフはなくなるということを意味し ます。  そういうポジションであるという自覚がない人 には、残念ながら、FCのオーナーは務まりませ ん。  例えば、社員が出勤中に事故に遭ってしまった としましよう。  オーナーとして、いち早く対処をしなければな らないのに、「休みなので連絡が取れませんでし た……」というのでは話になりません。  たとえ休みの日であったとしても、僕は社員か らの連絡に関しては、すぐにレスポンスをするよ うにしています。  それと同様に、たとえ休みの日であったとして も、僕が送ったメールに12時間以内に返信がない ようだと、Fcオーナーとしての適正はないと考 えます。  中には「旅行中だから勘弁してください」とか 「休みなので電話は後日にしてください」と言う 方もいらっしやいます。  もちろんそれは理解できますし、僕も極力、休 みの日にムダな連絡をしないように心がけていま す。  しかし、いざという時、すぐに連絡が取れない 人というのは、FCオーナーとしては明らかに不 向きなのです。    「5店舗目以降の課題」は?  さて、こうして新規エリアで、僕は「ビジネス モデルの再現性」を確認することができました。  あとは、FC展開を全国に広げていくだけです。  5店舗目以降、どのような形で店舗を広げて いったのか?  その経緯について、次章でお話しします。   会社の成長を自動化する!  さて3店舗目、4店舗目で「再現性」を確認し た僕は、店舗展開を広げるために、FC説明会を 実施しました。  説明会を実施したところ、初回で集まったのは 30名。そのうち28名がFCに加盟することになり ました。  こうして、ディアーズは成長が加速していくこ ととなったのです。  本書では、ディアーズの店舗拡大をプロセスど おりに見てきましたが、ここでもう一度、「各店 舗で実現させてきたこと」をおさらいしておきま しよう。  1店舗目で実現させたのは「社員の能力に頼ら ない」ことです。社員の能力に頼らず、マニュア ルだけで業績を伸ばすことを実現させました。  同じく2店舗目で実現させたのは「店長を置か ないこと」、314店舗目では「新規エリアでの 再現性」を実現させました。  実はここまでができると、5店舗目以降の「成 長の自動化」は、ほぼ実現できたも同然です。  第5章では「5店舗目以降をどう拡大させて いったのか」、そして「拡大し続ける店舗をどの ように管理しているのか」について、お話しした いと思います。   I店舗あたり3分で管理を完   了できるか?  まえがきにも書きましたが、2021年6月現 在、ディアーズは直営店が10店舗、FCが146 店舗、計156の店舗を抱えています。  「そんなに多くの店舗を、いったいどうやって管 理しているんですか?」  そのように思われるかもしれませんが、僕はF CI店舗の管理を、1ヵ月あたり3分以内に完了 させています。  全店舗の管理にかける時間は、毎月3時間ぐら いで、全店舗の管理をほぼ自動化できていると 言っても過言ではありません。  なぜ、そんなスピーディな管理が可能なのか?  その秘訣について、実例を交えながら、お話し したいと思います。  僕が何をもとにFC店舗の管理を行っているの かと言うと、それは月末から翌月の月初にかけて 届く「FCオーナーからの定期報告」です。  ディアーズのFCオーナーには、月1回の定期 報告が義務づけられていますが、よほどのことが ない限り、これ以上の報告を求めることはありま せん。  この定期報告を見ながら、僕は基本的に全ての 判断を下すようにしています。  では、FCオーナーは、どんな定期報告を行っ ているのでしょうか?  実際の例を見てみましょう。  次の図が実際の定期報告で、非常にシンプルな 作りになっています。  フォーマットが決まっていて、L−NE(ライ ン)によって、全ての報告を受け付けるようにし ています。  「こんなにシンプルな報告で、本当に大丈夫な の?」  そのように思われるかもしれませんが、報告す る側の負担を考えれば、報告書はシンプルなのが 一番です。  複雑にすると、報告書を作るための時間を割か なければなりませんし、その作業におけるストレ スも生じます。  また管理をする側にとっても、報告はシンプル なのがベストです。  なぜなら100以上の店舗を管理するためには、 I店舗あたりのチェックを、できる限りスムーズ に行う必要があるからです。  では、このシンプルな定期報告で、僕はどう いった点をチェックしているのでしょうか?   数字はココだけを見ればい  まずは先はどの定期報告を見ながら、そのポイ ントについて、解説しましょう。  このお店は客席が2席(スタイリスト3名)で、 月の売上が約272万円です。  すでにお話をしたとおり、ディアーズは一番高 いメニューで施術をされるお客様がほとんどです から、客単価1万6500円(税込)で考えると、 1ヵ月で160名以上のお客様を相手にしている という計算になります。  1名のお客様の施術にかける時間は、約3時間 です。  ですから、仮にお店の営業時間が9〜18時まで だとすると、2席でお客様を相手にできるのはI 日6名様になります。160名のお客様を回すた めには27日間、ほとんどフルで予約を入れないと 合わない計算になります。  さらに詳細に、このお店の数字を分析していき ましよう。  新規入客数が12件。それに対し、新規次回予約 数も12件になっていますから、次回予約率は 100%です。ですが一方で、新規問い合わせ数 が35件なのに対して、新規入客数は12件。実に23 名ものお客様を取りこぼす結果になっています。  要は予約がパンパンで、これ以上、新規のお客 様を受け入れるのが難しくなっているのです。こ の数字を見れば、「そろそろ限界に近いな」と判 断できます。  現時点で23名もの新規のお客様を取りこぼして いるわけですから、席があるなら、スタイリスト を追加雇用すればいいし、席が埋まっているなら、 近くにもう1つお店を作れば、そちらの店舗にお 客様を移動させることができます。  そうすれば、広告費をかけずに集客できるわけ ですから、こうした店舗のFCオーナーには「も う1つ店舗を作りませんか」という提案になるわ けです。   「伸びるオーナー」と「伸び   ないオーナー」は何か違うの   か? 次の図をご覧ください。  このお店は、先はどのお店とは違って、「もう 少しがんばれるのではないか」と思えるお店です。  先はどのお店と比較していただくことで、数字 の感覚を、よリリアルに実感していただけるはず です。  このお店のスタイリストは1名で、立ち上げた ばかりなので、オーナーー人で回しているお店で す。  月の売上は約78万円。先はどのお店と同じく、 客単価1万6500円(税込)で計算をすると、 1ヵ月あたりのお客様は48名ということになりま す。  1日3名の予約を入れたとしても、16日間で片 づく計算になりますから、まだ余裕があると言え るでしょう。にもかかわらず、新規問い合わせ数 が26件なのに対して、新規入客数が18件になって います。  まだ余裕があるのにもかかわらず、8名ものお 客様を取り逃しているのです。  ちなみに、このお店のFCオーナーは、まだ起 業したばかりの若い男性です。  だから、あえて愛情を込めて言いますが、僕に 言わせれば、「今、必死にやらないで、いつやる んだ?」という感じです。  彼に言わせれば、「土日祝日や平日の夜に予約 が集中して、予約の調整がうまくできませんでし た」ということなのかもしれませんが、先はどの お店の数字と比較してみれば、その差は明らかで はないでしょうか?  ですから、こうしたFCオーナーに関しては、 僕はどんどんケツを叩くようにしています。  もし僕がこのお店のオーナーなら、朝の9時か ら夜の12時までお店を開けて、必死に働くことで しょう。  一番大事な起業の時にがんばって数字を出さな ければ、その先はないからです。  従業員に無理をさせることはできませんが、 オーナーー人であれば、いくらでも無理がきくは ずです。  仮に8名のお客様を取りこぼさなければ、月の 売上で10万円以上が上乗せされるのに、なぜ必死 にやらないのか?  僕にとっては、それが歯がゆくて仕方ないので す。  仮に毎月8名のお客様を取りこぼしていくこと になると、年間で100名近いお客様を取りこぼ す計算になります。  お客様が年6回(2ヵ月にI回)通ってくだ さったとすると、お客様I人あたりの年間の売上 は約10万円になりますから、100名を取りこぼ すと、トータルで年間1000万円近い損失が出 る計算になります。  これは大きな損失で、仮に取りこぼしをしなけ れば、次のお店を出せるレベルになってきます。  こうした取りこぼしを最小限にできるFCオー ナーが、1年も経つと、2店舗目、3店舗目と店 舗を広げてきます。  数字を見ているだけで、伸びるオーナーと伸び ないオーナー、伸びるエリアと伸びないエリアが、 全て分かってしまうのです。  このようにディアーズの定期報告は、非常にシ ンプルです。  でもシンプルだからこそ、報告する側もされる 側も負担にならないのはもちろんのこと、パツと 数字を見ただけで、お店がどんな状態であるかを 瞬時に判断することができるのです。   なぜ、3年以内に満席になる   のか?  ちなみに僕が作るお店は、全て3年以内に満席 になるように設計しています。  どういう計算をすれば、3年以内に満席になる のでしょうか?  この点を具体的な数字で立証してみたいと思い ます。  例えば、客席が3席の店舗で考えてみましよう。  施術は従業員の休み時間も含めて、1名のお客 様にかける時間は約3時間になります。  ですからI人の従業員で、1日に3名のお客様 を相手にすることができます。  典型的なパターンだと、9時、12時、15時にお 客様の予約を入れて、18時に仕事を終え、15分で 掃除をして帰宅という形になります。  ディアーズでは1名のお客様を終えるごとに、 従業員は30分11時間の休憩を取ることができる のですが、仮にキャンセルが入ると、次のお客様 までにかなりの時間が空いてしまいます。余談に なりますが、従業員の中には、その空き時間に銭 湯に行くという強者もいるぐらいです。  さて話を戻しますが、I席のお客様が仮に1日 に3名だとすると、3席では9名になります。  I週間(7日)で換算すれば63名、1ヵ月(30 日)で270名のお客様が入れば、満席というこ とになります。  このお店の新規のお客様の問い合わせが、1ヵ 月で`一件だとしましよう。  新規の問い合わせで来たお客様を1名も取りこ ぼさず、新規顧客のリピート率を少し少なめに見 積もって80%、2回目以降のリピート率を 100%、お客様の来店頻度を2ヵ月に1回とし て計算した図が、次の表になります。  このお店のキャパシティである270名が埋ま るまでにどのくらいの期間がかかるのかというと、 爿]力月目に270名となり、満席になる計算にな ります。  こうした形で、ディアーズでは3年以内に満席 になるよう、全てのお店を設計しています。  美容室業界は競争が激しく、店舗数を増やすど ころか、新規オープンした美容室は10年後にほと んど生き残っていないと言われる世界です。  そんな環境下であっても、僕のやり方であれば、 3年以内に満席の店舗を作ることができます。  なぜ、僕がたった4年で100店舗以上の美容 室を作ることができたのか?  その理由は、こうした数字上でも、しっかり裏 付けをすることが可能なのです。   FC急拡大の秘訣  ディアーズの場合、お店を1つ作る際の初期投 資は、だいたい1000−1500万円になりま す。  この借り入れができるかどうか?  その点が、まずはFCオーナーの壁になります。  銀行から借り入れができれば、全く問題ありま せんが、今の若い人というのは、僕が見る限り、 貯金`一万円以下の人がほとんどです。  この状態だと、なかなか銀行はお金を貸してく れません。  この点を、いったいどうやってクリアさせれば いいのでしょうか?  美容師に「どのエリアで勝負をしたいです か?」と聞けば、たいていは「東京」と答えるで しょう。  しかし、東京には、すでに美容室が縊れていま す。  イチから勝負をしたいのであれば、地方都市の 方が賢明です。  そこでディアーズでは、銀行での借り入れが難 しい人たちに対して、「このエリアに引っ越しを してくれるなら、会社で借り入れをしてあげる よ」という提案を行っています。  いったん会社で借り入れを行い、店舗を黒字化 した段階で、FCオーナーが「お店を買い取りた い」と言えば、銀行はお金を貸してくれるはずで す。  店舗を黒字化してからの借り入れですから、 「返済できないかもしれない……」と心配する必 要はありません。  仮に赤字で生活費すら稼げない場合には、生活 費の補償を行う制度も整えています。  幸い、そうしたFCオーナーは今までにI人も いません。ですから、この補償制度が発動したこ とは一度もありません。  仮にダメであれば、僕はFCオーナーを全員、 社員にする覚悟でいますが、おかげさまで、全て が順調です。  日本沈没レベルの災害でもない限り、ディアー ズは安泰と言えるでしょう。  なぜ、FCを急拡大できたのか?  その一因は、リスクを心配するFCオーナーに 対して、できる限り「リスクゼロ」に近い形で勝 負できる環境を整えていることにあるのです。   「ギブ中心」でストレスフ   リーの人生になる’・  友人の経営者に、よく言われることがあります。  それは「それだけの規模でやっていて、よく訴 訟を起こされないね」ということです。  なぜディアーズは、訴訟などの揉め事とは無縁 なのでしょうか?  理由は簡単で、僕が基本的にギブしかしていな いからです。  この本でお話ししてきたとおり、ディアーズで は顧客の獲得も従業員の求人も、全てホームペー ジ上で行い、各店舗に割り振るスタイルを採用し ています。  FCオーナーの側からすれば、集客も求人募集 も自分でやる必要がないのですから、これほど楽 なことはないでしょう。  ここまでしてあげれば、基本的に揉めようがあ りません。  もちろん、揉め事がゼロというわけではありま せん。  FCオーナーに対して、僕の方から「もうあな たとは仕事ができません」と言って、看板を回収 するケースがあります。  以前にあったケースだと、FCオーナーのお父 様が突然、「なぜ俺のところに話が来ていないん だ?」と言って、FC加盟が中断してしまったこ とがありました。事業モデルを落とし込み、業績 も安定するところまで、こちらの力で持っていっ たのにもかかわらず、です。  よくよく話を聞いてみると、お金を出しだのが FCオーナーでなく、そのお父様だったらしいの ですが、こちら側からすれば、お金の出所まで調 べることはできません。  話し合いの末、このFCオーナーとの契約は解 除させていただきました。  ルールの範囲内であれば、何の問題もないので すが、そうした形で残念ながら、看板を回収しな ければならないケースもあります。  世の中には、こちらがいくら筋を通したとして も、筋を通さない方がいるものなのです。  世の中では、よく「ギブ&テイク」と言われま すが、人間は自分中心の生き物ですから、どうし ても「テイク」の方に意識がいきがちです。  そんな人間社会だからこそ、まずは「自分が何 をギブできるか」を考えてみてはいかがでしょう か?  ギブ中心の生き方をすると、揉め事をゼロにす ることはできないものの、かなりの確率でトラブ ルを回避することができます。  ギブ中心の生き方がストレスフリーの人生に繋 がることを日々実感しています。   僕が全国を飛び回る理由  現在の僕の仕事は、「FCの説明会にいかに人 を集めるか」です。  そのために、僕は全国を飛び回っています。  「全国を飛び回らずに、東京に集めればいいので はないですか?」  そのように思われるかもしれませんが、第4章 でお話ししたとおり、ディアーズがオーナーとし てターゲットにしているのは「自分の力ではどう しようもない人たち」です。  そういう人たちは、例えば鳥取から出てきて、 東京のセミナーに参加するということを基本的に しません。  2019年に僕は47都道府県の全てを回り、説 明会をやりました。  おかげさまで2020年12月1日、ディアーズ は全47都道府県への出店を果たしました。  ディアーズ事業における僕の次の目標は、ディ アーズの店舗数をさらに拡大させて、コンビニエ ンスストアのようなインフラにすることです。  ぜひ、あなたにも仲間に加わっていただければ と思っています。  メールでも何でもかまわないので、I人で悩ま ずに、僕に連絡をください。  ご要望さえあれば、僕は全国どこへでも足を運 びたいと考えています。   ディアーズは「女性ファース   トの会社」  さて、この本もいよいよ最後が近づいてきまし たが、次の最終章では「女性問題」について、取 り上げたいと思います。  第1章で触れましたが、ディアーズ直営店の現 場社員は、全員女性です。  そのためか、セミナーなどで「女性ファースト の会社を作っている北原さん」と紹介されること もあるのですが、僕がどのようなことを考えて、 「女性ファーストの会社」を作っているのか?  その点について、次章で持論を述べたいと思い ます。   女性が働きやすい環境を作   る!・  毎年、厚生労働省が発表している『雇用動向調 査』を見ると、令和元年(2019年)の常用労 働者(期間を定めずに雇われている人、もしくは 1ヵ月以上の期間を定めて雇われている人)の離 職率は15・6%となっています。  ディアーズの場合、2021年6月現在の時点 で、直営店の離職率はO%。  FCを含めても離職率は3%程度ですから、一 般的な離職率を大きく下回っています。  この数字は、従業員に対して、ディアーズが 「働きやすい環境」を提供できている何よりの証 拠と言えるでしょう。  今までの社会は「男性寄り」で、僕はそこに強 い疑問を感じていました。  そこで、男性だけでなく、「女性も働きやすい 職場環境」を作りたいと常に考えてきました。  その結果、ディアーズには、多くの女性社員が 集まることになりました。  いかにして、女性が働きやすい環境を整えれば いいのでしょうか?  人口が減少していく日本において、この問題は、 今後の最重要課題の1つと言えるでしょう。  最終章の第6章では、その点について、僕なり の考え方をまとめておきたいと思います。   なぜ、女性の社会進出は進ま   ないのか?  今から約10年前。  ベストセラーとなった『デフレの正体』(KA DOKAWA刊)で、囗本の生産年齢人口(「生 産活動の中核をなす年齢の人口層」のことで、日 本では15歳以上65歳未満の人口を指す)の減少と デフレの関係をいち早く指摘したのは、著者の藻 谷浩介さんでした。  生産年齢人口が減少すれば、日本の内需はどん どん縮小していってしまいますが、同著で、藻谷 さんは次の3つの解決策を掲げました。  @高齢富裕層から若者への所得移転を  A女性の就労と経営参加を当たり前に  B労働者ではなく外国人観光客・短期定住客   の受入を  藻谷さんの指摘から、すでに10年以上の月日が 流れましたが、この間、Aの「女性の就労と経営 参加を当たり前に」は、いったいどこまで進んだ でしょうか?  僕が見る限り、ほとんど進んでいないのが実情 ではないでしょうか?  そもそも、なぜ女性の社会進出はなかなか進ま ないのでしょうか?  その大きな理由として僕が考えるのは、日本の 多くの職場が、働く女性たちに優しい職場環境に なっていない点です。  女性の場合、男性と違って、人生の節目、節目 でライフステージが変わります。  例えば、結婚して旦那様ができれば、旦那様の 都合による転勤がありえます。もし旦那様が転勤 になれば、女性は仕事を辞めなければなりません。  子供を身ごもると、出産のために仕事を休まな ければなりませんし、子供が生まれてからは、子 供の面倒も見なければなりません。  子供が小さい頃は、急に風邪を引くようなこと もありますから、急に病院に行かなければならな いヶIスも考えられます。  はたして囗本の職場は、そうした女性たちにき め細かく対応できるような環境になっているで しよ’つか?  出産や子供の急病で仕事に穴をあけると、周囲 から「だから女は……」というような視線を投げ かけられる……。  そのような職場環境だと、いくら仕事を続けた いと思っても、周囲からの視線に耐えかねて、離 職するしか道がなくなってしまうのではないで しよ’つか?   女性が働きやすい環境とは?  第1章でお話ししましたが、美容室はビジネス モデル上、たとえトップスタイリストであったと しても、月100万円の給料を支払うことはでき ません。  男性としての「野心的なキャリアアップ」を美 容室で突き詰めていくことは、なかなか難しいの が現状です。  男性的なキャリアアップを突き詰めていくと、 その先には独立しかありません。  一方、女性の場合は、給料アップやキャリア アップなどよりも、「職場の快適さ」「休日選択の 柔軟さ」「ゆとり」「バランス」といったものをよ り重視する傾向があります。  ですから、現状、ディアーズの求人を見て集 まってくるのは、ほとんどが女性になります。  あくまでも僕の主観になりますが、男性の優秀 さがどこにあるのかと言えば、それは爆発力です。  いったんスイッチが入ると、男性は止められま せん。  アクセルを踏み込む力強さという点で言えば、 男性に軍配が上がります。  これに対し、女性は1つひとつの仕事を慎重に 進めます。  こちらが指示したことを、1つひとつ丁寧にこ なします。  仕事のきめ細かさという点では、女性に軍配が 上がると言えるでしょう。  もちろん、どちらが良い、悪いというのはあり ません。  ですが、ディアーズの場合、1つひとつの仕事 をマニュアルどおりに、丁寧に実行していくこと が求められますから、どちらかと言えば、女性向 きと言えるでしょう。  だからこそ、ディアーズでは「女性が働きやす い環境」をより重視しています。  例えばディアーズでは、子供が急病であれば、 病児のお迎えサービスを使えるよう、会社でサ ポートしています。  また、土日に子供の学校行事に参加しても、そ れ以外に自分の時間を持つことができるよう、週 休3日を採用しています。  働く女性に配慮した雇用制度を、いかに設計で きるか?  そうした点における配慮が、女性の社会進出を 後押しするだけでなく、離職率の低さや、ひいて は会社の成長に繋がっていくと考えています。   グラスを割った女性にどう声   をかけますか?  男性の経営者の中には、「女性が働きやすい環 境を整えたいけれども、そもそも女性社員にどう 接すればいいか分からない……」と悩んでいる方 もいらっしやるのではないでしょうか?  なぜ、男性経営者は女性社員を上手にハンドリ ングできないのでしょうか?  その原因の1つとして挙げられるのは、「男女 間のコミュニケーションギャップ」です。  例えば、美容室の現場で、女性社員がグラスを 割ってしまったとしましょう。  あなたなら、どのように声をかけますか?  おそらく、たいていの経営者の第一声は、次の ような匸言ではないでしょうか?  「気をつけてよ」  でも、僕はそのようには言いません。  僕なら、次のように言います。 「大丈夫ですか? おケガはなかったですか?」  次に相手が「大丈夫です。本当に申し訳ありま せんでした」と言ってきた段階で、初めて注意を 促すようにします。  「かしこまりました。ガラス類は二次災害を防ぐ ために、しっかりと見ておいてください。掃除を する際には、ケガをしないように気をつけてくだ さいね。次から気をつけてもらえれば、大丈夫で すよ」  なぜ、こうした言い方をするのかというと、過 去に部下を辞めさせてしまった経験があるからで す。  人が辞めていった時を振り返ってみると、「あ あ、あんなことを言わなければよかったな……」 とか「もう少し言葉を選べばよかったな……」と 思うことが多々あります。  人に素直に受け入れてもらえるような「言葉の チョイス」や「順番」があるのではないかと思う のです。   女性とのコミュニケーション   のカギは「共感」  人工知能(AI)の研究者で、ベストセラーを 数多く出されている黒川伊保子さんは著書『女の 機嫌の直し方』(集英社インターナショナル刊) で、男性脳と女性脳の違いについて、次のような 面白いエピソードを紹介しています。   その昔、同期の男子に、こんな質問をされ  たことがある。「女はなぜ、転びそうになっ  て転ばなかった話をするのか」   優秀な男性脳の持ち主である彼のもとに、  新人の女性が初めて入ってきた年のことだ。 ある朝、彼女がフロアに入ってくるなり、い きなり「さっき、駅の階段でつんのめって、 こけそうになっちやったんです。怖かっ た〜」と言った。彼は「それで、けがは? 何段落ちたの?」と尋ねたのだが、彼女は 「……落ちてませんけど?」と言って、あか らさまにムツとした表情になった。  あとで、彼は私のところにやってきて、 「俺、何か失敗した? そもそも、転びそう になって転ばなかった話って、情報量ゼロだ よな。あれ、なんか意味あるの」とつぶやい たのである。そう、彼は失敗した。彼がすべ きだったのは、「そりゃ、怖いよね」と共感 してやることだったのだ。そして、もちろん、 「転びそうになって転ばなかった話」には、 女性脳にとっては多大な情報価値がある。情 報量ゼロなんて、とんでもない。  実は、女性脳は、「怖い」「ひどい」「つら い」などのストレスを伴う感情が起こるとき、 そのストレス信号が男性脳の何十倍も強く働 き、何百倍も長く残るのである。そして、共 感してもらうと、その余剰な信号が沈静化す るようにできている。  余剰な信号を起こす理由は、「危険な事態」 を細大漏らさず記憶して、二度と同じ事態に 自分を追い込まないための防衛手段だ。  人類の女性たちは、哺乳類のメスなので、 自己保全が生殖の第一条件になる。赤ちゃん を胎内で成長させ、産み出したあとも授乳期 問を必要とする哺乳類のメスは、自分が健康 かつ安全でいなければ、よりよい種の保全が かなわないからだ。  このため、「怖い」「ひどい」「つらい」な ど、自らの安全を脅かす事態に伴う感情が起 こったときには、脳が強く反応する。その体 験から知恵を創出し、今後の人生で同様のこ とが起こったときに、自分や自分の子どもた ちを守るために発動させなきやいけないから だ。無意識のうちに何度も思い返して、知恵 やセンスを創出しているのである。  (中略)  女性とともに生きる以上、共感上手になっ てもらわなければ、コミュニケーションが成 立しないどころか、女たちの安全な暮らしが 成り立だないのである。女性脳をうまく回す ための、ほぼ唯一にして、最大のコツである。 いかがでしょうか冫・  黒川さんは、女性とのコミュニケーションにお いてキーワードになるのは「共感」であると述べ ています。  その点を理解できると、例えば女性がグラスを 割ってしまった時に、どのように声をかけるべき か、自ずと答えは出てくるのではないでしょう か?  グラスを割ってしまった女性は「悪いことをし た」と自分で分かっています。  ですから、追い討ちをかけて「気をつけろ」な どと言う必要はありません。  割れたグラスよりも、まずは女性に対して「大 変だったね」と共感してあげる。  そして、「ケガをしなかった?」と気遣ってあ げる。  男女間のコミュニケーションは、そこから円滑 に進み始めるのです。   安心して赤ちゃんを出産でき   る!  先ほどお話ししたように、ディアーズの直営店 の社員は全員女性です。  これに対し、女性のFCオーナーはまだまだ少 ないのが実情ですが、その数も徐々に増えつつあ ります。  先日、とても嬉しい報告がありました。  ある女性のFCオーナーの話です。  彼女は自分のお店を出したのですが、赤字続き でどうしようもなくなり、僕のところにやって来 ました。  当時、彼女のお店の売上は月に30万円ほどあり ましたが、家賃や光熱費に加えて、借金の返済を しなければならなかったため、完全に赤字でした。  店舗運営だけでは食べていけず、知り合いのエ ステサロンで夜にアルバイトをして食い繋いでい る状態でした。  彼女はディアーズのFCオーナーになり、3〜 4ヵ月でアルバイトを辞めることができました。  給料も増え、現在2店舗目を作っているのです が、その彼女が今年、赤ちゃんを出産したのです。  出産をするためには、店舗を一時的にでも完全 に離れないといけませんが、今はそれができる状 態になったということです。  出産を終えて落ち着いたら、また店舗に戻る予 定だと話していました。  僕が何より嬉しいのは、オーナーがそうした形 で見本を見せてあげることができれば、社員たち も安心して出産ができるようになることです。  周囲から「だから女は……」というような視線 を投げかけられる職場とは雲泥の差と言えるので はないでしょうか?  ディアーズの存在によって、こうして救われる 人が出てくることが、僕にとっては何よりも嬉し   これからの時代に「男性が持   つべきもの」「女性が持つべ   きもの」  ただし一方で、女性が稼ぐということに関して は、良いことばかりだとは言えない側面もありま す。  例えば、ディアーズの女性のFCオーナーで、 自分で稼ぐことができるようになってから、旦那 様と離婚をした方が2名います。  男性は経済力がついて、天狗になると、「お前 は1日中、家にいるくせに、家のことをロクにや らない」などと言い出しがちです。  たいていの場合、女性はそれを我慢しています が、いざ稼げるようになると、「私は自分I人で 生きていきます」という感じになってしまいます。  最近は熟年離婚が多いように思いますが、女性 が我慢に我慢を重ねている証拠と言えるのではな いでしょうか? 「幸せって、いったい何だろう?」  こうしたヶIスを見るたびに、僕はそのように 思い、複雑な気持ちになります。  本来、お金を稼ぐこと自体は良いことであるは ずですが、お金を稼ぐことによって、逆に家庭が 崩壊してしまうヶ−スもあるのです。  これからの時代、女性は旦那様に頼らなくても、 自己主張ができる強さを持つべきだと思います。  言うまでもありませんが、そのためには経済力 をつけなければなりません。  経済力をつければ、我慢をする必要がなくなり ます。  旦那様の給料をあてにしなくてもよくなるので、 言いたいことを言うことができるようになります。  一方、そうした時代に男性に求められるのは、 何よりもまず包容力ではないでしょうか?  女性の話に耳を傾け、共感してあげる。  そうした姿勢が、職場のみならず、家庭におい ても必要とされる時代に突入しているのではない か? そのように感じています。   あとがき  最後に少しだけ、僕個人の話をさせてください。  僕の尊敬する人物に中村文昭さんがいらっしゃ います。  中村さんの著書『お金でなく、人のご縁ででっ かく生きろ!・』(サンマーク出版刊)はベストセ ラーになりましたので、ご存じの方もいらっしや るのではないでしょうか?  この著書にも書かれているとおり、中村さんは 人とのご縁を人一倍大切にする方です。  新幹線で隣に座った人には必ず声をかけ、駅に 降りるのと同時に手紙を書き、その場で投函する。  そうして知り合った人たちを中村さんは「新幹 線友だち」と呼んでいるそうですが、それほどま でに人とのご縁を大切にする生き方に、僕は心を 揺さぶられました。  僕が中村さんを知ったきっかけば、店長ミー ティングの題材として、中村さんの講演DVDが 使われたことでした。  当時、「こんな方がいらっしゃるのか」と衝撃 を受けた僕は、ダイダイ惹き込まれて、中村さん にすっかリハマつてしまいました。  中村さんの著書や講演のDVDは全て持ってい ます。  思えば、僕自身七人とのご縁でここまで生かさ れてきました。  まず感謝をしたいのは、最初に就職したお店の 社長と店長です。  序章にも書きましたが、社長にはカバン持ちの 経験を通じて、いろいろなことを教えていただき ました。  また当時の店長にも、本当にお世話になりまし た。「お前がやるならトコトン付き合うよ」と 言って、夜中まで練習に付き合ってくれたり、失 敗の尻拭いをしてくれたりしました。  従業員の失敗に対しては、どんな場合でも、従 業員とともにお客様のもとに足を運び、頭を下げ るような方でした。  端から見ていて「この人はすごいな」と尊敬し ていましたし、「自分がはたして同じことができ るだろうか」と考えた時に、「この人にはかなわ ないな」と素直に感じました。  語弊があるかもしれませんが、唯一と言ってい いぐらい「勝負を撓みたくない人」「勝てる気が しないなと感じる人」です。  僕の右腕とも言える2人のビジネスパートナー も同様です。  薬剤開発担当のパートナーは、参加したIT勉 強会で偶然、席が隣同士でした。  聞けば同い年で、さらに職業も同じ美容師とい うことで意気投合。パートナーシップを組み、現 在に至っています。  またマーケティング担当のパートナーは、当時、 僕が主宰していた勉強会の生徒でした。  当時からレスポンスが非常に早く、しかも熱い 方だったので、一緒に仕事をすることになりまし た。  元々は僕の生徒でしたが、今では同志です。  このように、現在のビジネスパートナーとの関 係も、偶然の出会いから生まれたものでした。  中村さんが説いていらっしやる「人とのご縁を 大切にする生き方」が、僕の根底に確実に生きて いることを実感しています。  ある時、直営店の社員が「退職を考えていま す」と突然言い出しました。  理由を聞いてみると、「本気でお付き合いをし ている人がいるので同棲したい」とのことでした。 彼女は言いました。  「年齢的にも結婚を考えています。同棲を始めた いけれども、同棲先にはディアーズがないので、 辞めるしかありません……」  当時、彼女が勤めていたお店は、同棲先から車 で1時間ぐらいのエリアにあり、毎日通うのは難 しいとのことでした。そこで、僕は提案しました。  「もし同棲先のエリアに店舗を作ったら、そこで 働きたい?」  彼女は「もちろんです」と答えたので、僕はす ぐに動いて、そのエリアに店舗を作りました。彼 女は今でも、その店舗で元気に働いてくれていま す。  この話をすると、「たったI人の従業員のため に、そこまでするんですか?」とよく言われます。  僕に言わせれば、「たった1人の従業員」だか らこそです。  人生には、様々な優先順位があります。彼氏や 彼女、旦那様や奥様の優先順位がディアーズより 上なのは、当たり前の話です。  でも、もしも、その人の次の優先順位にディ アーズが来るならば、僕はそれをずっと守ってい きたいと思っています。  一番でなくてもいい。ディアーズに関わってく れた大、ご縁があった大をきちんと守っていきた いというのが、僕のスタンスです。  すでにお話ししましたが、最初に就職したお店 では、僕が至らなかったせいで、僕が店長になっ たとたんに、3人の従業員が辞めていきました。  当時の僕は、やる気ばかりが空回りして、自分 の仕事のやり方を押しつけ、従業員が何を求めて いるのかに気づくことができませんでした。  自分のせいで人が辞めていくというのは、やは り辛いものです。  「僕が店長じやなかったら、あの人たちは今でも 美容師の仕事を続けていたかもしれないな……」  そうした後悔の念にかられることが、今でもた びたびあります。  従業員が去っていくことに無力だった日々のこ とを思えば、今、僕自身の力で従業員を守ってい けることが、僕にとっては何よりも嬉しいのです。  この本で話をしてきたように、僕は会社をス ケール(事業規模を拡大)させるために、徹底的 にドライなシステムを設計し、構築してきました。  でもドライな部分だけでなく、「たったI人の 従業員のために」といった、一見非効率にも思え る「ウェットな部分」をあえて残しているのは、 「店長として従業員を辞めさせてしまった」とい う僕自身の原体験に根っこがあります。  いじめを受けた経験があるせいか、人一倍繊細 な僕にとっては、「自分のせいで人の職業をチェ ンジさせてしまった」という事実が重くのしかか りました。  現在のビジネスモデルは、その時の反省をもと に設計されています。 「これは繊細な大だからこそ構築できたビジネス モデルだよね」 「行き着いた事業モデルだね」  たまに、そう言っていただくことがあります。  見る人が見れば、ただドライなだけのシステム ではないということが、すぐに理解していただけ るようです。  そんな僕の今の目標は、全国の津々浦々にディ アーズを展開させることです。  例えば、旦那様の転勤で引っ越しをしなければ ならなくなったとしても、転勤先にディアーズが あれば、ずっと仕事を続けることができるからで す。  コンビニエンスストアのようなインフラとして ディアーズを整備することが、僕の現在の目標で す。  あとがきの冒頭で中村文昭さんについて書きま したが、実は、僕は中村さんの講演会にはI度も 参加したことがありません。  中村さんの著書や講演のDVDは全て持ってい ますが、直接お会いしたことは、まだ一度もあり ません。  なぜかと言うと、「今はまだその時ではない」 と思っているからです。  初めて中村さんにお会いする時には、「中村さ んのおかげで、こういう事業展開になりました」 という報告をしたいと考えています。  そのためには、現状に満足することなく、今以 上の結果を出さなければなりません。だから、今 はまだそのタイミングではないと思っています。  いつか中村さんの講演会で前座をやらせていた だくことが僕の夢で、その夢に向かって、これか らも日々邁進していくつもりです。  この本も出版プロデューサーである長倉顕太さ んとの出会い、ご縁から生まれました。長倉さん には様々なアドバイスをいただき、この本が出来 上がる最後の瞬間まで伴走をしていただきました。 ありがとうございます。  また、この本の流通と販売を担っていただくサ ンクチュアリ出版営業部の皆様、全国の書店員の 皆様にも、この場を借りて御礼申し上げます。  全国展開のためにご尽力いただいた方にも、御 礼を申し上げたいと思います。  本部として常に走り抜き、僕の活動を全面的に サポートしてくれている猪熊政人さん。浅井慎一 郎さん。  運営サポートをしてくれている関直也さん。高 山辰也さん。山本智大さん。  発信のサポートをしてくれている古瀬(ナさん。 井藤宏香さん。  いつも全力で支えていただき、本当にありがと うございます。  店舗立ち上げの面でサポートしてくださるタカ ラヘルモント様。山田慶さん。ロベイション山田 慎吾さん。全国を走ってくださり、ありがとうご ざいました。  それから、全国セミナーをともに動いてくだ さった鈴木和敏さん。  鈴木さんはディアーズの立ち上げ当初から近く で見守ってくださり、ずっと助けてもらっていま す。ありがとうございます。  そして、僕が美容業界に戻るきっかけをいただ きました木村直人さん。  木村さんからは発信のスタンスや思考をたくさ ん学ばせていただき、僕の人生に影響を与えてく ださいました。ありがとうございます。  最後になりますが、改めまして、この本を作る ためにサポートしてくださった長倉顕太さん。大 平淳さん。出版のプロのおふたりに助けていただ き、とても心強かったです。おかげさまで、人生 2冊目の本を出すことができました。本当にあり がとうございました。