努力しても収入が増えない理由 この本を開いたあなたは、たぶん一度 は、こんな疑問を抱いたことがあると 思います。 これだけ働いているのに、なぜ報酬が ついてこないのだろう。 昇給はまた見送りになった。 副業は思ったより買い叩かれる。 案件はこなしているのに、手元には残 らない。 仕事は増えているのに、生活は楽にな らない。 まわりの悪気のない言葉が、さらに追 い打ちをかけます。 スキルの問題じやないか、もっと動け ばいいんじやないか、 わるはずだ、と。 だから、あなたはもっと頑張ってしま 勉強して、試して、直していく。 それでもやっぱり、どこかおかしい。 やっているのに、なぜか報酬だけが動 かない。 この違和感を私は現場で何度も見てき ました。 私は、テレビの放送作家として 以上、報道、情報、バラエティー、通 販など、さまざまな番組の制作現場で 仕事をしてきました。 フリーランスの放送作家として、同じ ように企画書を書き、同じように気を 配って働いているのに、報酬額だけが 大きく変わる場面を何度も見てきまし 最初は、単純に腕の差なのだと思って いました。 でも、長く見ていると、それだけでは 説明できないことがあると気づいたの です。 発注する側のお金の事情が変わると、 同じ質の仕事でも金額だけが下がるこ とがある。 こちらの能力が急に落ちたわけではな いのに、値段のつき方だけが変わって しまう。 そういうことが、実際に起こります。 だから、ずっと引っかかっていました 努力しても収入が増えないのは、本当 に能力の問題だけなのだろうか、と。 でも、収入は、能力や努力の量だけで 決まるわけではありません。 どんな財布につなかっているのか。 値段を決める人に、どれだけ近いの 代わりがきく側にいるのか、そうで はないのか。 その組み合わせで、取り分は動きます この本では、その構造を とめました。 啄哥而心 ̄ふjに ̄ 代わりか少ないほど収入は増える 同じ人でも、置かれる場所が変われば 扱われ方は変わります。同じ努力でも 届く場所もあれば、消耗で終わる場所 もあります。 収入は努力そのものではなく、どこに つなかっているかで動きます。 本書では、この「つながる場所」のこ とを接続と呼びます。 自分の仕事が、どの財布につながり、 値段を決める人にどれだけ近いのか。 そこを見ないまま努力すると、真面目 な人ほど消耗します。 がんばれる人は、ずれた場所でもがん ばれてしまうからです。 もし、あなたがまじめに積み上げてき たのに報われないと感じているなら、 努力不足ではなく、つながる場所の問 題かもしれません。 によってさらに加 速しています。 作るのは速くなり、比べられるのも速 くなり、代わりも見つかりやすくなる その結果、値段の基準は、こちらが気 づく前に更新されていきます。 ここで努力の量だけを増やすと、真面 目な人ほど消耗しやすくなります。 小さな財布 違い決定権 消耗・報われない 自分の努力・仕事 ま孚言=喜 巨大な財布ゆ巨大な収入 で結果は変わる。 不乙言言言二乱 収入を増やすには、このどれか あるいは複数を動かすしかありません この本は、根性で乗り切ろうという本 ではありません。 を持ち上げるための本でもないし、 転職や独立を急がせるための本でもあ りません。 収入が決まる構造を理解し、収入が増 える方向へ動くための本です。 章では、財布の大きさと収入の関 係を確認します。 章では、値段が決まる 仕組みと、あなたの中にある武器を整 理します。 章では、それを収入につ ながる動きへ変えていきます。 読むだけで終わらせないために、巻末 には「収入の流れを変える 践ワーク」を用意しました。 自分はいまどこで詰まっているのかを 見つけ、次の一歩を決めるためのワー クです。 財布そのものを変えられなくても、財 布に近づくことはできます。いきなり 特別な人にならなくても、代わりがき かない立場へ移ることはできます。努 力を増やす前に、向きを変えることは できます。 現実はやさしくありません。 報酬が落ちるとき、それはたいてい、 事前の相談もなく起きます。 財布が縮んでいくとき、現場で何か起 きるのか。 本書は、そこから始めます。 はじめに 値段は、努力では決まらない ある一本の電話 それは個人評価ではなかった 財布が大きかった時代 縮小は、表に山ないまま進む 「作家はいらない」と言われたとき いま起きていること 数字があとから証明する 財布に直結していた仕事 値段はどう決まるのか 最初に式を置く 財布との距離で条件は変わる 決定権は位置で決まる 代わりの少なさの中身 若さが効く市場経験が効く市場 財布が小さいと伸びにくい つは掛け算で まず、あなたの位置を測る は単価を圧縮する 値段が先に決まる 値段が先に決まる市場 値下がりが速くなる 手取りは少しずつ減っていく 下がった基準は戻りにくい はあなたの過去を拡張す 台本1000本を再分析 量ではなく構造 値段が決まる場所に近づく 過去は、値段になる 気になるものを資産に変える 気になるものを書き山す 残っている断片を拾う 並べて違いを見つける 違いを一言で残す こ並べてもらう 武器になるものを残す 使い道を一度考える 接続を設計する どこで効くかを見る 相手に伝わる言葉にする 判断履歴として残す 判断材料を足す との分担を決める 小さく試して、流れを変える 接続の見直し 中びにくい場所で起きること 大きく賭けなくていい 覚悟の宣言 わりに 点診断で、詰まり場所を見つ 弱点攻略で、どこを動かすか決 日チェックリストで動きを形 にする あの日のことは。いまもはっきり覚え ています。 電話が嗚ったのは、午後の少し変な時 間でした。 収録が迫った急ぎの台本を書き終えて 気がゆるんだところだったと思います 相手の声は、いつも通り丁寧でした。 でも、用件は短かった。 価を卜げたい その一言で、空気がシーンと変わりま した。 当たり前だと思っていた前提が、崩れ たのです。 仕事をしていると、ときどきそういう 瞬間があります。 同じように働いていても、値段だけが 動くことがある。 このことがよく分かるエピソードとし て、私か実際に体験した、テレビ業界 がしぼみ始めたころに起きた出来事を 取り上げます。 ある一本の電話 万円たった台本の単価を、放送する 長さによって 話は、そういう内容でした。 言い方が丁寧でも、意味はすぐにわか ります。 この条件で続けるのか、それとも降り るのか。 そういう電話でした。 ここで先に言っておきたいのは、これ がローカル局でも いうことです。全国放送を担っている キー局の現場でも、こういうことは起 きます。 大きな財布に見える場所でも、削られ るときは削られるのです。 当時、私はその番組の台本を月に 本ほど書いていました。一本あたリ2 万円下がれば、月に 万円のマイナス。生活 の組み立てが変わる金額です。 電話を切る前から、頭の中ではもう計 算が始まっていました。 新しいパソコンは先送りだな。 マンションのローンはどうしよう。 そんなことが、一瞬で頭によぎりまし 仕事の話をしているはずなのに、生活 の見え方が先に変わる。単価が下がる というのは、そういうことです。 ここまで積み上げてきた単価には、そ れなりの理由があります。同じ質で、 同じ本数を書いて、どうしてここまで 下がるのか。そう思いましたが、言え ませんでした。 わかりました。今後ともよろしくお 願いします」 こう返すしかありません。 電話を切ったあと、しばらく何もする 気になれませんでした。痛かっだのは 金額だけではありません。 自分が積み上げてきた値段を、別の場 所で決められる。 その現実を突きっけられた痛みでした それは個人評価ではなかった あの電話は、私だけに起きた話ではあ りません。 同じ時期、似たようなことは業界のあ ちこちで起きていたのです。細かな事 情は違っても、大きな流れは同じでし 大もとの財布が苦しくなると、現場の 取り分は薄くなる。 先に変わっていたのは、財布のほうで した。 でもその場にいると、それは自分の評 価が変わったように見えてきます。 自分の値段が下がる。 依頼が減る。 そして、条件がどんどん悪くなる。 そうなると人は、自分の価値が下がっ だのではないか、腕が落ちたのではな いか、もっと頑張れば戻せるのではな いか、と受け取りやすいのです。 真面目な人ほど、先に自分を疑います 何か足りなかったのか。 どこを直せばよかったのか。 そちらをまず先に考えてしまう。 もちろん、仕事の出来が影響する場面 はあります。 でも、業界全体で同時に起きている単 価の下落まで、個人の能力だけで説明 するのは無理があります。 本当は財布の話なのに、本人のがんば りの話にしてしまう。すると、増やす べきでない努力まで増やして、余計に 消耗します。 たとえば、番組予算が 万円に下げられたとします 半分です。 でも、番組制作には半分に力 ないものがあります。スタジオ。機材 放送に必要な最低限の工程。 こういうものは、急には小さくできま せん。 そうなると、削リやすいところから削 られていきます。 人手が減る。 外注が減る。 条件が厳しくなる。 どんな仕事でも、そのしわ寄せが人件 費に出やすいです。 起きていたのは、私個人の評価が下 がったというより、「仕事の値段が決 まる前提が変わった」、ということで した。つまり、努力や能力の変化では なく、その前に財布のほうが縮んでい たんです。 財布が大きかった時代 少し前のテレビの現場は、いまより ずっと財布が大きい場所でした。 広告費がしっかり入り、番組に使える 予算も厚かった。 制作費に余裕があると、人が増える。 工程が増える。確認の回数も増える。 現場は、いまよりずっとにぎやかで、 手数の多い作り方ができました。 放送作家もそうでした。 リサーチをする人がいる。 コーナーごとの構成を組む人がいる。 台本をまとめるチーフ作家がいる。 細かく役割が分かれていて、それぞれ に仕事がありました。 財布に余裕があると、仕事は細かく分 けられます。 ひとりで全部やらなくてもいいし、役 割ごとに人を置ける。つまり、ひとり あたりの取り分は、能力だけで決まっ ていたわけではないのです。 そもそも、分けられるだけの量があっ そこに乗っていた、という面も大き かったのです。 だから、あとになって話がややこしく なります。 同じ仕事をしているつもりでも、前提 の財布が変わると、同じようには回ら なくなるからです。 昔はよかった。 いまは厳しい。 ついそう言いたくなります。 でも本当は、どれだけの財布の中で仕 事をしているか、が変わったというこ とです。そこが変わると、同じ働き方 でも、結果は変わってきます。 縮小は、表に出ないまま進む 財布が小さくなるとき、それは「今日 から半分です」と宣言される形では やってきません。現実にはむしろ逆で 何も変わっていないように見えるとこ ろから始まります。 打ち合わせが、なんとなく一回減る。 資料が少し簡単になる。 確認のタイミングが、後ろにずれる。 ただ、その方向はそろっています。 少し軽くする。少し減らす。少し早く 回す。 その積み重ねで、全体のコストが下 かっていきます。 先に削られるのは、「なくても止まら ない部分」です。 リサーチが簡略になることもあれば、 構成を練りなおす会議が減ることもあ る。緇かいすリ合わせが、あと回しに なることもある。その中に、作家の仕 事も入ってきます。 本当はあったほうがいい。 でも、なくても一応は回る。 そういう工程から順番に薄くなってい きます。 仕事がなくなったわけではありません 番組が終わったわけでもない。 でも、関わり方だけが変わっていく。 気がつくと、呼ばれる回数が減り、関 わる範囲が狭くなり、単価も、前と同 じではなくなっている。 そうやって、関わり方は少しずつ薄く なっていきます。 大きな宣言があるわけではありません でも、あとから振り返ると、前と同じ ではなくなっている。縮小は、だいた いそういう形で進みます。 「作家はいらない」と言われた そして、ついにこういわれます。 「台本はこちらでやるので、作家は使 いません。」 ああ、そういう判断になったんだな、 と思いました。 この一言は、作家が不要になったとい うより、限られた財布の中で優先順位 が下がった、ということです。 放送作家という仕事は、実は海外では あまり聞きません。本来、構成や台本 はディレクターが書くのが基本です。 でも、日本のテレビには、放送作家が 企画を出し、構成を組み、番組の面白 さを支える文化があったんです。 この仕組みは長いあいだうまく回って いました。企画が通れば番組が動き、 数字が取れれば次につながる。面白い 人間や、発想力に値段がついた。 でも、時代は変わりました。 予算が縮み、失敗の許容幅が狭くなる と、優先順位も、尖りより安全。企画 より管理。まずは事故なく回すことが 優先事項になります。 限られた財布の中で、何を残して何を 削るか。 削られる順番がこちらに回ってきたと いうことです。 いま起きていること ただ、これを「仕事がなくなる話」と だけ受け取ると、少し違います。 起きているのは、仕事そのものが消え ているのではなく、仕事の形が変わっ ているということです。 起きている違和感を、自分の問題だけ で片づけてしまうと、見える選択肢が 減ってしまいます。ここまで見てきた 通り、先に変わっていたのは、やリ方 ではありません。財布であり、役割の 置き方であり、仕事の前提そのもので いま起きているのは、「自分の価値が 下がった」という話なのか。それとも 「どこで、どう値段が決まるか」が変 わった話なのか。 前者で考えると、答えはひとつです。 「もっと頑張る」しかありません。 でも後者で考えると、見える選択肢が 増えます。 どの財布につながるか。 どの位置で関わるか。 どこで代わりがききにくい側に回るか この見方に切り替えられるかどうかで この先の動き方が変わります。 数字があとから証明する ここまで書いてきたことは、テレビの 制作現場での話です。 電話一本で単価が変わる。 役割の置き方が変わる。 気づかないうちに、関わり方が変わっ ていく。 リアルな話として、わかっていただけ たと思います。 ただ、こんな風に思う方もいると思い ます。 たまたまではないか。 テレビ業界だけの話ではないか。 その疑問はもっともです。 だからここで、一度だけ数字を見てお きます。 まず、広告費の流れです。 日本の広告費の重心 豐昌二≦搾ご忿冖191円に可達 !6り1円 3j!吋陬一回           Zツタわ卜 出お:l湎「卵μ鉢H本の広告aJ かつてテレビに集まっていたお金はイ ンターネット広告に流れ、全体の重心 が動いていました。今やインターネッ トの半分にも及びません。 ここで見てほしいのは、どちらが良い 悪いかではありません。お金がどこに 集まるかが変われば、現場の値段のつ き方も変わる。まず、その前提が動い たということです。 次に、予算の分配のされ方です。 分配の再設計 テレビ時代(例) 匪四身に いい二亠〔コ 浚畆鯒コ44仁心〕 同じコンテンツでも、どこを通るかで 金の流れは変わります。 テレビ局を中心に回るのか。 プラットフォームを通るのか。 直で届けるのか。 経路が変われば、誰の手元にどれだけ 残るかも変わります。テレビの制作現 場で起きていたのは、気分の問題では なく、流れの組み替えでした。 最後に、実質賃金です。 日本の実質貫金指数の推移 叩とした賃金水準の低下 物価変動を考慮した つのデータが語っているのは、難し い数字ではありません。 金の集まる場所が変わった 金の流れる経路が変わった 手元に残る量が変わった テレビ業界では、この きていたということです。 ただ、ここで大事なのは、テレビの話 にとどめないことです。 同じことは、どの業界でも起こりえま いま起きているのは、「自分だけの問 題」ではありません。 金の流れそのものが動いた結果とし て、仕事の値段のつき方が変わってい まずは、そこから見たほうがいいとい うことです。 財布に直結していた仕事 多くの放送作家が仕事を失っていく中 で、私は通販番組の仕事で生き残って きました。 特別な才能があったからではなく、売 上に直接影響する「商材が売れる台 本」を書いていたからです。 テレビの現場では、あいさつ代わりに こう聞かれます。 「数字、どうだった?」 数字とは、前の日の視聴率のことです 通販の現場では、さらに露骨になりま 「売上、どうだった?」 同じように台本を書いていても、評価 されるものが「視聴率」なのか、それ とも「いくら売ったか」なのか、この 違いは大きい。 私か書いた台本で商品が売れれば、次 の放送が決まります。放送が決まれば 予算が動きます。 財布が動く場所に近い仕事は、残りや すい。 それが、私の職場で起きていたことで ある四半期、最高売上を記録したこと があります。 そのとき、お昼に二段重のすき焼き弁 当が出ました。 普段はお弁当なんていただいたことは ありません。 祝いというより、売れたからお金が 回った。 自分の仕事が、売上と直結していた。 弁当は、そのことが目に見える形で 出ただけでした。 通販が偉いという話ではありません。 同じ「書く」でも、どの財布に直結し ているかで、残りやすさは変わるとい うことです。 つまり、つなかっている場所の違いで 仕事で認められるために、努力がいら ないとは思いません。この仕事を長く やってきて、努力がまったく関係ない なんて、私にはとても言えません。 ちゃんとやること。 手を抜かないこと。 相手の意図を読むこと。 言われる前に動くこと。 そういう積み重ねが、職場ではたしか にものを言います。 でも、それだけでは収入は決まりませ 同じように働いていても、 どの財布につなかっているかで、報わ れ方は変わる。 値段を決めている人との距離で、動か せる範囲は変わる。 ほかに代わりがいれば、条件は厳しく なります。 もっと頑張ればよかったのか。 もっと能力があれば違ったのか。 そうではなく、先に見るべきなのは、 自分の仕事がどこにつなかっているの かです。 どの財布につなかっているのか。 誰が値段を決めているのか。 自分の仕事は、どれくらい代わりがき くのか。 ここを見ないまま努力だけを増やすと 真面目な人ほど消耗します。 値段は、努力だけでは決まらない。 最初に式を置く 章では、一本の電話で単価が下が る場面を見ました。 努力の仕方を変えたわけでも、急に力 が落ちたわけでもないのに、値段だけ が勁いてしまう。 あの違和感を、ここで整理します。 整理しておきたいのは、努力の仕方で はなく、値段の決まり方です。 全力で働いているのに、収入が増えな この状態は、めずらしいことではあり ません。 いまは多くの人に起きています。 ここで、本書の前提になる式を改めて 置きます。 財布の大きさ 「財布の大きさ」は、その仕事がどれ だけ大きなお金の流れにつなかってい るか。 「決定権」は、その仕事の値段や条件 に、どれだけ影響を与えられるか。 「代わりの少なさ」は、他の人で簡単 に置き換えられず、「あなたに頼みた い」と思われるかどうか。 つの要素は、かけ算で効いてき ます。 つが小さいままだと、努力を 増やしても収入は伸びにくいのです。 章で見てきた出来事も、ばらばら に起きていたわけではありません。同 じ構造の中で起きていました。 代わりが少ないほど収入は増える ここからは、この て見ていきます。 どこで値段が決まり、どこで取り分か 削られ、どこを動かすと流れが変わり やすいのか。 まずは、財布との距離から確かめます 財布との距離で条件は変わる 放送作家として駆け出しの頃、私はお もに制作会社経由で仕事を受けていま した。 番組の予算はテレビ局から出ます。 制作会社がそれを受け取り、そこから スタッフに支払う。 放送作家の私は、その流れの下流にい ました。 台本を書く。 収録が終わる。 放送される。 そのあとで、局から制作会社にお金が 入り、さらにそこからこちらに回って くる。 入金まで数か月かかることも珍しくあ りませんでした。 ここで見ているのは、単価の数字だけ ではありません。 いつ払われるのか。 どこまで交渉できるのか。 条件が、誰からどの順番で降りてくる のか。 そういうことまで含めて、仕事の条件 です。 あるとき、制作会社が倒産して、半年 分のギャラが消えました。能力とも評 価とも関係ありません。これを「努力 が足りなかった」という人もいないで 自分ではどうにもできない不 可抗力です。 ただ、財布から遠かったのです。 財布から遠い場所にいると、不利は目 に見えない形で増えていきます。 入金は遅れやすい。 条件が変わっても、なぜ変わったのか 理由が見えにくい。 交渉したくても、話を持っていく相手 までなかなか届かない。 その状態が続くと、自分の仕事の条件 に、自分で触れにくくなっていきます 私も、そういう場所から仕事を覚えま した。 ただ、財布から遠い場所にいるだけで 同じ仕事でも条件は厳しくなりやすい その不利は、先に知っておいたほうが いいと思います。 逆に、財布に近づくと、同じ職種でも 見えるものが変わってきます。 何に予算がついているのか。 どこは削られやすくて、どこは守りた いのか。 最後に誰が判断しているのか。 そういうことが、前より早く大ってく るようになります。 情報が早いと、無駄な修正が減ります 話の行き違いも減る。 そのぶん消耗も減って、こちらの条件 も守りやすくなります。 値段は、紙に書かれた数字だけで決ま るわけではありません。財布との距離 でも変わります。 決定権は位置で決まる 決定権というと、値段を決める人のこ とだと思うかもしれません。 でも本書で伝えたいのは、値段を決め る人の肩書きのことではありません。 自分が、その判断にどれだけ近い位置 にいるかです。 財布から遠い場所にいると、そもそも 何をもとにその金額になっだのかが見 えにくい。 どこは守りたくて、どこは削っていい と思われているのか。何か優先されて いて、何か後回しにされているのか。 そういう前提が見えないまま、決まっ た条件だけ渡されます。 この状態だと、単価の数字だけ見てい ても、交渉の手段が見えない。 逆に、財布に近い側にいると、見える ものが変わってきます。 なぜこの予算なのか。 何か優先されているのか。 どこは動かせて、どこは動かしにくい のか。 ここで見たほうがいいのは、自分がど れだけ主張できるかではなく、誰の判 断から何層離れているかです。 最終顧客に近いのか。 一次受けの下にいるのか。 そのまた下なのか。 自分と最終的に決める人のあいだに、 何層あるのか。 層がひとつ増えるだけでも、起きやす くなることがあります。 情報が届くのが遅くなる。 話の意味が少しずっずれる。 取り分も薄くなりやすい。 逆に、位置の問題だとわかると、見直 す場所も変わります。 どこで仕事を受けるか。 誰に近づくか。 どの距離を一段だけ縮めるか。 決定権とは、強く言って勝ち取る力で はありません。 財布と、判断と、情報にどれだけ近い か。その位置のことです。 代わりの少なさの中身 つ目の要素、代わりの少 なさです。 これは代わりの効かない、頼られる存 在になるということですが、方法はひ とつではなく、少なくとも 上げ方があります。 ひとつは、技術でつくられるものです 知識がある。処理が速い。安定してで きる。 こういう力は、そのまま仕事になりま すし、積み上げたぶんだけ返ってきや すい。 ただ、技術には別の面もあります。 見える形にしやすいぶん、比べられや すい。 比べられると、同じことができるライ バルが増えて競い合うことになります もうひとつは、関係の中で積み上がる ものです。 一緒に仕事をしてきた時間。 前提が共有されていること。 言葉にしなくても通じる部分。 「あの人ならわかっている」という了 失敗したときにどう立て直すかまで含 めた、仕事の実績です。 同じように見える二人でも、片方には 任せるのに、もう片方には任せにくい 職場では、そういうことが起きます。 私の場合でいえば、修羅場も失敗も改 編も、番組の判断に関わる人だちと一 緒にくぐってきた時開かあります。 その積み重ねが、結果として、簡単に は代えにくい関係をつくってきました 多くの仕事では、技術と関係の積み重 つが重なったときに、簡単 には代えにくくなります。 技術がなければ人口に立ちにくい。 関係がなければ、中心には近づきにく そして、どちらが有効かは、場所に よって変わります。 成長している場所では、技術が前に出 やすいです。 逆に、縮んでいる場所では、関係の中 で積み上がったものが効きやすい傾向 があります。 代わりの少なさは、その場所で、どれ だけ代替えの効きにくい存在になるか ここが大事なポイントです。 若さが効く市場 同じ代わりの少なさでも、どの財布の 中にいるかで、値段への効き方は変わ ります。 若いから有利だ。中堅は不利だ。逆に 綛験がある人が強い。そういう言い方 は、わかりやすいけれど、乱暴過ぎま 見るべきなのは、その人がどんな財布 の中で仕事をしているかです。 成長している財布なのか。 縮んでいる財布なのか。 成長している財布では、若さに含まれ る力がそのまま強みになるのが特徴で たとえば、体力がある、動きが速い、 試せる回数が多い、新しい道具にも入 りやすい、といった優位性です。 理由は、仕事の数そのものが増えてい くからです。 新しい案件が出てきて、やリ方もまだ 固まりきっていない状況では、完成度 よりも、まず動ける人に声がかかりや すくなります。 一方で、縮んでいる財布では、時間の 中で積み上がったものが効いてきます 誰が何を嫌うのか。 どこで事故が起きやすいのか。 何を言うと通り、何を言うと止まるの そういう文脈を知っていることが、失 敗のコストを下げるからです。 仕事の数が減っていく財布では、新し く広げるよりも、外してはいけないと ころを外さないことのほうが、値段を 守る場面が増えます。 誰にどう話せば通るのか。 どこで止まりやすいのか。 何を先に出せば安心してもらえるのか そういうことを知っているかどうかで 結果が変わってきます。 テレビの仕事には、この両方がありま 全体として見ると、財布は縮んでいま だから、信頼や積み重ねが効く場面が 多くあります。 その一方で、同じ放送業界でも、配信 活用のように、いま 広がっている領域を担当している部署 では、速度や新しい知識が評価されや すい。 財布が違えば、効くものが違う。 大事なのは、自分の強みをぼんやり信 じることではありません。いまの財布 の状態に合わせて、どの強みを前に出 すかを見極めることです。 財布が小さいと伸びにくい つの要素の中でも、いちばん土台に なるのは、やはり財布の大きさです。 どれだけ代わりがききにくくても、ど れだけ決定権に近くても、財布そのも のが小さければ、収入の伸びには限界 があります。 たとえば、10人で分ける1万円と、 万円では、同じ力で 働いていても、取り分は変わります。 小さい財布の中で 大きい財布の中で 収入で見ると逆転することもあります 自分の努力が足りないのか。 それとも、今いる財布そのものが小さ いのか。 つを分けて見るべきな のです。 財布の大きさを見るというのは、財布 の大きい方にすぐ転職しろという話で はありません。 まず、自分の収入がどこから来ている のかを見ることです。 会社の売上なのか。 広告費なのか。 物販売上なのか。 サブスクなのか。 補助金なのか。 投資資金なのか。 同じ書く仕事でも、テレビ局の広告費 につながる台本もあれば、企業の販促 費につながる文章もある。個人の小さ な予算から出る仕事もあります。 同じ「書く」でも、どの財布につな かっているかで、払える金額の土台は 変わります。 章で見たように、財布が半分にな れば、同じ努力でも値段は下がりやす 財布の大きさそのものは、こちらがい くらがんばっても大きくできるもので はありません。 だから、先に見ておく。 それだけで、話の読み違いはかなり減 ります。 つは掛け算で つの要素を分けて見て きました。 代わりが少ないほど収入は増える 財布の大きさ。 代わりの少なさ。 つは、足し算ではなく掛け算で 効いてきます。 足し算なら、どこか ほかで少しは支えられます。 でも掛け算は、そうはいきません。 つが小さいままだと、全体も なかなか伸びません。 財布が大きくても、決定権から遠けれ ば取り分は薄くなりやすい。決定権に 近くても、代わりがききやすければ値 段は守りにくくなります。 代わりがききにくくても、財布そのも のが小さければ、伸び方には限界があ ります。 ここで多くの人が間違いやすいのは、 得意なところばかり磨いてしまうこと です。人はどうしても、自分が動かし やすいところに力を入れます。 つのうち、いちばん弱いとこ ろがそのままだと、手応えのわりに収 入は動きにくいのです。 だから先に見たほうがいいのは、自分 の掛け算のどこがいちばん弱いかです 財布の大きさなのか。 決定権なのか。 代わりの少なさなのか。 財布が小さいなら、もう少し大きい財 布に寄れないかを見る。決定権から遠 いなら、一段だけでも近づけないかを 見る。代わりがたくさんいるなら、ど うすれば簡単に置き換えられにくくな るかを見る。 この式は、きれいに理解するためのも のではありません。 どこを動かせば、今の流れが少し変わ るのか。 それを見るための目印です。 努力が接続していない 努力しているのに、収入が増えない。 ここまで分けて見てくると、その理由 が少し見えてきます。 足りないのは、努力の量とは限りませ 努力が、収入を決める場所にうまくつ なかっていない。 本書では、そのつながりを「接続」と 呼びます。 財布の大きさにつなかってい るのか。 決定権につなかっているのか。 代わりの少なさにつなかっているのか 努力の向け先も、この せん。 大きい財布に近づくための努力なのか 決定権に一歩寄るための努力なのか。 代わりの少なさをつくるための努力な のか。 たとえば、財布が縮んでいる場所で、 技術だけを磨き続ける。あるいは、決 定権から遠いまま、完璧さだけを追い かける。 やっている本人は、手を抜いていませ むしろ、人よりちゃんとやっているか もしれない。 でも、結果はなかなか動かない。 それは、努力が足りないからではあり ません。 努力が、収入を決める場所につなかっ ていないからです。 努力?? ノ7翁冖昌霍 斗→子リー雛- 代わりの 自分を否定する必要はないし、努力そ のものまで悪者にしなくていいです。 でも、接続していない努力は、消耗に なりやすい。接続した努力は、少しず つでも積み上がっていきます。 まず、あなたの位置を測る ここでやるのは、自己分析ではありま せん。 どこを動かせば収入が変わり始めるの か、その位置を見つけるための確認で 紙とペンがあれば十分です。 つだけ書いてみてくだ さい。 財布の大きさ、 の少なさです。 財布の大きさです。 あなたの収入は、どこから来ているで しょうか。 会社の売上なのか。業界全体のお金の 流れなのか。広告費なのか。物販売上 なのか。サブスクなのか。 大もとの財布がどこにあるかが見える と、だいたいの大きさも見えてきます たとえば、私のような放送作家なら、 大もとの財布はテレビ局の広告収入で 財布の大きさは、テレビ局の広告収入 の市場規模を調べればだいたい見当が つきます。 難しく考えすぎなくてかまいません。 テレビ業界は厳しそうだから そのくらいの感覚でも十分 です。 決定権です。 あなたは、値段を決める場所から何層 離れているでしょうか。 自分で最終価格を決めている 最終顧客と直接契約している 一次受けの下にいる さらにその下にいる 層が増えると、情報が届くのは遅くな りやすい。 条件の理由も見えにくくなります。 取り分か薄くなりやすく、責任だけが 重くなることもあります。 代わりの少なさです。 あなたの代わりは、どれくらいいるで しょうか。 社内には何人いるのか。業界全体では どうか。業界の外まで広げるとどうか ここは、少し冷静に見たほうが役に立 ちます。 代わりの少なさは、 技術の面で代わりがききにくいのか。 それとも、関係の中で積み上がったも のがあるのか。 どちらで残れているのかを、いったん 分けてみてください。 余力があれば、この てみます。 点満点で十分です。 主観でいいので、少し厳しめにつける ほうが、あとで使いやすくなります。 たとえば、 財布の大きさ 代わりの少なさ ここで見るのは、 ものではありません。自分でいちばん 低いと判断した数字が、どこにあるか です。 この例なら、最初に動かす場所は、3 点の決定権になります。財布の大きさ にするより、決定権を にしたほうが、流れが変わりやす いからです。 財布の大きさを上げるとは、もっと大 きなお金が動く場所に近づくことです たとえば、個人の小さな予算から出る 仕事だけでなく、企業の販促費や、よ り大きな売上につながる仕事に寄って いく。 決定権の数字を上げるとは、強く主張 することではありません。決まったあ とに呼ばれる人から、決まる前に呼ば れる人へ近づくことです。 たとえば、言われた通りに作業をする だけでなく、比較案を出したり、判断 する人に直接届く形で提案する。 そうすると、値段や条件を交渉できる 範囲が少しずつ広がります。 代わりの少なさの数字を上げるとは、 ただ上手くなることだけではありませ その業界の文脈がわかる、その現場の 事情がわかる、相手の修正の癖まで読 める。 そういう積み重ねがあると、簡単には 置き換えられにくくなります。 財布・決定権・代わりの少なさは、3 つでセットです。 つだけを上げても、他が低い ままだと、収入は動きにくい。だから いちばん弱いところから動かしていき ます。 次章では、この式の中に 入ってくるかを見ていきます。 の話になると、仕事がなくなる、 いや、もっと便利になる、と極端に振 れがちです。 でも仕事の現場で先に起きるのは、そ のどちらでもありません。確実に値段 のほうが削られていきます。 を使うと、作業はたしかに早くな ります。 これまで于でやっていたことが、短い 時問で済むようになる。助かる場面は 実際かなり増えました。 ただ、本書の式で見るなら、 率化とともに努力の接続のされ方その ものを変えます。つながる先が同じで も、値段のつき方が変わってしまうこ とがあるのです。 怖いのは、仕事がなくなることではな く、同じように働いているのに、前よ り単価がつきにくくなることです。 しかも、この変化は派手には起きませ ある日いきなり半額になるというより 前提が少しずつ置き換わっていくこと です。 このくらいなら、もう少し早くでき ますよね」 を使えば、そこまで手はかかり ませんよね」 そんな一言が、気づかないうちに基準 を書き換えていきます。 仕事はあるのに、手元に残る額が増え ない。むしろ前より苦しくなることも あります。仕事の値段が、どこで、ど う決まりやすくなっているのか。この 章では、その流れを見ていきます。 値段が先に決まる 単価は、交渉で決まるように見えます けれど実際には、多くの場合、交渉す る機会もなく、だいたいの線が引かれ ているのです。 案件と報酬が並ぶクラウドソーシング 市場では、腕や違いを語る前に、比較 が終わってしまいます。 誰がいちばん優れているかより、この 内容ならいくらで受ける人がいるのか が最低基準になっていくからです。 が入ると、この流れはさら に加速します。以前なら手間として受 け取られていたものまで、「そこは。 もっと安くできるはず」と見なされる からです。 ここで増えるのは、発注する側か「こ れで回る」と判断する仕事です。 が作ったもので十分だ」という 判断が増えるほど、値段の基準が下が りやすくなります。その結果、こちら がどれだけ丁寧にやっても、その丁寧 さを語る前に、最低基準の金額が置か れてしまいます。 この変化は、仕事と条件と報酬が見え る場所ほど、はっきり出ます。 次は、その現場で何か起きているかを もう少し具体的に見ていきます。 値段が先に決まる市場 ここで見るのは、グラウトワークスの ようなクラウドソーシング市場です。 副業ブームもあって登録者は増え、仕 事の内容も条件も報酬もサイトに並ん で比較されます。そういう場所では、 一度成立した価格が、そのまま次の基 準になりやすくなります。 どこかの会社が悪いという話ではなく そういう値段がつきやすい仕組みの話 です。 仕事の内容も条件も報酬も見える場所 では、まず比べられます。 たとえば、ライター案件で「 円」で引き受ける人たちが出てき ました。そして「この価格で成立し た」という事実は、次の基準になりま す。その結果、外注費は値崩れしてい くのです。 今、そのクラウドソーシング市場に多 くの人が参入しています。副業で始め を使って実績を作 りたい人もいる。最初の一件が欲しい 人もいるでしょう。その動き自体は自 然です。 ただ、参入したばかりの人は、どうし ても安い価格から始めやすい。そして その価格で一度仕事が回ると、その金 額が次の基準として残ります。 が入ると、その安さに理由 までつきやすくなります。「この内容 なら、その金額でも受ける人はいます よね」そんな見方が、前より通りやす くなるからです。 分の動画編集を で受けたことがあります。募集には、 に読み込めば、画像も 自動で出ます。簡単な作業です」と書 かれていました。 でも、やってみると全然違いました。 出てくる画像は台本と合わないし、切 り替えのタイミングもずれている。字 幕も誤植だらけで、手で打ち直すしか ありません。 秒ごとに画像を切 り替えたとすると、単純計算でも ヅトになります。実際にはもっと必 要でした。そのほとんどを、自分で直 すことになりました。 やっていることは、 つもの編集と変わりません。むしろ、 手間は増えていました。 の動画編集に慣れていな かったせいもありますが、結局、 分の動画を完成させるのに ました。 円。出金基準は 円、足りません。この 未だに換金できていないままです。 私か損をしたという話がしたいのでは なく、この金額で仕事が成立してし まっていることが問題なのです。 グラウトワークス登録者毎年了@万人増 登釶クライアント数(社?07.2万杜   登録ク ̄力'破(人)743.8万人 。。。、1111『。、111111 yL●Fyl卩\』卩11¢・y15卜y19卜y2p卜Tjl卜yaFytIFya 卜TI・卜yls卜y』μyμ・v15卜yjり卜y21Fy2jFy冫1卜y冫IF\言 寸典:クラウドフークス21x拷9元期適期、夬算冨明資料 これは特別な話ではありません。人が 増えて、参入しやすくなり、実績を取 りにいく動きが重なります。すると、 努力が値段に反映される前に、基準の ほうが先に下かっていってしまう。こ の市場の恐ろしさは、そこにあります そして次に起きるのは、その基準の更 新が、さらに加速することです。 値下がりが速くなる が入ると、値段の下がり方も変わ じわじわ下がるというよりも 気づいたときには基準がドンと落ちて いる、そんな変わり方です。 発注する側から見れば、毎回完璧であ る必要はありません。仕事として回る なら、それで足りる場面は多い。 は、その「これで十分」を短い時間で 揃えやすくします。前なら時間がか かっていた作業でも、いまは形になる までが短縮され、候補が早く並んで、 比べる時間も短くなる。 すると、「前と同じ条件では、高すぎ ますね」という空気が入りやすくなり ます。昨日までの基準が、そのまま通 用するとは限らないのです。 しかも、クオリティーの違いが見えに くい仕事の場合、発注する側か「どっ ちでもよい」と判断すれば、最後は安 い方が選ばれます。その結果、契約が 決まるまでの時間が短くなり、基準が 書き換わる間隔も短くなります。 昨日の相場が、今日もそのまま通用す るとは限らない。いま起きているのは そういう変化です。 約3倍に 代では約4ム。7%が利用 瀕‘ユ≦黔 璢しています。 次に起きるのは、値段だけでなく、納 期や作業の範囲まで、この速さが入り 込んでくることです。 手取りは少しずつ減っていく 単価は、表示されている金額だけでは 決まりません。 たとえば、私か受けた 分の動画をつなぐのに かかりました。仮に とすれば、24時間です。 999円を24 時間で割ると、時給は約 なりません。 表示されている金額だけを見れば、 円の仕事です。でも、時間と手間 まで含めて見ると、実際の取り分は まったく違ってきます。 値段は、ある日いきなり大きく崩れる わけではありません。むしろ、気づき にくい形で削られていきます。 納期が少し短くなる。 修正が増える。 あとから頼まれることも増える。 それでも、金額は変わらない。 これだと、見た目の単価はそのままな のに、実際にかかる時間だけが伸びて しまいます。 が入ると、この流れはさら に進みます。「この範囲なら、いまの 金額の中でやれますよね」そんな前提 が、当たり前のように置かれるからで その一言が入るだけで、条件は変わり ます。同じ金額のまま納期が縮むか、 あるいは、同じ時間のまま求められる ことが増えていく。そうやって、仕事 の範囲が少しずつ広がっていきます。 さらに、この変化は一度では終わりま せん。小さな削リが積み重なっていく と、その結果として、気づかぬうちに 手取りは少しずつ減っていくのです。 下がった基準は戻りにくい いちばん厄介なのは、一度下がった基 準が、そのまま定着してしまうことで 人はつい、今だけだろうと思いたがり ます。 今回は条件が悪かっただけかもしれな い。この波が過ぎれば戻るかもしれな い、と。 そう考えたくなる気持ちもわかります でも現実には、一度その値段と条件で 仕事が回ると、それが次の基準になっ ていきます。前は安かった、ではなく いまこの条件で回っている。市場が重 視するのは、そちらの事実です。 いま成立している金額と条件のほうへ 吸い寄せられていきます。だから、一 度下がった基準は戻りにくいのです。 下かっていく基準の中で、そのまま飲 み込まれるのか、それとも、自分の仕 事がきちんと値段になる場所へ動くの か、残っていくのは、その違いです。 は、単価を低くする可能性はあり ますが、使い方によっては、価値を広 げてくれる側にも働きます。 次の章では、その話をします。 の話になると、「今のやり方では通 用しなくなるのではないか」「置いて いかれるのではないか」、そんな不安 が先に立ちます。 すると。人は、新しいスキルを増やす ことや。仕事のやり方を変えること、 場合によっては別の仕事に目を向ける ことまで考え始めます。 は、これまで積み上げてき たものを、なかったことにする装置で はありません。むしろ逆で、すでに 持っているものを、使える形に広げて くれる心強いパートナーになってくれ ます。 台本1000本を再分析 私は、これまでに書いてきた通販番組 を使ってまとめて見直 したことがあります。およそ 本近くです。 一本ずっなら覚えています。売れた回 もあれば、弱かった回もある。そうい う感覚はありました。 でも、まとめて分析することはしてい ませんでした。時間もかかるし、正直 そこまでしなくても仕事は回っていた からです。 を使うと、それが一気にできます。 過去の台本を並べて見比べる。ただそ れだけのことなのに、思っていた以上 に見え方が変わりました。 それまで感覚でやっていたことが、外 から見えるようになったのです。なん となく、ではなく、確かにそうだと言 える形で、自分の仕事が見えてくる。 この感覚は、やってみるまでわかりま せんでした。 新しい才能をもらった、という話では ありません。 が何かを書いてくれたわけでもあ りません。 眠っていた過去を、取り出して、並べ て、見えるようにしてくれただけです でも、並べてみると、それまで終わっ たものだと思っていた仕事が、ただの 過去ではなくなる。 そこにはまだ使える蓄積が残っていま した。 は、過去を消す道具ではありませ 少なくとも私にとっては、過去をもう 一度読める形にする道具でした。 量ではなく構造 通販番組の台本を並べてみると、商材 ごとに動き方がかなり違うことが見え てきます。 たとえば、宝石と羽毛布団と健康器具 では、最初に置く言葉が違います。 宝石なら、素材や価格だけを先に出し ても、人の気持ちはなかなか動きませ ん。節目にふさわしいとか、気分が上 がるとか、自分の背中を押してくれる とか、そういう感情の入口が必要にな ります。 羽毛布団なら、もう少し生活の実感に 寄った言葉のほうが届きやすい。寒い 寝苦しい、朝がつらい。そういう毎日 の不便が先に来る。そのあとで、軽さ や暖かさが効いてきます。 健康器具も同じです。 機能をきれいに並べるだけでは、なか なか入っていきません。立ち上がるの がつらい、歩くのがおっくう、階段が しんどい。そういう体の実感に触れた ほうが、言葉は届きやすいのです。 一本ずつ見ているあいだは、その回が 売れたか、弱かったか、そのくらいし かわかりません。現場はそれで士分な のです。立ち止まって考える前に放送 が終わり、また次の商材が来るからで でも、まとめて並べると、一本ごとの 出来とは別のものが浮かび上がってき ます。 順番の癖、入口の置き方。説明のどこ で重くなるのか。どこで気持ちが動き どこで止まるのか。そういうものは、 量だけ眺めていても見えてきません。 もちろん、こういう違いは、長年やっ ていれば感覚としては知っています。 でも、その場の勘として使うのと、言 葉にして説明できるのとでは、やはり 違います。 よく売れた回だけを見ていても、案外 わからないことがあります。勢いのあ る回はたしかにありますが、何か効い たのかは、あとから振り返ると意外に 曖昧です。むしろ、売れなかった回を 並べたときのほうが、崩れた理由は見 えやすい。 入り目が遠かったのか、順番が重かっ たのか、説明が先に立ちすぎたのか。 失敗した通販番組の台本は、構造の弱 い場所を教えてくれます。 私か見ていたのは、量ではありません でした。 反復していた順番、効いていた入口、 商材ごとに違う動かし方。通販番組の 台本の中に埋まっていた型です。 が強かっだのは、新しい答えを作 ることより、散らばっていた過去の仕 事を並べて、差と反復を見えるように したことでした。見えてきたのは、本 数ではなく構造だったのです。 値段が決まる場所に近づく 型が見えても、それだけなら整理した だけで終わります。大きかったのは、 その先でした。売れる流れや通る順番 を、説明できる形で持てるようになっ たことです。 なぜこの順番にするのか。 なぜこの言葉を先に置くのか。 なぜここで街の声を入れるのか。 並べて比べると、その理由が見えてき ます。 が代わりに決めてくれるわけでは ありません。でも、過去の仕事が並び 選ぶ材料が手元にそろうと、判断の精 度は高まります。 言われたものを早く作れる人は重宝さ れます。ただ、その位置にいるあいだ は、作業が早い人止まりです。速さは 比べられるからです。比べられるもの は、だいたい同じ価格帯に収まってい きます。 それに対して、なぜこの順番なのかを 言える人は、番組の打ち合わせよりも う少し前の相談の場に入っていけます どう作るか。 どう伝えるか。 どこを先に見せるか。 そういう段階から意見を求められるよ うになる。 すると、仕事の扱われ方が変わります 同じ通販番組の台本でも、関わる位置 が一段上に上がります。 メーカーからの信頼が厚くなる。 プロデューサーから意見を求められる そのぶん、値段が決まる場所に近づき ます。努力が、そのまま消えるのでは なく、値段にのりやすい形で扱われる ようになるのです。 これは、放送の現場に限った話ではあ りません。 日常の中にだって、いろんな蓄積はあ ります。 たとえば、毎日作り続けたお弁当。一 枚だけ見れば、ただの写真です。でも 並べてみると、かわいい記録では終わ りません。どの色が多いと重たく見え るのか。どの形だと食べやすいのか。 そういうことは、暮らしの中で試した 分だけ残っていきます。 たとえば、書き続けた手紙やメモ。 値になるのは、文才だけではありませ ん。何を選び、何を削リ、どう言えば 届くのか。書き続けた履歴には、その 人なりの判断が残ります。あとから読 み返すと、別の誰かにも渡せる言葉が 見つかることがあります。 いちばん勇気が要るのは、失敗談かも しれません。失敗は痛いし、思い出し たくない。できれば見たくないもので す。でも、そこで終わらせずに見直し た瞬間、それはただの傷ではなくなり ます。 もちろん、何でもそのまま出せばいい わけではありません。伏せるべきもの は伏せる。形を変えたほうがいいもの は変える。安全に使える形に整える。 その手間も含めて、大事な仕事です。 過去は、値段になる 襾値」として蓄積され ている人は、本人が意識していないだ けで、実は多いものです。 綛験も、続けてきたことも、現場で覚 えた勘も、人とのやリ取りの中で身に ついた線引きも、うまくいった記録も うまくいかなかった記録も、あとから 値段になります。 資格がないから終わり、という話では ありません。派手な実績がなくても、 手元に何もないわけではない。まだ、 使える形に並んでいないだけです。 に助けてもらうのは、そこです。 散らばっていたものを整理し、比べや すくし、言葉にしやすくしてくれます 新しく何かを足すというより、すでに あるものを扱いやすくする力のほうが 大きいです。 しかも、最初からきれいにまとまって いる必要はありません。下書きでもい いし、失敗の記録でもいい。あとで見 比べられる形で残っていれば、そこか ら使えるようになります。 ただ、判断するのは人の仕事です。 何を採るか、何を外すか、どこを伏せ るか。 は並べることはできても、責任ま では引き受けてくれないからです。 この使い方ができると、過去はただの 思い出では終わりません。収入につな がる材料になります。 早く作るだけなら、値段は下がりやす でも、なぜそうするのかを言える。比 べた理由を説明できる。失敗まで材料 にできる。そこまで行くと、立つ場所 が少し変わります。 だから、最初に見るべきは自分がすで に持っている過去です。 は、過去をこれからの値段に変え ていく道具です。 章で見えてきたのは、同じことを どれだけやったかより七、どこを見て どう選んできたか、という違いでした この章では、その見えたものを拾って いきます。 公式でいうところの「代わりの少な さ」を、どうやって収入につなげてい くかです。 同じ働き方でも、値段が変わる人と変 わらない人がいます。その差は、あと から足すものではなく、すでに手元に あるもので決まっていることが多いの です。 ここが曖昧なままだと、何を足しても 結局はその他大勢と同じ価格帯に戻り ます。 気になるものを書き出す 最初にやるのは、立派な実績を探すこ とではありません。気になってしまう ものを書き出すことです。 好きかどうかとは少し違います。 たとえば、つい見てしまう。なぜか比 べてしまう。ちよっとした違いに引っ かかる。うまく説明はできないのに、 良し悪しだけは妙にはっきり分かる。 ここで拾いたいのは、そういう反応で まずは、気になってしまうものをその まま出してみます。 書き方も雑でかまいません。単語でも 一言でもいい。頭の中でうっすら分 かっているままにしておかないことの ほうが大事です。 たとえば、こんなふうに雑に出してみ ます。 なぜか白い器ばかり見てしまう 通販の説明で、最初の一言が気にな ワインは値段より後味を見てしまう 人の文章の長い前置きで止まる 買い物で、結局いつも同じ条件を見 ている 失敗した企画ほど、あとで思い出す 役に立つかどうかは、まだ分からなく ていいんです。先にそこを考え始める と、優等生っぽい答えしか残らなく なってしまいます。それでは、あとで 使えるものまで消えてしまう。少し大 雑把でも、自分の反応が出ていれば、 それは注目すべきポイントです。 いつも気になる。 つい比べてしまう。 その時点で、もう何もないわけではあ りません。 まだ言葉になっていないだけです。 自分には何もない、と思っている人ほ ど、たぶんここで手が止まってしまい ます。賞も資格もなく、胸を張れる実 績もないとなると、書けるものが もない気がしてくるからです。 でも、この段階では整理する必要はあ りません。 「これは資産になるのか」は考えずに 出してみてください。 残っている断片を拾う 気になるものが出てきたら、そのまわ りに、どんな跡が残っているかを見ま たとえば、 白い器の記事を ワインのメモに「後味が重い」が何 度も出てくる 通らなかった企画の案だけ、なぜか 捨てていない 買い物の比較で、毎回「手入れしや すさ」を見ている メモ、比べた跡、保存した記事、失敗 した記憶、通らなかった案。そういう 雑なまま残っているものを拾います。 何に反応したのか。どこで迷ったのか 何を比べたのか。その跡が少しでも 残っていれば、もう材料になります。 この段階では、まず拾うことを優先し てください。 量も多くは要リません。 でも十分です。一度に集めようとする と、そこで止まります。気になってい るもののまわりから、少しずつ拾って いけばいいのです。 散らばっているものを、見えるところ まで出すことです。それだけで、曖昧 だったものに輪郭が出てきます。 並べて違いを見つける 断片が少し拾えたら、次は並べます。 つだけ見ていると、その場の出来事 で終わりますが、 何か違うのかが見えてきます。 そして、その違いが、あとで仕事につ ながる強みの候補になります。 分け方は粗くてかまいません。 うまくいったもの、止まったもの、ま だ判断がつかないもの。軽かったもの 重かったもの、すぐ決まったもの、い つも迷ったもの。そのくらいの並べ方 でも、見比べるには十分です。 たとえば、ワインのメモなら、飲んだ 日ごとに並べるだけでも違いが出ます 後味が重かった日は何か違ったのか。 料理に負けた日は何か違ったのか。 気分よく飲めた日は、温度なのか、体 調なのか、場面なのか。 仕事でも同じです。 通った企画、通らなかった企画、返事 が止まった案を横に置くと、入り方の 違いが見えてきます。 説明が長かったのか。 順番が重かったのか。 相手が最初に知リたかったところから 入っていなかったのか。 つずつ見ていると見逃すことが、並 べると見えてきます。 迷うものが混ざっていてもかまいませ むしろ、その迷い方にこそ、自分の癖 が出ます。 ここで外さないほうがいいのは、失敗 したものです。成功だけを並べると、 たしかにきれいには見えます。でも、 何か効いたかより、何か崩れたかのほ うが、あとで役に立つことは少なくあ りません。成功より多くを語ってくれ ます。 並べると、何かあると動き、何かある と止まるのかが見えてきます。ここま で来ると、バラバラだったものは、た だのメモでは終わりません。自分かど こを見て選んでいるのかが、少しずつ 見え始めます。 違いを一言で残す 違いが見えただけでは、まだ使えませ 次にやっておきたいのは、あとで見返 したときに、自分がどこで反応したの かが分かる形にしておくことです。 案の企画は通って、 画は没になっだのかの違い、何かある と動いて、何かあると止まるのかの気 づき、そういう自分なりの軸を見つけ てください。 たとえば、こんな書き方です。 説明が長いと止まる 最初の一言が弱いと入らない 後味が重いと、好きでも残らない 値段より手入れのしやすさを見てい 最初は気になっていただけのものが、 一言にした時点で、少しずつ判断材料 に変わっているのがわかります。 短くしておくのは、あとで並べやすい からです。長く書くと、あとから比べ ようとしたときに、かえって見えにく いこともあります。 一言なら、並べたときに癖が見えます 少し荒いくらいのほうが、使いやすい こともあります。 うまくいかなかったものも、ここで消 す必要はありません。ずれた理由を一 言で残しておくと、あとで役に立ちま す。失敗の一言は、気のきいた反省文 よりずっと実用的で、次に同じところ で転ばないための目印になります。 違いが見えたら、一言で残す。 それだけで、断片は次に使える形へ変 わっていきます。 に並べてもらう 違いを一言で残せたら、次はそれを に渡して並べてもらいます。ここ での目的は、答えを出してもらうこと ではなく、見比べやすい形に整えても らうことです。 は、ときどき何でもできる顔をし ます。 でも、こういう場面で頼りになるのは 名案をひねり出すことより、散らばっ た記録を見返しやすく整えるほうです そこを任せると、人間は考えるほうに 時間を使えます。 何を残すか。 どこに反応しているのか。 何を採って、何を外すか。 人間が頭を使いたいのは、そっちです 最初は、拾ったメモや一言をまとめて 渡して、似たものを寄せてみるだけで も、ぼんやりしていた違いが見えやす くなります。 は考える役ではなく、散ら ばった記録を見返しやすく整える役で す。あれこれ気の利いたことも言って きますが、そのまま答えにしないほう がいいです。 頭は切れるけれど、少しそそっかしい 秘書くらいに思っておくと、ちようど いいかもしれません。 が出したものは、比べやすくなっ た、見落としていた共通点が出てきた そのくらいの受け取り方で十分です。 のよさは、うまい答えを出すこと より、記録を見比べられる形に整える ところにあります。 武器になるものを残す に並べてもらうと、何度も出てく るものが見えてきます。ここからは、 その中で何を残すかを考えます。 せっかく集まっても、全部を資産にし ようとすると輪郭がぼやけます。残し たいのは、何度も出てくるもの、人よ り反応しているところ、失敗も含めて 自分の言葉で言えるものです。 何度も気になる。何度も比べる。何度 も同じところで引っかかる。そういう 反復があるなら、そこにはもう、あな たなりの判断の芯があります。 たとえば、企画では説明の長さが気に なる。 買い物では、手入れしやすさを何度も 見ている。 ワインでは、後味や料理との距離が気 になる。 そういう反応が繰り返し出てくるなら そこにはもう、あなたなりの見分け方 があります。 ここまで来ると、ただの断片だったも のに、少しずつ輪郭が出てきます。 重みが出てくるのは、このあたりから です。 使い道を一度考える 武器候補が少し見えてきたら、最後に その使い道を考えます。 見るのは、誰に役立つのか、どんな場 面で効くのか、仕事になるならどこで 使えそうか、です。 本格的な市場分析ではなく、渡し先を ひとつ探すくらいの感覚で考えてみて ください。 たとえば、説明の順番に敏感なら、企 画や営業、接客や発信で効くかもしれ ません。 相手が止まる瞬間に気づきやすいなら 文章や商品説明、打ち合わせの場で役 に立つかもしれない。 買い物で比較の軸がはっきりしている なら、選び方の助言や、整理の仕方に 変えられるかもしれません。 ここで見たいのは、自分だけの癖で終 わるのか、誰かに渡したときに役に立 つのか、その境目です。 少し意地悪に言えば、どれだけ面白い 偏愛でも、自分の中でうっとりしてい るだけでは値段はつきません。 「この見方は仕事に使えそうだ」そう 思える場面がひとつでもあれば、ただ の癖だったものが、人に渡せるものに 変わりはじめます。 この章でやってきたのは、何度も気に なるものを拾い、断片を集め、違いを 見て、武器候補を残すところまでです まだ完成形ではありません。 でも、自分の中だけにあった感覚が、 少なくとも人に渡せるかもしれないも のとして見え始めていませんか。 次の章では、その武器候補を、人に届 く形へ整えていきます。 どこで効くのか。どう言えば伝わるの か。どう置けば、収入につながるのか ここから先は、接続の仕方の話です。 コンセントにつなかっていなければ、 電流は流れません。 章で、手元に残すべきものは見え てきました。 ここからやるのは、それを「効く場 所」につなぐことです。 この式を思い出してください。 財布の大きさ も活用します。 ただし、任せるのは材料を整理し、比 べやすくするところまでです。その材 料を、財布の大きさ・決定権・代わり の少なさのどこに効かせるかは、自分 で決めます。 どこで効くかを見る がんばっているのに報われないとき、 人はすぐ、自分の力が足りないのでは ないかと思います。 でも実際は、つながる相手や場所が変 わっただけで、急に評価が変わること は珍しくありません。 私自身、同じ放送作家の仕事で、それ を一度はっきりと経験しています。制 作会社経由ではなく、直接テレビ局と 仕事をするようになったという違いで 能力を上げたわけでもないし、台本の 質が急に跳ねたわけでもありません。 でも、テレビ局という値段を決める側 (決定権)に寄ったことで、単価の扱 われ方も、意見の通りやすさも、番組 内で立ち位置まで明らかに変わったの です。 たとえば、会議の前に話の順番を整理 し、相手が判断しやすい形に直せる人 がいます。 本人は、いつもやっているだけのつも りかもしれませんが、そのおかげで相 手の迷いが減り、話が通りやすくなっ ているなら、それはもう立派な力です ただ、そういう力も、置かれる場所に よって扱いが変わります。必要とされ ない場所では、雑用のように流れて終 わってしまい、せっかくのものも光り ません。 逆に、必要とされる場所につながると 価値として見えやすくなります。 接続先は、転職先や外の仕事だけでは ありません。社内の別部署でもいいし 同じ部署の中でも変わります。 顧客対応で効く人もいれば、チーム内 の調整で効く人もいる。上司への説明 で効く人もいれば、後輩への引き継ぎ で効く人もいるでしょう。 同じ会社の中にも、接続先はいくつも あります。 だから、いきなり大きな決断をする話 ではないのです。 自分がどんな場面で呼ばれているか。 どんな困リごとのときに頼られるのか 終わったあと、相手の何か楽になって いるのか。 そこが見えてくると、武器候補の使い 道も少しずつ見えてきます。 効く場所チェック 行だけ書いてください。 どんな場面で呼ばれるか 誰のどんな困りごとで頼られるか 終わったあと、何が楽になっている 会議の前に話を整理したいときに呼 ばれる 上司と現場の説明かすれているとき に頼られる 話の順番が整って、相手が判断しや すくなる 行が書けると、いま自分がどこ で効いているかの輪郭が見えてきます 相手に伝わる言葉にする どこで効くかが見えても、そのままで は相手に伝わりません。こちらには当 たり前でも、相手には何か価値なのか 見えていないことがあるからです。 たとえば、「板挟みで大変なんです」。 この言い方では、相手には使いどころ が見えません。 でも、この言葉を「上の考えを現場に 伝え、現場の事情を上に返せる」と言 い換えると、何の役に立つのかが見え てきます。 見え方が変わると、頼まれ方も変わり ます。 たとえば。 「資料を作る」ではなく、「判断を早 くする材料を整える」と言い換えてみ 「段取りを組む」ではなく、「混乱を 減らして、実行を通しやすくする」と 言い換えてみる。 本人は自分の気持ちや、自分がやった ことを伝えようとするので、どれだけ 大変だったかで語りやすいものです。 でも相手が知リたいのは、それが何の 役に立つのか、どう楽になるのか、何 を解決できるかです。 だから、作業名のまま伝えるより、相 手に起きる変化まで言えたほうがいい のです。そこで初めて、この人は何に 使えるのかが見えてきます。 最初から、きれいな言葉でまとめなく て大丈夫です。実感のない言葉は、ど うせすぐばれます。 まずは自分の体感に近い言葉で置いて みる。 そして反応を見ながら、少しずつ整え ていけばいいんです。 【言い換え3行】 自分の仕事を、作業名のままではなく 相手に起きる変化で言い換えてみます 自分の言い方 相手に起きる変化 どんな場面で効くか 資料を作る 判断を早くする材料を整える 結論を急ぎたい会議で効く 段取りを組む 混乱を減らして、動きやすい順番を つくる 人や作業が多く、すれ違いやすい場 面で効く この言い換えができると、同じ仕事で も、見られ方が変わり始めます。 判断履歴として残す 効く場所が見えて、相手に伝わる言葉 も少しずつ整ってきました。 でも、その場しのぎで終わると、次に 同じ場面が来たときに再現できません 人に説明しようとしても、何を見て動 いたのかが抜け落ちやすいのです。 そこで、残したいのは、あとで見返し て、比べられる形です。 行だけ残します。 何をやったか 何を見て判断したか 次に変えるならどこか 行にするのは手を抜くためではなく、 継続して前に進むには、あえてこのく らいがちようどいいからです。 行でいちばん大事なのは、実は 行目です。 何を見て判断したか。そこに、他の人 とは違う、あなたなりの見方が出ます 同じ作業をしていても、見る場所が違 えば判断は変わります。残したいのは 結果だけではなく、あなたがどこを見 て動いたかです。 会議の冒頭説明でも、すっと通る日と 急に重くなる日があります。それを 「今日は運が悪かった」で終わらせる と、何も残りません。 何をやったのか。 どこで反応が変わったのか。 次に変えるならどこか。 行で残しておくと、次に使え ます。 見積もりメールも同じです。返信が来 たか来ないかだけ見ていると、たまた まに振り回されます。 何を送ったのか。 何を見て判断したのか。 次に変えるならどこか。 案を入れたのか。 判断期限を書いたのか。相手が迷いそ うな点を先回りしたのか。そこを残し ておくと、自分の効き方が見えてきま を使うなら、ここでは記録そのも のを書かせるのではなく、自分で残し 行をいくつかまとめて渡します。 たとえば、 週報を提出した 問い合わせ数は増えたのに成約が 落ちていた 次は初回返信の文面を見直す 引き継ぎメモを作った 作業手順より先に注意点を書いた ら、質問が減った 次は最初に全体の流れも こうした記録をまとめて うまくいったときに共通する見方は 何か。 差が出たポイントは何か。 次に変えるなら、どこが有力か。 整理してもらうと使いやすいです。 ただし、どの軸を使うかは自分で決め てください。 そこを丸投げすると、きれいに並ぶだ けで、中身がすっぽり抜けてしまうか らです。 それから、消さないほうがいいのは、 うまくいかなかった日の記録です。 どこでズレたのか。 何を読み違えたのか。 失敗を残しておくと、判断に厚みが出 てきます。 繰り返しますが、うまく書こうとしな くて大丈夫です。 まずは一件だけ、 ださい。 何をやったか 何を見て判断したか 次に変えるならどこか 会議の冒頭説明を担当 最初に結論を置いたら、途中で止ま らずに進んだ 次は数字を先に見せてから結論を置 くか試す 見積もりメールを送った 案で違いを明記したら、その 日のうちに返信が来た 次は判断期限も添える 行目に、自分の見方が出ます。 判断材料を足す 決定権は、いきなり手に入るものでは ありません。日々の仕事の返し方の中 で、少しずつ近づいていくものです。 言われたものを、そのまま返して終わ るのか。それとも、判断しやすい形に して返すのか。この差は小さく見えて あとで効いてきます。 たとえば、見積もりなら、金額だけを 出して終わらない。 けて、それぞれ何を優先した案なのか 行で添える。 案は「最短納期を優先した見積も 案は「コンテンツ量を優先した見積 もり」 というように返すだけで、相手は選び やすくなります。 週報も同じです。数字だけを並べるの ではなく、その数字をどう見るかを1 行足します。 たとえば、問い合わせは増えたのに成 約が落ちているなら、入口ではなく対 応の途中に詰まりがあるのかもしれな い。なので、「来週は初回返信の文面 行を添えるだけで、 ただの報告ではなく、次の判断に使え る材料になります。 こういう返し方を続けていると、見ら れ方が変わります。作業をする人では なく、判断を助ける人として扱われや すくなるからです。 主導権は、一気に取るものではなく、 少しずつ預けてもらうものです。その 積み重ねで、頼まれ方が変わり、相談 される内容も変わってきます。 を使うなら、ここでは下ごしらえ を任せれば十分です。 比較表のたたき台を作る。 選択肢ごとの違いを並べる。 論点を整理する。 ただし、どの軸で比べるか、どの順番 で出すかは自分で決めてください。こ こを渡してしまうと、せっかくの判断 が薄まります。 最初は、報告でも、メールでも、相談 の返事でもかまいません。どれか 選んで、判断材料を る。その小さな差が、あとで効いてき ます。 決める側に一歩近づく つだけ足してください。 選択肢を1つ増やす 違いが分かる比較軸を 数字や結果の横に、解釈を 見積もりに 違いを1行で添える 週報の数字の横に、「今どこで止 まっているか」と「次に打つ手」を1 行添える つでも、作業する人から、判 断を支える人へ少し近づきます。 との分担を決める ここまでの流れを全部ひとりで回そう とすると、面倒くさくなって、手が止 まってしまいます。接続先を見直して 言葉を整えて、判断材料を足して、反 応を見てまた直す。やることが多いの を活用してください。 ただし、全部を渡さないことです。 は、価値そのものではなく、あな たが持っているものを見えやすくする ための補助に使ってください。 任せやすいのは、下ごしらえです。 散らかったメモを整える。 共通点や差を拾う。 言い換えの候補を出す。 が素早く、きれい にまとめてくれます。 でも、何を残すか、何を採るか、その 判断はあなた自身がしないと、芯がぼ やけてしまいます。 この相手に、この言い方でいいのか。 どの軸で比べるか。 どこまで言うのか。 決めるのは自分です。 判断の土台は、あなた自身の経験や、 うまくいかなかった記憶や、現場の感 覚の中にあるからです。 自分の判断軸をしっかり持って使えば はあなたの価値を、届く形に整え る道具になります。 難しく考えなくて大丈夫です。 まずは、今週の記録を て、共通する判断や言い換えの候補を 出してもらう。 その中から、「これなら使える」と思 うものを1つ選ぶ。 それくらいの距離感で十分です。 使う前に、先に線を引いておくと楽で どこまで任せて、どこから自分で決め るのか、 行だけでも決めてから使うと、 に引っぱられにくくなります。 【AIの線引き1行】 行だけ決めておき ます。 に任せること: 自分が決めること: に任せること: この見積もりの 費用・納期・向いているケースで表に まとめて」 「この週報の数字を見て、先週との差 つ出して」など、整 理をさせる 自分が決めること:どの案を出すか、 どの差を強調するか、その相手にどこ まで言うか この線引きがあるだけで、使い方がぶ れにくくなります。 小さく試して、流れを変える 「努力しても収入が増えない」と感じ ていたあなたは、何か大きな決断をし ないと、先へ進めないような気がして いたかもしれません。 転職したほうがいいのか。 独立したほうがいいのか。 肩書きを変えるべきなのか。 でも、それより先に見直したいのは、 接続の仕方です。 たとえば、仕事の見せ方を少し変える 記録の残し方を変える。 説明の言葉を相手に合わせる。 信頼のある相手に、小さく試してみる 最初は気づかれないくらいの地味な動 きでも、こういう修正が流れを変えて いきます。 接続先は、社内の別部署かもしれない し、今の仕事の中の別の役割かもしれ ない。すでに付き合いのある顧客との 関係を少し変えることかもしれません 知人からの相談の中に、次の接続先が 見えてくることもありえます。 章で見えてきたあなたの「武器候 補」も、あわてて売り物にしなくて大 丈夫です。 何もしないで放っておくと、せっかく の種がまた引き出しの奥に戻ってしま うので、急がないけれど放置しない、 出せる準備だけはしておく、そのくら いがちようどいいです。 変化は、すぐに売上として出るとは限 りません。 でも、相談される内容が変わったり、 説明が通りやすくなったり、頼まれる 役割が少し変わったり、そういう動き が少しでも見えてきたら、あなたの接 続の仕方はもう変わり始めています。 目安は、一ヶ月です。 月くらいで一区切りつけると、試 して、見て、少し直す、という流れが 作りやすいです。 日、小さく試す 日で全部やろうと思わずに、 まずは、今月にやることを、 決めます。 今月やる1つ: 週1でやること: 日後に見る変化: つ:週報の数字の横に。 次に見直す点を でやること:どの数字で止まっ ているかを見て、 日後に見る変化:上司や相手から 数字そのものではなく、次にどこを直 すかについて相談されるようになった つ:見積もりを金額だけ 案にして違いを 行添える でやること:相手が迷いやすい つ先回りして書く 日後に見る変化:金額だけでなく どちらの案が向いているかを相談され るようになったか 大事なのは、売上だけではありません 相談される内容が変わったか。 説明の通り方が変わったか。 頼まれる役割が少し動いたか。 大きく変える前に、まずは小さく試し てみてください。その積み重ねで、あ なたの「接続」は少しずつ動いていき ます。 大きな財布につながる側へ、決める人 に近い側へ。 収入は、そういう接続の先で変わって いきます。 伸びにくい場所で起きること 年前、台本はガリ版刷りでした。 インクで手が真っ黒になるのが当たり 前だったんです。 原稿を刷って、重ねて、留めて、配る 一冊の台本の裏には、必ず人の手があ りました。不便だったぶん、そこに仕 事が生まれていたとも言えます。 編集済みの映像も、夜中にバイク便で 届きました。ビデオテープを受け取っ て、巻き戻して、再生して、確認する いまならリンクひとつで済むことに、 夜が丸ごと消えていた時代です。 年前後になると、デジタル化か 一気に進みました。便利になり、速く なり、正確にもなった。でもそのかわ り、仕事は静かに消えていきました。 音効さんは、生音を録って番組の空気 を作っていました。扉のきしむ音。足 音。風の音。食器が触れ合う音。台本 に書かれていない温度を、音で足して いく。あれはもう、ちゃんと職人技で した。 でも、音源ライブラリとソフトが広が るにつれて、その音を作る時間には値 段がつかなくなっていきました。 深夜番組専門の放送作家というのもい ました。ゴールデンとは違う尺度で、 独自の面白さを追いかける文化があっ たんです。けれど、制作費の圧縮と視 聴スタイルの変化の中で、いつの間に か消えていました。 こういう変化は、大きな発表にはなり ません。 ある日いきなり宣言されるわけでもな ただ、番組の予算は少しずつ削られ、 手間をかけても値段がつきにくくなり 前は仕事になっていた工程が、いつの 間にか省かれていきます。伸びにくい 場所は、だいたいそうやって変わって いきます。 財布が大きくならないまま、そこに人 が集まれば、取り分は薄くなっていき ます。同じような価値を出せる人も増 えやすい。そうなると、努力の差は埋 まりやすくなって、ちゃんとやってい るのに横ばい、が起きやすくなります ここで努力を重ねても、消耗するだけ です。 だから先に見るべきなのは、自分のが んばリ方ではなく、収入がどこで決ま るかです。 財布の大きさ 財布の大きさが伸びにくければ、全体 の取り分は増えません。 決定権が遠ければ、値段は他人に握ら れたままです。 代わりの少なさが際立っていなければ 入れ替えも起きやすい。 だから、努力しても収入が増えにくい ことが起きます。 能力が足りないからとは限りません。 場所のほうが、努力を食いつぶしてい るからです。 最後に変えるべきなのは、努力の量で はなく向きです。 財布の大きい場所へ寄る。 決定権に近づく。 代わりの少なさを確立する。 収入を増やすには、結局このどれかを 動かすしかありません。 努力の再定義 では、努力をどう使い直すか。 分けておきたいのは、量の努力と、向 きを決める努力です。 量の努力はわかりやすいです。 時間を増やす。作業量を増やす。学ぶ 量を増やす。やっている実感も出やす いので、多くの人がここに力を入れま でも、このやリ方だと消耗戦になりや すいことも、本書で説明してきました 時間やれば、別の誰かは 時間やる。 年学べば、別の誰かは ぶ。そうなると、差は思ったほどつき ません。そのうえ、がんばっているの に、手元に残るものは増えない、とい うことも起きます。 つが、向きを決める努力です。 どこで効くかを先に決めてから、時間 を使う。こちらのほうが、消耗せずに 有効です。 つありました。 財布の大きさ、決定権、代わりの少な さです。 どの財布に接続するのか。 どこまで決定権に近づけるのか。 どこで代わりにくくなるのか。 そこを見たうえで動くと、同じ努力で も残り方が変わります。 会社員なら、成果を出しても給料が伸 びにくい場所で残業を増やすよリ先に 評価が伸びる仕事に寄れないかを見ま す。部署でもいいし、担当でもいいし 役割でもいいです。どこで報われやす いかを決めてから、そこに力を入れる べきです。 フリーランスなら、単価が下がる場所 で件数だけ増やすよリ先に、決定権に 近い位置へ近づいた方が有利です。だ から、作って納めるだけで終わらずに 判断材料も渡す側へ動いてみる。 努力の向きが少し変われば、積み上が り方は変わります。 副業でも同じです。 人が多い場所で発信量だけを増やすよ リ先に、努力の向きを「何を誰に届け るのか」に絞ってみる。 誰の困リごとに接続するのか。 何をどう解決するのか。 そこを決めてから動いたほうが、はる かに効きます。 努力が裏切ったわけではありません。 接続先が合っていなかっただけです。 ここで努力の意味を、考え直します。 努力とは、収入が増える場所に接続し たうえで、そこに力を集中させること です。 使えるものは、時間だけではありませ ん。体力もあるし、信用、学び、出会 いもあります。 でも、どれも限りがあります。 だからこそ、どこに接続するかを先に 決める必要があるのです。 大きく賭けなくていい 新しいことに挑戦するのは不安になっ ても当然です。 家族はいるし、生活もあります。 物価は上がるし、将来も見えにくい。 でうまくいっている人が目に入 れば、焦る日もあります。自分だけ取 り残されるのではないかと、心配にも なります。 むしろ、真面目な人ほど怖くなります 現実をちゃんと見ているからです。 でも、ここで言いたいのは、人生を賭 けるような大きな話ではありません。 収入が増える方向へ、接続を少し動か すことです。 動かす場所は、もう見えています。 財布の大きい場所へ少し寄る。 決定権に半歩近づく。 代わりの少なさが立つ形に、自分の武 器を見直す。 まずは、そのどれか つ決めて、反応を見る。 手応えがあれば続ける。 ずれていたら直す。 そのくらいのほうが、現実では強いで 動き方は、もうあなたの手元にありま 相手に伝わる言葉に直してみる。 やってみたことを少しだけ残しておく 返すときには、判断しやすい材料を1 つ添える。 そうやって小さく試していけばいいだ けです。 挑戦とは、収入が増える方向へ接続を 止めずに動かしていくことです。 覚悟の宣言 ここまで読んでくださったあなたは、 もうただ努力をする人ではなく、努力 の向きを自分で選べる人になっていま 財布の大きさは変わり続けます。 伸びている場所も、いつまで勢いがあ るかわかりません。 昨日まで通っていたやリ方が、今日は 通らない。 そういうことは、もう珍しくありませ 前のやリ方にしがみつくほど、ズレは 大きくなります。だから必要なのは、 前提が変わったときに接続を見直すこ とです。 年、東日本大震災が起きました。 私は発生翌日の生放送のお昼のワイド ショーを担当していました。ちようど デジタル放送が整い、画面も情報の器 も進化していた時期でした。 それでも、通信インフラが止まれば、 映像は送られてこない。被害がどこま で広がっているのか、何人が取り残さ れているのか、確認すらできない。巨 大な災害の中で、つながる前提で組み 上げていた仕組みは、沈黙したのです あのとき痛感したのは、道具の限界で はありませんでした。通信も確認もで きない状況になると、最後に残るのは 判断だということだったのです。 財布が縮んでいく状況も同じです。 災害のように一瞬で壊れるわけではあ りません。でも、昨日までの前提が通 用しなくなるという点では、よく似て います。 だから最後に頼れるのは、量で押し切 ることではなく、収入が決まる接続を 自分で見直せることです。 人生は、接続を見直したところから動 き始めます。 ここまで読んでくださって、ありがと うございます。 努力しているのに、収入が増えない。 その感覚は、怠けているからではなく むしろ、まじめに積み上げてきた人ほ ど、強く感じやすい違和感です。 ここまで読み進めたあなたは、もう 「自分が無能なのかもしれない」とい う疑いを、抱え続けなくていいはずで 疑うべきは、あなたの価値そのもので はなく、その価値が置かれている場所 のほうだった。そのことが見えた時点 で、もう前と同じ場所には立っていま せん。 私は、経済の専門家でも、ビジネスの 専門家でもありません。ただ、言葉で 年続けてきました。 だからこそ、縮んでいく財布の中で起 きていた矛盾を、専門用語ではなく、 日常使う普通の言葉で整理して渡すこ とならできるかもしれない。そう思っ て、この本を書きました。 真面目にやっているのに報われにくい ちゃんと働いているのに、なぜか取り 分か薄くなる。 その苦しさを、能力や根性の話にされ るたびに、「違うだろう」と私は不甲 斐なく感じてきました。 同じように頑張って、同じように消耗 している人に、「それはあなたの価値 が足りないからではない」と伝えた かったのです。 この本で目指しだのは、あなたの努力 を報われる場所へ戻すことです。 巻末には、「収入の流れを変える 実践ワーク」を置きました。 このワークは点数を競うためのもので はなく、いま、どこを いのかを見るための道具です。あなた の現在地を確認するために、まずは つだけ試してみてください をもっと使える形にしたい と思ったら、関連書籍の『 放送作家の卜書き 術』も、きっと役に立つと思います。 を便利さだけで終わらせず、判断 の芯を人間に残したまま使うための本 です。 大きく動かなくていいんです。 まず、接続を動かしてみる。 そこから、見える景色は少しずつ変 わっていきます。 人生は、接続を変えたところから動き 始めます。 アレキサンダー富美 収入の流れを変える 践ワーク】 この付録は、読むだけで終わらせない ためのワークです。 本書で見てきた式は、こうでした。 財布の大きさ ここでやることは、シンプルです。 いまの自分はどこで詰まりやすいのか を見つけて、次の つ動かすかを決めます。 進め方は、3STEPです。 点診断で、詰まり場所を 見つける 弱点攻略で、どこを動かすか 決める 日チェックリストで、動 きを形にする 点でかまいません。 大事なのは、完璧に埋めることではな く、最初の一歩を決めることです。 点診断で、詰まり場 所を見つける まずは、全体をざっくり見ます。 財布の大きさ、決定権、代わりの少な つのうち、どこがいちばん弱い かを確かめます。 やることは簡単です。 項目に、はい 点で答えるだけです。 合計点より先に、いちばん低い項目を 見てください。 そこが、最初に動かす場所です。 項目を、はい 点で答えてください。 点)を出します。 自分の仕事がつなかっている財布 が「大きくなっている を、具体例を その財布のまわりで「誰が増えて 競合)」を、具体例 を1つ出せる 金を払う側の困リごとが「前と 比べて何か変わったか」を、具体例を つ出せる 自分の仕事は「より大きい財布に 一部だけ寄せる余地」がある(全部変 えなくていい) 日で、財布の動きを示す胯 つ見つけてメモした(統計 業界資料/IR/現場の声) 自分の仕事の値段・条件・優先順 位を「誰が決めているか」を具体名で 言える(役職 判断の煬(会議 に「一段でも近い位置」で関われてい 日で、提案に「選択肢( 案)」か「比較軸(何かどう違う か)」のどちらかを添えた 仕事の上流(目的・仕様・基準) に関わる回数が増えている 襾格改定(条件変更を含む)を、 こちらから提案した綛験がある(小さ くていい) 自分にしか出せない「比較軸」か つ言える(例冂頓 番/入口/温度感) 成功だけでなく、失敗の履歴から 学んだ判断基準がある 偏愛(長年見続けたもの)が、言 葉にできる形で残っている(メモ 真/比較/保存) 自分の知見を、相手のレベルに合 わせて言い換えできる 日で、自分の型(チェッ 手順)の断片を した(箇条書きで 【15点診断 記入用紙(1回分)】 合計と内訳 合計:_点(0~15点) 財布の大きさ: 代わりの少なさ: 最低点の項目: 同点なら 財布の大きさ の順で見てください。 最初に動かすのは、財布が先です。 弱点攻略で、どこを動か すか決める 次は、いちばん低かった項目を少し緇 かく見ます。 ここでやることは どこを動かせば流れが変わり始めるか をはっきりさせることです。 はい=1点、いいえ=0点。 点でかまいません。 全部をやる必要はありません。 まずは、自分が最低点だった項目から 進めてください。 財布の大きさが弱い人へ 財布の4↑;まで、2でy人へ 30 財布の大きさで詰まりやすい人は、 努力の量より先に、どこにつながって いるかを見直します。 自分の仕事がつなかっている財布 の「入口」(相手の困りごと)を一文 で言える 入口(困リごと)を一文で: その困りごとの理由が、「前と比べ てどう変わったか」を言える 変わった点を一文で: 競合や代替手段が増えている理由 を言える 増えている理由を一語で: 〈追加チェック> 自分の仕事は、「より大きい財布」 と接続できる余地がある 社内で評価や予算がつきやすい領 域がどこか見当がつく 相手が支払う理由が「機能」「安 心」「時間」のどれか整理できる 新しい財布へ寄せるとき、全部捨 てずに一部だけ寄せられる 財布の変化を「感覚」ではなく 「観察」で見ようとしている 需要が増えやすい季節やタイミン グが分かる 財布の動きを見る情報源を 持っている 日でやること 努力が裏切られにくい場所へ寄せる 入口を変える 困リごとから言い換えた入口文を 「動画編集できます」ではなく。 「最後まで見てもらえる構成に整えま す」と言い換える 財布の観察 で変化をメモ 業界ニュースや 「どこに予算が寄っているか」を で4回残す 努力を増やす前に、つながる先を変え 決定権が弱い人へ 決定権が1富30日でや 決定権で詰まりやすい人は、 作業の質だけでなく、誰が決めている かを見ます。 上流の財布(誰が払っているか) を具体名で説明できる 払っている人(会社 契約一発注の構造が何層か把握で きている 間にいる人(層)を一語で: 自分が単価を提示している、また は提示に影響できる 影響できる場面を 〈追加チェック> 値段以外の条件(納期 質基準)をこちらから動かせる 見積に選択肢( れたことがある 比較軸を添えて提案したことがあ 行でも添えている 仕様のすリ合わせ段階に参加でき 決める人が迷う点を先回りして潰 襾格改定の履歴がある 日でやること 値付けと評価の場に一段近づく 見積に「選択肢」を入れる 案B案を1回やる 「早く進めたい方向け」 「費用を抑えたい方向け」 と違いを1行添える 提案に「比較軸」を 何かどう違うかを 「費用」「手間」「伝わりやすさ」の違 いを1行で示す 作業者から、判断の支え手へ。 代わりの少なさが弱い人へ でなさが弱い人へ 代わりの少なさで詰まりやすい人は、 判断材料があっても、届く形で残って いないことが多いです。 自分がどこを見て違いを判断して つ言葉にできる 見ているポイントを短い言葉で 失敗の履歴から、「避けるべき地 雷」を説明できる 地雷を一語で 偏愛の記録が残っている 残っている記録の種類: 〈追加チェック> 偏愛を「他者の選択に役立つ言 葉」へ言い換えできる 現場感覚を言葉にできる 再現できる型を 自分の知見を初心者向けに言い換 えられる 自分の仕事の「強みが出る場面」 を説明できる 依頼がなくても残る資産がある 自分の判断を支える根拠が増えて 日でやること 代わりにされにくい判断材料を、届く 形に整える 比較表を作る 保留の違いを うまくいった例・失敗した例・保留に なった例を並べて。 「何か違ったか」を一枚にまとめる 型を作る チェックリスト/テンプレ/手順を1 本作る 毎回見ている順番や確認ポイントを、 項目のチェックリストにして残す 代わりの少なさは、才能ではなく、残 し方で強くなる。 をどこに効かせ をどこに効かせ を使っていても、速くするだけで 終わることがあります。ここで見たい をどこに効かせると、財布 の大きさ・決定権・代わりの少なさが 動きやすくなるかです。 本体ではなく、 を助けるための補助パートです。 今の使い方が、効率化だけで止まって いないかを確認してください。 点で答えてく ださい。 ●効率化(1~3) 作業の下ごしらえ(要約 を使っている 文章の言い換えや整形に 使っている 繰り返し作業の短縮に ている 決定権への接近( 比較軸の候補を出させて、提案に 添えている 案)を作る下ごし らえに使っている 相手別の説明を作るのに使ってい 代わりの少なさを整える( 過去の記録から共通点 抽出するのに使っている 偏愛の記録を整理し、判断のポイ ントを言葉にするのに使っている 自分の型(チェック を作るのに使っている 合計:_点(O~9点) 点:効率化で止まりやすい 点:決定権に寄り始めている 点:代わりの少なさを整え始 めている の出力は、そのまま答えにしない こと。 候補として受け取り、採る・捨てる・ 順番を決める。 そこは人間がやります。 日チェックリストで 動きを形にする 日でやることを だけ決めます。 全部を変えようとしなくて大丈夫です つ決めて、形にして残す。それだけ で十分です。 ここで決めるのは、次の どの項目を動かすか 何をやるか 何を残すか 日後に見返せる形にすると、流れ が変わったかどうかが見えるようにな ります。 【30[|チェックリスト 記入用紙 (30日チニC 171Jiこ)7 記入用紙 合計と内訳 合計:_点(O~15点) 財布の大きさ: 決定権:_点(0~5) 代わりの少なさ: 最低点の項目: (財布の大きさ なさ) 日でやること 選ぶカテゴリ: 選ぶ行動:A/B(○で囲む) 形にして残すもの 期限(30日後) このワークは、月に一回だけ見直す この付録は、一度埋めて終わりではあ りません。 全体を見直してく ださい。 収入の流れは、一度で全部は変わりま つ動かすと、次にどこを動か せばいいかが見えてきます。 最初は、財布の大きさかもしれません そこを少し動かすと、今度は決定権の 遠さが見えてくることがあります。さ らに進むと、代わりの少なさの弱さが 見えてくることもあります。 全部を変えようとしなくていいです。 つで十分です。 試して、残して、また見直す。 その繰り返しで、流れは変わり始めま 収入は、努力の量だけでは決まりませ 財布の大きさ、決定権、代わりの少な つを、動かせる形にした人から 変わっていきます。 収入の流れを変える をまとめた『記 入用テンプレート』がこちらからダウ ンロードできます。 ダウンロード後、そのまま書き込ん で使えます。 印刷して使う場合は、 奨です。 スマホで開く場合は、こちらの コードからアクセスできます。 年日本の広告費」をもと に著者作成 厚生労働省「毎月勤労統計調査令和7 年12月分結果速報等」(2026年2月9 日公表)をもとに著者作成 グラウトワークス「2025年9月期通 期決算説明資料」をもとに著者作成 総務省「令和7年版情報通信白書」 の爆発的な進展の動向」) をもとに著者作成 アレキサンダー富美 放送作家。日本脚本家連盟会員 青学文学部日本文学科を卒業後、日刊 スポーツ新聞でラジオ・テレビ面の記 者からライティングの仕事をスタート その後、テレビ番組専門のフリーライ ターを経て、1996年、ニッポン放送 』の企画・構成を 機に放送作家デビュー。以来、ニュー ス、バラエティー、通販番組など。 ジャンルを問わず、企画・構成・台本 を手がける。 長年フリーランスとして、テレビ局、 制作会社、広告、企業案件など、立場 の異なる現場で仕事を重ねる中で、 「同じ努力でも、場所(市場)によっ て収入が激変する」という構造を痛感 現在はその経験を活かし、 した分析・執筆を行いながら、「努力 が正しく収益に繋がる仕組み」を提唱 している。 note : マネーペニー「Moneypenny 思考の武器」 :マネーペニー|放送作家X AI ポートフォリオ:アレキサンダー富 美/放送作家・AIライター 願い 本書を最後までご購読いただき、あり がとうございます。 この本が少しでも役に立ったら、 にレビューをいただけるとう れしいです。読者の皆さまの声は、次 の創作へ向かうためのエネルギーにな ります。 よかった点、引っかかった点など一言 でもかまいません。 どう感じたかを残していただけるとた いへんありかたいです。 あわせて、著者フォローもしていただ けるとうれしいです。今後、新刊のお 知らせなどお届けいたします。 どうぞよろしくお願いいたします。